皆さん初めまして。
この度HAPPYMTGにてリミテッドの記事を担当させていただくことになった大澤拓也です。
僕のことを知らない方も多数いると思いますので軽く自己紹介を。
プロプレイヤーとして、本格的に活動していたのが2004のPTアムステルダムに初出場してから、2008シーズン頃までで、その後も以前程ではありませんが、GPやPTにもマイペースに参加していますが、メインはMOでのリミテッドが中心ですね。
プロツアープラハ06優勝、プロツアージュネーブ07準優勝という実績も実は持っています。
定期連載どころか戦略記事すらまともに書いたことがないので見苦しい点が多々あると思いますが、生温かい目で見守っていただけると嬉しいです。
1.SOM×3からSOM/SOM/MBSへの変更
さてドラフトにMBSが入り2か月が経ちました。
MBSが環境にどのように変化を及ぼしたのかを紹介していく…その前に。SOM環境を軽くおさらいしておきましょう。
SOM×3のドラフトにおけるデッキタイプは2種類。”感染デッキ”と”それ以外”。これが筆者の結論です。
まず言わずとしれた”感染”デッキ。
SOMの最重要キーワード能力”感染”を持ったクリーチャーを中心にした黒緑デッキ。その強力さゆえ、環境初期には卓の半分が”感染”デッキなんてことも珍しくなかったですね。
個人的な卓内の許容人数は3人位だと考えています。
それ以上になるとデッキに必要なパーツを満足に確保できず、”感染”クリーチャーが入ってるだけのデッキになることもしばしば。”感染”デッキを組むにあたって気をつけなければいけないことはスペルの確保です。
いくら高得点のクリーチャーがたくさん入っていてもそれをサポートするカードがないと意味がない。”感染”クリーチャーは戦闘能力を除けばただの能力無しのクリーチャーの集まりです。しかし一度スペルのサポートを受ければ”感染”の恩恵でその効果を2倍近くまで引き上げてくれます。
《闇の掌握》、《荒々しき力》、《転倒の磁石》を始め、《テル=ジラードの抵抗》だったり、時にはあまりデッキに入れないような《死への抵抗》を採用することもあります。
サイドボードとして《風の突き刺し》を取っておくのはとても重要なので”感染”デッキの時だけでなく緑をやっている時は要チェックです。
続いて”感染”以外のデッキの話。
多くの方はもう一つのキーワード能力である”金属術”を中心にしたデッキがあるのでは?と思われたかもしれません。もちろん”金属術”を完全に否定するわけではなく、デッキのコンセプトとして積極的に採用するにはリスクの割りにリターンが少ないということです。
アーキタイプとして確立するにはコモンにある程度、計算のできるカードが存在しなければなりません。SOMのコモンに存在する”金属術”と書いてあるカードはとにかくデフォルトが弱い。それに加え”感染”デッキと対戦する場合は戦闘を行わざる得なく、消耗戦になるので”金属術”というコンセプトに非常に不利と言えます。
しかし先程も書いた通り”金属術”を完全に否定するわけではありません。レアやアンコモンになってくるとデフォルトで標準以上のスペックを持っているカードもありますが、その手のカードをピックするにあたって気を付けなければいけないのは”金属術”を『達成しなければならない』ではなく『達成したらラッキー』くらいの認識であることです。
2.MBS導入後のアーキタイプの変化”金属術”と”NOアーティファクト”の台頭
SOMの話はこの辺にしておきまして、お待ちかねのMBSの登場です。
SOMブロックのドラフトからルールが変更され、最新エキスパンションから開封することになりました。
従来のルールであれば、慣れ親しんだSOM2パックでデッキの基盤を固め、最新エキスパンションではその補強をするという戦略がとれましたが、今回は最初に開封するのがMBS。つまり、デッキの方向性を左右する上で例年のブロックよりも理解度が必要と言えます。
SOM×3では”感染以外”と括っていましたが、MBSの加入によって、強力なカードがいくつか追加され、アーキタイプとして意識的にピックが出来るものが出てきました。
まず一つ目は、ミラディンの傷跡ブロックのキーワード能力である”金属術”デッキです。
8 《平地》 8 《島》 -土地(16)- 1 《きらめく鷹》 1 《鉛のマイア》 1 《金のマイア》 1 《絡み線の壁》 1 《マイアの種父》 1 《ニューロックの模造品》 1 《嵌め乗りの滑空者》 1 《金属の駿馬》 1 《ガルマの保護者》 2 《尖塔の海蛇》 1 《ゴーレムの職工》 -クリーチャー(12)- |
1 《皮剥ぎの鞘》 1 《きらめく鷹の偶像》 1 《起源の呪文爆弾》 2 《主の呼び声》 1 《皮羽根》 1 《ダークスティールの斧》 1 《鋼の妨害》 1 《存在の破棄》 1 《転倒の磁石》 1 《拘引》 1 《生体解剖》 -呪文(12)- |
1 《窒息の噴煙》 1 《ダークスティールのマイア》 1 《ロクソドンの旅人》 1 《魂の受け流し》 -サイドボード- |
・アーティファクトを優先的にピック。金属術の達成を強く意識する。
・色の合わないマイアや起動コストのカードも、ピックの幅を広げるために抑えておくと良い。
・生態武器のおかげで《きらめく鷹》の点数がUPしたことも覚えておこう。
・サイドは感染に対応できるよう、タフネスの高いクリーチャー、《魂の受け流し》等のスペルも抑えておきたい。
