決勝: 松田 幸雄(東京) vs. 辰巳 晃司(大阪→東京)

晴れる屋

By Hiroshi Okubo

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 【第3期スタンダード神挑戦者決定戦】の決勝戦で争った2人が、今度はフォーマットを変え、モダン神・市川への挑戦権を得るためのテーブルについている。


 それは偶然か、あるいは必然か。

 第6期モダン神挑戦者決定戦。その決勝のカードはまるで人智を超えた何か……「神」に仕組まれていたかのように、偶然と呼ぶにはあまりにも必然的で、そして超自然的だった。


 松田 幸雄(東京)。

 「統率者戦」などで中野を中心としたコミュニティによく出入りしていた彼は、【第4期モダン神挑戦者決定戦】を制した高野 成樹などとも親交が厚いという。

 そんな松田が選択したデッキは「親和」。圧倒的な展開力とキルスピードの速さを武器にモダンフォーマットの黎明期から第一線で活躍し続け、「エルドラージ」が蔓延する現在のモダン環境においてなお「エルドラージ」と互角以上に渡り合えるデッキの筆頭と目されるデッキである。


 辰巳 晃司(大阪→東京)。

 【トップ8プロフィール】では主な戦績について“特になし”と語っていたが、マジック歴20年以上の古豪で、その圧倒的な経験と知識は他の追随を許さない。

 前回の【第5期モダン神挑戦者決定戦】では「エターナルブルー」という【少し毛色の違うデッキ選択】をしていた辰巳だったが、今回は現在最も勢いのあるデッキ「青白エルドラージ」を携えてこの決勝戦まで辿り着いていた。


 参加者263名による激しいスイスラウンドを抜けて、いつ切れるとも知れぬ細い運命の糸を手繰って決勝ラウンドを勝ち進み、ついにここまで辿り着いた2人。ここから先は、神でさえも知らぬ領域……







Game 1


 メインボードの相性は「親和」が有利なこのマッチアップにおいて、油断や妥協のあるキープは許されない。辰巳が5枚に減った手札を見て即座にキープを宣言すると、決勝戦の第1ゲームが幕を開けた。


 土地を置くのみで静かにターンを返す辰巳に対し、松田は第1ターンから《大霊堂のスカージ》、第2ターンには《鋼の監視者》を戦場に送り込む。

 この《鋼の監視者》とともに3ターン目を迎えた松田は、さっそく辰巳のライフを削りきる算段を立て始める。小考しつつ、《墨蛾の生息地》2枚をクリーチャー化し、《鋼の監視者》の能力を起動して《大霊堂のスカージ》とともにレッドゾーンに送り込む。



辰巳 晃司



 毒カウンターを4つもらい早くも残された時間がなくなってしまった辰巳だったが、ここから2ターン続けて《希望を溺れさせるもの》をプレイし、そのタップ能力によって命をつなぐことに成功する。

 しかし、《希望を溺れさせるもの》が稼いだ時間もこの劣勢を根本的に解決する手段に繋ぐことはできず、最後のドローを確認すると、即座に土地を片付け第2ゲームの準備を始めた。


松田 1-0 辰巳


 わずか10分足らずで終わってしまった決勝戦第1ゲーム。辰巳が盤面に干渉できるカードをなかなか引き込むことができずにいたこともあるだろうが、「親和」の真骨頂ここに極まれりといったスピードである。

 このまま松田が有無を言わさず速やかに勝利してしまうのか、それとも辰巳が粘りを見せるか。両者ともに素早くサイドボードを終え、勝負は第2ゲームへと引き継がれる。


Game 2


 辰巳は再びダブルマリガンの不運に見舞われるものの、辿り着いた5枚の中には《石のような静寂》があった。今度は易々と負けることはなさそうだ。

 対する松田は7枚の手札を眺めて長考。土地もクリーチャーも十分に存在する7枚だったが、「親和」のサイドボード後の試合は対策カードを巡ったゲームになりやすい。対策カードへの回答を持たないこの手札をキープしてよいものかと頭を抱えつつ、キープを宣言する。



松田 幸雄



 第1ゲームと同様、《オパールのモックス》《大霊堂のスカージ》と展開する松田だが、辰巳は2ターン目に《石のような静寂》! これによって《オパールのモックス》が機能を失ってしまう。

 やむなしと松田は《大霊堂のスカージ》を攻撃に向かわせ、第2メインに《信号の邪魔者》を追加する。《石のような静寂》の影響下にあっては《頭蓋囲い》による打点の奔騰にも期待できないため、1点1点のクロックを大切に積み重ねていくほかない。


現実を砕くもの


 そんな松田を速やかに屠らんと、辰巳は《現実を砕くもの》で一気にライフを詰め始める。速攻による5点が松田にヒットすると、続くターンには2枚目の《現実を砕くもの》! 2体の5/5速攻・トランプルによって、圧倒的なスピードで松田のライフが溶けてゆく。

 返す松田の攻撃クリーチャー指定ステップには《信号の邪魔者》に対して《流刑への道》を打ち込み、その攻め手をわずかに削ぎ取る。



辰巳 晃司



 松田視点で辰巳のライフを削り切るには最短でも2ターン必要なのは明らかだ。このターン攻撃を行い、返す辰巳の10点クロックを凌ぎつつ次のターンに勝利を収める道がないかと探る。

 松田は数秒でその細い道筋を見出し、その手で素早く実行に移す。ダブルマリガンした辰巳の手札はもう0枚で、盤面の情報だけを見れば松田のライフは1点だけ残るはず。あとは運否天賦、辰巳のトップデッキが有効牌でないことを祈るのみ……


 辰巳のラストターン。《現実を砕くもの》2体を攻撃に向かわせ、松田の決死のチャンプブロック指定を見届けると、最後のドローカードを力強くテーブルにたたきつけた。

 《解呪》


解呪








松田 1-1 辰巳


 ダブルマリガンの憂き目から劇的なトップデッキと最高のプレイングで勝利をもぎ取った辰巳。

 長かった戦いは、泣いても笑っても次の1ゲームで終わる。細い細い糸を伝い、決勝の舞台へと昇ってきた2人。勝負の“綾”を掴み取るのは、一体どちらになるだろうか――?


Game 3


 このマッチで初めての先攻を取った松田は《島》《羽ばたき飛行機械》《大霊堂のスカージ》《オパールのモックス》《思考囲い》と一気に手札を5枚ダンプする。

 この《思考囲い》によって辰巳は手札から《解呪》が抜き去られてしまい、やむを得ず《四肢切断》《大霊堂のスカージ》を除去する。


 松田は猛攻の手を緩めず、《頭蓋囲い》をプレイし《羽ばたき飛行機械》に即装備、4点クロックで一気に辰巳のライフを削る。





 辰巳は土地を置くことしかできず、この隙に《羽ばたき飛行機械》がさらにもう一撃。第3ターンにしてようやく《難題の予見者》を戦場に送り込むことに成功するが、松田の手札は0枚なうえに飛行が止まらない。

 松田の《羽ばたき飛行機械》によってさらなるもう一打が浴びせられると、辰巳のライフは1。最後のターンを迎え、ドローを確認する……

 万事休す。自身の敗北を悟った辰巳は並んでいた土地を片付け始め、第6期モダン神挑戦者決定戦の優勝者が決まった。



松田 幸雄





松田 2-1 辰巳






第6期モダン神挑戦者決定戦、優勝は松田 幸雄(東京)!



おめでとう!!



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