WMCQ東京
日本代表を決めるワールドマジックカップ予選、その第2弾はモダン in 東京!イベントレポートをお届けします。
■ デッキ選択
【前週の第7期モダン神挑戦者決定戦】では【ジャンド】を使用し、7-2。あらゆるマッチアップで良い戦いをするまずまずのデッキでしたが、優勝するポテンシャルを感じることはできませんでした。大きく負け込むことはないものの、デッキの性質上、接戦の末のドロー勝負になる展開が珍しくありません。
引けた・引けなかった次元の話はトーナメント全体で見ると概ね収束する傾向があり、7-2のスコアは非常に妥当な数値であると感じました。
トップ8を目指すには悪くない選択肢ですが、優勝にのみ価値のあるWMCQのイベントにおいては不向きな選択肢だと考えます。
予想されるボーダー7-1-1を達成するためには8回戦終了時点で7-1、オポネントを考慮しより確実に行くのならば7-0の成績が必要です。
「安定して勝つ」より「勝つときに勝ちきる」デッキを。新たな選択肢を求めて直近のイベントを洗っていたところ、ある一つのデッキが目に止まりました。
3 《島》 1 《山》 2 《聖なる鋳造所》 1 《神聖なる泉》 1 《蒸気孔》 4 《沸騰する小湖》 4 《溢れかえる岸辺》 1 《汚染された三角州》 1 《硫黄の滝》 -土地(18)- 4 《氷の中の存在》 -クリーチャー(4)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《血清の幻視》 4 《思考掃き》 4 《彼方の映像》 4 《稲妻》 3 《信仰無き物あさり》 4 《稲妻のらせん》 4 《魔力変》 3 《差し戻し》 4 《紅蓮術士の昇天》 -呪文(38)- |
3 《疲弊の休息》 3 《血染めの月》 2 《流刑への道》 2 《払拭》 2 《石のような静寂》 1 《白鳥の歌》 1 《摩耗+損耗》 1 《仕組まれた爆薬》 -サイドボード(15)- |
第7期モダン神挑戦者決定戦トップ8、岡田 尚也さんのリストです。
《紅蓮術士の昇天》デッキ自体はモダン環境最初期から存在するデッキで、《有毒の蘇生》のを用いた無限ループタイプか、マナブーストから《ぶどう弾》を決めるストームタイプが主流ですが、こちらのリストはそのどちらにも属しません。
昇天クエスト達成下での《稲妻》および《稲妻のらせん》、そして『イニストラードを覆う影』から加わった新勢力《氷の中の存在》が勝ち筋に据えられています。
《氷の中の存在》は5枚目以降の《紅蓮術士の昇天》と言っても遜色ないほどに強力で、実質0マナスペルが8枚(《ギタクシア派の調査》《魔力変》)あるこのデッキでは高速で変身を遂げ、4ターン~5ターンキルは平気でやってのけます。
最序盤においてはむしろ《紅蓮術士の昇天》よりも強力な存在で、これまで序盤は押し込まれるだけだった昇天デッキの性質を劇的に変化させました。【親和】や【ドレッジ】のような高速展開デッキにも十分な勝ち目をもたらしてくれます。
裏面の《目覚めた恐怖》のパワー7という数値も、もう一方の勝ち筋である火力呪文との噛み合いが良く、2回攻撃(14点)+火力呪文2枚(6点)はよくあるフィニッシュです。モダンのマナベースの基本であるフェッチ+ショックインで3点のペイライフが発生していれば、必要な火力呪文の枚数は1枚少なくなります。
岡田さんはこのモダン神挑戦者決定戦および前日の【The Last Sun 2016 予選】を両日合わせて14-2-2と、圧倒的なパフォーマンスを見せています。
ぶん回りのある突き抜けたリストでかつ直近の大会で好成績、まさに今求めたデッキ!
