工藤耕一のレガシーユニット概論 第1回 新構築論 ユニットとは?

工藤 耕一


皆様、はじめまして。
このたびhappymtg.comでレガシーの記事を書くことになりました工藤耕一です。

ご存知ない方も多いと思いますので簡単に自己紹介しますと、東京は板橋にて「五竜杯」というスタンダードの大会を開催しています。大会運営するかたわら、プレイヤーとしてもスタンダードからエターナルまで幅広く手を出して活動しています。レガシー的実績は「レガシー選手権’09」Top8、「第2回HOT」優勝。

私はレガシー記事担当ということですので、この連載では皆様に最新のレガシーのデッキ、メタゲームなどを解説する……

のではなく、レガシーというレギュレーションを下地に、「ユニット」という概念、そしてそれを下地としたデッキ分類・構築論に関する記事をお届けします。


■ 既存のデッキ分類が抱える問題点

さて、皆様はデッキを組んだとき、またWebでデッキリストを見たとき、「このデッキは何デッキであるか」をどう説明しますか?
一般的な例を挙げるとすれば、「このデッキは赤緑のビートダウンで、一般的にはステロイドと呼ばれているデッキだよ」といったところでしょうか。

現状、皆様がデッキタイプを分類するときには、デッキの動きから各デッキをビートダウン、コントロール、コンボ……と分類するアーキタイプ分類が一般的です。(他には過去に「フローレス分類」と呼ばれるものがありました。詳しくはこちら。)
これらは、デッキの動きを元に「このデッキは○○デッキである」と判断し、デッキにラベリングすることでカテゴライズを行っています。

また、デッキデザイナーによる命名や、デッキのキーカード名の組み合わせなどから固有のデッキ名が与えられる場合もあります。これもまたラベリングの一種と言え、この場合、「○○というデッキ名=××をするデッキ」と紐づけされ、デッキ名を挙げることでそのデッキの動きも把握することが可能です。前述のステロイドであれば、「ステロイド」=「緑の優秀なクリーチャーと赤の優秀な火力を組み合わせたビートダウンデッキ」と紐づけされています。

アーキタイプベースの分類もデッキ名ベースの分類も基本は同じくラベリングによる分類方法であり、一般的なデッキ分類はこれに基づいて行われています。デッキ分類作業=「ウィニー」「コントロール」「コンボ」「土地破壊」などと書かれている箱をいくつも用意し、デッキを適切な箱の中に入れる作業と想像するとわかりやすいかと思います。

しかしながら、レガシーにおいてはこの旧来のデッキ分類では問題が発生します。

レガシーの膨大なカードプールは環境に多様性をもたらしますが、それゆえにデッキ内の1種類、4枚のカードを入れ替えただけでデッキの動きが大きく変わることも珍しくありません。例えば緑のビートダウンに、《自然の秩序》3枚+《大祖始》1枚を加えるだけで、そのデッキの動き・戦略は大きく変貌します。

ゆえに、レガシー環境には「メインデッキの60枚中56枚のカードが同じだが、動きのまったく違うデッキ」が多く存在します。当然これらは、構成がほぼ同じでありながら動きがまったく違うわけですから、異なるデッキ名が与えられます。例えば、前述の「《自然の秩序》《大祖始》」というユニットがデッキに入った場合、一般的に「NO ○○」というデッキ名になります。

また、「《師範の占い独楽》《相殺》」ユニットが入ったデッキは一般的には「CTG」や「Baseruption」と呼ばれますが、さらにそこに「《直観》《壌土からの生命》+特殊地形」ユニットが入ったデッキは「It’s the Fear」と呼ばれます。

この積み重ねにより、現在のレガシーでは膨大な数のデッキ名が存在している状況です。レガシーのデッキを検索しようとします。happymtg.comのDeck Search画面に行き、レガシーのページを開きます。そしてそこに並ぶ多数のデッキ名の前に呆然としてしまう……皆様も、このような経験が一度くらいあるのではないでしょうか。

これには色々と問題があり、一例としてはデッキの検索性が著しく低くなってしまうことが挙げられます。先ほどの箱の例で言うと、「白緑のビートダウン」というデッキを箱に入れようとしても、「GW Aggro」「Maverick」「Death&Taxes」……と無数の箱があり、どれに入れるか迷ってしまう状態にあります。

また、そのデッキ名ひとつひとつで動きが違うわけですから、デッキ名とデッキの動きの紐づけをきちんと覚えていないと自分の望みのデッキリストにたどり着くことさえ困難です。「Maverick」というデッキ名を見て、その名からデッキの動きが想像できますでしょうか?
GW Aggro」と「Maverick」と「Death&Taxes」がどう違うのか、正しく説明できるプレイヤーがどれだけいるでしょうか?

