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こんにちは。らっしゅです。
さて、今週もスタンダードの空模様を見てみましょう。
■ 【先週の天気】「4色《先祖の結集》」の梅雨明けず
先週末は「4色《先祖の結集》」が【対策されてなお、そのポテンシャルを遺憾なく発揮して勝ちきる結果】となりました。
1 《森》 1 《島》 1 《平地》 1 《沼》 2 《梢の眺望》 2 《大草原の川》 2 《窪み渓谷》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《汚染された三角州》 4 《吹きさらしの荒野》 3 《進化する未開地》 -土地(25)- 2 《シディシの信者》 4 《エルフの幻想家》 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《ズーラポートの殺し屋》 1 《永代巡礼者、アイリ》 4 《ナントゥーコの鞘虫》 4 《反射魔道士》 3 《地下墓地の選別者》 1 《不気味な腸卜師》 -クリーチャー(27)- |
4 《先祖の結集》 4 《集合した中隊》 -呪文(8)- |
4 《アラシンの僧侶》 4 《払拭》 2 《強迫》 2 《残忍な切断》 2 《アブザンの隆盛》 1 《苦痛の公使》 -サイドボード(15)- |
メインボードは【先週の記事で紹介したOwenのリスト】のまま、サイドボード後の戦略に少し工夫を凝らしています。Top8に入賞した4人の使用者の全員がほぼOwenのコピーを選択するなか、AVIGNONだけは《アブザンの隆盛》を採用していたのです。
オリジナルのリストでは《蔑み》が採用されているスロットに《アブザンの隆盛》が加えられています。《蔑み》は苦手な「緑赤エルドラージ」への対策として採用されていましたが、それ以外のマッチアップにおいては、出番が少ないことでも知られていました。
そこで、頻発するサイドボード後の《払拭》をめぐるお見合いでも盤面を構築できる《アブザンの隆盛》が採用されたのでしょう。このような『《払拭》避け』は、これまで《先頭に立つもの、アナフェンザ》が担う印象がありました。
しかし、最近ではしっかりとリセット呪文を採用している「コントロール系」も増えていたことを見据えて、より多角的な《アブザンの隆盛》を優先した手腕には素晴らしいの一言です。《残忍な切断》が減っていることにはやや不安を感じますが、そこは《アラシンの僧侶》などと枚数調整しても問題のない範囲だと思います。
依然として環境最有力の「4色《先祖の結集》」をどのようにして乗り越えるのか。この宿題は今週末にも持ち越されそうです。
■ 【今週の天気】ミッドレンジの復権! 環境終盤と求められる安定性
ここからは予報ですが、今週末から徐々に「ミッドレンジ」系統のデッキが復調するでしょう。先週末は「4色《先祖の結集》」の活躍が目立ちましたが、実は「各種ミッドレンジ」のリストも綺麗に整い始めた週でした。
「ミッドレンジ」系統のデッキの復調とデッキリストの綺麗さとの関係とは? それを知るためのキーワードは、環境終盤でこそ最重視される――『デッキの安定性』です。
セット落ちによるローテーションを迎えるスタンダードには、いくつかの時期があります。新セット発売直後、プロツアーなど大規模イベント終了直後、情報が行き渡る環境終盤など。それぞれの時期に『強いデッキに求められる要素』を捉えることこそが、目まぐるしいスタンダード環境で勝ち抜くコツです。
この要素を理解するにあたって、簡単な比較軸があります。それは『プレイヤー間の情報格差』です。
たとえば環境初期には、『プレイヤー間の情報格差』が大きいため、カードプール上の強いデッキコンセプト=強いデッキ、となる傾向があります。何が強いのかすらわからない状態での戦いなので、単純に地力となるデッキコンセプトが強固なものが有利となるからです。プロツアーなど環境初期のトーナメントで優勝したデッキを数ヶ月後に見返して、「よくこんなリストで勝ったな」と驚いたことがある人は多いはず。それは弱いデッキなのに勝ったのではなく、その時点でのプレイヤーの目標が、周囲よりも早く有益な情報(強いデッキコンセプト)を手にすることにあったからです。