デッキを信じてMOのリーグで調整を続け、最終的に下記のリストでの出場を決めました。
3 《島》 1 《山》 2 《聖なる鋳造所》 1 《蒸気孔》 1 《神聖なる泉》 4 《溢れかえる岸辺》 4 《沸騰する小湖》 1 《乾燥台地》 1 《硫黄の滝》 -土地 (18)- 4 《氷の中の存在》 -クリーチャー (4)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《稲妻》 4 《血清の幻視》 4 《手練》 4 《思考掃き》 3 《信仰無き物あさり》 4 《稲妻のらせん》 4 《魔力変》 3 《差し戻し》 4 《紅蓮術士の昇天》 -呪文 (38)- |
3 《疲弊の休息》 3 《血染めの月》 2 《払拭》 2 《流刑への道》 2 《神々の憤怒》 2 《石のような静寂》 1 《差し戻し》 -サイドボード (15)- |
オリジナルからの変更点は3つ。
・メインボードの《彼方の映像》を《手練》に変更
《彼方の映像》は特定のマッチアップで非常に効果的で、特に相手側が勝手に墓地を肥やすドレッジ戦においては鬼神の働きを見せます。しかし、その他多くのマッチアップではゲーム終了まで1マナ1ドローの域を抜け出さないことが多く、またこのデッキはどれだけ早く《氷の中の存在》か《紅蓮術士の昇天》にたどり着けるかで勝率が激変するため、アクセス率を高めやすい《手練》に変更しました。
・《神々の憤怒》をサイドボードに追加
《氷の中の存在》があるとはいえ、面展開に弱い性質は残っています。《流刑への道》や《突然の衰微》で《氷の中の存在》の変身を防がれてしまうケースもありますので、きちんと面に触れる手段は必要だと感じました。
特に直近の神挑戦者決定戦を優勝した【ドレッジ】は増加の気配を見せていたので、《彼方の映像》をアウトした分の相殺処置でもあります。
・《差し戻し》の4枚目をサイドボードに追加
短い調整期間でしたが、このデッキをプレイする上で致命的だと感じたカードが3種あり、《ヴェールのリリアナ》《先駆ける者、ナヒリ》《祖先の幻視》がそれにあたります。
最初は《否認》のようなカウンター呪文で対処しようと検討したのですが、このデッキはリソースを増やす手段が《紅蓮術士の昇天》ぐらいしかなく、相手への単純な妨害でリソースを減らす余裕がないと感じました。
またサイドカードを投入するということは当然何かしらの呪文をサイドアウトしているということになりますが、昇天デッキは各カードの枚数が非常に重要で、いたずらに枚数を減らしてしまうとクエストの達成に支障をきたし、デッキの動きを破壊してしまいます。結果、上記全てに有効でかつスペルの種類の制約を守れる《差し戻し》の4枚目を追加することに決めました。
代わりに外したのは《白鳥の歌》《摩耗+損耗》《仕組まれた爆薬》の各種1枚のカード。
特定の呪文に触れるすべがデッキからなくなってしまうため、《風景の変容》のような強烈なソーサリーや《安らかなる眠り》《虚空の杯》といった置物で詰んでしまうリスキーな変更でもありますが、今回は割り切りの範疇としました。
限定的なシチュエーションで希望するカードをわずかに用意しておくより、昇天クエスト達成の観点で見た、デッキの円滑な動きを優先しています。
《紅蓮術士の昇天》に依存しきった構成ならこの方法は取るべきではないと思いますが、《氷の中の存在》には多少の無理を押し通してくれるだけの太さがあり、一筋縄では行きません。
何より、今回のテーマは「乗ったときに勝ちきれる構造」です。
■ 当日
参加者は333名。7-1-1での通過はオポネントの関係で少なくとも6-0スタートが最低条件と思われるので、非常に厳しい戦いです。
また今大会はトップ8ではなく「優勝が明確なゴール」なため予選ラウンドの通過順位も重要で、SEを有利に戦うためにも高いオポネントを保つ必要があり、序盤ラウンドでの敗北は命取りになりえます。
予選ラウンド対戦結果は以下。
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
