あ、折れた。何かが……折れた。
皆さんMTGをやっている中でこのような経験をした事はありませんか? 大抵このようになる時は、「負けが込む」だったり「事故が連続する」だったりというパターンが多いと思います。その時に皆さんはどのような行動をしますか?
行動パターンA. 『ちくしょーなんでだー!』
何故自分にこのような不幸が訪れるのかを分析するでもなく、怒りに置き換えてごまかそうとするタイプです。この場合、気持ちの踏ん切りがつくかもしれませんが、それだけでは前に進まないので、冷静になった後はしっかり反省点を見つけるよう努力しましょう。
行動パターンB. 『かえろかえろ』
MTGのモチベーションがだだ下がり、非常に疲れたような感覚を覚えます。しばらくMTGはいいかな、なんて恰好つけた態度をとってしまうかもしれません。しかしあなたとMTGは切っても切れない間柄。そんな態度をとるとMTGに嫌われてしまいます。すぐにでもまたMTGをやりましょう。
行動パターンC. 『反省する者は強くなる』
理不尽な事故による敗北。MTGにはつきものですが、案外そうでもない負けもそこら中にころがっています。普段から反省する癖をつけておく事で、敗北から様々な情報を得る事ができます。
この記事を書く際に作ったスタンダードデッキの調整中に、僕はこの行動パターンを全て網羅しました。それでは一体何故そのような事になったのか……? 詳しく説明させていただきます。
1. 何故行弘はスランプに陥ったのか?
3 《平地》 2 《島》 4 《神聖なる泉》 4 《蒸気孔》 4 《氷河の城砦》 4 《硫黄の滝》 4 《断崖の避難所》 -土地(25)- 4 《瞬唱の魔道士》 4 《修復の天使》 1 《静穏の天使》 -クリーチャー(9)- |
3 《本質の散乱》 3 《アゾリウスの魔除け》 3 《拘留の宝球》 3 《至高の評決》 4 《スフィンクスの啓示》 3 《イゼットの魔除け》 3 《思考を築く者、ジェイス》 2 《アゾリウスの魔鍵》 2 《イゼットの魔鍵》 -呪文(26)- |
-サイドボード(0)- |
今回僕は記事を書くにあたって、2つのデッキを作りました。この1つ目のデッキは僕の中で非常に満足いくものでした。地元の店舗大会では常に上位成績だし、デッキの構成も僕好みでした。
しかし、ラヴニカへの回帰ゲームデイを境に何かがおかしいと感じ始めます。2回参加した内、1回目はTOP8に残ったものの、スイスラウンドは土地詰まり2回で1マッチ落とし、シングルエリミネーションは土地引きすぎて負けの1没。この際、僕は行動パターンA.『ちくしょーなんでだー!』状態でした。デッキの構成は悪くない。悪いのは運だ、と。
2回目のゲームデイは初戦を落とし、そこから2連勝するものの、4回戦目で負け2-2というなんともつまらない成績で終わりました。この時点で僕は未だデッキに対してなんら違和感を持っていませんでした。負けたのは事故のせいだと本気で信じていたのです。この時の僕は行動パターンB.『かえろかえろ』状態でした。これらの出来事が1日の間に行われた為、急に疲れを覚えてすぐに帰って不貞寝しました。
そしてその2~3日後にMOで同じデッキを組み、2人構築で対戦を繰り返してみましたがあまり良い結果は出ず、勝率は良くて5割という所です。そして決定的にこのデッキが良くないものだと気付いたのは、同型でこのデッキより完成度が数段上のデッキと当たった時です。ボコボコにやられてしまい、その時初めて「あ、このデッキもしかして弱い……?」と感じる事ができたのです。ここでようやく僕は行動パターンC.『反省する者は強くなる』を実行する事ができました。
何故ここまでの長い時間、反省する事ができなかったのか。それはデッキが強いという「慢心」と、マリガンによる負けが多いという「運の偏り」のせいにし、敗北と向き合わなかったからです。これらは行動パターンC.『反省する者は強くなる』を早期に実行できていればすぐにでも気が付いた事。実際にこのデッキは何が悪かったのでしょうか?
