基本セット2012のドラフトは速め!?

大澤 拓也


 こんにちは。大澤です。
 M12が発売してから1週間が経ちました。もうドラフトなどでの限定戦は試してみましたか?
 早速今回も新環境のドラフトについて紹介していこうと思います。
 先日の日本選手権では、発売日翌日のM12を使用してのドラフトというかなりプレイヤー泣かせのレギュレーションでした。
 でもそんな限られた時間や環境の中で、カードリストやプレリで使用したパック、勝ち取った賞品から研究してきたプレイヤーも多く、とてもレベルの高い大会だったんじゃないかと思います。
 そこで今回は、私的に興味があるプロプレイヤーにその研究の成果をいくつかの質問に答えていただき、紹介していこうと思います。



■1stピックしたいコモン■

コモンは一番使用する頻度が高く、色の強弱を大きく左右するので環境を把握する上でとても重要になってくると思います。
そんなコモンから1stピックしたいコモンを聞いてみました。

■3枚並べ
ギデオンの法の番人マーフォークの物あさり血まみれ角のミノタウルス破滅の刃


(敬称略、順不同)
●秋山貴志(千葉)【注1】
《ギデオンの法の番人》《破滅の刃》《マーフォークの物あさり》《血まみれ角のミノタウルス》

●高桑祥広(東京)【注2】
《マーフォークの物あさり》(別格です。)

●中島主税(東京)【注2】
《ギデオンの法の番人》

●中村修平(東京)【注3】
特に無し

●藤田剛史(大阪)【注4】
《血まみれ角のミノタウルス》
《ギデオンの法の番人》

●藤本知也(大阪)【注5】
《血まみれ角のミノタウルス》

●行弘賢(和歌山)【注6】
《破滅の刃》

《ギデオンの法の番人》《血まみれ角のミノタウルス》に人気が集中してる感じですね。
白推しのなかしゅーさんを加えると《ギデオンの法の番人》が一番人気でしょうか?
ここで我が道をいくのがその2TOPを敢えて外して、両方に対処できる《破滅の刃》を選択した行弘くんとデッキ自体のパワーを底上げを狙っての《マーフォークの物あさり》を選択したクワ。
早速狙っている戦略やプレイスタイルの違いから差が生じ始めていて興味深いです。


●筆者の回答●
白:《ギデオンの法の番人》
「狂喜」の餌になりつつ、擬似的な除去として働いてくれる素晴らしいクリーチャーです。。
ティムや-1/-1除去が非常に少なく、タフネス1が弱点になりづらいこの環境ではコモン最強クリーチャーと言っても良いでしょう。
白が濃い構成になれば《護衛の誓約》《清浄の名誉》が入ることが多いので、最後にはアタッカーとしても活躍する場面は少なくありません。

青:《霊気の達人》
「Mr.テンポ」なんてあだ名が付きそうで付かないこのカード。
押してる時の強さは言わずもがな、押されてる時でも攻防をひっくり返すことのできる数少ないクリーチャー。
青だったら《マーフォークの物あさり》を優先してピックするんじゃないの?っていう意見の方が多いんじゃないかと思います。
確かに基本セットのようなカードパワーの低い環境ではマナフラッド、マナスクリューが致命的な敗因になることや、数少ないカードパワーの高いカード1枚がゲームを決めることも少なくなく、そんな問題を全て解決してくれる素晴らしいクリーチャーです。
しかしこの環境では2ターン目に戦闘能力のないクリーチャーを出すのは単純に一手損と考えていて、その損した一手分を《マーフォークの物あさり》の能力で埋め合わせできるまでには多少の時間が掛かってしまうので、テンポ戦略において弱いタイミングがほぼないであろう《霊気の達人》を自分は優先してピックします。

黒:《破滅の刃》
このカードの強さについてはもはや説明不要だと思います。
ただこの環境では黒はメインカラーで使われづらいため、あまり人気がなく、M11の時よりも流れてくることが多い印象です。

