だらだらクソデッキ vol.6 -Super Crazy Zoo-

伊藤 敦

伊藤 敦



 時折、考えることがある。

 私たちはウィザーズ社R&Dの手のひらの上で弄ばれているだけなのではないか、と。

 例えばスタンダードにおける5氏族の精緻な均衡。メタゲームは絶えず変化し、1つのデッキが支配し続けたりはしていない。

 この奇跡的なまでのバランスを見るだけでも、『タルキール覇王譚』がいかに長大な時間と膨大な労力をかけてデザインされたかがわかろうというものだ。

 だからこそ、疑ってしまう。

 どんな新しいデッキも、彼らにとっては既に通過したいち地点に過ぎないのではないか、と。

 そう思うと、デッキを作る気持ちが萎えかけてしまいそうになる。

 だが同時に、R&Dも全てを予測できるわけではない、と自分の中の理性が語りかけてくるのだ。

 何故ならその証拠に、彼らは「禁止・制限リストの改定」(参考:【スタンダードの禁止に関する声明】)という、全てが予測できるなら必要ないはずのものを頻繁に行っているからだ。

 確かにR&Dは私たちより先を行っている。だがそれはごく限られた部分においてであり、現代のMTGのプレイヤー人口からすれば、どんな新エキスパンションでも発売から1か月も経てば彼らの予測しないデッキがいくつも登場しているに違いないのだ。

 だから結局、私たちはデッキを作り続けるしかないのだろう。

 いつの日か自分の作ったデッキが世界を席巻し、挙句そのデッキのキーパーツが禁止・制限リストに載るという、最高の栄誉を得るその日まで。



1.妄想編

 クソデッキ、再びモダンの世界へ。

 事の始まりはまたしてもあの男だった。

 Channel Fireballクソデッキビルダー、Travis Woo

 彼が生み出した狂気のクソデッキ。全知ナーセット

 これを見たときには「やられた」と思った。

 間違いなく、彼もまた神に挑んでいる

 絶え間なくクソデッキを作り続けることで、ごく稀に全世界を驚嘆させるデッキを作り上げるという、ゼウスに至る道

 認めざるをえない。

 Travis Wooこそは超えるべき壁、最強のライバルなのだと。



 やはり大事を成すには狂気が必要なのだ。

 そういえば、クソデッキの師匠である浅原 晃も言っていたではないか。


浅原 「デッキを作るって才能は俺が思うにクソデッキを愛せる才能だけどね(笑)。俺はデッキを作ること自体が好きだし、良くわからないデッキでデュエルして頑張って勝つのも好きだから。1からのデッキ構築なんて、たくさん作ってその中に極まれに当たりがあるってくらいで……」



 『ゼウスを目指す』とは、具体的には何を指しているのだろうか?

浅原 「普通のことだよ。日々色んなデッキを触って、可能性を1つ1つ確かめることだ」

 それくらいのことだったら。

 マジックプレイヤーなら、誰もが出来ているではないか。

 ならば、誰でも既に『ゼウスを目指』している、のだろうか?

浅原 「いや、出来ていない。みんなそれが出来ていないからこそ、クソデッキなんて言葉が簡単に出てくる。可能性を試していないんだよね、要するに」



 どんなにクソなデッキであろうと諦めずに1つ1つ可能性を確かめてまわる、無限の総当たり。

 だからこそ、いつかは「本物」に辿り着くのだ。

 Wooもまた、それを実践している。90枚リビングエンドとか言い出したときはついにお脳がおイカれになってしまわれたかと思ったが、つまりはそういうことなのだろう。

 すなわちデッキ製作においては、長い時間をかけて練り上げた渾身の一作も、馬鹿みたいなフラッシュアイデアも、全て等しく検討する価値がある。

 その事実を再確認したからには、思いついた端から試していくほかない。


 ……やはり、ずっと気になっていたあれを使うか。

 あれ。

 『タルキール覇王譚』がもたらした、最強のコンセプト。

 発売するやいなやスタンダードだけでなくモダンやレガシー環境をも席巻してしまった、カードパワーの極致。



宝船の巡航時を越えた探索




 「探査」

 しかし、《宝船の巡航》《時を越えた探索》については、既に多くのプレイヤーが様々なデッキに投入し、その強さを披露している。今さら何を……と思われるかもしれない。

 だが、違う。

 私クラスになるとカードを引いたりカードを探したりといった悠長な効果には興味がなくなるのだ。

 欲しいのは、殺意

 なんだかわからないうちにキープした(後手番の)相手を無抵抗のうちに瞬殺する。それができるカードこそ、私が求めてやまない性能だ。

 そんな「探査」カードがあるのだろうか?



