だらだらクソデッキ vol.1

伊藤 敦

伊藤 敦



 クソデッキを、作らなければならない。

 なんだ通常営業か気でも狂ったのか、と思われるかもしれない。

 大いに違う。今さらながらに気づいたのだ。

 クソデッキを作ることの、必要性に。

 読者諸兄らにも経験があるはずだ。

 「このカード、どうやって使えばいいんだろう?」「あ、あれじゃね?××とのコンボ」「いやいや、ないでしょwww ん?待てよ、てことは……〇〇と組み合わせたらいいんじゃね?」「うは、キタコレwww最強でしょwww」「勝つるwww」……

 そういった他愛のないやりとり。未知のシナジーを発見したときの、自分たちが世界を出し抜いたという全能感と昂ぶり。

 そのときは確かに。どんなにくだらないカードさえも持っている、無限に広がる可能性に目を輝かせていたはずなのだ。

 それなのに。

 今では新セットのカードリストを見るなり、やれ「何だか使いにくそう」だの、「使うデッキが組めれば活躍するかも」だの、知ったふうなコメントをしては満足し、「弱いセットだね」などとのたまう。

 その気持ちは、しかしわからないではない。

 いざ時間というリソースを大量に投下して、出来たデッキがクソデッキでは、浪費にほかならないからだ。

 誰だって無駄は嫌いだ。限られた資源を配分するならなるべく有意義に、というのは万人に共通する命題だろう。

 したがって徒労を、クソデッキを恐れるのは当然だ。

 だが、それでも。

 挑戦しなければ進化はないのだ。

 『あの日見たクソデッキの名前を僕達はまだ知らない。』というシリーズを書いたのは、私自身もう二度とプレミアイベントでクソデッキを使いたくないという、クソデッキへの恐怖があったからだ。

 しかし連載を終えた今、私の記憶にはあのクソ最終回で浅原さんが教えてくれたことが印象深く残っていた。

 すなわち。

 クソデッキを愛し、可能性の暗闇を手さぐりで確かめることを恐れない。

 そう、それが結局は高みに至る秘訣なのだ。

 思えば最近はスタンダードをプレイしなくなったこともあって、クソデッキを作ることも久しくしていなかった。

 ここはひとつ原点に立ち返り、思いついたクソデッキを片っ端から実戦投入していこうと思う。



1.妄想編

 『神々の軍勢』は、クソデッキに向いていなかった。

 そう、挫折である。

 まず、デッキを作るにはコンセプトが必要だ。

 例えば1マナのクリーチャーのみで構成して相手を無理矢理押しつぶすことや、AというカードからBというカードにつなげるという必勝パターン、あるいはCというカードがあまりに魅力的すぎてデッキを組まざるをえないなど。

 コンセプトさえ決まってしまえば、最適な60枚を決定することは容易だ。

 だが今回、デッキの核となるコンセプトの発見については難航を極めた。

 勝ちたいなら勝ちたいって言ってよ!vol.3で触れられていたように、『神々の軍勢』には既存のコンセプトを強化するカードは多いものの、新しいコンセプトのデッキが立ち上がるためには、少々力不足と言わざるをえない顔ぶれに思えたからだ。

