Jeremy Dezaniのプロツアー『イニストラードを覆う影』レポート

Jeremy Dezani





最初となるこの記事では、初めて【Hareruya Pros】の一員として挑んだ【プロツアー『イニストラードを覆う影』】についてお話したいと思います。

今回の内容は、私たちの新環境の調整過程や、私がプロツアーで使おうと考えていたデッキについてです。全てのデッキがとても面白いものばかりで、可能であればそれら全てをプロツアーで使用したかったくらいです。



チームに関して

数ヶ月前、齋藤 友晴は次のプロツアーに向けて一緒に調整しないかと私に尋ねてきました。彼のような偉大なプレイヤーから招待を受けるのはとても名誉なことなので、私は彼の申し出を受け、国際的なチームへの参加を決めました。

私たちの国際的なチームがどんなものかって?このチームは、国籍の異なる8か国から成る総勢15人の集まりなんです。


ニュージーランド: Jason Chung
オーストラリア: Paul Jackson, Anthony Lee, Maitland Cameron
香港: Lee Shi Tian, Faye Lai, Wing Chun Yam
フランス: Jeremy Dezani, Raphael Levy, Thierry Ramboa
日本: 齋藤 友晴, 森 勝洋
台湾: Hao-shan Huang
イタリア: Andrea Mengucci
アメリカ: Christian Calcano


こういったチームを組む際にぶつかりがちな問題は、文化と言語の違いです。もしも互いに十分なコミュニケーションが取れない場合、チーム内でグループができてしまいます。チーム内のグループ化を防ぐことは非常に重要です。

しかしながら、このチームに所属するプレイヤーたちはとても素晴らしい人たちばかりで、それに加えLee Shi Tianと齋藤 友晴のリーダーシップがこのチームの調整の成功を手助けしました。



スタンダード

『タルキール覇王譚』と『運命再編』 (フェッチランド、《包囲サイ》《カマキリの乗り手》など……) を失い『イニストラードを覆う影』が加入したことで、スタンダードは大きく様変わりしたため、正しいデッキを見つけることは簡単な仕事ではありませんでした。

先に開催された世界中の大会結果は、「バント・カンパニー」と「白単人間」がいかに支配的であるかを示していたので、私たちはそれら両方に強いデッキを探そうとしました。



● ひとつめのデッキ : マルドゥ・コントロール


炎呼び、チャンドラゴブリンの闇住まい


まず初めに、私はたくさんの除去、ドローサポート、手札破壊呪文と《ゴブリンの闇住まい》、そして《炎呼び、チャンドラ》/《衰滅》が入ったコントロールデッキを作りました。《闇の掌握》は現環境内でとても良いカードではあるものの、これを使うためにはたくさんの黒マナが必要です。

この「マルドゥ」デッキは、赤黒デッキに白を足したような形でしたが、赤黒主体のデッキで気に入らなかった点は、ライフ回復手段が乏しいところです。そのせいでゲーム中に複数枚の《骨読み》を安全に唱えることはできませんが、それでも《骨読み》は赤黒コントロールデッキの中で最高のカードです。


骨読み


追加の占術やドローサポート抜きではあなたのゲームプランを実行することは難しいですし、《骨読み》がなければ簡単にマナフラッドやマナスクリューに陥ってしまいます。

もしもあなたがライフ回復手段のないデッキで4枚の《骨読み》と4枚の《ゴブリンの闇住まい》を使用したならば、これらはあなたのライフトータルを大きく引き下げてしまいます。そこで《保護者、リンヴァーラ》《死の宿敵、ソリン》、そして (《ゴブリンの闇住まい》と相性の良い) 《治癒の手》といったカードを採用しているわけです。



「マルドゥ・コントロール」

4 《沼》
3 《山》
1 《平地》
4 《燻る湿地》
4 《進化する未開地》
3 《乱脈な気孔》
3 《戦場の鍛冶場》
2 《コイロスの洞窟》
2 《凶兆の廃墟》

-土地 (26)-

4 《ゴブリンの闇住まい》
1 《保護者、リンヴァーラ》

-クリーチャー (5)-
3 《焦熱の衝動》
4 《闇の掌握》
2 《苦しめる声》
2 《精神背信》
2 《究極の価格》
4 《骨読み》
2 《治癒の手》
2 《コラガンの命令》
3 《衰滅》
1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《先駆ける者、ナヒリ》
2 《炎呼び、チャンドラ》
1 《死の宿敵、ソリン》