死滅都市の悪鬼奈落の総ざらい




 まさか、そんなクソ重いカード使うわけないじゃないか。

 それに、レアリティがちょっとばかし違うようだ。

 そう、今回の主役は。







わめき騒ぐマンドリル




 《わめき騒ぐマンドリル》


 「探査」持ちのカードの中でも一際ピーキーなこのカードを使って、「探査」界の最強が誰なのかを全世界に思い知らせる。

 しかし、昨今のカードパワーインフレ時代においては、たとえ2ターン目に4/4トランプルが出たとしても《タルモゴイフ》さんに鼻で笑われてしまうことだろう。

 ということはつまり。

 1ターン目に出すしかない。

 そう、もしこのカードが1ターン目に出せたならば。

 《野生のナカティル》《秘密を掘り下げる者》以来長らく停滞していた1マナ生物のインフレの歴史に、また新たな1ページを刻むことができるのだ。

 1マナパワー4。

 何と甘美な響きだろう。

 そしてモダンほどのカードプールで「探査」をフル活用するなら、もはや右上に書いてある「5」という数字は存在しないに等しい。

 つまり「1ターン目マンドリル」から始まる至高のビートダウンは実現可能、ということだ。

 ならば作るしかない。狂気にしか思えなくても、可能性を1つ1つ確かめるために。

 それはまさしくZooを超えたZoo。

 「Super Crazy Zoo」を!



2.爆誕編

 クソデッキ、3分で爆誕。

 大体「Zooを作る」というのと「1ターン目にマンドリルを出す」というのが決まった段階で60枚のうち48枚くらいは決まっていたのだ。

 あとは残った細かい部分に肉づけしてやるだけでいい。

 さあ、今こそ見せよう。

 これが「1ターン目マンドリル」の真の姿だ!


「Super Crazy Zoo」

1 《繁殖池》
1 《聖なる鋳造所》
1 《踏み鳴らされる地》
1 《寺院の庭》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
2 《乾燥台地》
1 《森》
1 《山》

-土地(16)-

4 《僧院の速槍》
4 《野生のナカティル》
4 《苛立たしい小悪魔》
4 《通りの悪霊》
4 《わめき騒ぐマンドリル》

-クリーチャー(20)-
4 《ギタクシア派の調査》
4 《変異原性の成長》
4 《稲妻》
2 《欠片の飛来》
4 《魔力変》
3 《途方もない力》
3 《強大化》

-呪文(24)-
4 《はらわた撃ち》
4 《紅蓮地獄》
4 《部族養い》
3 《宝船の巡航》

-サイドボード(15)-
hareruya



魔力変ギタクシア派の調査通りの悪霊




 1ターン目にマンドリル(ただしライフはない)


 フェッチギルランに加えて《ギタクシア派の調査》《通りの悪霊》と、どう見ても初期ライフが10点を割ってそうという、いっそ清々しいほどにゲームのルールを無視した自殺志願ぶりである。

 ちなみにここでいう「Crazy」とは、仮にマジックの生みの親であるリチャード・ガーフィールド博士にこのデッキを見せたら確実に“Oh……Crazy……” と呟くだろう、という意味の「Crazy」であることは言うまでもない。


 だが、今回もまたガーフィールド博士が予測すらしていなかった符合があった。

 それも、「スラムダンク」や「るろうに剣心」といった漫画とではない。

 とある日本の神話との、細部に至るまで限りなく完璧に近い一致であった。

 その証拠を、今からお見せしよう。















 「桃太郎」


 作:まつがん





 むかしむかしあるところに、



苛立たしい小悪魔




 おじいさんと、



苛立たしい小悪魔




 おばあさんがいました。


 そう、そこはナメック星でした。

 おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に(中略)

 やがて桃を持ち帰った2人は、その桃を食べるために包丁を差し入れようとしますが、その瞬間!

 桃が2つに割れ、中から元気な赤子が飛び出してきました。

 おじいさんとおばあさん(4/3)はその子を「桃太郎」と名付け、養子縁組をして我が子のように可愛がって育てました。



僧院の速槍




 そして時は経ち、成長した桃太郎は胸に2つの桃を抱えまさしく桃太郎「鬼が島」というところで悪さをする鬼の噂を耳にし、鬼退治に向かうことにします。

 その道中で桃太郎は3匹の動物と出会い、きびだんごを与えて家来にしました。



野生のナカティル




 犬(?)と、



わめき騒ぐマンドリル




 猿と、



苛立たしい小悪魔




 キ爺 おじいさんでした。


 桃太郎一行は「鬼が島」に辿り着き、鬼と対峙します。



通りの悪霊途方もない力強大化




 しかし「果敢」な桃太郎がきびだんご(ジャイグロ)の力を借りて鬼たちをばったばったと薙ぎ倒したり、猿(4/4)が素で鬼(3/4)をぼこぼこにしたりして、ついに鬼が島の鬼たちを全員退治することに成功しました。

