挑戦者インタビュー: 土屋 洋紀 ~想像力に満ちたプレイで勝ちにいく~

晴れる屋

晴れる屋

By Atsushi Ito


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 土屋 洋紀(東京)。


【グランプリ・京都2015】 25位
・エターナルパーティ2014 トップ8
・エターナルフェスティバル2014 トップ8
・GP静岡2014サイドイベント 日本レガシー選手権2013Winter トップ8
【晴れる屋TCオープン記念レガシー杯】 3位
・エターナルパーティ2012 トップ8
・エターナルフェスティバル2011 トップ8


 と、国内レガシーシーンでもトップクラスの実績を持ちながらもタイトルがなく、これまで「無冠の強豪」だった男が、【第5期レガシー神挑戦者決定戦】でついに優勝し、「最古の神」ことレガシー神・川北 史朗への挑戦権を獲得したのだ。




 しかし土屋が日本レガシー界でもトップクラスの強豪であることは間違いないものの、土屋 洋紀という人物のパーソナリティについては、【ボルト算】についてと【第4期レガシー神挑戦者】の斉藤 伸夫の親友であること、そしてHareruya Pros・齋藤 友晴にとっての【レガシーのGPに出場する際のブレイン】であることのほかは、これまではあまり語られてこなかったように思われる。

 はたして土屋という男はどのようにしてマジックを始め、そしてどのようなマジック観をもって今「レガシー神」の座に手をかけようとしているのだろうか?

 レガシー神決定戦を間近に控えた挑戦者・土屋の人物像に迫るべく、本人にインタビューさせてもらった。



土屋とマジックとの出会い



--「土屋さんはいつごろからマジックを始められたのでしょうか?」

土屋「私は北海道の出身なんですが、まず小4くらいのときにちょっとだけ友達とか近所のお兄さんとかとやってたんですよね。ちょうど『エクソダス』あたりだと思うんですけど、《ヴェクの聖騎士》《禁止》を近所のお兄さんに《悪魔の機械》とシャークトレードされたことを覚えてますw」

--「あるあるですねw」


禁止悪魔の機械


土屋「それからまた『メルカディアン・マスクス』~『インベイジョン』あたりで復帰したんですが、お店はあったはあったけれども田舎なもので親に車を出してもらって30~40分くらいの場所で気軽には行けず、しかも友達と2人でしかやれなかったので、なかなかやる機会がないまま別の趣味 (ギター) に行ってしまって。でもマジック自体はすごく面白かったので『いつかやりたいな』と心の片隅で思ったまま大人になって、ふとしたきっかけで『ミラディンの傷跡』の頃にまたマジックを再開したら火がついた、という感じです」

--「レガシーを始められたのはどういったきっかけからでしょうか?」

土屋「実は再開後は最初からレガシーしかしてないんですよね。再開したときに『昔持ってたカードを使いたい』と思っていたので、東京に出たときに知り合った師匠的な人にそれを話したらレガシーを勧められて。それで晴れる屋の旧店舗に連れて行ってもらってレガシーの大会に出始めて、晴れる屋を主な活動場所にしていたレガシープレイヤーたちのコミュニティが当時あったので、そこで様々な人に出会って『あ、マジックっていうのはこうやってコミュニティが広がっていくのが素敵なゲームなんだな』と感銘を受けました」

--「【第4期レガシー神挑戦者】の斉藤 伸夫さんとの付き合いもそれくらいの頃からなんでしょうか?」

土屋「そうですね、のぶ (斉藤 伸夫) やシゲキ (高野 成樹) と出会ったのもそのあたりです。彼らのゲームを見ていて『強そうだな』と思ったので、レガシーの草の根大会であるAMC (Ancient Memory Convention) に誘ったのが付き合いの始まりでした」




--「レガシー神・川北さんとも知り合い同士ということですが、川北さんとの出会いもやはり同じ時期に?」

土屋「川北さんに関しては、【エターナル・フェスティバル2011】のスイスラウンドで当たって負けたのが一番古い記憶ですね。当時僕は青白トラフトを、彼は親和を使っていたんですが、《刻まれた勇者》を出されたところで僕は《神の怒り》を持っていたので『しめしめ』とニヤニヤしていたら見透かされて《霊気の薬瓶》からの《翻弄する魔道士》《神の怒り》を指定されて負けてしまって。それ以来意識して有利不利を表情に出さないよう気をつけるようになりました」



レガシーは《思案》の打ち方で勝負が決まる



--「土屋さんは他のフォーマットと比べてレガシーのどういった点が良いと思いますか?」

土屋「何といっても軽いドロー呪文が多くて相性ゲーや事故ゲーが他のフォーマットより少ない点ですね。やっぱり事故で負けると空しいので、そういう極端な不運による負けが少なくて他のフォーマットより技術介入度が高い点が気に入っています」

--「土屋さんはレガシーでかなり安定して勝っているプレイヤーだと思うんですが、他のプレイヤーと『技術介入』で差がついているんだとすれば、それは具体的にどのような『技術』や考え方で差がついているんでしょうか?」

