スタンダードにおけるヴァラクートを知る(後編)~新たなるファイレクシア発売後の様々な変化~

斉田 逸寛



皆さんお久しぶりです。斉田です。今回は予告どおり「新たなるファイレクシア」が発売した後の新デッキ、強化されるデッキとヴァラクートのサンプルデッキを紹介したいと思います。新たなるファイレクシアの発売日の13日に掲載されると聞いているので、新カード購入時の参考になれば嬉しいです!

今回新たなるファイレクシアのカードで僕が最も注目してるのはこの3枚です。メタゲームに大きな影響を与えると思われる3枚のカード達。これらのカードを上手く運用出来るデッキが今後生き残ると言っても過言ではないと思っています。


戦争と平和の剣内にいる獣詐欺師の総督

ということで、これらのカードを活用できそうなデッキを紹介していきたいと思います!


1-1.新環境カード満載!《欠片の双子》コンボデッキ!


まずは新《やっかい児》こと《詐欺師の総督》と、早くも値段が高騰している《欠片の双子》を使ったコンボデッキの紹介です。津村さんが「第53回:いよいよ発売!新たなるファイレクシアの与える影響」で紹介しているので、デッキの動き等はこちらをご覧下さい。




Paulo Vitor Damo da Rosa「PesterTwin」

5《島》
5《山》
4《ハリマーの深み》
4《沸騰する小湖》
2《乾燥台地》
2《広漠なる変幻地》

-土地(22)-


4《呪文滑り》
4《詐欺師の総督》

-クリーチャー(8)-
4《ギタクシア派の調査》
4《定業》
4《乱動への突入》
3《先読み》
3《マナ漏出》
2《紅蓮地獄》
4《欠片の双子》
2《ジェイス・ベレレン》
3《精神を刻む者、ジェイス》
1 (不明)

-呪文(30)-



-サイドボード(15)-
hareruya



PV製のリストが載っていたので僕もこのリストで試してみました……が、問題点が多かったので僕なりに改良しました。

まず僕がこのPV製リストを組んで真っ先に感じたことは、「サーチカードが少ない」ということです。純正コンボデッキなので《詐欺師の総督》《欠片の双子》を付ける以外勝ち手段がありません。なのでまずこの2種がハンドに来ないとお話にならないのです。しかしサーチカードは《定業》《先読み》しか入っていません。

《稲妻》《乱動への突入》で時間稼ぎをしながらコンボパーツを探すという方向性なのですが、これではターンを引き伸ばすだけで、肝心のコンボパーツを探すというアクションを満足な回数取ることができず、根本的に問題を解決していません。

もちろん《精神を刻む者、ジェイス》という強力なドローサポートはありますが、そこに頼りすぎない構成が理想であると僕は考えます。理由としては以下のようなものがあげられます。


1.まず最初に、ジェイスゲー(ジェイスを場に残す)を制さなくてはいけなくなる。
2.このデッキはアドバンテージを取らなくても勝てる。
3.《戦争と平和の剣》《内にいる獣》の影響で、プレインズウォーカーが倒されやすい環境に変わる可能性が高い。

ということで、改良されたリストがこちらです。こっちのリストの方が強いです!打倒PV(笑)



1-2.PVとはここが違う!!




Toshihiro Saida「UR_Deceiver-twin」

7《島》
6《山》
4《ハリマーの深み》
4《沸騰する小湖》
1《霧深い雨林》
1《乾燥台地》

-土地(23)-


4《詐欺師の総督》
2《呪文滑り》
or(《占いフクロウ》)

-クリーチャー(6)-
4《ギタクシア派の調査》
4《定業》
4《呪文貫き》
3《払拭》
4《先読み》
4《貫く幻視の祭殿》
4《欠片の双子》
4《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文(31)-



