剣が統べる世界

中村 修平


 こんにちは、あるいは初めまして、プロマジックプレイヤーなるものをしている中村修平です。今週からhappymtgで隔週ペースで連載を持たせてもらうことになりました。もりお編集長から渡されたお題はシングルカードレビュー。某所での連載では諸事情により旬を外してると専らの評判なので、happymtgの連載ではむしろ一番脂が乗っているカードの紹介をしていきたいと思ってます、どうぞよろしくお願いします。



1. プロツアー/グランプリを統べる、コントロール用の剣

 さて、第1回となる今回紹介するカードは《饗宴と飢餓の剣》。ミラディン包囲戦リーガルとなって直後のプロツアーパリで最も目にされたカードであり、実にトップ8中6人までがデッキに入ってたという脅威の使用者率を誇るカードです。先日行われたグランプリダラスでも実にトップ8中4人が使用しており、いわゆるCaw-X系のデッキでは定番となっている感があります。



David Shiels / Grand Prix-Dallas / 1st Place

4 《天界の列柱》
4 《氷河の城砦》
1 《墨蛾の生息地》
4 《島》
4 《平地》
1 《沸騰する小湖》
4 《金属海の沿岸》
4 《地盤の際》

-土地(26)-

4 《戦隊の鷹》
4 《石鍛冶の神秘家》

-クリーチャー(8)-
2 《糾弾》
2 《審判の日》
3 《ギデオン・ジュラ》
1 《乱動への突入》
4 《精神を刻む者、ジェイス》
3 《マナ漏出》
1 《迫撃鞘》
4 《定業》
3 《呪文貫き》
1 《饗宴と飢餓の剣》
2 《転倒の磁石》

-呪文(26)-
1 《悪斬の天使》
1 《糾弾》
1 《審判の日》
1 《剥奪》
2 《神への捧げ物》
2 《瞬間凍結》
2 《未達への旅》
1 《太陽のタイタン》
1 《饗宴と飢餓の剣》
1 《シルヴォクの生命杖》
2 《決断の手綱》

-サイドボード(15)-
hareruya


これから先のトーナメント会場で最も見ることになるであろう包囲戦のカードなのは間違いないですね。3マナ装備コスト2に+2/+2という及第点の修正値に加えて環境で最も使われているであろう黒と緑のプロテクションが2色。更にダメージが通った時のボーナスが2種類付き。強いというのは当たり前です。むしろこうやって一枚のカードの強さを分析する際に必要なのはなぜ、どのようにして、強いのかという視点を持つこと大事です。

《火と氷の剣》はかつて《頭蓋骨絞め》無き後の構築を支配しました。それは《頭蓋骨絞め》という圧倒的に強力でかつ早い装備品の前では環境に対して遅すぎ、逆に絞めが退場した後では全体的な環境の速度低下に伴なって剣の有用性が増大する事になりました。環境が剣に対して遅くなり過ぎたのです。そして《光と影の剣》《火と氷の剣》によって遅くなった環境に対する更なる回答、無限にブロッカーとライフを供給し続けれるものとして登極したのです。

では《肉体と精神の剣》はどうでしょうか、当時も今も環境に居座り続けるヴァラクートのようなデッキが用意してくるブロッカー達、《原始のタイタン》《ゼンディカーの報復者》にお供のトークンにブロックされない事、ダメージが本体に通れば追加の装備先を確保できることで構築デッキに入るレベルのカードへと評価されるに到りました。同じく《饗宴と飢餓の剣》もプロテクション緑を付加する点では同じであり、プロテクション黒から装備先の除去耐性を上げる事によってその点では変わらない働きをします。

ですがそれだけではまだこの新しい剣への説明には足りていません。逆説的になりますが包囲戦製の剣が傷跡製のものと同程度にしか強くないのでないならばプロツアー環境を支配するレベルへのカードとはなり得ません。《肉体と精神の剣》は確かに強力なカードではありましたが、去年の世界選手権の結果を見れば解るように決して環境を支配するレベルのカードにはなり得ませんでした。

では何故《饗宴と飢餓の剣》《肉体と精神の剣》を押しのけて更なる高み、プロツアー環境を支配するレベルのカードへと上り詰めたのでしょうか。

その答えは《饗宴と飢餓の剣》はコントロールに投入できる剣であったからです。



2. 残心の美しさが強さの秘訣

現在のスタンダード環境は明確に唱えられただけでゲームが終わってしまうレベルのカードが複数枚あります。例えば前述の《原始のタイタン》《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を2枚を持って来られ次のターン以降に山を何枚か置かれるだけでゲームセット、エルドラージ3神や《ゼンディカーの報復者》にしてもターンを返せば死ぬという点では同じ様なものです。また《墓所のタイタン》は2ターンの攻撃で20点オーバーのダメージを叩き出し、《聖なる秘宝の探索》から早いターンに装着状態で現れる《アージェンタムの鎧》は多くのデッキにとって事実上の終焉です。