赤:《血まみれ角のミノタウルス》
赤という色には珍しく、火力より優先してピックすべきクリーチャーです。
M11と比べて全体的にサイズや能力が控えめなクリーチャー陣の中、規格外のサイズのこのクリーチャー。

緑:特に無し
コモン自体の層はそこそこ厚いのですが、他の色のコモンと比べると早い順目で取るべきコモンはないように思います。
そのため不人気になりがちなので遅い順目でもカードを確保できるのが魅力な色です。



■狙いたいアーキタイプ(色の組み合わせ)■

●秋山 貴志(千葉)
青白

●高桑祥広(東京)
黒タッチX(タッチはアドバンテージの取れるカード。例《棘投げの蜘蛛》《火の玉》《マーフォークの物あさり》など。2色以上もタッチ可。後手をとります。)

●中島主税(東京)
フライングビート。青白もしくは白黒。白絡みを狙いたい。

●中村修平(東京)
白青、赤緑という王道を除いたら白黒。

●藤田剛史(大阪)
白青ビート

●藤本知也(大阪)
赤緑

●行弘賢(和歌山)
青黒。安い除去やバウンス、擬似除去があるので一番テンポに向いているし、狙ったコモンが流れてこなくてアドバンテージ主体に切り替えても普通に安定した成績が残しやすい。

白青が一番人気。続いて白黒、赤緑と続いていますね。
クリーチャーの層の厚さが白の人気の秘訣でしょう。
ここでも人気の白と赤を外しての黒+Xのクワと青黒の行弘くん。
二人とも理論もしっかりしていて、安いカードを使ったり、もし理想の形にならなかった時の対処法まで用意してあり、特にクワのほうは他のプレイヤーと戦略が全く違うので、とても興味深いですね。

●筆者の回答●
嵐前線のペガサス血のオーガ

赤+Xの狂喜
白+Xの飛行ビート


ちょっと反則的な回答で申し訳ないのですが、やはりクリーチャーがしっかりしてる白と赤のどちらかをメインとしたドラフトが理想です。
ただプロの方々の回答を見る限り、その2色を常にメインで取るのは難しそうなので個人的には白と赤の次にクリーチャーがしっかりしていて、不人気により空いてることが多い緑をドラフトすることが最近は増えています。



■そのアーキタイプに必須なカード■

●秋山 貴志(千葉)【青白】
《ギデオンの法の番人》、飛行戦力、《平和な心》(取れなきゃ《送還》とか《霜のブレス》でも) 

●高桑祥広(東京)
《精神腐敗》と軽い除去。

●中島主税(東京)【青白もしくは白黒。白絡みを狙いたい。】
《嵐前線のペガサス》

●中村修平(東京)【白青、赤緑or白黒。】
何よりも白。それに+で添え物としての黒いカード。例えば除去や墓地回収。

●藤田剛史(大阪)【白青ビート】
《エイヴンの瞬翼》

●藤本知也(大阪)【赤緑】
狂喜クリーチャー、《トロール皮》

●行弘賢(和歌山)【青黒】
《幻影の熊》《薄暮狩りのコウモリ》《霊気の達人》

やはりほとんどの皆さんが第一に軸となるクリーチャー、続いてそれらをサポートする呪文も挙げていますね。
ここでも独自理論を展開するクワも軽い除去は必須と早いデッキにテンポ負けしないとする意識が感じれますね。

●筆者の回答●【赤+Xの狂喜or白+Xの飛行ビート】
ズバリ「1~2マナのクリーチャー」これに尽きると思います。
何故なら理由は簡単で1~2マナのパワー2のクリーチャーを止められるタフネス3のクリーチャーが環境に少ないため、1~2マナのクリーチャーを召喚しないのは単純に一手損をしているからです。
2ターン目までにクリーチャーを召喚できないデッキは失敗ドラフトと言っていいくらいシビアな環境だと思います。
それでは各色の押さえておきたい1~2マナのクリーチャー(早い順目でピックされるものを除く)を紹介していきます。

