こんにちは、みなさん!
マジックのもっとも難しい大会、【世界選手権2016】から数日前に戻ってきたばかりなのですが、私がどんな準備をして、なぜ「スケープシフト」をモダンのデッキに選んだのかについて書こうと思います。そして偶然にも最後のWMCQが迫っていることもあり、この「スケープシフト」ガイドが役に立つとうれしいです!
世界選手権は24人の選手しか出場しない、というとてもユニークな大会です。さらに相手のデッキリストも見ることができます(厳密には、構築の第1戦目終了後にリストを貰えます)。そして、準備にそれほど時間がありません。あの【プロツアー『異界月』】から、三週間しかなかったからです。私はこの限られた時間を、各フォーマットに同じ時間を分散できるように努力しましたが、最終的にスタンダードとモダンに最も時間を割いていました。なぜならば、両フォーマットともに、最適なデッキを選び、調整することが本当に難しかったからです。幸いなことに、世界選手権2016では出場選手がどのようなデッキを持ってくるか、ある程度の予想を立てることができます。皆、与えられる準備期間は一緒ですから、大半の人は自分が最も使い慣れているものを持ってくると予想できます。これは個人的な意見ですが、モダンにもっとも当てはまることです。頻繁にモダンの大会が開催されないこと、そしてメタがとても広いこともあって、自分が使い込んでいるデッキが一番安心できるからです。
さて、私がどのようなデッキと対戦するか予測したら、主に「黒緑」に何か1色をタッチしたミッドレンジに当たるという結論に至りました。出場する選手の多くは、このタイプのデッキを使う機会が多く、これらの色ならば、どのようなデッキと対戦しても、そこまで分が悪くなることは少ないのです。過去の大会で使っていることから、経験も豊富でしょう。例えば、Marcio CarvalhoとThiago Saporitoは、Willy Edel(通称アブザンマスター)とアイデアを共有しているのは確実なのでアブザン(黒緑白)を使用するでしょうし、【グランプリ・インディアナポリス2016】でアブザンを使っていたPaulo Vitor Damo da Rosaとチームを組んでいたLuis Scott-Vargas、Sam Pardee、そしてMike Sigristもこの色を使いこなしているだろう(Mike Sigristは「親和」を使用しているイメージが強いと思いますが)。最後にReid Duke、Andrea MengucciとBrad Nelsonはこの「黒緑+1色」の組み合わせを使っている印象が強いですね。Brad Nelsonに関しては「ジャンド(黒緑赤)」を良く使っていましたが、彼の最近のチームメイトは「スーパークレイジーズー」を使っていることが多いみたいです。いずれにせよ、多くの人が「ジャンド」または「アブザン」を使うだろうと思いました。
このように環境を読んだ結果、これらのデッキに勝つべく「アブザンカンパニー」を使おうと考えました。「アブザン」にも分は良く、「親和」、「バントエルドラージ」、「スーパークレイジーズー」相手にも強く立ち回れます。そんな中、「発掘」が大会で結果を残し、誰もがサイドにを積むようになってしまいました。結果、何度かテストプレイをして、そのような対策カードと対峙することを避けるためにも、「アブザンカンパニー」を使用することはあきらめました。
Lukas Blohon – アブザン・カンパニー
練習用デッキ
2
4
4
2
2
1
1
1
3
3
-土地 (23)-
4
4
4
4
4
2
2
1
1
1
1
-クリーチャー (28)- |
1
4
4
-呪文 (9)- |
4
2
1
1
1
1
1
1
1
1
1
-サイドボード (15)- |
簡単なサイドボードのアドバイスをしておきましょう。がサイドボード後に入ってくる見込みが多い場合や、のような価値あるクリーチャーためにをサイドアウトすることもあります。
「アブザンカンパニー」を使わないと決めた以上、「黒緑」系に勝つデッキが必要になりました。「赤緑トロン」が最も良いか、と考えたのですが、Hareruya ProsのPetr Sochurekの「ジャンド」と何戦か練習をこなす内に、これも候補から消えていきました。様々な大会結果を参考に情報を集めているうちに、「赤緑」が結果を残しているのを見たので、こちらにも早速取り掛かりましたが、やはりしっくり来ませんでした。ここまで何も用意ができていなかったので、昔から好きだったデッキ、青タッチの「スケープシフト」を取り出してみました。青が妨害にとても役立ち、手応えを感じたのでこのデッキを採用することに決めました。あとは、どのタイプが最強かを見つけるだけです。こちらのデッキリストを見ながら、カードの説明をさせてください。
Lukas Blohon – スケープシフト
世界選手権2016(5位)
3
2
1
1
4
4
4
2
1
1
1
2
-土地 (26)-
4
1
-クリーチャー (5)- |
3
2
4
2
1
4
1
4
3
1
4
-呪文 (29)- |
3
2
2
1
1
1
1
1
1
1
1
-サイドボード (15)- |
マナ加速:4、4、2、1
