こんにちは。らっしゅです。
今週も週末の空模様をチェックしていきましょう。
【先週の天気】混迷を極めるメタゲーム
先週末は【グランプリ・パリ2016】が開催されました。1510名もの参加者の頂点に立ったのは「グリクシスコントロール」を選んだEU圏の新鋭Petr Sochurekでした。【Ondrej Straskyから「現在のEUでは3本の指に入る」と太鼓判を押される】若き実力者は、決勝戦で殿堂Ben Starkを破り、念願の初タイトルを獲得しました。
3 《沼》 2 《島》 2 《山》 2 《窪み渓谷》 2 《燻る湿地》 4 《汚染された三角州》 4 《血染めのぬかるみ》 2 《樹木茂る山麓》 1 《溢れかえる岸辺》 4 《さまよう噴気孔》 -土地(26)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 3 《ゲトの裏切り者、カリタス》 -クリーチャー(7)- |
3 《焦熱の衝動》 2 《強迫》 2 《精神背信》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《闇の掌握》 2 《焙り焼き》 2 《苦い真理》 2 《破滅の道》 1 《衰滅》 2 《残忍な切断》 4 《時を越えた探索》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 2 《炎呼び、チャンドラ》 -呪文(27)- |
3 《払拭》 3 《光輝の炎》 1 《竜使いののけ者》 1 《龍王シルムガル》 1 《精神背信》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《否認》 1 《焙り焼き》 1 《苦い真理》 1 《無限の抹消》 1 《衰滅》 -サイドボード(15)- |
期待の若手の優勝とともに今大会を象徴するトピックの一つとしては、現環境で初めて「4色《先祖の結集》」が陥落したトーナメントだったことが取りあげられます。
「4色《先祖の結集》」の使用者は、【初日終了時点でのトップ100には28名】もいましたが、最終的にトップ8まで漕ぎ着いたのはわずかに1人。トップ32まで遡っても8名しかいませんでした。これは”最強”の前評判にしては大人しい成績です。
ただ、「4色《先祖の結集》」の代わりに支配的な勢力が台頭したということはなく、幅広いデッキが活躍し、トップ8には7つものデッキタイプが入賞してます。日本やアメリカの大型トーナメントでは「4色《先祖の結集》」はまだまだ健在といえる成績を残していたため、地域間のメタゲームの違いがあるとはいえ、環境最終盤を迎えた今でも、明らかな勝者の姿が見えない混沌とした状況が続いているようです。
【今週の天気】最後の大嵐を《風番いのロック》が飛び抜ける!
【グランプリ・パリ2016】での「4色《先祖の結集》」の敗北。十人十色のトップ8。もはや何が有力なのかさえ不透明な環境にも思えますが、先週末は”とあるカード”を採用したデッキたちがひっそりと活躍していました。どの地域でも好調な様子が見られたので、今週末はこのカードが話題の中心になりそうです。
注目の”とあるカード”とは《風番いのロック》です。「緑系ミッドレンジ」と「全体除去のないコントロール」に強い怪鳥は、現環境への明確な解答として大暴れしたようです。
3 《森》 2 《平地》 1 《島》 2 《梢の眺望》 2 《大草原の川》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《溢れかえる岸辺》 2 《樹木茂る山麓》 1 《汚染された三角州》 4 《伐採地の滝》 -土地(25)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《森の代言者》 3 《棲み家の防御者》 4 《空中生成エルドラージ》 4 《反射魔道士》 4 《死霧の猛禽》 1 《巨森の予見者、ニッサ》 4 《風番いのロック》 -クリーチャー(28)- |
2 《ドロモカの命令》 1 《勇敢な姿勢》 4 《集合した中隊》 -呪文(7)- |
4 《アラシンの僧侶》 4 《軽蔑的な一撃》 2 《変位の波》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《払拭》 1 《否認》 1 《勇敢な姿勢》 -サイドボード(15)- |
これは玉田 遼一が、【グランプリ・パリ2016】の予選ラウンドを13勝0敗2分の好成績で通過した「バントカンパニー」です。メインボードから4枚採用されている《風番いのロック》が特徴的なリストで、一般的な「バントカンパニー」では0~2枚しか採用していないところ、がっつりとフルスロットを割いています。
《風番いのロック》が活躍した背景には、《集合した中隊》の流行による地上戦の激化、小型飛行クリーチャーによる空中戦の流行があります。「4色《先祖の結集》」を筆頭とした、《集合した中隊》を主軸にしたデッキタイプとの地上戦は、いかなるデッキにとっても不毛な選択肢です。そこで様々なデッキが飛行クリーチャーでの空中戦を挑みはじめました。
《空中生成エルドラージ》や《カマキリの乗り手》などは、この文脈から流行したカード達です。
そして、《風番いのロック》こそが地上戦と空中戦ともに制するカードだと改めて脚光を浴びることになりました。
3 《平地》 1 《沼》 1 《島》 2 《窪み渓谷》 2 《大草原の川》 4 《汚染された三角州》 4 《溢れかえる岸辺》 3 《吹きさらしの荒野》 4 《乱脈な気孔》 1 《コイロスの洞窟》 -土地(25)- 4 《搭載歩行機械》 3 《永代巡礼者、アイリ》 2 《白蘭の騎士》 4 《空中生成エルドラージ》 4 《反射魔道士》 4 《風番いのロック》 -クリーチャー(21)- |
1 《勇敢な姿勢》 2 《苦い真理》 4 《残忍な切断》 2 《絹包み》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《真面目な訪問者、ソリン》 -呪文(14)- |
3 《軽蔑的な一撃》 2 《層雲の踊り手》 2 《隠れたる龍殺し》 2 《見えざるものの熟達》 2 《自傷疵》 1 《白蘭の騎士》 1 《龍王シルムガル》 1 《神聖なる月光》 1 《究極の価格》 -サイドボード(15)- |