-サイドボード(15)-
hareruya




貫く幻視の祭殿払拭

何か優秀なサーチカードは無いものかと探していたときに、友人である海老江 邦敬さんから教えて頂いたのが《貫く幻視の祭殿》でした。

このデッキで使うとスペルを唱えるたびにカウンターが乗るとほぼ同意なので、置いたターンから3~4ターン後には8~10個程カウンターが貯まります。掘れる枚数が多く、軽いのでキープ基準にもなります。後半引いたら弱いのでは?と思うかもしれませんが、確かに序盤ほど強力ではありません。しかし、元々《定業》《先読み》《ギタクシア派の調査》は手札が減らないので、このデッキはいつでも青いスペルがある程度手札にあるケースが多く、いつ引いても4~5個程度のカウンターはすぐに貯められます。4マナで6枚掘れる《予感》と比べても、ターンは少しかかるものの、先述したように、手札を増やす事に重きを置いていないデッキなのでアドバンテージは必要ありません。その分軽く、よりたくさん掘れる可能性のあるこのカードの方が優秀であると言えます。

さらに欠かせないのが《払拭》。例えばこのデッキがCaw-Goと対峙したとき、Caw-Go側はある程度のクロックができたらあとは《欠片の双子》だけ絶対に通されないようにと常に構えてくるようになります。その際《呪文貫き》だけでは相手は簡単にマナを払えてしまうので、無理矢理コンボをねじ通すために採用しています。今後よく見かけるであろう《内にいる獣》も打ち消せるのでかなり優秀です。そもそも《詐欺師の総督》が瞬速を持っているので、ソーサリータイミングのクリーチャー/エンチャント対策のカードがあまり効果的ではありません。そういった点からも、このカードは環境的にも、デッキとの相性的にもとても良いものだと自信を持って言えます。

以上2点がPV製との大きな違いです。

ちなみにサイドボードは《稲妻》《瞬間凍結》などお決まりのものから、ハンデスと速いデッキに弱いので《精神的つまづき》なども候補に挙がると考えられます。また、このデッキ自身も《呪文滑り》に弱いデッキなので、アーティファクト対策も入れておいた方が良いでしょう。


2.大幅強化!緑単エルドラージ!




Toshihiro Saida「MonoGreen-Eldrazi」

14《森》
4《エルドラージの寺院》
4《地盤の際》
2《カルニの庭》
1《ウギンの目》
1《惑いの迷路》

-土地(26)-


4《ジョラーガの樹語り》
4《草茂る胸壁》
4《原始のタイタン》
1《テラストドン》
2《無限に廻るもの、ウラモグ》
1《引き裂かれし永劫、エムラクール》

-クリーチャー(16)-
4《探検》
4《成長の発作》
4《内にいる獣》
2《緑の太陽の頂点》
4《召喚の罠》

-呪文(18)-



-サイドボード(15)-
hareruya



大幅強化!と銘打ったものの、入るのは《内にいる獣》のみです。しかしこの《内にいる獣》がとにかく強い。完全にぶっ壊れてます。個人的には《戦争と平和の剣》《殴打頭蓋》を抑えて新環境期待度1位ですね。

今まで緑単エルドラージはヴァラクートに相性が悪く、また環境トップメタの《饗宴と飢餓の剣》に弱いことからGPなど大きな大会で結果を残せていませんでした。しかし《内にいる獣》はこれら両方に耐性をつけてくれます。

ヴァラクートには《カルニの心臓の探検》を割ったり、《砕土》が打てないときに土地を割るだけでも十分強いです。Caw-Goには《饗宴と飢餓の剣》を割ったり、相手が2マナたてて《マナ漏出》を構えてエンドしたところでその土地割ったり、挙句に《原始のタイタン》《精神を刻む者、ジェイス》も倒せて…うん、ぶっ壊れてますね(笑)

インスタントでなんでも壊せるこのカードが弱いわけはないのですが、より有効活用するには唯一のデメリットである、相手に渡してしまう3/3トークンをいかに無力化できるかという点に焦点があたります。緑単エルドラージには《草茂る胸壁》が入っているのでナチュラルにケアできていると言えるでしょう。《無限に廻るもの、ウラモグ》等の大型クリーチャーにつながってしまえば、既に3/3等歯牙にもかけない存在なので、勿論気にする必要はありません。

