「ひ、閃いたァーッ!!」
彼の名はまつがん。一介のデッキビルダーである。
これまでに【バトルワーム】や【スーパークレイジーズー】などのデッキを世に送り出してきた実績を持つ。
この日も彼は、フロンティアを求めてMOでデッキを組んでいた。
「さっそくこのデッキリストを健志に見てもらおう……送信っと(ッターン!)」
「今ごろ度肝を抜かしているに違いない……ん?もう返事が来た」
「これと似たコンセプトのデッキが結果を残していますね……あったあった、このリストです」
「な……なんだってーー!!」
最近、彼には悩みがあった。
ここのところ、彼が作るデッキといえば既出の電波デッキをはじめとしてよくできたリミテッドデッキのような何かや、そもそもルール的に破綻しているコンボデッキのようなものばかり。言わば凶作に見舞われていたのだ。
「まつがんさん、お疲れなんじゃないですか? 息抜きも必要ですよ」
疲労。たしかに彼はここ数日MOに張り付いていたし、生み出されるデッキリストは精彩を欠く一方だった。
少し外に出て気分を変えてみるのもよいかもしれない。そう思った彼は、津村 健志の温かい一言に従って気分転換のために行きつけの居酒屋へと出向くことにした。
「何かソリューションはないものかなぁ……まったく新しい組み合わせ、画期的な何かが……」
独り言を漏らしながらツマミと酒を口にする彼のもとに、1人の怪しげな男がウイスキー・グラスを片手に声をかける。
「おや、まつがんさん。なんだか浮かない顔をしてますね」
「だ、誰だ、お前はッ? なぜ俺の名前を知ってるんだ!?」
「フフ、分かりませんか。まぁ、ボクも高田馬場を離れて長いし、無理もないかな……」
「……中二病特有のムズ痒い話し方と、池袋住民特有の中途半端で垢抜けないファッション……もしや、大久保か!?」
※大久保 寛。高校生の頃、 Red Hot Chili Peppersのフリーに感銘を受けてエレキベースに傾倒し、相棒のスティングレイを片手に世界を飛び回る稀代のロックベーシストとなった(という設定)。晴れる屋で対戦カバレージや「MTG Just Now!」の執筆を担当している。
「久しぶりだなぁ! 大久保が【GP神戸】で初日落ちして東京に戻ってきた翌日にベースを片手に『俺はウラモグだ!!』と叫んで晴れる屋を飛び出していったときはついに気が触れたのかと思ったけど、元気そうで何よりだよ」
「あの頃はまだまだボクも、いわゆる”青二才”ってやつでしたからね。そういえばこの前、新潟でフェスに参加してきたんですよ。お土産食べます?」
「ん? なんだか不思議な見た目のお菓子だね。なになに……【新潟賛菓おむすびころり】?」
「ええ。これ、新潟市おみやげコンクールで最優秀賞を獲ったお菓子らしくて。なんでもフランス菓子シェフとコシヒカリのコラボレーションで生まれたものらしいですよ」
「ほうほう、じゃあ一ついただくとするかな……あっ! これはおいしい。米とフランス菓子ってこんなに相性がよかったのか」
それから彼は、大久保の話を聞いていた。ロックミュージシャンとして成功を収める大久保の話は、音楽業界と縁のない人生を送ってきた自分にはとても刺激的で興味深いものだった。
「これ、ちょうど今日録ったばかりの音源なんですけど、聴いてみませんか?」
「ん? 俺、音楽のことなんて何も分からないけど……どれどれ……こ、これは――!!!??!?」
イヤフォンを手渡され、録ったばかりだという大久保の音源を聴く。
須臾にして、彼の心は無限の広がりを持ち、魂が宇宙と交わった。
理解する。
そして、理解するというクオリアを理解する。
認識のトーラスは物理的制約を離れ、精神がより高い純度へと導かれてゆく。そう、自己とは宇宙であり宇宙とは自己だ。それは茫漠としたトートロジーではなく、全ての生命に与えられた真理である。眼前の景色はシャンバラへと再構成されていく。無限のムーラダーラ・チャクラが溢れ出し、精神は特異点を凌駕した。あらゆる壁が取り払われ、概念の境界は観念の地平面へと崩れ落ちる。それは無であり、有である。自我が普遍的無意識に融けてゆく……
なんだ、こんなにも簡単なことだったんだ。