つまり、環境初期は、デッキの細部やメタゲームなど、考えるにあたって前提となる情報が共有される必要のある要素よりも、漠然としたデッキの大枠での強弱が重視される時期だ、ということになります。
それでは、現在にあたる環境終盤はどうかというと、当然ながら『プレイヤー間の情報格差』はとても小さくなります。誰もが強力なデッキコンセプトを知り、いくつかの有力なデッキの中での順位付けすら一致することもあるでしょう。今ならば「4色《先祖の結集》」が強いということを読者の皆さんが知っているようにです。
環境初期はデッキコンセプトでのゴリ押しが通用していたにも関わらず、環境終盤になると、デッキコンセプトでの差はなくなってしまいます。そんな状況において『強いデッキに求められる要素』とは、環境初期には蔑ろにされていた細部中の細部、『デッキの安定性』なのです。
『デッキの安定性』とは、【先週の「4色《先祖の結集》」の説明】でも触れましたが、マリガンや事故や無駄カードを引くなど、デッキの理想とは離れた不本意な現実を避ける工夫です。同程度のコンセプトの強さを持つデッキがぶつかれば、より事故が少ないデッキが高い勝率をもちます。要するに、強いコンセプトのデッキばかりの環境終盤においては、『デッキの安定性』こそが勝敗を分ける鍵となるのです。
まとめ 『デッキの安定性』を確保するためには
(1) 4枚のカードを増やすこと
(2) カードの種類を減らすこと
(3) マナカーブを低く寄せること
(1) 4枚のカードを増やすこと
(2) カードの種類を減らすこと
(3) マナカーブを低く寄せること
以上が環境終盤を勝つための『安定性』を得る方法のまとめです。
意外と忘れがちなのが、カードの種類を減らすこと。あれもこれも強いと感じてしまう環境終盤は、2枚や3枚のスロットが増えていくデッキをしばしば見ます。カードの種類を増やすことによる恩恵とは、様々なゲームプランに応じられる対応力です。しかし、その対応力の高さとは、『デッキの安定性』とはトレードオフの関係にあります。対応すべき局面の優先度に沿ってカードを選択することがコツです。
■【今週のおすすめ】「アブザンアグロ」
先週から今週にかけて最も進歩したデッキは「アブザンアグロ」だったと思います。おそらく【bgoose321】が初出の構成を、今をときめくデッキビルダーの_goblinlackyがチューンしたものです。
2 《森》 2 《平地》 2 《梢の眺望》 1 《燻る湿地》 1 《窪み渓谷》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《樹木茂る山麓》 3 《風切る泥沼》 3 《乱脈な気孔》 -土地(26)- 4 《始まりの木の管理人》 4 《棲み家の防御者》 4 《森の代言者》 4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 4 《包囲サイ》 2 《風番いのロック》 -クリーチャー(22)- |
4 《アブザンの魔除け》 3 《残忍な切断》 1 《ニッサの誓い》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(12)- |
4 《精神背信》 4 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 3 《ゲトの裏切り者、カリタス》 2 《風番いのロック》 2 《究極の価格》 -サイドボード(15)- |
オリジナルのリストでは3枚の《ドロモカの命令》だったスロットは、《ニッサの誓い》と《風番いのロック》に変更されています。万能な《ドロモカの命令》もいい選択肢ですが、_goblinlackyの鋭い取捨選択も捨てがたいものです。
特に《ニッサの誓い》の評価は難しいかもしれません。《包囲サイ》や《先頭に立つもの、アナフェンザ》へのアクセス、4枚目の土地の確保など、メインサイド問わず万能なカードですが、1マナとはいえ重く感じるカードなので、減らすことはあっても増やすことは難しそうです。《風番いのロック》の3枚目や《残忍な切断》の4枚目よりはマシといったところでしょうか。
大空の覇者である《風番いのロック》は、「アタルカレッド」などの高速なデッキが消えた今では強力な1枚です。同系及び「緑系ミッドレンジ」や「コントロール」まで幅広いマッチアップで活躍します。
