ミラディンの傷跡ブロック限定構築&ドラフトで開催されるプロツアー名古屋。
開催が2日後後へと迫り、少しずつですが環境で支配的といえるデッキとそれらが織り成すメタゲームの輪郭が見え始めてきました。
最速キルターンから環境の定義づけをするビートダウンで有力と言えるのは、軽量アーティファクトクリーチャーと、《十字軍》の系譜である《鍛えられた鋼》を有する白ウィニー。そしてダメージとは全くの別軸、毒というアプローチを取った場合に最も優秀なカードを揃えられる黒単感染デッキです。【白ウィニー】と【黒単感染】、この2つのデッキが環境のスピードを決め、【それに勝てるコントロールデッキ】が台頭し始め、更にそのコントロールデッキに勝てる【より遅いコントロールデッキ】を組めるかというのが名古屋のテーマとなることでしょう。がんばれスフィンクス。負けるなスフィンクス!
さてスフィンクス愛については前回の続きでまだまだ書ける余裕は有り余っているのですが、それは置いておきましょう。
今回紹介するカードは《ファイレクシアの槽母》。黒単感染における強力な4マナクリーチャー”だった”カードです。
そう残念ながら『だった』なのです。新たなるファイレクシア前までの黒単なら、センターこそ不動の《ファイレクシアの十字軍》が押さえていたものの、スターティングメンバーは確定。しかも2番手集団のそこそこの位置にいました。ですがこのカードがプロツアー名古屋で引き続きメインボードに残り続けれているかと問われれば、状況はとても悪いとしか言いようがないです。
今回はそんな話。《ファイレクシアの槽母》さんにとってはネガティブな話なのですが、デッキに入るカードの取捨選択という観点から、カードの強さ、必要性をどう判断するかに迫っていくことにしようかと。
題して『何故、《ファイレクシアの槽母》はデッキに入らなくなりそうなのか』
どっかで聞いた様なタイトルなのは気にしない方向で。
1. マナ域、カード枠が残念
デッキを構築する上でマナ域、カード枠というのはとても重要な概念です。
数ある《ボーラスの工作員、テゼレット》デッキに《精神を刻む者、ジェイス》が3枚しか入っていない事が多いのも、Caw-Bladeで、かつては当然のごとく投入されていた《肉体と精神の剣》が今ではとんとご無沙汰になってしまったのも、ボロスの4マナ域がいつも中途半端な枚数になってしまうのもみんなこのマナ域、そしてカード枠と言う問題があるからです。
どんなに強いカードだったとしても、それよりか更に強くて同じ機能のカードが環境に溢れているなら優先度は落ちてしまいます。先ほどの例だと剣がそれにあたりますね、デッキ内で2本あれば充分なので、環境的にプロテクションの意味が少なく、デッキ全体とのシナジーが少ない《肉体と精神の剣》は解雇という流れです。
同じように、強力であったとしても特定のマナ域のカードがデッキに入りすぎているのであれば、ゲーム展開を阻害する要素の1つとなり剪定が必要になるでしょう。ボロスのような1ターン目から動く事が前提とされる高速ビートダウンでは、コストの高いカードはそれだけでマリガン基準に抵触してしまうのです。
ちなみに《殴打頭蓋》を扱ったBrainvalleyでもマナ域、カード枠という観点からカードの強さを相対的に導き出しています。
では、《ファイレクシアの槽母》の場合はどうなのか。
まずカード枠という観点から見てみると包囲戦までのライバルだったカード達に《法務官の手》と《死体の野犬》がありました。同じクリーチャーというカード枠、しかも4マナというビートダウンにとって相当な高マナ域に既に3種類ものクリーチャーが枠を争っていた状況。
ここに新たに強力なライバルが登場してしまったのです。その名も《鞭打ち悶え》。