Round 1 | トリコ昇天 | ×〇〇 |
Round 2 | マーフォーク | 〇×〇 |
Round 3 | アブザンカンパニー | 〇〇 |
Round 4 | マーフォーク | 〇〇 |
Round 5 | 青白コントロール 【ビデオマッチ】 | 〇〇 |
Round 6 | グリクシスデルバー | 〇×× |
Round 7 | アドグレイス (Team Cygames 渡辺雄也さん) 【ビデオマッチ】 | 〇×〇 |
Round 8 | エスパートークン | 〇〇 |
Round 9 | 青緑感染 (WMC2014日本代表 Aryabhima Rahmanさん) | 〇〇 |
序盤幸先よく5連勝するも、肝となるR6で敗北。やむなく最終戦まで戦うこととなり、なんとか勝利してSEへと駒を進めました。
【トップ8のデッキ分布】はドレッジ2、マーフォーク、トリコ昇天、4色人間、スケープシフト、ジャンド。反対意見も多そうですが、僕は昇天デッキにおける対ドレッジはあまり苦手意識を持っていない(調整期間では6勝1敗)ので、有利不利の割合で見れば半々程度だと認識しています。
ここからがしんどいWMCQ。昨年の準々決勝敗退の雪辱を果たすべく気合を入れて臨んだSEの対戦結果は以下。
ラウンド | 対戦デッキ | 勝敗 |
準々決勝 | 4色人間 【動画】 | ×〇〇 |
準決勝 | マーフォーク 【動画】 | 〇〇 |
決勝 | スケープシフト 【動画】 【テキストカバレージ】 | ×× |
決勝敗退!代表ならず……
【決勝戦のスケープシフト】は《仕組まれた爆薬》がメインボードから3枚採用されており、昇天側のキーカード2種が共にマナコスト2のパーマネントであることから、非常に効果的な構成となっていました。かつこちらはメインボードサイドボード共に確定カウンター呪文を用意しておらず、マナが溜まり次第《風景の変容》を連打されると《差し戻し》が尽きたタイミングで敗北が確定してしまいます。
相性は最悪で、事前の作戦会議で分が悪くなる前に押し切る方針を決めていたのですが、《ギタクシア派の調査》で3枚の《仕組まれた爆薬》を確認したときは天を仰ぎそうになりましたね(笑)
僕は大味な一撃必殺が大好きで、当然【スケープシフト】というデッキもその例に漏れないのですが、今回モダンフォーマットに着手するにあたっては「最近勝っていない」という理由で見向きもしませんでした。優勝した竹下さんのリストには《仕組まれた爆薬》以外にも細かな調整の後を見て取ることができ、現状のメタゲームにバッチリハマっていました。
プレイも迷いがなく的確。本当に素晴らしかったです。理詰めの選択で進んだ最後に待っていたのもまた、理の敗北。マジックは果てしない。
■ 大会を終えて
これでまた振り出しに。ですが、失ってばかりという訳でもありません。
前回のGP台北に関してもそうですが、ここ最近はずっと「地力を磨くこと」をテーマとしていて、その一環で「正解デッキを選ぶこと」にこだわっています。
同デッキを選択された浅原晃さんがトップ8に残られた点を踏まえても、今回選択的な面に誤りはなかったと思っていますし、大筋で見れば前進を続けています。
もう少し時間が必要になりそうですが、今日より明日、明日よりその先の自分を見据えて成長していきます。
次なる舞台は【GPシドニー】。翌週の【PT『異界月』】と連戦となっている格好で、日本からも多くのプロプレイヤーが参加予定ですが、僕も参加することに決めました。
ただ、僕にプロツアーの権利はありません。
旅費も決して安くはありませんし、強豪ひしめくフィールドとなることが予想されるためプロツアー権利獲得という面での期待値も限りなく低いのですが、一つでも多く経験を重ね、より多くを学んで帰ってきたいと思っています。
勝つには勝つための、上手くなるには上手くなるための理由が必要ですからね。
それではまた次回。
原根
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