The Last Sun 2013予選@晴れる屋スタンダード杯の様子をレポート!!

happymtg編集チーム

By Atsushi Ito

 当たり前だが、テーロス入りスタンダードは、混迷を極めている。

 何せ。

 遥か遠く、アイルランドのダブリンでは今まさにプロツアー・テーロスの真っ最中。

 つまり、テーロス入りのスタンダードについて。

 いまだ歴戦のプロたちの回答は出されていない……というより、それを決めている真っ最中ということだ。

 したがってプレイヤーたちには、何が強くて何が弱いカードか、あるいは何が強いデッキなのか。

 指針がほとんど与えられていないのが現状だ。

 だというのに。

 ここ晴れる屋トーナメントセンターに、102名ものプレイヤーが集った。

 新スタンダード黎明期の混乱の時代に、自らの最強デッキで秩序をもたらすべく。

 そして、年末に控える大型イベント『The Last Sun2013』の出場権利を獲得するべく。

 激戦の幕が、今上がった。

1.メタゲームブレークダウン
2.Round4カバレージ
3.Round7カバレージ
4.優勝者インタビュー
5.The Last Sun2013予選@晴れる屋スタンダード杯 トップ16
6.トップ16デッキリスト
7.今後の予選スケジュール






1.メタゲームブレークダウン





 テーロス入りスタンダードでまずはトップメタとなったのは、安い・速い・強いの赤単。

 しかし、環境初期であることからわかるように。

 同じ赤単の中でも、その構成には大きな開きがある。

 ある者は、最速を証明しようとして。

 またある者は、《ニクスの祭殿、ニクソス》を使用し、信心を高めようとして。

 各々が最強と信じる赤単を持ち込んでいた。

 2番手となったのはナヤカラーのミッドレンジ。さらに、《スフィンクスの啓示》で前環境からお馴染みのエスパーコントロールが3番手に続く。

 《嵐の息吹のドラゴン》《太陽の勇者、エルズペス》《悪夢の織り手、アショク》や占術土地など、テーロスのカードをふんだんに使用したカードパワー3色は、この他にも様々な色の組み合わせで人気を博している。

 そして注目の4番手は日本発、噂の《アスフォデルの灰色商人》黒単。

 草の根から生まれたグレートアイデアは、はたしてプロツアーでも活躍するのだろうか。

 一方、開催中のプロツアー・テーロスで大暴れしているという噂の青信心《波使い》デッキは、日本ではまだ数が少ないようだ。

 その他、ローグデッキの中にも新スタンらしい様々なインスピレーションがみられた。

 102名分の才能の中からスタンディングの最上段に輝くことになるのは、どのアーキタイプか。




2.Round4カバレージ

Round 4: 木村 卓人(神奈川) vs. 白石 直輝(東京)

 7回戦中3回戦を終え、折り返しの4回戦目。

 ここまで順風満帆、3戦全勝で1番テーブルからフィーチャーマッチに呼ばれたのは、《大いなるガルガドン》の申し子、木村だ。

木村 「こんな恥ずかしいデッキでフィーチャーに呼ばれてしまうなんて……」

 と謙虚な姿勢を見せるが、デッキは最近流行の兆しを見せる、《アスフォデルの灰色商人》をフィーチャーした黒単というガチなチョイス。

 対するは白緑ビートダウンを駆る白石。テーロスからは《羊毛鬣のライオン》《加護のサテュロス》といった強力なカードを手に入れており、こちらも優勝候補筆頭のアーキタイプだ。

白石 「こんなとこに座るの初めてで胃が痛い……」

 とフィーチャーエリアの空気に緊張の様子だが、はたして勝つのはどちらか。

Game 1

 白石の先手2ターン目《復活の声》に対し、ワンマリガンの木村がプレイしたのは、なんと《群れネズミ》。RTRブロックのドラフトでは幾多の2ターンキルをもたらしてきたこのカード。木村の構築センスが光る。

 だが、さすがにスタンダードでは2ターンキルというわけにはいかない。《復活の声》《ひるまぬ勇気》がつくと、さすがにネズミの能力起動より優先して《英雄の破滅》をプレイせざるをえない。

 白石は続けて2枚目の《復活の声》《ドライアドの闘士》と攻め立てるが、木村は《地下世界の人脈》で手札を補充しにかかる。

 追加ドローで引き込まれた幾多の除去が白石の生物たちと交換されつつも、1点ずつのライフ支払いは馬鹿にはできず、木村のライフはついに残り3。

 白石のパワー2クリーチャー2体のアタックを、《群れネズミ》2体がブロックすると……

 溜めに溜めた切り札、《セレズニアの魔除け》×2を攻撃クリーチャー2体にそれぞれプレイ!

