会場が撤収モードに包まれ、椅子や机、パーテーションが片付けられていく時間。2016年9月11日、21時前後。3日間に渡る【グランプリ・京都2016】が間もなく終わろうとしている。溢れんばかりの熱気とプレイヤーに満ちていた京都パルスプラザも、数時間後には完全撤収となるだろう。
ほとんどのプレイヤーが帰路についているか、あるいはグランプリの思い出を肴に祝杯を上げているであろう時間。しかし、今なおこのときに、明確な熱量を有する人間がいる。
田村 成幸(大阪)。《小悪疫》や手札破壊によるリソース戦略を主眼とした「白黒ポックス」を手に長丁場の予選ラウンド、そして決勝ラウンドを勝ち抜いてきた大阪のプレイヤーだ。レガシーと言えどポックスデッキはなかなかお目にかかれるものではない。それだけに、このデッキでここまで勝ち進んできた事実が田村の実力と自信を証明している。
堀 雅貴(大阪)。田村と同じく大阪在住である彼が選択した武器は「土地単」。土地が半分以上、クリーチャーは0、残りはスペルといった具合に、デッキリストで一際異彩を放つ特徴的なデッキだ。しかしそのポテンシャルは本物である。妨害手段から勝利手段まで、種々様々な土地を並べ、使いこなし、堀は「決勝戦の舞台」という土地へ辿り着いた。
どちらも大阪在住の両者。実は、彼らの共通点は所在地だけではなかった。
田村「堀くんは大学の後輩なんですよ。僕が在学中に知り合いました」
232名の大会、それも決勝戦でまさかの先輩後輩対決である。
互いによく知る間柄ゆえか、両者はリラックスした面持ちで会話を交わし、ゲームの準備を進めていく。
グランプリの閉会が近づいていることを報せるアナウンスを背景に、彼らにとってのグランプリが、「ENNDAL GAMES協賛 日本レガシー選手権 Summer」において“レガシーの1位”を手にするための最後の闘いが幕を開けた。
Game 1
田村は1マリガン、堀はダブルマリガンからのスタート。堀は先手も相まって、手札枚数が心許ない。
田村は《暗黒の儀式》から《思考囲い》。ダブルマリガンした相手に対して更なる追い討ちをかけるべく放たれた手札破壊だが、しかし公開された堀の手札はすべて土地。ある意味、実に”土地単らしい”手札ではある。
田村 成幸 |
《思考囲い》が空振りになった格好の田村は残ったマナで《恐血鬼》を戦場へ。後手1ターン目にしてクロックを出すことはできたのだが、これは《イス卿の迷路》の前に沈黙してしまう。
さらに厳しいことに、田村は2枚目の土地を置くことができない。後続のスペルを唱えることができず《恐血鬼》は《イス卿の迷路》で封じられているうちに、堀が《壌土からの生命》に辿り着いてしまう。
戦場には《燃え柳の木立ち》。こうなれば後は《壌土からの生命》の「発掘」で《罰する火》を探しにいくのみ。
ここからの形勢逆転は絶望的と判断し、田村投了。
田村 0-1 堀
不運にも土地を引き込めなかった田村。続くゲームでこそ自身のプランを遂行するべくサイドボードに手を伸ばす。
Game 2
田村の《真髄の針》が《演劇の舞台》を指定して第2ゲームが開始された。これによりデッキの勝ち筋のひとつである《暗黒の深部》+《演劇の舞台》のコンボが封じられた堀。
ならば別のプランを持ってくるまでとキャストしたのは《ギャンブル》(サーチは《壌土からの生命》)。土地単は、その構成要素の大半を墓地から手札に返すことができるようになっているため、《ギャンブル》のデメリットが極めて薄い。
無作為の選択で落ちたのは《壌土からの生命》。堀にとっては美味しい流れだ。
堀 雅貴 |
こうなれば《燃え柳の木立ち》+《罰する火》が揃うまで「発掘」を繰り返すだけでいい。そう思えた矢先、田村が用意した二の矢となる《外科的摘出》が《壌土からの生命》を追放する。
今度は土地も無事に引き込み、流れが田村に傾き出す。2枚目の《真髄の針》で《イス卿の迷路》を指定し、《暗黒の儀式》を絡めた5マナから「フラッシュバック」も含めた《未練ある魂》。一挙4体のスピリットで攻勢を仕掛ける。
しかしスピリットは前座に過ぎない。続くターンで、田村は墓地を「探査」ですべて追放して《墓忍び》!この巨大なデーモンが加わったことで、いよいよ堀に残された猶予が少なくなる。
どうにか《罰する火》+《燃え柳の木立ち》のコンボを揃えて《The Tabernacle at Pendrell Vale》の設置まで到達したのだが、《墓忍び》だけがどうにもならない。タフネス5を焼き切る3回分の《罰する火》を一度に打ち込むだけの余裕は堀にはなかった。
田村 1-1 堀
Game 3
先手の堀は《ギャンブル》で《壌土からの生命》をサーチ。無作為のディスカードによってピンポイントで《壌土からの生命》が墓地に落ちる。
現状では《壌土からの生命》のエンジンに干渉できない田村。せめて他のスペルを捨て去るべく《思考囲い》。そこには《輪作》と《世界を目覚めさせる者、ニッサ》の姿が。
《世界を目覚めさせる者、ニッサ》も相応に穏やかではないカードだが、それは未来の話である。ひとまず直近の脅威である《輪作》を抜き取り、続くターンに追加の《思考囲い》で《世界を目覚めさせる者、ニッサ》にも対応。
続けて《不毛の大地》が《Taiga》を破壊したことによって、堀の戦場と手札から緑マナ源が消滅した。そして《壌土からの生命》は墓地ではなく手札に戻っている状態。
この好機を逃すまいと、《未練ある魂》《墓忍び》と続けて展開する田村。特に先のゲームを決定付けた《墓忍び》の存在は心強い。
堀は緑マナ源の復帰こそ果たしたが、田村にとっては《墓忍び》が降り立った盤面こそがすべてである。
こうなれば堀が何かしらの厄介なカードを引く前に殴り切ってしまうまで。スピリットを従え、空から堀のライフを刈り取るべく攻撃するデーモン。
この攻撃が転換点だった。厄介な一枚を堀は引いていたのだ。緑マナと土地の生贄をコストに堀は宣言する。《輪作》のキャストを。
《輪作》によって《不毛の大地》が《暗黒の深部》に置き換わる。そして、戦場には既に《演劇の舞台》が。そう、役者は既に揃っていた。このタイミングを待っていたのだ。
浮いてるマナを合わせて《演劇の舞台》が起動される。演目は《暗黒の深部》。主演女優の名は「マリット・レイジ」。
5/5のデーモンが突如として現れた20/20の恐るべき怪物に討ち取られる。盤面にこそ「フラッシュバック」で追加したスピリットを用意したものの、もはやそれは時間稼ぎにしかならない。
せめてマリット・レイジに対応できる何かを引くまでの時間を――。
田村はそれでも諦めず抵抗の姿勢を見せたが、願い叶わず、堀の引き込んだ《罰する火》が決着への通り道を開くこととなった。
そうして20点の一撃をもって、長い長い一日の、最後のゲームが決着した。
田村 1-2 堀
「ENNDAL GAMES協賛 日本レガシー選手権 Summer」優勝は堀 雅貴!!
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