-呪文 (29)-
3 《光輝の炎》
2 《強迫》
2 《精神背信》
2 《無限の抹消》
2 《破滅の道》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《引き裂く流弾》
1 《炎呼び、チャンドラ》

-サイドボード (15)-
hareruya



「マルドゥ・コントロール」は「バント・カンパニー」と「白単人間」のどちらに対してもメインボード戦の結果が良く、サイドボードからは追加の全体除去である《光輝の炎》のようなカードを採用することもできます。

しかしサイドボード中のゲームで、「バント・カンパニー」のカウンター呪文や、「白単人間」の《荒野の確保》《ウェストヴェイルの修道院》、さらには《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》がいかに大きな問題か気付くことになりました。

それこそが私がこのデッキではなく、他のもう少し能動的なデッキを試そうと考えた理由です。



● ふたつめのデッキ : 同盟者の結集


墓所からの行進カラストリアの癒し手


私は前環境の【4色ラリー】を懐かしんでいましたが、《墓所からの行進》は次なる《先祖の結集》になれる可能性があると気が付きました。

《墓所からの行進》のちょっとした問題点は、「同盟者」にしか機能しないことです。しかし緑と黒であれば、《獣呼びの学者》《カラストリアの癒し手》《森の代言者》《ズーラポートの殺し屋》といったカードを使用することができます。これらのカードは全て2マナであり、これが意味するところ、あなたは1枚の《墓所からの行進》で最高で4枚もの「同盟者」を戦場に戻すことができるということです。

このデッキの基本戦略は、《カラストリアの癒し手》《ズーラポートの殺し屋》を駆使して、チャンプブロックや《ナントゥーコの鞘虫》を絡めた攻撃で対戦相手のライフを削っていき、その後に《墓所からの行進》で「同盟者」を再利用することです。また、もしも《集合した中隊》で2体の《カラストリアの癒し手》を出した場合、それだけで4点もドレインすることができます。



「同盟者の結集」

3 《森》
3 《沼》
2 《平地》
4 《進化する未開地》
4 《ラノワールの荒原》
4 《コイロスの洞窟》
2 《風切る泥沼》
2 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地 (24)-

4 《ズーラポートの殺し屋》
4 《カラストリアの癒し手》
4 《森の代言者》
3 《獣呼びの学者》
4 《ナントゥーコの鞘虫》
4 《地下墓地の選別者》
4 《作り変えるもの》

-クリーチャー (27)-
4 《集合した中隊》
4 《墓所からの行進》
1 《進化の飛躍》

-呪文 (9)-
4 《究極の価格》
3 《悲劇的な傲慢》
2 《大天使アヴァシン》
2 《神聖なる月光》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《ゲトの裏切り者、カリタス》
1 《進化の飛躍》

-サイドボード (15)-
hareruya



このデッキはプレイするのがとても楽しく、「バント・カンパニー」と「白単人間」に対する結果も悪くありませんでした。このふたつのマッチアップのゴールは、《ズーラポートの殺し屋》を展開してチャンプブロックを繰り返し、チャンプブロックしたクリーチャーを《墓所からの行進》で釣り上げることです。このデッキにとっては、ゲーム中にただの一度もアタックしないことは決して珍しいことではありません。

「同盟者の結集」デッキの天敵は《ゲトの裏切り者、カリタス》で、サイドボードに4枚の《究極の価格》が採用されているのはそのためです。また、《ナントゥーコの鞘虫》などがいない状態で、同名のクリーチャーを並べないように気を付けましょう。さもなければ《石の宣告》がゲームを終わらせてしまいます。



● 最終的に使ったデッキ : アブザン・カンパニー


大天使アヴァシン作り変えるもの


調整の最終週に、私たちはチーム内でリーグ戦を開催しました。私とRaphael Levyがともにプレイした「アブザン・カンパニー」は大きな成功をおさめ、「白単人間」と「バント・カンパニー」に負けることなく、「赤緑ランプ」や「青赤コントロール」に対しても結果は悪くありませんでした。