構成する色は違いますが、【BIG MAGIC Invitational】を制した河浜の「エスパーミッドレンジ」も”《風番いのロック》デッキ”の1つです。《空中生成エルドラージ》・《反射魔道士》・《風番いのロック》の3種の神器は、玉田のデッキにも見られた強力なパッケージになります。これまでも強力な3枚でしたが、《風番いのロック》が強い今は、更なる活躍に期待できるでしょう。
ミッドレンジ同士の戦いが激化すると、1枚でも勝利をもぎ取れるくらい重くタフなカードに注目が集まります。4枚の《風番いのロック》もこの傾向から生まれたアイデアの一つです。こうして段々と重くシフトしていくミッドレンジたちをどのように咎めていくのか。これこそがこれからのスタンダード環境を紐解く鍵となるでしょう。
例年通りの使い古されたアプローチとしては、「赤系アグロ」のような軽いデッキで序盤を攻める、重いカードを軽く捌けるカウンター呪文でかわす、重いカード同士の戦いを制する工夫を用意する、などが考えられます。現在は地上の戦線があまりにも固いので「赤系アグロ」の復権は難しいかもしれませんが、《軽蔑的な一撃》などのカウンター呪文は有効な戦略です。
重いカードをぶつけあった末に打ち勝つ工夫は、どのデッキにも求められています。自分のデッキはどのように力比べをするのか。今週末はこの点に気を配るといい結果を得られるでしょう。
【今週のおすすめ】「バントトークン」
【先週の記事でおためし】として紹介した「バントトークン」が今週のおすすめです。
4 《森》 2 《平地》 1 《島》 2 《梢の眺望》 2 《大草原の川》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《吹きさらしの荒野》 2 《樹木茂る山麓》 2 《伐採地の滝》 2 《ヤヴィマヤの沿岸》 -土地(25)- 4 《爪鳴らしの神秘家》 4 《森の代言者》 4 《空中生成エルドラージ》 4 《反射魔道士》 4 《風番いのロック》 -クリーチャー(20)- |
4 《ニッサの誓い》 3 《絹包み》 4 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -呪文(15)- |
3 《搭載歩行機械》 3 《払拭》 3 《軽蔑的な一撃》 2 《勇敢な姿勢》 1 《荒野の確保》 1 《絹包み》 1 《進化の飛躍》 1 《神聖なる月光》 -サイドボード(15)- |
今週の天気のなかで《風番いのロック》が強いという話をしてきました。そこで浮かんでくるのは2つの選択肢です。《風番いのロック》を使うか、《風番いのロック》を対策するか。デッキをまるごと変えずとも、使う側にまわるか対応する側にまわるか、という選択になります。
しかし、実はもっといい3つめの選択肢があるんです。
それは《風番いのロック》を使ったうえで対策すること。このコンセプトにおいて「バントトークン」の右に出るものはいません。なぜならこちらの《風番いのロック》は、相手の《風番いのロック》よりも、“早く”、”大きく”、そして”多い”からです。
“早い”理由は《爪鳴らしの神秘家》にあります。
幅広い《風番いのロック》デッキが《空中生成エルドラージ》とのギミックを使っているなかで、差をつけるための更なるマナ加速はとても貴重な存在です。また、3ターン目の《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》はどのデッキにとっても脅威ですし、サイドボード後にカウンター呪文のための青マナを用意しやすくなることも助かります。
“大きい”秘密は、《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》と《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の全体強化能力に隠されています。
「エスパーミッドレンジ」のように《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を採用しているデッキもありますが、「バントトークン」にはさらに《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》をもつため、同じカードを並べ合う前提なら負ける道理はありません。
最後の“多い”というのは、相手よりも多く確実に《風番いのロック》を引き込めるということです。どれだけ《風番いのロック》をデッキに採用していても、それは最大でも4枚。お互いに引かないゲームもそこそこあるわけです。そこで《ニッサの誓い》が輝きます。
直接サーチするわけではありませんが、対戦相手よりも多く《風番いのロック》の姿を見られるはずです。
先週のリストよりもシンプルにまとめることができました。まだサイドボードが整っていないので、もし使う際には、気になる場所を調整してみてください。注意すべき点は、メインボードがしっかりとしていて、ボーディングできるスロットが限られていることです。
いたずらに4枚のカードをサイドボードにおいても「抜くものが……」と困ってしまうので、変な喩えですが、モダンの「親和」のサイドボードを作るイメージで添える程度に用意したほうがいいかもしれません。
いよいよ今環境も終幕間近
実質的なフィナーレは先週末でしたが、いよいよ『イニストラードを覆う影』の発売も間近に控え、『タルキール覇王譚』~『ゲートウォッチの誓い』スタンダード環境は幕を下ろそうとしています。新しいカードの発表についつい次の環境が楽しみになってしまいますが、現環境で楽しめる機会ももう数えるほどしかないはず。
次の『イニストラードを覆う影』を迎える前に、《カマキリの乗り手》や《包囲サイ》、《時を越えた探索》とのお別れを忘れずに。特に《時を越えた探索》などは下手すると競技フォーマットからは永遠にお別れの可能性すらありますし……。
なんにしても最後の最後までスタンダードを楽しみきりましょう!それでは良い週末を!
この記事内で掲載されたカード
Twitterでつぶやく
Facebookでシェアする