またこのデッキに限らず、緑が入っているデッキを相手にする場合、3マナあればインスタントタイミングで何でも割られる可能性があることを考えなくてはいけなくなります。そういった意味でも《内にいる獣》が環境に与える影響は大きいと考えられます。

サイドボードにはこちらもお決まりの速いデッキに《強情なベイロス》や各種剣や先述した《欠片の双子》に有効な《帰化》系のカード。新セットからは《解放された者、カーン》が候補ですね。打点の低いデッキ相手には活躍が見込めそうです。


3.トップメタは動かない?!最新版Caw-Go!




Toshihiro Saida「Caw-Go_sample」

5《島》
5《平地》
4《天界の列柱》
4《金属海の沿岸》
4《氷河の城砦》
4《地盤の際》

-土地(26)-


4《石鍛冶の神秘家》
4《戦隊の鷹》

-クリーチャー(8)-
4《定業》
4《呪文貫き》
3《蒸気の絡みつき》
3《マナ漏出》
1《饗宴と飢餓の剣》
1《戦争と平和の剣》
1《殴打頭蓋》
2《審判の日》
4《精神を刻む者、ジェイス》
3《ギデオン・ジュラ》

-呪文(26)-



-サイドボード(15)-
hareruya



こちらもmtg-jpで津村さんが紹介しているので僕からは1つだけ。公式にもある通り《戦争と平和の剣》はかなり打点が高く、構築の段階である程度工夫しなくてはいけません。

最初は僕も《転倒の磁石》でなんとかしようとしたのですが、3マナが重く、特に後手の場合、自分が受身な状態の場合、返しの相手のアクションを考えると出せるターンがほとんどありません。《戦争と平和の剣》でゲームがスピーディーになるので、より軽く、アドバンテージよりテンポを取れるカードが欲しくなります。

そこで注目したのが《蒸気の絡みつき》。つまり《送還》です。

一見「本当に強いの?」と思ってしまうかもしれませんが、《戦争と平和の剣》でお互いにライフを減らし、回復し合っている状況で1回でも攻撃を無効にできると一気にライフ差が広がります。特に環境初期は警戒されないので《戦争と平和の剣》をつけてチャンプも《糾弾》もされないと思っている相手がフルタップで《饗宴と飢餓の剣》まで装備してアタックしてきたところをたった青1マナでひっくり返すのは爽快の一言です(笑)《饗宴と飢餓の剣/Sword of Feast and Famine(MBS)》はアンタップ出来る前提で攻撃前に大きなアクションを取るので、この奇襲は効果抜群です。

また新デッキの欠片コンボの阻害にも役立ち、強化された緑単エルドラージに強いのも高評価ですね。

今後《送還》が環境を席巻する!!……というのは大袈裟ですが、是非皆さんも一度試してみて下さい。


4.おまちかね!最新版ヴァラクートのリストはこれだ!!




Toshihiro Saida「New RGValakut」

10《山》
5《森》
4《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》
2《新緑の地下墓地》
3《進化する未開地》
3《広漠なる変幻地》
1《怒り狂う山峡》

-土地(28)-


3《先駆のゴーレム》
4《原始のタイタン》
3《業火のタイタン》

-クリーチャー(10)-
4《探検》
4《内にいる獣》
4《砕土》
4《耕作》
2《召喚の罠》
4《カルニの心臓の探検》

-呪文(22)-



-サイドボード(15)-
hareruya



見て貰えばわかるのですが、このデッキは前環境から大きな変化はありません。しかし欠片コンボは非常に強力で、それに干渉できるカードがメインにないのは厳しいので《内にいる獣》。相変わらずその汎用性には驚かされます。

しかし緑単エルドラージと違いヴァラクートには3/3を止める方法がデカブツと《溶鉄の尖峰、ヴァラクート/Valakut, the Molten Pinnacle(ZEN)》の能力しかありません。《内にいる獣》は早いターンに打つことがあるので《ゼンディカーの報復者》では遅すぎます。