土屋「色々ありますけど、最近よく思うのは、『レガシーは《思案》の打ち方で勝負が決まる』ということですね」


思案渦まく知識


--「《思案》ですか?《渦まく知識》ではなく?」

土屋「ですね。私の場合、《思案》は6割シャッフルなんですよ。できるだけ《渦まく知識》《Ancestral Recall》になるよう、対して《思案》《Demonic Tutor》になるようプレイするのが大事だと思います」

--「素人考えですが、《思案》でシャッフルを選択するとランダムな3枚を引くことになりリスクが高いので、ある程度の強さのトップが見えたらそのまま引きそうなものですが」

土屋「前提として、レガシーってものすごい定石ゲーなので、もし盤面が自分にとって不利だとしたら、その局面を打開するためにはデッキの中の特定の数枚しかドローしたくないことが多いんですよね。なのでちょっとくらい強いカードが見えてもシャッフルしないといけない状況が実はよくあります。そもそも自分が勝っているときは《思案》を打たなかったりすることもありますし」

--「なるほど、《思案》なんて引いたらすぐ打つものだと思ってました」

土屋「なので盤面を見て『今自分は勝っているのか?負けているのか?』を正確に把握することと、『負けているとしたらこの《思案》で何を引きたいのか?』を具体的にイメージし、それを満たさないなら妥協なくシャッフルすることが重要だと思います。たとえば自分がBUG Delverで相手が『奇跡』なら、序盤は《Hymn to Tourach》以外必要ないので、それがたとえ《秘密を掘り下げる者》《タルモゴイフ》《突然の衰微》みたいなスペル3枚だとしても大体シャッフルしますね」




--「《思案》の打ち方1つでそこまで差があるんですね」

土屋「まあこれは《思案》を使う人の話なんで技術という意味ではほんの一部に過ぎませんが、考え方として、負け目を常に意識するのは大切だと思います。私は昔から《秘密を掘り下げる者》が好きでよく使っているんですが、どちらかといえばコントロール脳ですごく悲観的なプレイヤーなので、ほぼどのタイミングでも『自分は不利なんだ』と思って、どうやったらまくられるのかをケアするようにしています」

--「その心構えがレガシーで勝ちあがるためのコツと言えるわけですね」

土屋「カードアドバンテージが取りづらく、1つのミスで負けやすいレガシーだからこそ、1つ1つの選択の精度を高めることは意識した方が良いですね」



想像力に満ちたプレイで勝ちにいきたい



--「さて土屋さんはこれからレガシー神である川北さんと対戦されるわけですが、まず川北さんというプレイヤーの印象をお聞かせください」

土屋「とにかく手堅いといった印象ですね。攻めも守りも教科書通りというイメージがあります。ですがそれってとても大事なことで、私が崇拝するモダン神の市川 (ユウキ) さんの生放送で学んだことでもありますが、『強さ』とはテクニカルなスーパープレイを目指すことではなく、目の前の盤面通りにやっていくことだと思うんです。【The Last Sun 2015】の決勝戦でのヤソさん (八十岡 翔太) の《突然の衰微》のようなスーパープレイは、盤面に恵まれればその先にあるのかもしれませんが、まずは基本を極めることが大事かなと。その意味で川北さんは基本に忠実で非常に手ごわいですね」

--「なるほど。では次に、今回の第5期レガシー神決定戦はどのような対戦になると思いますか?」

土屋「正直想像してるのは、超相性の悪いデッキを選択されて0-3でボコボコにやられるか、私が本番の空気に呑まれてピヨってしまってミスって『あー1-3で負けたー』というものです(笑) 勝率的には『4 : 6』くらいですかね……」

--「悲観的ですね(笑) 最後に土屋さんとしては、勝つためにどのような点を突いていきたいところでしょうか?」

土屋付け入る隙があるとすれば、プレイングの部分かなと思います。川北さんは『マジックは確率のゲーム』とよく言ってますが、マジックは非公開情報が多くて選択肢が多すぎるので、一手先だけならともかく二手先とか三手先になるともう確率なんて出せないと思うんですよ。そこで大事になるのは、さっきの《思案》の話じゃないですけど、やはり想像力かなと思うんです。情に流されて論理をないがしろにするわけではなくて、論理を省略した直観を得ること、そのためには想像力が不可欠だなと。想像力に満ちたプレイで勝ちにいきたいですね」

--「ありがとうございました」








 やはり土屋も百戦錬磨のレガシープレイヤーだけあって、フォーマットへの理解は極めて深いところまで達しているようだ。

 しかし相手は「最古の神」川北。土屋にも引けをとらない実績があることはもちろん、これまで3度の挑戦を退け、この「神決定戦」の特殊なルールに最も精通している「神」である。

 はたして土屋は親友・斉藤 (伸夫) の仇を討てるのか。土屋の想像力が試される。