市川 ユウキ(Magic Online)。
彼が【第3期モダン神決定戦】で砂田 翔吾を下してから、1年強の月日が流れた。これまでに2度の防衛戦……高野 成樹、佐藤 啓輔といった刺客を下して神の座に君臨する市川は、もはや向かうところ敵なしといった様子に見える。
プロシーンでも一線で活躍を見せる、モダンプレイヤーの中でも指折りの強者。今回はそんな市川に、激動を迎えたモダン環境の所感と神決定戦への意気込みを語ってもらった。
モダンよもやま話
--「【前回】のインタビューから5ヵ月経ち、モダン環境は大きく変化しました。特に《欠片の双子》などは【市川さんの代名詞】と言えるデッキでしたが残念ながら……」
市川「禁止されちゃいましたねー! 個人的に好きなデッキだったのでショックでしたよ(笑) そもそもモダン環境における双子コンボはオールイン系のコンボデッキに対する抑止力として必要なデッキだと考えていたので、この改定にはびっくりしました」
--「その後、世界中で大暴れしていたエルドラージデッキのキーパーツである《ウギンの目》も禁止されましたが、やはりエルドラージは強すぎたんでしょうか?」
市川「エルドラージは……ヤバかったですね。まともな対抗手段なかったし、同型も超初手ゲーで健全とは言い難いデッキだったので、禁止は妥当だったと思います。僕は【グランプリ・メルボルン2016】でリビングエンドを使ってトップ8に滑り込みましたが、エルドラージ側が墓地を意識するようになったら勝ててなかったと思います。青白とかはサイドボードも強かったですし……」
--「さらに《弱者の剣》と《祖先の幻視》の解禁もありましたね。このあたりの変更についてはどのような印象をお持ちですか?」
市川「いや、僕『時のらせん』当時はマジックやってなかったのでどっちもほとんど使ったことないんですよね(笑) ただ、《祖先の幻視》はずっと解禁してほしかったので嬉しいですね。《弱者の剣》に関してはサイド後に弱くなりそうな印象ですが、これもまだ試してないので早く使ってみたいです」
--「モダンがプロツアーフォーマットから除外されるという発表がなされましたが、今後はやはりプロにとってモダンをやる機会は減ってしまうのでしょうか?」
市川「まぁグランプリとかWMCQもあるのでまったくやらなくなるってことはないと思いますけど、今後はメタゲームが進むのは遅くなりそうですね。逆に、レガシーとかもプロツアーあったらメタゲームいろいろ影響あったと思いますし。モダンは競技シーンが多すぎることでよくない影響が出ていたと思うんですよね。たまに新しいデッキが出てくるくらいの方がいいですよ」
MOは呼吸
--「市川さんといえば【『マジックは趣味』発言】で知られていますが、今でもそのスタンスはお変わりありませんか?」
市川「スタンスは基本的に変わりません。プロツアーとかには出てますが、現状はお金を稼ぐ手段になってませんしね。ただ、マジックでご飯を食べていける人が出てきたらいいな、とは思います。そういった環境ができあがっていったら理想的ですし、それが自分でなくても……もっと後から出てきた人でもいいんです」
--「ちなみに、普段は勤め人でもある市川さんのスケジュールについてお伺いしたいのですが……休日の過ごし方がすごいですね。ずっとMOじゃないですか」
市川「そうですね。僕本当に出不精なんで、予定がない限り休日は一歩も家から出ないんです。MOは呼吸みたいなものなので、やらない理由がないんですよね」
--「完全にMO中毒ですね……」
市川「いや、本当にそのとおりです(笑) 仕事中もマジックのことばかり考えてますし。デッキリスト考えてメモしておいて、帰ったらすぐに試す! みたいな。どうしても平日はプレイ時間を取りづらいので、考える時間だけは意識的に取るようにしています」
--「なるほどなるほど。話は変わりますが、【プラチナプロの賞金の減額】について一度発表され、【後に取り下げられました】が、市川さんはこの一連のニュースに関してどのようなご意見をお持ちでしょうか?」
市川「変更内容自体は悪くないと思います。世界選手権に力を入れたり、スポンサーにもっと盛り上がってもらう、みたいなベクトルは問題ないですよね。ただ、いかんせん発表の仕方というかタイミングが悪かったかなと思いますね」
--「今スポンサーという言葉が出ましたが、スポンサードはどうすれば盛り上がるとお考えですか?」
市川「うーん、難しいですね……たとえば、プロリーグをやったりとか? みんなやっぱりプロ対プロの試合が見たいじゃないですか。これ、やるとしてもタイミングとか難しそうですけど。グランプリ前とかちょっと微妙ですし、シビアな問題ですね……まぁ、今言ったようなものに限らずプロが日の目を浴びるような機会が増えたらいいですよね。今後の課題ということで」
勝率73%の向こう側へ
--「これまで砂田 翔吾さんを破って第3期モダン神に就任され、高野 成樹さんや佐藤 啓輔さんといった強豪を相手にデッキを読み切って防衛に成功してきましたが、正直一番やりにくかった(手ごわかった)相手などはいらっしゃいますか?」
市川「もちろんみなさんとても強い方ではあったんですけど、正直『そうは言っても僕が勝つだろうな』って気持ちがあったんですよね。だから、そこまでやりにくかったことはないです」
--「では、ぶっちゃけ今回も楽勝!という感じですか?」
市川「いや、正直やりにくさで言ったら今回が一番やりにくいです。【スタンダード神挑戦者決定戦でも勝ってた】し、単純にマジックの素養高そうですよね。いろんなデッキ使えそう」
--「なんだか【前回のインタビュー】に引き続いて弱気ですね」
市川「いや、これは僕に限らず松田さんも同じだとは思うんですが、特に今は直近で大きな環境の変化があったので、デッキの予想しづらいっていうのもありますね。あと、この前【プレインズウォーカー・ポイント】のページで計算してみたんですけど、僕のモダンの勝率ってだいたい73%くらいなんですよ。ということは4回に1回以上は負けてて、今回が4回目のモダン神決定戦なので……」
--「たしかに勝率的にはそうなるかもしれませんが、前回もそう言って勝利していらっしゃいましたから……最後に意気込みのほどを語っていただければと思います」
市川「そろそろ負けそう(笑) まぁ、気張らずにやっていけたらなーと。モダンで勝ち続けるのは難しいです><」
--「ありがとうございました。当日もがんばってください!」
柔らかな物腰で、軽妙洒脱としたトークを披露してくれた市川。普段の飄々としたキャラクターからは想像もつかないが、そのマジックへの情熱は本物だ。
来る第6期モダン神決定戦で、市川はどのようなプレイを我々に魅せてくれるのか? 今から期待が高まる。