以上の事例から発生する「レガシーのデッキはすごくたくさん種類があって、しかも複雑な名前がついていてわかりづらい」という印象は、「レガシーはカードプールが広すぎてどんなデッキ組んでいいかわからない」という印象と結びつき、未経験者に対してレガシーの敷居を上げているのではないかと思っています。

そこでいったん従来の考え方を捨て、『デッキの構成要素である「ユニット」という視点からそのデッキを理解し、デッキ内のユニットを個別評価し、その積み重ねをもってどのようなデッキであるかを定義する』というユニット視点ベースの考え方を持つことによって、より簡単により深くデッキを理解できるようになろう、というのが本連載の趣旨となります。


■ユニットとは何か

ではまず最初に、「ユニット」とは何か?
これは非常に単純な話で、簡単に言うと「カードとカードの組み合わせによってひとつの効果として機能するもの」です。例えば「《師範の占い独楽》《相殺》」。例えば「《渦まく知識》+フェッチランド」。

ご存知の方も多いかもしれませんが、前者は「山札の上を操作するカード」と「山札の上を参照するカード」によって、より確実に《相殺》の効果を発揮させ、相手のカードを無駄カードにすることによって、本来どちらのカードでも稼ぐことのできない枚数のアドバンテージを稼ぐようにしています。

また、《渦まく知識》とフェッチランドも、「手札の内容を短期的に整理する」と「ある程度自由に色マナを確保する」という別々の目的のあるカードですが、それぞれの「手札の(不要)カードを山札の上に戻せる」と「土地を探したあとにシャッフルする」という副次的な効果を組み合わせることで、現時点で必要のないカードをしばらく引かないですむように手札のクオリティを高く維持することに貢献してくれます。

これだけみるとシナジーやコンボの類に見えるかもしれませんが、これから語ろうとしていることはそれらをも内包したさらなる上位の概念です。

前述のふたつの例を、このように細分化して見た場合、《師範の占い独楽》《渦まく知識》が「山札の一番上を操作する」という点で互換性があることに気がつくのではないでしょうか。もちろん、フェッチの恩恵を最大に受けられるのは手札のカードを戻せる《渦まく知識》ですし、《相殺》の恩恵を最大に受けられるのは繰り返し使える《師範の占い独楽》です。しかし、《師範の占い独楽》《渦まく知識》が相互的に利用できるタイミングがあることで、そのポテンシャルはさらに高くなりますし、実際これらはすべて組み合わせて使用されることも少なくありません。いわゆる「カウンタートップ系」と呼ばれるデッキですね。

「そんなことは言われなくても知っている」と思う方もいるかもしれませんが、改めてこのように持っている要素を分析し体系化することは、デッキの理解やデッキの構築に大きく貢献します。

例えば、大昔のカードですが「カウンターポスト」において《渦まく知識》《Thawing Glaciers》が手札の質を保つために使われていたことを知っていれば、同じ役割のカードであるフェッチの動きにいち早く気がつくことができたかもしれません。同じく、《渦まく知識》で時間を稼ぎつつ、最終的には山札の上に《ドラコ》を積み込んで《うつろう爆発》させる「ドラコ爆発」というデッキを知っていれば、《相殺》が出たときにも運用法にいち早く気がつけたでしょう。

さらに、これらは「手札の質を上げたり枚数を稼いだりする」という働きを持ち、また、その働きしか持たない(つまり盤面に影響を与えない)ことを知っていれば、これらのコンボで上げるべき「質」のカードは、盤面に影響を与えるカードであることも理解できるでしょう。単純なコントロールよりも、クロックを用意したデッキに「カウンタートップ系」のシステムが採用される理由がこれです。

《師範の占い独楽》《相殺》」「《渦まく知識》+フェッチランド」という盤面に影響しない、しかしながら大きくリソースアドバンテージを取れるユニットの組み合わせ。そこに盤面に大きな影響を与える《タルモゴイフ》《ロウクスの戦修道士》などの「単体で盤面を掌握できるクリーチャー」を組み込むことで、ひとつのデッキ「CTG」へと至るわけです。(なお、「単体で盤面を掌握できるクリーチャー」は、それ単体や2スロット分をまとめてひとつのユニットとしてみなすことができます。この話に関しては次回以降どこかで取り上げたいと思います。)

このように、体系的にカード同士の相互作用を理解することでマジックへの理解をより深めることができます。


■ユニット視点でデッキレシピを読み解く



Alex Hon「バント石鍛冶」
StarCityGames.com – Legacy Open 2012/02/19(7位)