そこで採用したのが《先駆のゴーレム》です。相手に3/3が出ても返しにこちらが《先駆のゴーレム》なら圧倒的に有利ですし、単純に各種タイタンより軽いので相手の警戒マナ域から外れているのが良いですね。流行の《転倒の磁石》に強いのも《先駆のゴーレム/Precursor Golem(SOM)》をお勧めする理由の一つです。

ただし、これはあくまでCaw-Goや欠片コンボが環境に多い場合のリストです。もし《内にいる獣》が流行るとそれを打たれても強い赤単や緑白アグロなどが流行すると思われます。アグロデッキには除去として機能しない《内にいる獣》はヴァラクートには入れるべきではないので、お決まりの《稲妻》に戻る可能性も十分にあります。

また《饗宴と飢餓の剣》《欠片の双子》を壊せればいいなら、軽いし《自然の要求》でもいいのでは?と思われるかもしれませんが、緑単エルドラージの項目でも述べたとおり「エンドに相手のランドに打てる」というアクションは非常に強力であり、特に《原始のタイタン》を通せば勝利が目前な、ヴァラクートでは尚更です。

実際色々なデッキと回しましたが「1マナの軽さ」より「3マナで状況次第で何でも壊せる」ほうがやはり強かったです。 対緑単エルドラージでは《自然の要求》は対象がありませんし、同系でもタイタンや土地、分回り要素である《カルニの心臓の探検》に触れられる《内にいる獣》の方が強いです。また一応苦手な《槌のコス》なども対処でき、もし相手が不運にも土地2枚でストップしてしまったときなどに土地破壊して一気に勝ちを手繰り寄せることもできます。

どんな相手でも絶対に腐ることが無い、というのは《稲妻》と同じくらい優秀なことです。メタが偏れば《自然の要求》《稲妻》のほうが良い場合ももちろんありますが、少なくとも環境初期ではなんでも触れるカードというのは非常に心強いです。

というわけで《自然の要求》《稲妻》はサイドボードですね。あとは今まで通り《水蓮のコブラ》《転倒の磁石》と、欠片コンボが流行るようなら《焼却》が良いでしょう。《自然の要求》だと《呪文滑り》で曲げられてしまいますが、《焼却》は打消しも《呪文滑り》でねじ曲げもできないので対欠片コンボ専用カードとしてはかなり優秀です。

ちなみにヴァラクートを相手にする側視点で少し話しをすると、巷で話題の新《根絶》こと《外科的摘出》ですが、ヴァラクートにはほとんど効きません。上手く《地盤の際》《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》《外科的摘出》《蔑み》《原始のタイタン》《外科的摘出》などできれば良いですがそうそう上手くいきません。前者はまず《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を素引きしてもらわないといけませんし、後者は弱い《記憶殺し》です。

ヴァラクート側からすると欠片コンボに対処する分サイドボードが圧迫され追加のフィニッシャーが取りづらくなるので《記憶殺し》《蔑み》などで単純にフィニッシャーを減らす戦法を取られるとキツくなります。待てば《蔑み》、待たなければ《マナ漏出》の2段構えなどを青黒コントロールにされると相当厳しいです。《蔑み》は青黒対ヴァラクートの戦い方を変える1枚になるかもしれません。


ヴァラクートは今回のセットで得るものは多くありませんでしたが、逆に、懸念していた「対ヴァラクート専用対策カード」が出なかったので今後も間違いなくメタゲームに存在し続けるでしょう。元々のデッキパワーは他のデッキと比べ物にならないくらい高いので、新環境でも対策は怠らないほうが良いですね。また使う側も使われる側も新しいカードが入っているので練習も非常に大事です。いち早く環境に適した構成とプレイングを磨けるよう僕自身も努力していきたいと思っています。


さて、2回にわたってお送りしてきましたが皆さんいかがでしたでしょうか?初めての記事で至らない点も多かったと思いますが、またどこかで皆さんに会えることを心から楽しみにしています!それでは!