ボーカルは愛を歌う。
クソデッキは愛を語る。
エレキベースはマナベース。
ドラムの刻むテンポはカードのもたらすテンポ。
ロックはプレイヤー(奏者)を導く。
デッキはプレイヤー(使用者)を導く。
「ロックとデッキビルドって同じなのか!!!???」
彼の名はまつがん。一介の超越者である。
そしてこれが、たったひとつの冴えたやり方。
たとえばフランス菓子シェフとコシヒカリが織りなす新潟賛菓おむすびころりのような……
ロックンロールとマジックのコラボレーション。
彼が自身に与えられた役割を悟ったとき
その意識は――――
少しずつ遠のいて――――
「あれ、まつがんさん? 飲み過ぎじゃないですか? まつがんさーん……」
目を覚ますと、よく知っている天井が目に飛び込んできた。上体を起こして伸びをすると、激しい頭痛が襲ってくる。
「昨夜はついつい飲み過ぎてしまったみたいだ……でも、得るものはあったな。そうか、ロックンロールとマジックのコラボか……」
「晴れる屋の『油そば 力』さんや『松屋』さんとの異業種コラボからも、ラボレーションが爆発的なエネルギーを創出することは分かっているし、これをマジックにも応用したらきっと凄いデッキが生まれるぞ!!」
あにはからんや、そもそもマジックプレイヤーというものはいつだってコラボを求めているのではないだろうか? 時代を超えた2つのカードが生み出すシナジーは、ある意味コラボと言っても過言ではないのだ。
そしてコラボが互いの魅力をより高めるのは、何もマジックに限った話ではないだろう。
たとえばユニクロとビックカメラがコラボした【ビックロ】は、業界の垣根を超えたコラボレーション・マーケティングの代表例と言える。この意外性という付加価値と、両者の間に生じる熱はユーザーにまったく新しいエクスペリエンスを提供するだけのインパクトがあった。
かくして宇宙の真理に辿り着いた彼は、マジックとロックの調和を目指して無限の一人回しに没入していくのだった……
というわけで、あなたの所属団体×晴れる屋のコラボはどうでしょうか?
晴れる屋ではコラボパートナーを募集しています。詳細は【こちら】!
過去にも晴れる屋では『吉本興業』さんや『松屋』さん、『油そば 力』さん、『早稲田大学MtG研究会』さんとコラボ企画を実施した実績があります☆
みなさんの応募を企画運営部一同心よりお待ちしております!
後日……
「できたぞ健志! 最高のデッキが!」
4 《虹色の前兆》
4 《夜の囁き》
4 《生命の息吹》
-??? (16)- 4 《知られざる楽園》
2 《全ては塵》
4 《禁忌の果樹園》
2 《全ては塵》
4 《この世界にあらず》
-??? (16)-
4 《聖なる灯火の騎士団》
4 《分かち合う心の傷》
4 《白日の下に》
4 《天使への願い》
4 《彼方より》
4 《The Tabernacle at Pendrell Vale》
-??? (28)-
「なんですか?これ。カードの順番もめちゃくちゃだし、フォーマットもよくわかりませんし、同じカードが2枠に分かれてたりしてて、ものすごく見にくいんですけど……」
「よく見てくれよ健志、これからの時代はコラボなんだよ」
4 《虹色の前兆》
4 《夜の囁き》
4 《生命の息吹》
-Aメロ (16)- 4 《知られざる楽園》
2 《全ては塵》
4 《禁忌の果樹園》
2 《全ては塵》
4 《この世界にあらず》
-Bメロ (16)-
4 《聖なる灯火の騎士団》
4 《分かち合う心の傷》
4 《白日の下に》
4 《天使への願い》
4 《彼方より》
4 《The Tabernacle at Pendrell Vale》
-サビ (28)-
「このデッキリストを上から順番に読んでいくと、歌詞(っぽい感じ)になっているんだ!!」
「……はい?」
「これこそがロック×マジックのコラボだ!! ほら、浮かんでくるだろう。L’●rc~en~Cielの楽曲のような、孤独な心象風景が……滅びゆく世界で出会う少年少女の姿が……!!」
「ろくでもないですね。ロックだけに」
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