 何もなければトランプル4点か。




 しかし。

 実は『何もなければ4点』ではなかったのだ。

 ここで木村、慌てず騒がず《変わり谷》を起動する。すると何と、『ネズミ』カウントが増えて《群れネズミ》が両方3/3となり、ライフ1点が残る!!

 さらに木村、返すターンに満を持して《アスフォデルの灰色商人》をプレイ。ライフを一気に引き戻すと、《地下世界の人脈》でのドローを再開。《ファリカの療法》を絡めてなおも追加ドローのためのライフを増やしつつ、『それ』を探しにいく。

 『それ』。

 すなわち、ついに木村が引き込んだ、3体目の《群れネズミ》!!

 そこからは全力でネズミを育てた木村、一挙18点アタックで白石を介錯した。

白石 「詰めきれなかったかー」

木村 1-0 白石


Game 2

 木村がワンマリガンから土地1でストップしてしまい、特に見どころなく3ゲーム目へ。

木村 「あと沼1枚引ければ手札全部プレイできたのに……」

木村 1-1 白石


Game 3

 木村がマリガンしてまで探しにいった《群れネズミ》を先手2ターン目に降臨させる立ち上がり。

 白石のデッキが白緑である以上、毎ターン増えるネズミを完璧に除去しきることなど不可能だろう。そう思われた。

 だが、ここで白石がプレイしたのは何と《真髄の針》!!

木村 「やばい」

 イージーウィンが消えた木村。どうにか白石の生物を捌きつつ、《アスフォデルの灰色商人》を3連打して盤面をイーブンに戻すが、お互いに手札の有効牌は使い切った状態。

 すなわち、ここから先はトップデッキ対決。

 ドローした木村、意を決して《変わり谷》まで含めたフルアタック。はたして白石の残り手札1枚はトップデッキした《ワームの到来》だが、これは《破滅の刃》で即除去。白石の残りライフは4。

 白石がドローゴーした次のターン、唯一のブロッカーである《実験体》《究極の価格》を打ち込み、最後のアタッカーである《アスフォデルの灰色商人》2体でぴったり4点のアタック!!




 だが、この局面で。

 無情にも白石のトップデッキは、またしても《ワームの到来》だったのだ。

木村 「白緑相手なんて《群れネズミ》だけで勝てるだろうと思っていたけれど、まさか能力起動を封じられるとは……《地下世界の人脈》をサイドアウトしたのが間違いでしたね」

白石 「本来は《霊異種》用の《真髄の針》なんですが、見事に刺さりました」

 木村、接戦の末に無念の敗北。

木村 1-2 白石




3.Round7カバレージ

Round 7: 寺内 辰也(東京) vs. 島﨑 孔一郎(東京)

 最終戦、ここまで互いに6戦全勝。

 すなわち、テーロス入りスタンダードにおいて、最強対最強。

 そのデッキ。

 寺内が操るのは、青黒《波使い》プロツアー・テーロスでも大暴れしている、今最も熱いアーキタイプだ。

 対して島﨑はオーソドックスな緑白ビートダウンのようだ。

 既に『The Last Sun2013』本戦の権利については6-0の時点で獲得が確定しているが、だからといって両者ともにこの一戦を消化試合にするつもりはない。

 そう。何といっても、『優勝』の賞品と名誉がかかっている。

 寺内と島﨑。どちらが新スタンの王者となるか。

Game 1

 先手は島﨑。

 《復活の声》《議事会の招集》と良い回りだが、あろうことか寺内の動きは《潮縛りの魔道士》×2。完璧な受けを見せる。

 続けて《寺院の庭》アンタップインで見え見えの《ワームの到来》を構えた島﨑に対して、《波使い》が『信心』たっぷりに5体のエレメンタルを引き連れて登場。

 そして島﨑が殴ってこないとみるや、島﨑にとっての悪夢となる《悪夢の織り手、アショク》をプレイする。




 さらに、それだけではなかった。

 さらなるダメ押しとして寺内が送り出したのは、何と2体目の《波使い》!!