1 《森》
1 《島》
1 《平地》
3 《Tropical Island》
3 《Tundra》
1 《Savannah》
4 《霧深い雨林》
4 《吹きさらしの荒野》
1 《Karakas》
3 《不毛の大地》
1 《Maze of Ith》

-土地(23)-


4 《貴族の教主》
4 《石鍛冶の神秘家》
4 《聖遺の騎士》
2 《ヴェンディリオン三人衆》

-クリーチャー(14)-
4 《渦まく知識》
4 《剣を鍬に》
3 《呪文嵌め》
2 《目くらまし》
4 《Force of Will》
1 《梅澤の十手》
1 《光と影の剣》
1 《殴打頭蓋》
3 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(23)-
3 《流刑への道》
3 《呪文貫き》
2 《トーモッドの墓所》
2 《クローサの掌握》
2 《神の怒り》
1 《ボジューカの沼》
1 《大祖始の遺産》
1 《漁る軟泥》

-サイドボード(15)-
hareruya


一般的な形の「バント石鍛冶」デッキです。レガシープレイヤーの皆様には今さら説明することではないですが、いわゆる「クロックパーミッション」に分類されるデッキです。

このデッキをユニット視点で見ていくと、
《石鍛冶の神秘家》+装備品」ユニット
《ヴェンディリオン三人衆》《聖遺の騎士》といったバントカラーの優秀なクリーチャー
《剣を鍬に》《Force of Will》といった優秀な妨害


また、これらのユニットの潤滑油として、
《渦まく知識》+フェッチランド」ユニット
《聖遺の騎士》+特殊地形」ユニット

が採用されています。

従来のデッキタイプ分類は、例えば「バント石鍛冶」デッキをカテゴライズする場合、
『「クロックパーミッション」→「バントカラー」→「バント石鍛冶」』
というふうに、大項目から順にツリー状に分岐していくトップダウン型の視点であると言えます。

これに対し、ユニット中心の視点からは、
『「石鍛冶」ユニット+「軽量クロック」+「カウンター」=「バント石鍛冶」』
とカテゴライズされます。個々の小項目を積み上げていくボトムアップ型の視点と言えるでしょう。




Darin Minard「白青石鍛冶」
StarCityGames.com – Legacy Open 2012/03/11(10位)

3 《島》
1 《平地》
4 《Tundra》
4 《溢れかえる岸辺》
2 《霧深い雨林》
2 《沸騰する小湖》
1 《Karakas》
3 《ミシュラの工廠》
3 《不毛の大地》
1 《激浪の研究室》

-土地(24)-


4 《瞬唱の魔道士》
4 《石鍛冶の神秘家》
3 《ヴェンディリオン三人衆》

-クリーチャー(11)-
4 《渦まく知識》
4 《剣を鍬に》
3 《呪文嵌め》
1 《撹乱》
2 《対抗呪文》
4 《Force of Will》
1 《梅澤の十手》
1 《饗宴と飢餓の剣》
1 《殴打頭蓋》
3 《精神を刻む者、ジェイス》
1 《遍歴の騎士、エルズペス》

-呪文(25)-
3 《流刑への道》
3 《外科的摘出》
3 《暖気》
2 《解呪》
2 《神の怒り》
1 《世界のるつぼ》
1 《遍歴の騎士、エルズペス》

-サイドボード(15)-
hareruya


では、こちらの「白青石鍛冶」デッキと最初の「バント石鍛冶」デッキを見比べてみましょう。このふたつのデッキは「《石鍛冶の神秘家》+装備品」という同一のユニットを持ちながら、そのデッキの動きはまったく違います。

バント石鍛冶」デッキでの「《石鍛冶の神秘家》+装備品」ユニットは、相手によって適切な装備品をサーチしてくることによる柔軟性と、適切な装備品によって盤面に影響力をもたらすことを目的として投入されています。また、「《石鍛冶の神秘家》+装備品」ユニット以外のユニットは優秀なクロックと妨害要素になっており、クリーチャーのクロックを妨害要素によってバックアップしダメージレースで勝利することを目指した構成になっています。

《石鍛冶の神秘家》+装備品」ユニット→汎用性
《ヴェンディリオン三人衆》《聖遺の騎士》→優秀なクロック
《剣を鍬に》《Force of Will》→妨害要素、クロックのバックアップ
《渦まく知識》+フェッチランド」ユニット、「《聖遺の騎士》+特殊地形」ユニット→デッキの潤滑油