本来なら感染デッキに毒付きじゃないクリーチャー。しかも破壊されやすいであろうことが容易に想像できるアーティファクト。普通だとお呼びじゃないところですが、この生体武器だけは別格。
装備コストが『ファイレクシアマナ/黒マナ』なので4ターン目に出して即装着といった動きが可能。いつ引いてもそれなりの効果が期待可能で最悪の場合でもダメージ勝ちを狙えるというオプションも充分に強力です。
翻って《ファイレクシアの槽母》がやれる事といえば他のクリーチャーでも代替可能。正直相手が悪すぎますね。これは別に槽母が悪いと言う事ではなくもっと有用なカードが環境に増えてしまっただけという事ですから。
ですがマナ枠という意味で更なる受難が待ち構えてしまいます。
4マナ域の新カードが入ったのなら、抜ける事になるのも4マナ域というのが当然の流れですよね?でないとデッキの形がゆがんでいってしまいます。という事で、マナ域のおかげで大して強くもないのにメインデッキに居座り続ける《屍百足》を横目にあえなく退じょ……
2. 敗者復活戦
うとなるのは少し早計でした。
《鞭打ち悶え》にその座を奪われたとはいえ、感染デッキのスロットにはもう1種類、クリーチャーの4マナ枠が残っています。要はここでライバルとなる《死体の野犬》、《法務官の手》より優秀であることを証明すれば良いのです。
VS《法務官の手》
感染持ちを強化するロード能力に、感染カードを唱える度に毒を与える事が出来る《法務官の手》ですが、3/2と打たれ弱く、相手の場にクリーチャーがいると戦闘に参加することは多くはありません。毒効果にしても真価を発揮するには、このデッキの動きを想像すると、少し悠長すぎます。
一方で《ファイレクシアの槽母》は貫禄の4/5。
大抵のブロッカーを押しのけれるサイズはセールスポイントとしては充分です。感染デッキに必要なのは速さ。これは文句なしに《ファイレクシアの槽母》の勝ちでしょう。
VS《死体の野犬》
4/5という毒業界屈指のサイズを誇る槽母ですが、弱点も色々とあります。
まず回避能力が全くないという事。《エルズペス・ティレル》のトークンで大量のブロッカーを用意されたり、《転倒の磁石》を置かれただけでかなりがっかりな気分になってしまいます。
アップキープ毎にこちら側に毒が溜まっていくのも厄介です。《転倒の磁石》で止められている内に《伝染病の留め金》がセットになってしまったりすると逆毒死の確率は急上昇。戦線が硬直している状態で出すのを躊躇ってしまうばかりか、押している状態でも追加の槽母を出すかどうか考えてしまうのは、練習中に一度や二度では済まされない回数ありました。
これらの弱点が如実に出てしまうのが感染デッキ同系です。お互いに感染を持っている為、ブロックされる度にサイズが縮んでしまい、しかもターン毎にこちらに毒が蓄積していくので二重どころか三重苦。
その点《死体の野犬》は2/2という平凡なサイズと自身がアーティファクトというこの環境では弱点となる要素を抱えていますが、追加の感染クリーチャーを供給したり、マナと2体目さえあれば循環が可能と毒デッキが常に必要とする頭数の確保に貢献してくれます。
毒デッキミラーでどちらが優れているかは言うまでもなく、果たして他のデッキまで勘定に入れた場合、どちらに軍配があがるのか。
それは今週のお楽しみという事にしておきましょう。
賭けるとしたら犬ですけどね。
20 《沼》 4 《墨蛾の生息地》 -土地(24)- 4 《疫病のとげ刺し》 4 《疫病のマイア》 3 《屍百足》 4 《囁く死霊》 4 《ファイレクシアの十字軍》 4 《死体の野犬》 or《ファイレクシアの槽母》 2 《荒廃のドラゴン、スキジリクス》 -クリーチャー(25)- |
4 《闇の掌握》 4 《四肢切断》 3 《鞭打ち悶え》 -呪文(11)- | -サイドボード(0)- |