この記事では先週末のGPT東京0305(スタンダード)の会場で注目を集めていた一風変わったデッキたちを紹介します。
『イニストラードを覆う影』の発売が迫り、いよいよスタンダード環境は終盤を迎えました。新セット発売前特有の停滞した雰囲気が漂っていますが、それを吹き飛ばすような刺激的な傑作が揃っています。「4色《先祖の結集》」や「ダークジェスカイ」に喰らい付こうとする「ちょっと珍しいデッキ」をどうぞ!
◆ 「《水の帳の分離》コントロール」
2 《島》 2 《沼》 1 《森》 1 《平地》 2 《梢の眺望》 2 《大草原の川》 2 《窪み渓谷》 4 《溢れかえる岸辺》 3 《吹きさらしの荒野》 2 《汚染された三角州》 3 《華やかな宮殿》 1 《ラノワールの荒原》 -土地(25)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《森の代言者》 -クリーチャー(8)- | 2 《軽蔑的な一撃》 3 《破滅の道》 2 《乱動の握撃》 1 《苦い真理》 4 《衰滅》 2 《オジュタイの命令》 4 《水の帳の分離》 4 《時を越えた探索》 2 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 2 《真面目な訪問者、ソリン》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -呪文(27)- | 3 《影響力の行使》 2 《アラシンの僧侶》 2 《神聖なる月光》 2 《無限の抹消》 2 《悪性の疫病》 2 《世界を壊すもの》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《卓絶のナーセット》 -サイドボード(15)- |
古くより、1ターンに1回の起動制限をもつプレインズウォーカーと、追加ターンを得るカードの相性の良さは評価されていました。《瞬間の味わい》や《時間のねじれ》はいつだって《野生語りのガラク》のよき友人だったようにです。
そして現環境でも「追加ターン+プレインズウォーカー」の組み合わせに注目したのが、この「《水の帳の分離》コントロール」です。相棒のプレインズウォーカーには《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》《真面目な訪問者、ソリン》《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》が選ばれています。
序盤や中盤は《森の代言者》やプレインズウォーカーを展開し、《衰滅》《破滅の道》で時間を稼ぎ、満を持しての《水の帳の分離》で決着をつけます。《森の代言者》も4/5に成長している頃合いなので、追加ターンを生かして一気に攻撃に転じられるはずです。《水の帳の分離》の『覚醒』によって強化された土地は、《森の代言者》の効果で8/8にまで成長して襲い掛かるので、時にはプレインズウォーカー達の助けすら必要なく勝ってしまうこともあるでしょう。
ドロー補助からプレインズウォーカーに変身する《ヴリンの神童、ジェイス》、序盤のブロックから終盤のフィニッシャーまでこなす《森の代言者》と、強力な2マナ域が一人二役の大活躍をする楽しいデッキです。
◆ 「ジェスカイフライヤーズ」
2 《島》 2 《平地》 2 《大草原の川》 1 《燃えがらの林間地》 1 《燻る湿地》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 4 《吹きさらしの荒野》 2 《鋭い突端》 1 《さまよう噴気孔》 2 《戦場の鍛冶場》 -土地(25)- 4 《次元潜入者》 4 《層雲の踊り手》 4 《空中生成エルドラージ》 4 《カマキリの乗り手》 4 《雷鳴のワイヴァーン》 4 《風番いのロック》 -クリーチャー(24)- | 3 《勇敢な姿勢》 2 《軽蔑的な一撃》 3 《ジェスカイの魔除け》 3 《絹包み》 -呪文(11)- | 3 《神聖なる月光》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《否認》 2 《正義のうねり》 2 《シルムガルの魔術師》 2 《塵への崩壊》 1 《勇敢な姿勢》 1 《弧状の稲妻》 -サイドボード(15)- |
最近のスタンダード環境といえば緑系の中速デッキに強い『飛行クリーチャー』の目覚ましい活躍が印象的です。地上をひしめく巨大なクリーチャーを尻目に、すいすいと対戦相手のライフを削る様は華麗の一言に尽きます。このデッキは、飛行クリーチャーが持つ華麗さをさらに追及した作りになっています。その鍵となるクリーチャーとは《雷鳴のワイヴァーン》です!!