 6体もの3/2エレメンタルトークンが出ると、絶望的すぎる盤面に島﨑ももはや笑うしかない。

 一応エンド前に5/5のワームトークンに《加護のサテュロス》を『授与』してはみるが。

 総勢10体のエレメンタルトークンが津波のようにアタックすると、青いデッキにも関わらず、寺内が緑白の島﨑を圧倒的な物量で押し切った。

島﨑 0-1 寺内

Game 2

 再び先手は島﨑、3ターン目の《魔女跡追い》が初動となる。

 これは《不在/Away》で処理した寺内だったが、続けて島﨑がプレイしたのは《魔女跡追い》の2枚目!!

 さすがに如何ともしがたい寺内は、ひとまず《思考囲い》《魔女跡追い》が強化されるのを防ぐプランをとる。

 果たして、島﨑の手札には《復活の声》《セレズニアの声、トロスターニ》《根生まれの防衛》といった面々に紛れて《加護のサテュロス》が。即座にこれを落とす寺内。

 一方、プランが崩れた島﨑だったがトップは強く、続く寺内のターンのエンド前に《ワームの到来》をプレイする。




 だが、波に乗った寺内の勢いはとどまるところを知らなかった。

 このタイミングで寺内、トップデッキした《遠隔+不在》を『融合』でプレイ!!

 一瞬にしてすべてのクロックを失った島﨑。仕方なく《セレズニアの声、トロスターニ》を送り出すが、これが《破滅の刃》で即退場した上に、《思考を築く者、ジェイス》から《波使い》がめくられると、もう勘弁してくれといった表情。

 だが寺内が攻め手を緩めるはずもなく、《夜帷の死霊》からの《波使い》で『信心』6、6体のエレメンタルトークンが押し寄せる。

 さらに《悪夢の織り手、アショク》《羊毛鬣のライオン》を奪い去り、《夜帷の死霊》が奪った島﨑の土地から『怪物化』までされてしまうと。

 ワンサイドゲームに心が折れた島﨑は、ついに投了を宣言したのだった。

島﨑 0-2 寺内




4.優勝者インタビュー

 --「まずは優勝おめでとうございます。それでは早速このデッキについてお伺いしたいのですが、どれくらいの期間調整されたんでしょうか?結構最初からこういう形だったんですか?」

寺内 「10日前くらいから使ってますね。大幅に形が変わったりはしてないです。サイドのハンデスが最初は全部カウンターだったんですが、《波使い》の露払いのためにハンデスに入れ替えた、というのが一番の変更点でしょうか」

 --「青青黒黒と結構マナベース頑張ってるのも特徴的ですよね。《ディミーアのギルド門》も4枚フル投入ですし。13枚目の2色ランドと思しき《未知の岸》もオシャレです」

寺内 「タップイン祭りでたまにドハマリしますけどね。あと《未知の岸》は、《夜帷の死霊》で奪った相手のカードをキャストするという地味な役割もあります」

 --「なるほど、それは思いつきませんでした。ところで、この一見統一感のない除去スロットはどういう意図なんでしょうか」

寺内 「ひたすらカードが手札で腐るのが嫌なんですよね。なのでどんな場面でも頓死することがないよう、除去も可能な限り散らしてます。例えば《遠隔+不在》などは除去でありながらエレメンタルトークンを使い切った自分の《波使い》を戻せたりもするので、コントロールなどにも腐りきらず、使い勝手が良いです」

 --「ああ、そういえば関東Finals2012でモダンのデッキについてインタビューさせていただいた際にも、似たような話をしていましたね。」




 --「今日の当たりはどんな感じだったんでしょうか。当たった中で不利に感じたデッキなどはありましたか?」

寺内 「緑白系ナヤ系がやたら多かったですね。あとは赤単に1~2回当たったかな。不利な感じを受けたマッチはあまりないですね。《炎樹族の使者》を連打してくるような超高速赤単だけはきついイメージですけど。」