なんといってもこのデッキの魅力はサイドボード後の戦略です。これまでの「アブザンアグロ」といえば、サイドボードを適当な除去と入れ替えるくらいで、サイドボード後もあくまでも「アブザンアグロ」として振る舞うことが主流でした。それがこのデッキでは、《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》をしっかりと4枚採用することで「アブザンプレインズウォーカー」として明確に戦略をシフトしています。これによって「アブザンアグロ」では対応の難しかったゲーム展開にも対応できるようになったのです。
必要なカードをより多く、カードの種類を少なめに。環境終盤の基本をおさえた素晴らしいリストに仕上がっています。「アブザンアグロ」が好みの方は、ぜひ一度触ってみることをおすすめします。
■【今週のおためし】「青茶コントロール」
これからに期待がかかるデッキを紹介するこのコーナー。今週のおためしは「青茶コントロール」です。
6 《島》 4 《シヴの浅瀬》 4 《急流の崖》 4 《さまよう噴気孔》 4 《魔道士輪の魔力網》 4 《見捨てられた神々の神殿》 -土地(26)- 4 《希望を溺れさせるもの》 2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 -クリーチャー(6)- |
4 《意思の激突》 4 《次元の歪曲》 3 《歪める嘆き》 4 《虚空の粉砕》 3 《龍王の大権》 4 《面晶体の記録庫》 2 《炎呼び、チャンドラ》 4 《精霊龍、ウギン》 -呪文(28)- |
4 《難題の予見者》 4 《軽蔑的な一撃》 3 《焙り焼き》 3 《氷固め》 1 《龍王の大権》 -サイドボード(15)- |
このデッキの主なるコンセプトは、【2005年の「青トロン」】に通ずるものがあります。この【当時】は「緑トロン」と呼ばれる《歯と爪》によるコンボデッキが流行しており、それにはカウンター呪文がとても効果的でした。また、「トロン」というエンジンを持つ関係上、中速のデッキ全般にも強く、「赤単」などの速いデッキにはやや難を抱えていたものの、中速以降のデッキを狙い撃つコントロールとして鮮烈な登場を果たしたのです(速いデッキに対しても《金属モックス》があるので、対応できないこともありませんでした)。
速いデッキが鳴りを潜めて中速以降のデッキが跋扈する。なんと現在のスタンダードもそうではないですか! 硬すぎる地上の戦線を突破できる「赤系アグロ」は最早下火となっています。残るは「緑系ミッドレンジ」や「緑系エルドラージ」のみ。これはカウンター呪文+ビッグマナにとって願ったりかなったりな環境です。
《意思の激突》と《虚空の粉砕》で丁寧に中盤の脅威を取り除き、《面晶体の記録庫》から《精霊龍、ウギン》を展開すればすぐにでもゲームセットです。中速以降のデッキへの強みとなるトロンならぬ土地には、《魔道士輪の魔力網》と《見捨てられた神々の神殿》が採用されており、中盤をマナの差を生かして圧倒します。
このデッキでは「青茶」といいつつ赤が入っていますが、この2色目(3色目?)には様々な選択肢が考えられます。白で《卓絶のナーセット》と全体除去を採用してもいいですし、緑で《世界を壊すもの》や《ニッサの復興》も悪くないでしょう。
昔なつかしのコンセプトを踏襲した最新デッキ。ちょっと”おためし”してみませんか?
■ 今週末はスリムなデッキを!
いよいよ環境最終盤を迎え、メタゲームに登場するデッキのほとんどが「超強いデッキコンセプト」を持っています。要するに何を選んでも問題ないほどに強いデッキばかりなのです。
しかし、それぞれの『デッキの安定性』の違いは、小さくとも確実な差を生みます。回ってしまえば強いのだから、より回りやすくなるように調整する。そんな単純なロジックも、気を配らないと意外と忘れているものです。
「4色《先祖の結集》」が頭一つ抜けている現環境ですが、安定性を突き詰めることで他のデッキも追従することはできるでしょう。今週末はスリムに安定したデッキをおすすめします。
今週末といえば、3月13日(日)には【第6期スタンダード神挑戦者決定戦】が開催されます。今回のデッキ予報を参考に、環境終盤のスタンダードでの腕試しはいかがでしょうか?
それでは今週末の予報は以上です。良き週末を!
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