 おじいさんは4点のライフを支払われて墓地に送られて逝きました。

 

宝船の巡航




 桃太郎一行は鬼が島に溜めこまれていた宝を持ち帰り、ついでにおじいさんの遺産も相続してホクホク顔で凱旋しましたとさ。めでたしめでたし。














 この完璧な符合(?)。


 まさかガーフィールドは桃太郎までもマジックの世界観に組み込んでいたとでもいうのだろうか。

 ならばこれはもう、確かめるしかないだろう。ゼウスに至る可能性を。

 そして証明するのだ。

 『タルキール覇王譚』のトップコモンは《宝船の巡航》などではなく、この《わめき騒ぐマンドリル》であると!



3.実戦編

 クソデッキ、マジックオンラインで8人構築に出場する。


◆第1回戦 VS 青赤デルバー

・1戦目 まさか、こんなに初期ライフが少ないデッキが青赤デルバーに勝てるのか?勝てるのだ。マジックだから、相手が事故れば勝てるのだ。

・2戦目 今度こそ順調に土地をセットする対戦相手だが、どうやら逆にフラッドしている様子。2ターン目に《わめき騒ぐマンドリル》を召喚するとこれが生き残り、クロックを刻む。さらに《若き紅蓮術士》が出てきたところで《紅蓮地獄》でトークンごと一掃。最後は《稲妻》《変異原性の成長》でかわしたおじいさん《苛立たしい小悪魔》とともに爽快に撲殺。あまりの噛みあいぶりに画面の向こうの相手の舌打ちが聞こえるようだった。

〇〇


◆第2回戦 VS ジェスカイの隆盛コンボ

・1戦目 《苛立たしい小悪魔》に4点払われたらクロックが何も残らないゴミハンドをキープしたけど、相手のマナクリ焼いたら動きが鈍くなって、駆けつけた《わめき騒ぐマンドリル》にジャイグロ撃ってたら相手が土地からダメージ食らいすぎてて勝手に死んでた

・2戦目 相手が《ギタクシア派の調査》をファイレクシアマナで連打しすぎた結果、《僧院の速槍》の何気ないアタックを(手札の《強大化》が見えてるせいで)相手の《極楽鳥》がチャンプしなくちゃいけない事態に。それでもコンボスタートされるが、途中でコンボが止まって勝ち。画面の向こうの相手の舌打ちが(ry

〇〇


◆第3回戦 VS 青赤デルバー

・1戦目 《通りの悪霊》《ギタクシア派の調査》を4回サイクリングした結果、ゴミのような手札が残った。負け。

・2戦目 すごいぞ、この《わめき騒ぐマンドリル》ってカードは!2度ほど《蒸気の絡みつき》されると、《タルモゴイフ》と違ってもう場に出ることはないんだ。知ってた?うん、知ってた。

××

結果:2-1。やったぜ!このシリーズ始まって以来の快挙だ!



4.後悔編

 でもやっぱりクソデッキなので解体。

 何故か奇跡的に2勝出来ちゃったけど初期ライフ10はさすがにマジックではなかった。

 ん、待てよ……初期ライフが10ということは……













死の影



お死いさん「呼んだ?」





「Super Crazy Zoo EpisodeⅥ ~ジジイの帰還~」

1 《草むした墓》
1 《聖なる鋳造所》
1 《踏み鳴らされる地》
1 《寺院の庭》
4 《吹きさらしの荒野》
4 《樹木茂る山麓》
2 《血染めのぬかるみ》
1 《森》
1 《山》

-土地(16)-

4 《僧院の速槍》
4 《野生のナカティル》
4 《死の影》
4 《通りの悪霊》
4 《わめき騒ぐマンドリル》

-クリーチャー(20)-
4 《ギタクシア派の調査》
4 《変異原性の成長》
4 《稲妻》
2 《欠片の飛来》
4 《魔力変》
3 《肉体+血流》
3 《強大化》

-呪文(24)-
4 《はらわた撃ち》
4 《紅蓮地獄》
4 《部族養い》
3 《使徒の祝福》

-サイドボード(15)-
hareruya



 こうして、ダークサイドに落ちたジジイが《強大化》しながら桃太郎に復讐するデッキ(?)が完成したのだった。


 それではまた次回。

 良いクソデッキライフを!