それに対し「白青石鍛冶」デッキの「《石鍛冶の神秘家》+装備品」ユニットは、どちらかと言うと《殴打頭蓋》という対処のしづらいフィニッシャーをサーチし、またそれを《石鍛冶の神秘家》の能力でマナコストを踏み倒し、《石鍛冶の神秘家》自体のマナコストの軽さを生かして序盤から展開する、ということを主な目的として投入されています。

また、「《石鍛冶の神秘家》+装備品」ユニット以外では、「バント石鍛冶」デッキより多めの妨害要素と、それを使いまわせる《瞬唱の魔道士》が採用されています。これらの妨害要素は主に相手のクロックの妨害を目的に投入されています。「バント石鍛冶」デッキよりも長期戦を目指し、相手のクロック制御とカードアドバンテージに寄せた構成になっているといえます。

《石鍛冶の神秘家》+装備品」ユニット→フィニッシャー(《殴打頭蓋》)のサーチ、マナコストの踏み倒し
妨害要素ユニット→相手のクロックの妨害
《瞬唱の魔道士》→妨害要素の使いまわし
《渦まく知識》+フェッチランド」ユニット→デッキの潤滑油


《石鍛冶の神秘家》+装備品」ユニットそのものの持つ役割と、それ以外のユニットが求める立ち回りがそれぞれ「バント石鍛冶」デッキと異なるため、デッキ全体の動きも異なるものになっています。

このように、ユニットを軸にした見方をすることで、デッキを構造的に分析することができるようになります。




Hayashi Hiroki「チームアメリカ」
AMC – 第109回(2位)

4 《Underground Sea》
2 《Bayou》
4 《汚染された三角州》
3 《新緑の地下墓地》
2 《血染めのぬかるみ》
1 《湿地の干潟》
3 《不毛の大地》

-土地(19)-


4 《秘密を掘り下げる者》
4 《タルモゴイフ》
4 《墓忍び》

-クリーチャー(12)-
4 《渦まく知識》
3 《思案》
3 《もみ消し》
3 《思考囲い》
2 《暗黒破》
4 《Hymn to Tourach》
3 《目くらまし》
3 《Sinkhole》
3 《殺し》
1 《破滅的な行為》

-呪文(29)-
3 《外科的摘出》
3 《Force of Will》
2 《トーモッドの墓所》
2 《呪文貫き》
2 《燻し》
2 《非業の死》
1 《破滅的な行為》

-サイドボード(15)-
hareruya


こちらは標準的と言える構成の「チームアメリカ」です。こちらもいわゆる「クロックパーミッション」に分類されるデッキです。

さて、この「バント石鍛冶」と「チームアメリカ」のふたつのデッキ。どちらのデッキも各色の優秀なクリーチャーを妨害要素ユニットでバックアップする構成になっています。

バント石鍛冶」デッキは「《石鍛冶の神秘家》+装備品」ユニットによって相手に応じ適切な装備品をサーチしてくることが可能であり、色々なデッキに対応できるようにデッキに柔軟性を持たせようとしています。

《石鍛冶の神秘家》+装備品」ユニット→汎用性
《ヴェンディリオン三人衆》《聖遺の騎士》→優秀なクロック
妨害要素ユニット→クロックのバックアップ
《渦まく知識》+フェッチランド」ユニット、「《聖遺の騎士》+特殊地形」ユニット→デッキの潤滑油


それに対し「チームアメリカ」は《思考囲い》《Hymn to Tourach》といった手札破壊や、《Sinkhole》《もみ消し》といった土地破壊など、より幅広い役割を持つカードを投入し、それらを潤滑油となっているユニットを駆使し適切なタイミングで使用することで、同じく色々なデッキに対応できるようになっています。(正確には「対応」というよりは、よりアグレッシブに相手に応じた適切な「妨害」が可能であり、それによって色々なデッキに有利に戦うことができます。)

《秘密を掘り下げる者》《墓忍び》《タルモゴイフ》→優秀なクロック 妨害要素ユニット(除去、カウンター、手札破壊、土地破壊)→クロックのバックアップ
《渦まく知識》+フェッチランド」ユニット→デッキの潤滑油


このふたつのデッキは色も構成要素も異なりますが、デッキの基本思想自体は非常に似ていると言えるでしょう。

これらの分析自体は皆様が普段デッキリストを見たときに無意識に行っていることであり、特別目新しいことではありません。しかしながら、その分析は今までのデッキカテゴライズ論を前提とした分析であるはずです。

ユニットという価値観を前提として従来とは異なる視点から同様の分析を行うことで、これまでのデッキカテゴライズ論では曖昧であったり暗黙の了解として流されていたりしたことを、より論理的に分析することが可能になります。個々のユニットの動きを理解し、ユニットの積み重ねをもってデッキとみなす――それこそが、ユニット論のキモと言えるでしょう。