【白】
先兵の精鋭鎧の軍馬


1マナ…《先兵の精鋭》
2マナ…《嵐前線のペガサス》《鎧の軍馬》《グリフィンの乗り手》

【青】
幻影の熊珊瑚マーフォーク


1マナ…《幻影の熊》
2マナ…《珊瑚マーフォーク》《魅惑するセイレーン》

【黒】
苛まれし魂夜の子


1マナ…《苛まれし魂》
2マナ…《夜の子》《薄暮狩りのコウモリ》

【赤】
ゴブリンの付け火屋ゴブリンのトンネル掘り


1マナ…《ゴブリンの投火師》《ゴブリンの付け火屋》
2マナ…《ゴブリンの長槍使い》《ゴブリンのトンネル掘り》

【緑】
ラノワールのエルフルーン爪の熊


1マナ…《ラノワールのエルフ》
2マナ…《ガラクの仲間》《ルーン爪の熊》



■周りと評価の違うこと(カード、色、戦略等)■

●秋山 貴志(千葉)
緑は弱いけど、空いてれば全然やる。《ガラクの仲間》とか《聖なる狼》とか《剛力化》が卓で安いようなら。

●高桑祥広(東京)
基本セットのセオリーである後手デッキは健在だということ。M12は狂気の影響でテンポ環境と言われており、軽くて相手のライフを削れるカード(例《ゴブリンの投火師》《グリフィンの乗り手》)の点数が上がっているので、重くてアドンバンテージの取れるカードと軽い除去で構成されたような後手デッキを組むのが容易くなった。積極的に後手のコントロールデッキを狙っていきたい。黒、緑はルーザーカラーと言われているが、コントロールデッキを作るのであればとても良いカード(例《精神腐敗》《大蜘蛛》《棘投げの蜘蛛》《大いなるバジリスク》)が揃っているので、それをうまく利用していきたい。

●中島主税(東京)
黒はクリーチャーの線が細い事以外は汎用性が高いと感じているので、他の人よりも触る事が多いです。
とにかく軽く動いて、ブロッカーを除去もしくは《霜のブレス》等でいなす形にするのが好きです。

●中村修平(東京)
緑と黒に対してそれほど嫌悪感はない。
あとオーラ好き。

●藤田剛史(大阪)
《神聖なる好意》はもっと評価されて良いと思う。
あとこの環境は強いクリーチャー>除去(呪文)でピックするべきかもしれん。

●藤本知也(大阪)
ドラフトなら除去よりクリーチャーを優先してピックすること。

●行弘賢(和歌山)
黒全般の評価が人より高い。
クリーチャーの質は確かに低いけど殴り値は高いのでテンポ戦略には向いているし、安い除去が強いのも嬉しい。
《魔性の教示者》が安くとれるのでボム引いた時の期待値があがるのも安定した成績に繋がると思います。
個人的に環境的には《送還》がかなり強いと思うので評価高めです。

●筆者の回答●
先程も書いた通り、緑の評価が周りよりも高いです。
低マナ域のクリーチャーが安く取れるのが一番の魅力です。
《大蜘蛛》《垂直落下》も安く取れるので一番人気であろう白青に相性が良くなるのも好材料です。

黒はやはりクリーチャーが弱いのでメインで使うのには好かないんですが、2色目なら優秀なサポート色だと思います。
《破滅の刃》《グレイブディガー》はもちろん《肉体のねじ切り》やサイドカードとして《死の印》も優秀なサポート呪文ですね。

なかしゅーさんとローリーさんも言ってますが、《神聖なる好意》はもっと使われても良いカードだと個人的にも思います。
平均的なクリーチャーのタフネスが低いため+1/+3の修正が戦闘ではどうにもならないことが多く、このカード1枚で場を制圧してしまうこともあります。