私たちは《大天使アヴァシン》がいかに優れているかに気付き、《永代巡礼者、アイリ》《地下墓地の選別者》《ナントゥーコの鞘虫》といった大量の生け贄システムを組み込んで可能な限り《大天使アヴァシン》を生かす構成を模索しました。

マナベースには《ウェストヴェイルの修道院》《抵抗者の居住地》《コイロスの洞窟》《ラノワールの荒原》と大量の無色マナが含まれており、そのおかげで《作り変えるもの》を採用できましたし、《変位エルドラージ》の能力も問題なく起動できます。



「アブザン・カンパニー」

3 《森》
2 《平地》
1 《沼》
2 《梢の眺望》
4 《進化する未開地》
4 《コイロスの洞窟》
4 《コイロスの洞窟》
2 《抵抗者の居住地》
1 《風切る泥沼》
1 《乱脈な気孔》
1 《ウェストヴェイルの修道院》

-土地 (25)-

4 《死天狗茸の栽培者》
4 《森の代言者》
2 《エルフの幻想家》
1 《永代巡礼者、アイリ》
4 《地下墓地の選別者》
4 《作り変えるもの》
3 《変位エルドラージ》
2 《ナントゥーコの鞘虫》
1 《巨森の予見者、ニッサ》
4 《大天使アヴァシン》

-クリーチャー (29)-
4 《集合した中隊》
2 《悲劇的な傲慢》

-呪文 (6)-
4 《肉袋の匪賊》
4 《精神背信》
3 《神聖なる月光》
2 《苦渋の破棄》
1 《難題の予見者》
1 《悲劇的な傲慢》

-サイドボード (15)-
hareruya




■ プロツアー中に対戦したデッキ


●「白単人間」 : 3勝0敗

このマッチアップはとても有利で、それはこちらが後手であっても変わりません。《悲劇的な傲慢》は分かりやすく「白単人間」に対する最高のカードです。《悲劇的な傲慢》までにキャストするクリーチャーたちも、それと同様に優秀です。

《グリフの加護》に注意することと、《悲劇的な傲慢》を最大限に生かすためにも、《アクロスの英雄、キテオン》を「変身」させないように気を付けましょう。サイドボード後に加わる3枚目の《悲劇的な傲慢》は十分すぎるほどの備えです。【34:07】






●「バント・カンパニー」 : 1勝0敗

このマッチは明らかにあなたが有利です。「白単人間」と同様に、《悲劇的な傲慢》はこのマッチでも重要です。《大天使アヴァシン》は対戦相手の戦線を壊滅させますし、このデッキなら彼女を容易に「変身」させることができます。【09:30 & 36:22】






●「エスパー・コントロール」 : 0勝1敗1分

複雑ですが、決して勝てないマッチアップではありません。【26:22】






●「黒緑《過ぎ去った季節》」 : 0勝1敗

「エスパー・コントロール」と同じく、複雑ですが勝てないほどではありません。【39:28】






●「黒緑サクリファイス」 : 0勝1敗

非常に相性が悪いです。【09:36】






●「グリクシス・コントロール」 : 0勝1敗 & 「白緑トークン」 : 0勝1敗

非常に相性が悪いです。



■ 総括

今大会では、上位卓に「白単人間」も「バント・カンパニー」もおらず、代わりに《衰滅》《ゲトの裏切り者、カリタス》の入ったデッキがたくさん存在しましたが、それはアブザンカンパニーを使う私にとって最悪の結果となってしまいました。


衰滅ゲトの裏切り者、カリタス


コントロールデッキに対する私たちのサイドボーディングは、お世辞に良いものとは言えませんでした。今ならば、サイドボードはこのような形になるべきでしょう。




もしもこのデッキを再び使用するのであれば、メインデッキにも少しの変更を施し、《エルフの幻想家》《死天狗茸の栽培者》を2枚ずつ抜いて、4枚の《ズーラポートの殺し屋》に変えようと思います。

あなたが大会に参加する予定で、なおかつそこで「白単人間」と「バント・カンパニー」が多いと予想するのであれば、上記みっつのデッキはどれも良い選択ですし、サイドボードに少しの変更を加えれば新しいメタゲームにも適応できるでしょう。

晴れる屋での最初の記事を読んでくれてありがとう。

I wish you all a good day.



Jeremy Dezani



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