 2日、3日……カードリストと睨めっこをしては、ため息をつくだけの日々が続いた。

 そして、あまりに何も思いつかなさすぎてこのままでは新たなイケメンパラダイスが誕生してしまう(*1)とすら思えてきたそのとき。

 見つけてしまった。

 Wizards社R&Dの意思を、感じ取ってしまった。

 それは、運命の出会い。

 気づいてしまったのだ。

 クソデッキを作るために生まれたとしか考えられない、ある1枚のカードの可能性に。

 すなわち、『神々の軍勢』が送り込んだ最終兵器。

 スタンダードの《実物提示教育》

 それが。


骨の神託者


 《骨の神託者》、である。

 新キーワード能力「貢納」を持ったこのカスレア希望の星は、100円レアにあるまじきポテンシャルを秘めている。

 それは言うまでもなく、場に出たときに相手が貢納を支払わなければインスタント・ソーサリーをタダでプレイすることができるというぶっ壊れた能力のことだ。

 あらゆるインスタント・ソーサリーのマナコストを相手が貢納を支払わなければ踏み倒すことができる。

 となれば、スタンダードで1番重いインスタント・ソーサリーと組み合わせるしかない。

 早速happymtgのカード検索で8マナ以上のインスタント・ソーサリーを探したところ、さすがWizards、お誂え向きのヤツが用意してあるではないか。


無限への突入


 《無限への突入》

 レガシーの《全知》デッキでお馴染みのカードだが、まさかスタンダードでこのカードをプレイできる日が来るとは。

 しかし冷静になって考えてみると、《無限への突入》を撃てるというだけではだから何だという話にもなりかねない。

 たとえライブラリーを全て手札に加えることが出来たとしても、続くターンに即座に勝利しなければライブラリアウトで逆に負けてしまうという諸刃の剣なのだ。

 だが、やはり天才。

 そのような障害など軽く乗り越える画期的なアイディアを思いついてしまったのだ。




 この手順なら、《無限への突入》を撃たれた衝撃で1ミリも動けない相手をスタックで《胆汁病》を合わせられない限り確殺できる。

 完璧だ。あとはこのコンセプトを軸にデッキを作ればいい。

 長らくコンボ不在だったスタンダードのメタゲームだが。

 この最強デッキが、新時代の幕開けを告げる!


*1 ちなみにこのときはあまりに構築劇場のデッキが思いつかないので「もうデッキじゃないものを作ろう」とトチ狂った結果であった→戻る



2.爆誕編

 驚くべきクソデッキが誕生した。

 《骨の神託者》《無限への突入》

 デンジャラスすぎる出会いが、キングオブクソデッキを生み出してしまった。

 現代の《実物提示教育》と言っていい、瞬殺コンボを主軸に据えた革命的なクソデッキ。

 いや、赤いカードと青いカードの瞬殺2枚コンボという意味では、むしろ現代の《欠片の双子》と呼んでもいいかもしれない。

 つまりレガシーにもモダンにも通じる、コンボデッキの命脈を受け継いだ正統派コンボデッキということだ。

 長らくお待たせした。

 最強の証明。

 それがこれだ。



「クソデッキ1号」

1 《山》
4 《踏み鳴らされる地》
4 《奔放の神殿》
4 《凱旋の神殿》
4 《悪意の神殿》
2 《神秘の神殿》

-土地(19)-

4 《エルフの神秘家》
4 《野蛮生まれのハイドラ》
4 《双頭のケルベロス》
4 《ゴーア族の暴行者》
4 《瓦礫帯のマーカ》

-クリーチャー(20)-
4 《タイタンの力》
3 《レインジャーの悪知恵》
3 《植生噴出》
3 《伝書使の素早さ》
4 《向こう見ずな技術》
4 《雷撃の威力》

-呪文(21)-
4 《炎樹族の使者》
4 《骨の神託者》
4 《無限への突入》
2 《モーギスの狂信者》
1 《ニクスの祭殿、ニクソス》

-サイドボード(15)-
hareruya



野蛮生まれのハイドラ双頭のケルベロス雷撃の威力



 サイドボードじゃねーか!

 いや待て、まずは落ち着いて考えるべきだ。

 何せ今のスタンダードは黒単が跋扈する環境なのだ。

 そうすると何が起こるのか?