■総括■

個人的な方針としては白・赤・緑のクリーチャーの層が厚い色をメインに低マナ域からのビートデッキを組みます。
本来システムクリーチャーに場を制圧されてしまいがちな白青、白緑、青緑のような除去が少ない色でも、この環境には致命的になり得るシステムクリーチャーがそれほど多くないため、単純に殴れるクリーチャーの質で勝負できるので、それらをサポートする《平和な心》《霊気の達人》《霜のブレス》《送還》《剛力化》等がしっかり取れていれば問題なく戦えると思います。
繰り返し何度も言ってますが、この環境で最も重要なのは1~2マナのクリーチャーなのでそこをしっかり意識してドラフトしていきたいですね。

あとは、基本セットドラフトの忘れてはいけないテクニックとして、いかにサイドボードを充実させられるか。《精神の制御》をはじめとする強力なエンチャントに対応出来る《啓蒙》《帰化》、特定の色に対する対策カードとなる《天界の粛清》《焼却》等は、サイド後には強力なカードなので、タイミング次第ではありますが、ピックしておきたいカードですね。

【白】
《天界の粛清》
《啓蒙》
《群れの護衛》
【青】
《瞬間凍結》
《湾口の海蛇》
【黒】
《死の印》
【赤】
《焼却》(メインでもok)
《躁の蛮人》(メインでもok)
《松明の壁》
【緑】
《濃霧》
《帰化》(メインでもok)
《垂直落下》(メインでもok)
これらのカードは、対戦相手によってかなりのユーティリティカードとなり得るので、要チェックです。



■各色コモン順位表■

最後に個人的なコモンのピック順位を紹介しておきます。

【白】
1位《ギデオンの法の番人》
2位《平和な心》
3位《グリフィンの歩哨》
4位《嵐前線のペガサス》
5位《鎧の軍馬》

【青】
1位《霊気の達人》
2位《マーフォークの物あさり》
3位《幻影の熊》
4位《空回りのドレイク》
5位《霜のブレス》

【黒】
1位《破滅の刃》
2位《グレイブディガー》
3位《肉体のねじ切り》
4位《夜の子》
5位《ソリンの渇き》

【赤】
1位《血まみれ角のミノタウルス》
2位《チャンドラの憤慨》
3位《火葬》
4位《血のオーガ》
5位《ショック》

【緑】
1位《大蜘蛛》
2位《アラクナスの蜘蛛の巣》
3位《隠れ潜む鰐》
4位《ガラクの仲間》
5位《ラノワールのエルフ》

これは自分のドラフトの方針に基づいてのピック順なので人によって多少の誤差はあると思いますが、意外な順位のカード等があれば是非試してみていただきたいですね。



【注1】秋山貴志(千葉):格ゲー界でも超有名人。マジック復帰戦の今回もTOP8まであと一歩と大健闘。マジック始めて半年でGPのTOP8に残るという伝説を持っている。抜群のセンスの持ち主。
【注2】高桑祥広(東京):筆者のリミテッドの師匠。いつも一歩先を行っていて、NPHドラフトで金属術ビート広めた人でもあります。
【注3】中島主税(東京):6月に行われたGPシンガポールで見事準優勝。この環境のドラフトの調子が良いらしく、GP上海も活躍が期待できそうです。
【注4】中村修平(東京):個人的にリミテッドの方が得意そうなイメージ。どの環境でも青をやってる気がします。リミテッドで青が弱いことってほとんどないから実はそこが強さの秘訣!?(笑)
【注5】藤田剛史(大阪):日本人唯一の殿堂プレイヤー。6月に行われたPT名古屋でTOP8入賞されました。この方のマジックの理解度は本当に凄い。いつまで経っても教わることばっかりです。
【注6】藤本知也(大阪):先日の日本選手権で直前予選から見事準優勝。コガモ(津村健志)を彷彿とさせるシンデレラボーイっぷりでこれからの活躍に期待です。
【注7】行弘賢(和歌山):いつもオリジナルデッキを使っていたり、リミテッドにおいても独自の理論を展開したりと期待の若手。