2. 反省しよう
まずこのデッキのコンセプトは、序盤は《本質の散乱》《アゾリウスの魔除け》《イゼットの魔除け》で捌き、《アゾリウスの魔鍵》《イゼットの魔鍵》でマナブースト、そこから《スフィンクスの啓示》に繋げて大量にドローし、《至高の評決》等で盤面をコントロールしながら《修復の天使》や《イゼットの魔鍵》等で殴りきる、というものです。
一見すると強いカードがたくさん入っているのでデッキもそれなりに強そうに見えるのですが、実際にはこのデッキ、いくつかの欠陥があります。
欠陥A. デッキ全体が重い
デッキ全体をよく見直してみるとデッキが重すぎますね。環境序盤はカードパワーだけで勝てるかもしれませんが、デッキが洗練されていくと環境はより速くなっていくもの。現在のメタゲームではその速さにデッキコンセプトが見合っていません。更に、マナコストが全体的に重いせいで、土地が3枚で詰まってしまうと基本的にやる事がありません。その癖に土地は25枚しか入っていないという謎仕様。それは事故も引き起こしますね。
欠陥B. 土地の枚数が少ない
これは欠陥A.でも触れましたが、デッキのマナコストに対して土地の枚数が少ないです。魔鍵が4枚入ったデッキの構成上、スペルを削るとリソースが足りない不安があったため土地は25枚にしていたのですが、実際には土地1枚と何かスペルを1枚削って《僻地の灯台》を2枚採用して、マナフラッドにも対応できる形にした方が良かったです。
現在のスタンダード環境はボードコントロールしようとしても、《スラーグ牙》や《大軍のワーム》、《静穏の天使》等のコントロール泣かせなカード群のせいで、同じリソースの枚数で勝負したら、いつかはジリ貧で負けてしまいます。そうしないために4枚《スフィンクスの啓示》を採用してリソースの勝負では負けないようにしたつもりだったのですが、逆に言えば《スフィンクスの啓示》を引かないと勝てません。マナフラッドした時によく「《スフィンクスの啓示》引けば勝ってたのに……」と思っていましたが、逆に言えばそれを引かないと勝てないデッキ、という事になります。
欠陥D. 構成が中途半端
環境初期のデッキだけあって、何に勝ちたいかが分からないデッキ構成になっています。ただひたすら丸いカードを詰め込んだだけの凄く中途半端なデッキですね。そのせいでボードもいまいちコントロールできない、高速に殴りきる事もできないと、なんとも勝ち筋が中途半端なデッキになっています。現在のある程度環境が固まりつつあるメタゲームに合わせて、仮想敵を明確に見据えたデッキ構築をするべきですね。
3. そして出来たデッキがこちら
5 《島》 2 《山》 2 《神聖なる泉》 4 《蒸気孔》 3 《氷河の城砦》 4 《硫黄の滝》 4 《断崖の避難所》 2 《僻地の灯台》 -土地(26)- 4 《ゴブリンの電術師》 4 《瞬唱の魔道士》 3 《修復の天使》 -クリーチャー(11)- |
3 《熟慮》 3 《中略》 4 《雲散霧消》 4 《巻き直し》 4 《火柱》 1 《ミジウムの迫撃砲》 1 《小悪魔の遊び》 3 《スフィンクスの啓示》 -呪文(23)- |
2 《聖トラフトの霊》 2 《払拭》 2 《否認》 2 《ミジウムの迫撃砲》 4 《轟く激震》 2 《拘留の宝球》 1 《スフィンクスの啓示》 -サイドボード(15)- |
前回の構成では打ち消しの枚数が少なかったために、1枚でもカードを通してしまうと途端に後手に回る展開でジリ貧になっていたのですが、打ち消しの枚数を増やす事でそういった展開を防げるようにしました。その分メインボードは「赤単」や「ゾンビ」等のビートダウンへの耐性が若干下がっているので、サイドに《轟く激震》と《ミジウムの迫撃砲》を多く取る事でサイドボード後は有利になるようにしています。
