『カラデシュ』が参入したスタンダードを考えよう

Oliver Polak-Rottmann

Translated by Tsubasa Tomita


■ 自己紹介

皆さんこんにちは!私はOliver Polak-Rottmann、オーストリアにあるウィーン(ヴィエナ)という街の出身の、プラチナ・レベル・プロプレイヤーだ。今シーズンからHareruya Prosの一員となった。これからもっと多くの記事が読めると思うからどうか、みんな楽しみにして欲しい。

先週は【世界選手権2016】 がシアトルで行われた。最終的に《集合した中隊》を共に使うデッキ同士の壮絶なる戦いを経て、Brian Braun-Duinが優勝した。

安心してくれ。これは散々書かれている《集合した中隊》の記事ではないよ!

代わりに 次のスタンダードシーズンに向けて簡単な確認をしたいと思う。どんな強烈なカードがローテーション落ちするのか、どんな戦術が残るのか、そして新たな環境はどんな感じに見えるのか?

■ 決別
集合した中隊


今回のローテーションで去るもっとも重要なカードは《集合した中隊》で間違いはない。『タルキール龍紀伝』でこのカードが登場して以降、このカードはその力を常に様々なデッキで発揮してきた。「4Cラリー」、「アリストクラッツ」、そして【世界選手権2016】では三つのタイプにまで発展した「バントカンパニー」が存在する。すべての「バントカンパニー」の戦略がこのスタンダードの環境を変えていて、そのタイプの「バントカンパニー」にまず勝てる戦略を取らないと、とても厳しい状況になる。そんな拘束されたデッキ作成から解き放たれると思うと、このカードがいなくなるのは、私にとってはとても嬉しいことだ。

ヴリンの神童、ジェイス


次に影響するカードは《ヴリンの神童、ジェイス》だ。私は《ヴリンの神童、ジェイス》を幅広いデッキで使ってきたこともあって、彼が居なくなるのはとても寂しい。デッキを回す上で、最高のフィルターリングをしてくれて、解決策へと導いてくれた。

龍王オジュタイ龍王シルムガル


次に、龍王たちがこのスタンダードから去る。今シーズンの終盤はそこまで目立たなかったので、彼らの存在には気づき辛かった。彼らの持つ色を使う際の彼らは、とても強かった。

衰滅


《衰滅》も消えてしまう。そうなると4マナの《神の怒り》は、この環境にいない。《コジレックの帰還》があるけど、全体5点トリガーを使うのにはいろいろ準備が必要だ。

ヤヴィマヤの沿岸ラノワールの荒原コイロスの洞窟
戦場の鍛冶場シヴの浅瀬


そして最後にペインランドのことを書かなければならない。この土地が落ちるのはとても大きな影響をスタンダードに与えるだろう。「《難題の予見者》《現実を砕くもの》がスタンダードにいる間はウィザーズ・オブ・ザ・コースト社がペインランドを再録するかな」と思っていたんだが、そんなことはなかった。ペインランドが落ちることはとても残念だが、代わりにとても優秀な土地を『カラデシュ』が与えてくれた。 多くのカードがこの新セットと入れ替わるが、私が挙げた落ちるカードたちは私が思うとても重要なカードであり、戦略の軸となったカードだ(例えば《ドロモカの命令》の「命令」サイクルは、単体で強いがそれが軸になることはなかった)

■ 新たなる可能性

居なくなるカードの話はここで終わりにしようか。 さて、どんな新しいエキサイティングなカードに『カラデシュ』で出会えるだろう?

花盛りの湿地植物の聖域秘密の中庭
感動的な眺望所尖塔断の運河


まずはこのファストランド が対抗色で帰ってきたことだろう。どんな影響をスタンダードに与えるだろうか?モダンで使われてる友好色ファストランドは、序盤の早い段階で色を安定させてくれる存在だ。スタンダードの場合、ゲームは少しゆっくりになりがちで、呪文に関してもモダンで使われるマナより少し重めに求められる。

序盤から攻撃的なデッキと、ファストランドの相性は最高だ。最初の数ターンで可能な限り動ければ、終盤に来る土地がタップインだろうとお構いなしになる。

反対に、《約束された終末、エムラクール》を使うデッキにとって、この土地は心配要素だろう。7マナ、8マナ目を確実にアンタップインでプレイしたいからだ。使わないとまでは言い切れないが、探し求めた土地ではないだろう。

総じてファストランドはスタンダードのマナベースに多く組み込まれるだろうが、バトルランドとシャドウランドとの相性はあまり良くない。

空中対応員


次に話したいカードは《空中対応員》だ。これを最初に見たとき、《吸血鬼の夜鷲》が頭を過った。この”ホワイトホーク”は接死こそないものの、代わりに警戒を持っている。攻撃的なデッキに対しては、《吸血鬼の夜鷲》が持つ接死より、攻撃しながらブロックできる警戒の方が、相手にとって大きな問題になるだろう。一部のカードが公式に発表されたばかりだから、このカードが環境でどれほど強いかは分からないが、こういったカードはとてもポテンシャルが高く、メインで通用しなくとも、サイドボードで輝いたりすることもある。