スタンダード環境とはこれらのカードを使う側になるか、これらに対抗しきれる何かを持ったデッキであるかのどちらかなのです。

《饗宴と飢餓の剣》はそれらのカードに対抗する手段として古くからの選択肢の1つであった打ち消し呪文を構えて戦うデッキの、しかも共通する弱点である序盤戦での決定力不足を補うばかりかこのタイプのデッキが最も嫌う序盤での隙に対して、こちらが展開してしまったが為に打ち消し呪文を構えるマナを用意できないというジレンマを解消できるという点がこれまでのどの剣とも異なっていたのです。

そして序盤にダメージソースを展開して後は打ち消しを交えつつコントロールするというデッキ。しかも決定力不足であと一歩が届かないデッキ。まさに剣が求めていたデッキが環境には存在していました。

CawGoの発展形であるCawbladeこそ従来のアーキタイプが潜在的に求めていたカードと巡りあった結果として生まれた、勝つべくして勝ったデッキなのです。

以上のように《饗宴と飢餓の剣》の特質。

それは打ち消し呪文を構えるタイプのデッキが決め手カード出す時に生じてしまう隙を極力無くせるという点であり、その効果を最大限に生かせるデッキがエクステンデットにもあります。永遠のティア1デッキ、フェアリーです。

フェアリーは厳密にはコントロールデッキではありません。確かにコントロールデッキと同じようなカードが大量に含まれており、勝っている時はまさにコントロールと同じように打ち消し呪文で後続を全て打ち消すという戦い方になるので誤解されがちですが実際にはほとんどのカードをインスタントタイミングでプレイする事によって、対戦相手の計算を狂わせてダメージレースのほんの僅かな差を保ったまま勝つデッキです。ダメージを増大させつつ、フェアリーの持ち味であるマナを立たせたままターンを返すという行動を《饗宴と飢餓の剣》は可能にしてくれます。



3. 適材適所

ただ注意してもらいたいのは何に入れても強いという類のカードでは無いという事。

例えばエクステンデットのナヤデッキに入れたとしても《貴族の教主》《極楽鳥》はアンタップしないのでマナが全て返ってくる訳ではありません。それに戦闘フェイズが終わった後に《血編み髪のエルフ》を召喚してもそれほど強力とは言い難い効果です。それならば《肉体と精神の剣》で追加のトークンを生み出しているのと大差はありませんし、手札を消費せずに新しい戦力を追加出来る分だけそちらの方が強いかもしれません。これまでの剣と違い単純に戦場に与えるという点では微々たる影響しか与えれません。打ち消しという明確なマナの残し先がないデッキでこの剣を活用をしたいのであればそれなりに構成を考えなければならないのです。

ナヤであれば殴った後に浮いたマナを活用する為に戦線を比較的安全に拡大できるプレインズウォーカーを入れてみると、《原初の命令》を入れるいったデッキの改変、もしくは使わないという選択肢がある事に留意しましょう。話をスタンダードに戻してしまいますがプロツアーパリ3位入賞のヴィンセント・レモンはまさにそういう選択をしています。




Vincent Lemoine
Pro Tour Paris2011 / Top8

4 《乾燥台地》
4 《湿地の干潟》
3 《山》
6 《平地》
4 《沸騰する小湖》
2 《ぐらつく峰》
2 《広漠なる変幻地》

-土地(25)-

4 《ゴブリンの先達》
4 《ミラディンの十字軍》
3 《板金鎧の土百足》
4 《戦隊の鷹》
4 《ステップのオオヤマネコ》
4 《石鍛冶の神秘家》

-クリーチャー(23)-
2 《稲妻》
2 《電弧の痕跡》
3 《未達への旅》
2 《冒険者の装具》
1 《骨溜め》
1 《肉体と精神の剣》
1 《槌のコス》

-呪文(12)-
2 《電弧の痕跡》
1 《未達への旅》
4 《コーの火歩き》
2 《槌のコス》
3 《光輝王の昇天》
2 《反逆の印》
1 《饗宴と飢餓の剣》

-サイドボード(15)-
hareruya



《骨溜め》《饗宴と飢餓の剣》、必ずしも高額なカードが常に強いとは限りませんよ。