先程散々言っといてなんですが、実はMBSが入ってからは注目のアーキタイプだったりします。
要チェックカードは2枚。
まずは直接”金属術”の能力を持つカードではないのですが、白の《主の呼び声》。ついにインスタントタイミングで”金属術”を達成することが可能になりました。実用的な装備品も増えた事により、環境にマッチしているカードだと思います。
続いて青の《尖塔の海蛇》。これぞ求めていた品質。SOMのコモン”金属術”で唯一優秀だった《ガルマの保護者》を彷彿とさせるコストパフォーマンス。
この2枚はコモンであると言う事と、比較的遅い順目で手に入るので、戦略として狙う価値が十分にあると思います。
青は他にも《鋼の妨害》、《水銀の噴出》、《生体解剖》などの優秀なスペルを擁していますし、《血清掻き》のようなアタッカーも追加されMBSの恩恵を多く受けている色だと思います。
そしてもう一つ、MBSの追加によって”アーティファクトを必要としない”というコンセプトが、赤ではより明確になりました。SOM×3の時も、ローグなアーキタイプとして認知されていたデッキではありますが、MBSのカードを見ているとその方向性がより顕著になったと思います。
9 《森》 8 《山》 -土地(17)- 1 《ヴィリジアンの密使》 1 《危険なマイア》 1 《鉄のマイア》 2 《火膨れ杖のシャーマン》 1 《シルヴォクの模造品》 1 《ヴァルショクの模造品》 1 《回転エンジン》 1 《荒廃後家蜘蛛》 1 《オーガの抵抗者》 1 《酸の巣の蜘蛛》 1 《カルドーサの首謀者》 1 《腐食獣》 1 《ファングレンの匪賊》 1 《炎生まれのヘリオン》 1 《恐慌の呪文爆弾》 -クリーチャー(16)- |
1 《恐慌の呪文爆弾》 1 《圧壊》 1 《感電破》 1 《粉砕》 1 《不純の焼き払い》 1 《真っ二つ》 1 《金屑化》 -呪文(7)- |
1 《コスの急使》 1 《グリッサの急使》 1 《ピスタスの一撃》 1 《風の突き刺し》 1 《エズーリの射手》 1 《テル=ジラードの抵抗》 1 《ヴィリジアンのお祭り騒ぎ》 -サイドボード- |
・低マナ域のクリーチャーの質が良くないのが欠点。それを補う意味でも除去を最優先でピック。
・感染デッキとの対戦をしっかりと意識。感染耐性が高い《危険なマイア》等は優先的にピック。
・サイドは飛行対策をしっかりと抑える。土地渡りも、余裕があればサイドボードの忍ばせたいところ。
このアーキタイプの利点は相手のアーティファクト除去が無駄になることやシナジーが必要がないため単体で強いカードが多く入り消耗戦にも強いこと、何よりあまり人気がないため競合することが少ないという点があげられます。
中心となるカードは《オーガの抵抗者》、《カルドーサの首謀者》のような強靭なクリーチャー達。
“感染”クリーチャーやマナマイアを始め、多くのタフネス1クリーチャーが使用されているこの環境では《火膨れ杖のシャーマン》も十分レギュラークラスのクリーチャーと言っていいでしょう。
スペルのほうも《不純の焼き払い》、《圧壊》と申し分ないです。
2色目としては緑が選択されることが多く《ファングレンの匪賊》は、対感染デッキ以外では圧倒的なアドバンテージをもたらしてくれる、是が非でも欲しいカードですね。
3.依然強力な”感染”
そして、SOM×3時代は感染だけがアーキタイプとして存在すると言える程に強かった”感染”デッキ。
9 《森》 8《沼》 -土地(25)- 1 《災いの召使い》 1 《荒廃後家蜘蛛》 1 《ファングレンの匪賊》 1 《疫病口獣》 1 《腐敗狼》 1 《荒廃のマンバ》 1 《胆液爪のマイア》 1 《伝染病の屍賊》 1 《煙霧吐き》 1 《疫病のとげ刺し》 1 《嚢胞抱え》 1 《絡み森の鮟鱇》 1 《死体の野犬》 1 《シルヴォクの模造品》 1 《テル=ジラードの堕ちたる者》 1 《屍百足》 -クリーチャー(16)- |
1 《病的な略取》 1 《病気の拡散》 1 《悪性の傷》 1 《銅の甲殻》 1 《ピスタスの一撃》 1 《荒々しき力》 1 《大石弓》 -呪文(7)- |
1 《風の突き刺し》 1 《エズーリの射手》 1 《テル=ジラードの抵抗》 1 《ヴィリジアンのお祭り騒ぎ》 -サイドボード- |
・2マナ域のクリーチャーと、スペルの確保を意識する。
・戦闘以外の方法で毒カウンターを増やせるギミックを搭載出来るように意識する。
黒からは《病的な略取》、《病気の拡散》、《悪性の傷》のようなコンセプトに合ったスペルが追加されました。
緑からは《荒廃後家蜘蛛》、《腐敗狼》のようなレギュラークラスの”感染”クリーチャーが追加されました。
そのため発売直後に行われたPTパリでも卓内でかなりの人数が競合していたようで、相変わらずの本命アーキタイプとして、3-0している事が多い印象を受けます。
白にも感染クリーチャーが追加されましたが、いかんせん数が足りないので、デッキタイプとしての白を絡めた感染デッキは難しいでしょう。但し、《ノーンの僧侶》は対感染デッキでは強いクリーチャーなので、白をピックする時にはサイドボード要員として拾っておくと、サイドボード後に活躍してくれるでしょう。
SOMのおさらいの流れで、個人的なMBSの第一印象を書いてみました。
地域や時間の経過によって様々な見解が出てくると思いますが、皆さんのMBS入りドラフトに対する関心や上達の手助けに少しでもなれていれば幸いです。
次回はより実践的にMBS発売後のドラフトについて触れていこうと思います。