儀礼的拒否


《儀礼的拒否》 は、スタンダードに限らず、もっとモダンやレガシーなど下の環境でも大きな影響を与えるカードだと思う。《約束された終末、エムラクール》を始めとする多くのエルドラージを、たった1マナでカウンターできてしまう。これはゲーム展開を大きく左右するカードになるだろう。下の環境を含めて、あらゆるフォーマットにエルドラージが存在する現在は更に用途が広く、アーティファクトも打ち消せるので、《無効》《鋼の妨害》より強いサイドボードの選択になるだろう。私はこのカードがヴィンテージでも影響を与えると思っている。それくらいこのカードのパワーには驚いたよ。

陰謀の悪魔


次は、上で挙げた”ホワイトホーク”と同じ路線で、《無効》《鋼の妨害》より強く、再録感があって、《虐殺のワーム》を思い出させてくれる《陰謀の悪魔》だ。現状、次のスタンダードでも強い位置にいるであろう《墓後家蜘蛛、イシュカナ》への良い回答だろう。このカードが入るデッキは恐らくコントロールよりだから除去もいくつか持っているはずだ。ということは、何回かリアニメイトすることもできる。そして上で挙げたように龍王たちは去った。このカードが彼らの穴を埋めてくれるだろう。

サヒーリ・ライ


すでに公開されたプレインズウォーカーは二人いる。そこまでエキサイティングじゃない方から話そうか。まず《サヒーリ・ライ》は3マナのプレインズウォーカーだ。この時点では、とても興味をそそるカードだ。3マナのプレインズウォーカーは調整が難しいカードだからね。すでに環境には「青赤バーン」が存在し、ローテーションの影響もあまりなく《サヒーリ・ライ》は、そこで使われるかもしれない。プレインズウォーカーはゲームの中盤以降で強さを発揮することが多く、彼女に関してもこれが当てはまる。相手に1点飛ばしながらドローもできたり、《騒乱の歓楽者》などをコピーしてしたりするのもいいだろう。そして、もしデッキがアーティファクト重視のデッキであれば、「-7」能力(奥義)も有用だ。私が話した人たちはあまりこのカードの良さを高く評価しなかったが、私はプレビューシーズン中に手を付けたいカードの第一候補だ。

反逆の先導者、チャンドラ


そして、いよいよこのとてつもなく”熱い”カードの話をしよう。 《反逆の先導者、チャンドラ》だ。このカードの存在を知ったとき、「本当に?こんなに強いの?」と確認してしまった。まず4つのモードを選べる時点ですぐに《精神を刻む者、ジェイス》を思い出す。もちろんそこまでのパワーではないだろうが、彼女の能力はとても良く見える。最初の「+1」能力は《紅蓮の達人チャンドラ》の「0」能力ととてもよく似ているが、今回は更なる能力が付いている!この能力の難点はテキストに「唱えて」とあるために、土地が唱えられないことだが、少なくとも相手に2点のダメージを与えることはできる。2つ目の「+1」能力は次のターンさらに大きな呪文を唱えることができる。《焼夷流》などを打つことで自身を守ることもできる。3つ目の「-3」能力は多少お高めだがクリーチャーを殺してくれる。最後に4つ目の「-7」能力は、君に勝利をもたらすだろう。《束縛なきテレパス、ジェイス/Jace, Telepath Unbound》の「-9」能力によって、多くのゲームが決定づけられたのを覚えているだろう。彼女の奥義があれば、2,3回何かを唱えれば勝ちだ。だが気を付けて欲しい、相手が《約束された終末、エムラクール》デッキなら、この奥義は自分をも殺せることを。

獣性を築く者ラスヌーのヘリオン


エネルギーに関して触れてないのはまだ良いか判断するのに早すぎると思っているからだ。

高速警備車領事の旗艦、スカイソブリン


各種「機体」に関してもまだ未知数だ。これらは除去の難しいため、スタンダードに少なくとも影響を与えるだろう。彼らはアーティファクトであり、自分のターンにクリーチャーとなる。このため、プレインズウォーカーや《神の怒り》系は「機体」に触れない。私は《高速警備車》はとても良いカードだと思う。悪くて《スキジック》だ。《領事の旗艦、スカイソブリン》は以前あった《業火のタイタン》によく似ている。スタンダードでは良いカードだった。

■ 新環境

記事の冒頭で、私はこのフォーマットで何が去るかを話したが、次のスタンダードでどのようなことが起きるのだろうか?今のところ大きなメタとしてやっぱり《約束された終末、エムラクール》と「昂揚」デッキが強いだろう。だがもっとアグレッシブな《熱病の幻視》が入ったデッキや、「白単ウィニー」が環境トップに輝く姿も見える。もしかしたら環境の判断するにはまだ早いかもしれないが、次の環境が来るのが待ち遠しい。早く『カラデシュ』のカードに触れてみたい。

最後にこの記事の重要なポイント3つをまとめよう

《集合した中隊》のような多くのキーカードが失われることで、環境は劇的に変化するだろう。

-「昂揚」デッキや《熱病の幻視》デッキのように、既存の戦略も残るだろう。

-多くの強力なカードと、新しい戦略が二つも紹介されたが、まだ新たな「発明」があるはずだ。プレビューを追いかけよう。

みんなこの記事を読んでくれてありがとう、また近い将来、私の記事で会おう!

Oliver Polak-Rottmann

この記事内で掲載されたカード


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