美しいイラストと「飛行クリーチャーのパワーを強化する」能力をもつ小さなドレイクは、飛行クリーチャーだけで構成されているこのデッキにおいては最高クラスの打点を叩き出します。4点で殴り掛かる《カマキリの乗り手》、《風番いのロック》は1マナ軽い《若き群れのドラゴン》に変貌するのです。また、《風番いのロック》には、お馴染みの《空中生成エルドラージ》から4ターン目に登場するプランも用意されています。
マナカーブ通りに飛行クリーチャーを右から左に展開していくため、一見すると単純な動きをするようにも見えますが、瞬速を持つ《雷鳴のワイヴァーン》、《勇敢な姿勢》や《ジェスカイの魔除け》などのインスタントが複雑なゲーム展開を演出し、対戦相手に楽させません。攻撃的なデッキ相手のタイトなダメージレースも《ジェスカイの魔除け》の全体強化で制するなど、細かなゲームの機微にも対応できる素晴らしいデッキです。
◆ 「《石鍛冶の傑作》ゴブリン」
7 《山》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《樹木茂る山麓》 4 《シヴの浅瀬》 3 《海門の残骸》 1 《荒廃した山峡》 1 《領事の鋳造所》 1 《ならず者の道》 -土地(25)- 4 《ゴブリンの栄光追い》 4 《ゴブリンの群衆追い》 4 《ケラル砦の修道院長》 4 《無謀な奇襲隊》 3 《ゴブリンの闇住まい》 -クリーチャー(19)- | 1 《タイタンの力》 4 《ドラゴンの餌》 2 《焙り焼き》 4 《軍族童の突発》 3 《極上の炎技》 2 《石鍛冶の傑作》 -呪文(16)- | 4 《雷破の執政》 3 《歪める嘆き》 2 《焙り焼き》 2 《エルドラージの寸借者》 2 《制止エルドラージ》 1 《焦熱の衝動》 1 《引き裂く流弾》 -サイドボード(15)- |
半年前の『マジックオリジン』発売直後に話題となった《ゴブリンの群衆追い》の再録は、現在ではすっかりと忘れ去られてしまったトピックです。かつて『オンスロート』時代のゴブリンデッキでぶいぶい言わせていた彼を知っている者からすると少し寂しい出来事ですが、昔は昔、今は今と、時代の流れには逆らえないものなのかもしれません。
しかし、そんな風潮には一切構わず「今でもゴブリンデッキはいけるでしょ!」と意気込んだ期待作が今大会に登場しました。
《軍族童の突発》と《ドラゴンの餌》で戦場に溢れかえるゴブリンたちを統率するのは、戦場のゴブリンが増えるほどに効果を増していく《ゴブリンの群衆追い》と《石鍛冶の傑作》の2枚です。それらを《無謀な奇襲隊》が後押しし、一気に対戦相手のライフを削り切ります。
押し寄せるゴブリンの攻撃に耐えきった対戦相手には、《ゴブリンの闇住まい》と《極上の炎技》が待ち構えています。《ゴブリンの闇住まい》は、《極上の炎技》や《軍族童の突発》を再利用することで攻撃体制を素早く立て直し、自身の「威迫」をもって対戦相手に大きなプレッシャーを与えます。
また、《極上の炎技》は、ゴブリンのようなパーマネントでライフを削るデッキにとって頼もしいフィニッシュカードです。戦場が大量のブロッカーで一切のダメージが通らなくなっても、それらを無視して勝てる飛び道具はどんな状況でもわずかな希望になってくれます。《ゴブリンの闇住まい》と組み合わせれば8点やら12点までは現実的な射程圏内なのです。
レガシー環境でも一時代を築いたかつてのゴブリンと比較してしまうと、現在のゴブリンには若干の失望を感じてしまうのは避けられないことかもしれません。しかし、一時代を支えた爆発力の持ち主である《ゴブリンの群衆追い》に秘められた一撃は、時代が変わっても健在です。カードが本来もつポテンシャルを生かすデッキを構築すること。そんな挑戦の大事さを改めて感じさせる勇敢なデッキです。