 --「プロツアーにSCGが持ち込んだ青単と比べると、やはり色が一色増えている分カードパワーが格段に上がってますよね。」

寺内 「そうですね。とにかく序盤は2マナ域や除去でしのいで、《夜帷の死霊》や4マナ域のパワーカードの連打につなげれば勝てる、という感じです。」

 --「なるほど、どちらかというと《波使い》コントロールという感じですね。」

寺内 「テンポで負けなければ《波使い》《冒涜の悪魔》で盛り返せるのが大きいですね。ピン差しの《エレボスの鞭》も、序盤にライフを失いすぎたとき用に入っています。あともしかしたら2体目の《波使い》を戦場に戻して楽しいことができるかも(笑)」

 --「サイドボードも、黒を加えたことで非常に充実したラインナップになっていますね。追加のハンデスや、《闇の裏切り》は何対策なんでしょうか。」

寺内 「エスパーコントロール相手には、サイド後に2マナ域をまとめて全部抜いてPWとハンデスを詰め込んで、ガチコントロールみたいに変身できるんですよ。《闇の裏切り》は流行りの黒単や《幽霊議員オブゼダート》用ですね」

 --「よく考えられていますね」

寺内 「このデッキ、本質的には、赤緑に強い《潮縛りの魔道士》と、青黒に強い《夜帷の死霊》で、サイド後は外れた方を抜く、っていう感じなんですよね。だから白単以外は相性差を強く出せるので良い感じです。今のところ特に不満もないので、使い続けていきたいです」

 --「ありがとうございました。」

 奇しくもプロツアー・テーロスと同じタイミングで《波使い》を駆り大暴れした寺内。その鋭い着眼と構築力は、海外プロにも引けをとらないということだろう。

 寺内の『The Last Sun2013』本戦での活躍にも注目だ。



寺内辰也 「ブラック ウェーヴ」
The Last Sun2013予選@晴れる屋スタンダード杯7-0(1位)

9 《島》
3 《沼》
4 《湿った墓》
4 《欺瞞の神殿》
4 《ディミーアのギルド門》
1 《未知の岸》

-土地(25)-

4 《潮縛りの魔道士》
4 《凍結燃焼の奇魔》
4 《夜帷の死霊》
1 《海の神、タッサ》
4 《波使い》
4 《冒涜の悪魔》

-クリーチャー(21)-
2 《思考囲い》
2 《破滅の刃》
1 《究極の価格》
1 《歪んだ体形》
2 《遠隔+不在》
2 《英雄の破滅》
1 《エレボスの鞭》
3 《悪夢の織り手、アショク》

-呪文(14)-
3 《強迫》
2 《思考囲い》
2 《闇の裏切り》
2 《地下世界の人脈》
2 《思考を築く者、ジェイス》
2 《記憶の熟達者、ジェイス》
1 《中略》
1 《破滅の刃》

-サイドボード(15)-
hareruya


波使い冒涜の悪魔悪夢の織り手、アショク





5.The Last Sun2013予選@晴れる屋スタンダード杯 トップ16




1. Terauchi Tatsuya
2. Yoshimori Sho
3. Shimasaki Kouitiro
4. Tazawa Masayuki
5. Mituyasu Yuki
6. Itou Motoaki
7. Nakamoto Kousuke
8. Ogawa Sinji
9. Ooi Masaki
10. Ootsuki Masahiro
11. Matsuo Hirokazu
12. Hiramatsu Mamoru
13. Hanyuu Kento
14. Matsubara Ichirou
15. Kinoshita Tomohiro
16. Akita Naoto


 以上16名の方々、権利獲得おめでとうございます!『The Last Sun2013』本戦も頑張ってください!!


6.トップ16デッキリスト


 栄えある予選通過者たちのデッキリストは【こちら】



7.今後の予選スケジュール

 今後も、各地で続々と予選大会が行われる予定です!
 皆さん、奮ってご参加ください!
 

『The Last Sun 2013』予選大会のスケジュールは【こちら】