 想像してみて欲しい。

 意気揚々と7枚引いたところで、《思考囲い》で手札の《無限への突入》を見られてしまえば、恥ずかしさで憤死したくなること間違いなしだ。

 そのような恥ずかし固めを防ぐためには、相手が黒単かどうか確かめる必要がある。

 そういう今さらの理性的な思考によって、このデッキにはサイドの最強コンボを隠すための偽装が施されたのだ。

 もちろん偽装とはいっても、この刀は竹光ではない。

 きちんと相手のライフを削りきれるだけの殺意を持っている。というか殺意しかない。

 やることは簡単だ。

 まず14枚もの「占術」土地を駆使し、デッキに8枚の《双頭のケルベロス》《野蛮生まれのハイドラ》を引き込んでプレイする。

 あとは力の限り強化して殴るだけだ。

 仮に二段攻撃軍団がチャンプブロックされそうになっても、《向こう見ずな技術》《ゴーア族の暴行者》、そして何よりテーロスドラフト貫禄の14手目《伝書使の素早さ》が突破力を付与してくれる。


伝書使の素早さ


 どんなクソコモンにも使い道はある。クソデッキはそれを教えてくれた。

 さらにプレイングに不安があるという人のために、除去とかブロックとかそういう難しい要素は一切排除した。

 まさに「レベルを上げて物理で殴ればいい」を体現した、理想のクソデッキだろう。

 さらに。

 ヴェールを脱いだサイドボード後には、このデッキは悪魔へと変貌する。

 おもむろに出てきた《骨の神託者》に対し、よくわからずに「貢納は支払いません」と言ったが最後。

 12マナの飛び道具が相手の顔面にスラムダンクを決める。

 神か。

 神を、生んでしまったのか。

 万策は尽くした。

 あとは実戦で試すしかない!



3.実戦編

 クソデッキ、FNMに出る。


◆第1回戦 VS白青「英雄的」

・1戦目
ダブルマリガンの後、《恩寵の重装歩兵》《タッサの試練》とか《液態化》とか色々ついて撲殺される。

・2戦目
マリガン。また《恩寵の重装歩兵》を育てゲーされて負け。あかん、あのデッキ上位互換や。

××


◆第2回戦 VS白黒「授与」

・1戦目
マリガン。お互いノーガードで殴りあったのに何故かこっちが先に死んでいた。ゴミデッキか。

・2戦目
トランプルのないゴミみたいな《野蛮生まれのハイドラ》を育ててもじもじしてたところに《伝書使の素早さ》が駆けつけてくれて何とか撲殺。ありがとう14手目。

・3戦目
《エルフの神秘家》にジャイグロ撃ちまくって撲殺した。デッキコンセプトは何処へ行った。

×〇〇


◆第3回戦 VS黒単

ていうかここまで1回もサイドボードを使ってない。

そろそろ本気、出しちゃいますか……

・1戦目
《双頭のケルベロス》出して《冒涜の悪魔》返しで撲殺。ザ・理不尽。

・2戦目
《強迫》撃たれたけど恥ずかしい部分は持ってなかったのでネタバレは回避。あぶねー! あ、ゲームは普通に全部除去られて負けました。

・3戦目
快調に《炎樹族の使者》を2体並べてビートしようとしたら《悲哀まみれ》で悲哀にまみれる。そして《骨の神託者》を手札に抱えたところに《無限への突入》……を引けないままゲームは終わった。

○××


結果: 1-2



4.後悔編

 クソデッキ、解体。

 結論から言うと。

 こんなクソコンボ決まるわけねーだろ!

 大体レガシーには《渦まく知識》、モダンには《血清の幻視》があるのに、何でスタンダードは「占術」土地なんだよ。普通にコンボ揃わねーよ。

 しかも《骨の神託者》とかサイド後に出したら怪しすぎてどう考えても5/3で場に出るだろ。そして《胆汁病》とか《稲妻の一撃》とかで優しくキャッチされるに違いない。何でタフネス3しかねーんだ。

 いや、しかしこのデッキのおかげでクソデッキを作る楽しさを思い出すことができた。

 これがゼウスへの第一歩になると信じて。

 それではまた次回。

 良いクソデッキライフを!