■ユニットの評価

デッキに入っているユニットによってデッキの動きを構造的に把握する、というのがユニット論のキモであるという点は既にお伝えしました。これをするためには、まずは個別のユニットの内容評価を行うことが必要不可欠になります。「ユニットとは何か」の項でお話しした通り、個別のユニットの振る舞いや相互関係を体系化していくことで、デッキの動きをより正確に把握できるようになります。

体系化のためにユニットを評価する必要があるわけですが、この連載記事ではユニットを評価するために、ユニットに6つのパラメーターをつけようと思います。各パラメーターの項目を、いくつか例を挙げ簡単に説明します。

【勝利貢献度】→ゲームの勝利にどれくらい貢献できるか
マジックにおいて、(一般的には)ゲームに勝利するためには相手のライフを0にする必要があります。このパラメーターは、相手のライフを0にするため、また自分のライフが0になるのを防ぐためにどれだけ貢献するか、もっと言えば盤面にどれだけ影響を与えられるか、というパラメーターになります。「ユニットとは何か」の「CTG」の例でも挙げた、《タルモゴイフ》などの単体で盤面を支配できるほどの高コストパフォーマンスクリーチャーは高い勝利貢献度を持つと言えます。

【リソース貢献度】→勝利に直接貢献しないリソースをどれくらい確保できるか
盤面に影響を与えるためには、リソースを脅威として変換する必要があるわけですが、そのためにより多くのリソースを稼ぐ必要があります。「《渦まく知識》+フェッチランド」ユニットは、手札の枚数こそ増えていませんが、手札のクオリティを大幅に向上させることができます。また、「《師範の占い独楽》《相殺》」ユニットも、相手の手札の多くを無駄カードにすることで、潜在的にアドバンテージ差をつけることができます。

【親和性】→他のユニットの能力をどれだけ引き上げる可能性があるか
デッキ内にはいくつものユニットが組み込まれることになりますが、あるユニットが他のユニットとどれだけ相互作用を持ちやすいか、というパラメーターになります。「《師範の占い独楽》《相殺》」ユニットも、「《渦まく知識》+フェッチランド」ユニットも、前者は山札の上を入れ替えるカードが、後者は山札をシャッフルするカードがそれぞれその代替になります。そのような効果を持つカードが多数存在し、互換が利くこれらのユニットは親和性が高いユニットであると言えます。

【独立性】→デッキ全体の構成をどれだけ制限しないか
ユニットの中には、そのユニットを組み込むことでデッキ全体の構成に影響を与えるものがあります。既に何度も例に挙がっている「《渦まく知識》+フェッチランド」ユニットは、極端な話をすれば《島》が入るデッキであればすべてのデッキに投入可能であり、デッキの他のパーツに依存している部分が少ないため、独立性は非常に高いと言えます。
逆に、例えば「《電結の荒廃者》《大霊堂の信奉者》」ユニットは、能力のコストのためにデッキの中に多数のアーティファクトを入れることを要求されます。デッキの他のパーツに依存し、デッキ構築に制限を与えてしまうこのユニットは、独立性が低いと言えます。

【ボリューム】→直接的にどれくらいデッキ内のスロットを使用するか
いわゆる「デッキのスロットを何枚使うか」ということです。「《師範の占い独楽》《相殺》」は4+4で8枚、「《渦まく知識》+フェッチランド」は4+4~8の8枚~12枚程度のボリュームになります。ここで挙げる数字は絶対的なものではなく、あくまで目安となる枚数になります。
また、親和性、独立性が高いユニットは多少ボリュームに融通を利かせることができます。これについては、次回に掘り下げて説明させていただきます。

【副次効果】→本来求めている目的以外に果たしてくれる役割
ユニットが本来目指している効果に加えて、副次的にメリットを得ることがあります。「《Helm of Obedience》《虚空の力線》」ユニットが入っているデッキ、いわゆる「ヘルムヴォイド」と呼ばれるデッキは、この2枚を揃えて《Helm of Obedience》を起動することで相手の山札をすべて追放することができます。
それと同時に、デッキに《虚空の力線》がメインから投入されることになるため、勝ち手段と同時に相手の墓地利用カードへの対策も行っています。


これら6つのパラメーターをもって、ユニットがどのような役割を持つかを評価づけしていきます。

次回は、具体的に各パラメーターがどのようなことを表しているか、パラメーターごとの代表的なユニットを例示すると共に、各項目のより詳細な説明をしていきたいと思います。