各種の欠陥は、以下の修正で対応しました。
欠陥A. デッキ全体が重い→解決策
《思考を築く者、ジェイス》、《静穏の天使》を抜き、《スフィンクスの啓示》を減らす事で対応。
欠陥B. 土地の枚数が少ない→解決策
これはデッキ全体を軽くすることである程度緩和しました。更に土地を1枚追加しているので、問題点は完全に解消されていると思います。マナフラッドしても困るので、増やす土地は《僻地の灯台》。
欠陥C. 《スフィンクスの啓示》に頼りすぎ→解決策
《スフィンクスの啓示》は序盤に複数枚引いても困るので、《熟慮》を入れる事でアドバンテージの面は解消しました。更に言えば中盤以降《スフィンクスの啓示》をしっかり引き込めるようにしました。
欠陥D. 構成が中途半端→解決策
これは仮想敵として「ジャンド(→デッキリスト)」、「トリコロール(→デッキリスト)」、「リアニメイト(→デッキリスト)」を想定してカウンターを多めに採用する事で、デッキのやりたい動きをしっかり確立できたと思います。
メインの勝ち筋が細いように見えますが、相手の呪文をほぼ全てシャットアウトするのがコンセプトなので、この細いクロックでも十分殴りきる事ができます。一応簡単に勝つプランも欲しいので、1枚だけ《小悪魔の遊び》を採用しています。
《中略》のXが多くなる事でカウンターしやすくなりますし、何より相性が良いのが《巻き直し》です。土地が4つアンタップするので、実質1マナ増えます。更にその増えたマナとXが少なくなった《スフィンクスの啓示》が合わさったら……? 大量ドローと大量ライフゲイン、更にそこから無限のように降ってくるカウンター呪文。対戦相手にとっては悪夢以外の何ものでもありませんね。
その《巻き直し》は、重いだけあって非常に良い働きをしてくれます。起こしたマナから《修復の天使》を出してもいいですし、《熟慮》や《僻地の灯台》の起動と、やる事はたくさんあります。前述した《スフィンクスの啓示》との相性も良いですね。1ターンに2回カードをプレイされて、2回目をカウンターできなくて負け、といった心配も無くなります。
サイドボードの《払拭》は、打ち消し呪文や、《スフィンクスの啓示》が入っているような相手にサイドインします。《否認》はコントロール相手にサイドインします。「ジャンド」の《原初の狩人、ガラク》と《ラクドスの復活》がきついので、ジャンドにも入れましょう。
《ミジウムの迫撃砲》は白緑系のビートダウン、その他ビートダウン全般にサイドインし、《轟く激震》は「赤単」「ゾンビ」にサイドインしましょう。マナクリーチャーが多い型の白緑にもサイドインしていいですね。《拘留の宝球》は追加の《火柱》のような感覚で、ビートダウンに対して非常に丸い除去なので、ビートダウン全般にサイドインしましょう。
《スフィンクスの啓示》の追加は、サイド後の消耗戦を見据えてです。なので基本的にはどのマッチアップでもサイドインすると思っていただいて構いません。ただし《魂の洞窟》を大量に採用しているマッチアップとは消耗戦にならないので、そういう相手にはサイドインする必要はありません。
《聖トラフトの霊》は除去が多い「ジャンド」や、相手のデッキに《聖トラフトの霊》が入っている場合にサイドインします。《魂の洞窟》を採用しているような相手には積極的に殴らないと勝てないため、こちらにもサイドインします。
「ラヴニカへの回帰」が発売して、もう1か月以上が経ちますね。環境が固まりつつある中で、様々な経験をして今回のデッキを作り上げる事ができました。日々進化していくスタンダードの環境に適応していく為に、皆さんも敗北から何かを反省し、学んでみるとまた新たな発見があると思います。
それでは皆さん最後まで記事を読んでいただきありがとうございました。また次回の記事でお会いしましょう。それでは!