2ターン目にマナ加速呪文を唱えることが、相手をリードする一番確実な方法なので可能な限り採用しました。を除いて、10枚以下しかマナ加速呪文を採用しない、というのは良いアイデアとは思えません。その場合はを3枚増やすべきです。やよりが良いと考えています。理由としては、普通に素引きしたとき、こちらのほうがより良いでしょう。を打ったときに5マナがあるわけで、で6マナ、次ターンに7マナとあれば、勝ちへと導くが打てるでしょう。
青の呪文:4、4、2
これら8つの呪文こそ、青をタッチしたパターンを採用する理由です。これらのおかげで相手の妨害しながら7マナまで伸ばすことができます。先手でにマナ加速して到達できると、相手はこれに対応するのは大変です。にはちょっと違和感があるかもしれませんが、序盤で「アブザン」や「スーパークレイジーズー」に有効なカードを探していて、この組み合わせにたどり着きました。は「ズー」との相性がとても良く、相手はコンボをして相手を止める手段が取れません。「アブザン」を相手にする場合、一対一交換をしている余裕はありません。仮に一対一交換をしてしまうと、相手のほうが有利になってしまいます。相手は手札破壊を使ってマナ加速呪文を抜いてくるでしょうから、やのような重たい呪文だけが手札に残っている状態になるでしょう。でゲームを決める以上、土地を並べて、マナ加速呪文を唱える必要があるので、その間は相手を減速させる必要があります。この場合、キャントリップ呪文の方が好ましく、必要なのはではありません。動きを遅らせるという意味では、をで落とすより、した方が良いのです。
除去: 31
は「親和」や「感染」のような速いデッキに対するカードです。最高のカードではありませんが、必要なカードなのは間違いありません。時に、相手のライフを削ることにも使えます。「バントエルドラージ」を相手にする際、はによって持ってくる格好のターゲットです。
フィニッシャー: 4、3、1、1
はより優れたカードです。多くの場合、勝利するターンの目前に確実な仕事をしてくれるでしょう。7枚の勝ちに繋がるカードを持つデッキは良いデッキであり、6枚では少し足りない気がします。はゲームを決定づけるサイドボードのカードへのアクセスも可能です。を引かないと勝てないわけですが、そのためにやが入っています。同様に4枚目のも入っていません。は相手の手札破壊とも相性が良く、捨てられた呪文を再利用できる可能性もあるし、序盤の機動力を確保することも可能です。しかし、残念ながらはこのデッキに完全に適している、とは言えません。軽い呪文が極端に少ない上に、マナ加速呪文ともうまく噛み合っていません。は簡単にデッキを掘り進めてくれますが、複数積むのはあまり良くないでしょう。
選択しなかったカードと、その理由
– すべてのモードが、とても平凡です。まず、クリーチャーへの2ダメージは最近の環境では不十分です。「ズー」や「バントエルドラージ」はもっと大きいクリーチャーばかりですし、「親和」に対しては2マナを使ってを落としたところで、大した効果はありません。そして何よりも、「黒緑」系に弱いのです。に対応できることがこのカードのメリットではありますが、サイドボードに採用している他のカードで十分だと思います。を引く必要がある場面なら、手札をルーティングする2つ目の効果はとても便利かもしれませんが、それならばの方が適しているでしょう。3つ目のの効果は、コンボデッキが増え始めたら見直されるとは思いますが、現状ではどうしても弱く思えてしまいます。
– の代わりにメインボードで使用することについてですが、は素直に引いたら嬉しいカードですし、マナも軽く、すぐ打てるとても良いカードです。ですが欠点は今対処すべきクリーチャーである、や、には無力なことです。
– 私のデッキはマナ加速、可能な限り素早く相手を倒すことに集中しているのですが、このカードはその役割を満たしていません。「親和」「感染」や、「黒緑」系に強い場面もありますが、の戦略に関わらないカードの採用は極力控えているわけです。に関しても、同様の理由で採用していません。
「スケープシフト」のサイドボード
対「アブザン / ジャンド」
Out
In
先ほど述べたように、一対一交換は好ましくありません。の素晴らしいところは、ドローしたとき、相手のが何も仕事を果たさないことです。相手の最高のカードが、突然何もしないただの紙になるわけですからね。相手がこの存在を忘れて手札にあるのを知らず、でを仕留めることも可能かもしれません。
対「親和」
Out
In
特に面白みはないですね。はを引いてない限りとても使いにくく、は必要ないでしょう。のようなカードをで持ってきたほうが好ましいと思います。サイドボード後は相手に刺さるカードが多いというデッキの完成度を活かして、様々なカードを上手く使いわけてください。それから、マリガンすることを恐れないでくださいね!カードが余るほど欲しいわけではなく、序盤から相手を妨害できるカードができるだけ欲しいのです。相手はやを構えるでしょうから、これらに捕まらないように立ち回りましょう。
対「バントエルドラージ」
先手: Out
先手: In
後手: Out
後手: In
このマッチングの場合、相手がどれほど自分に対するサイドボードを採用しているかによります。相手が除去を残すほど少ないサイドボードを採用している場合、を入れるべきではありませんが、それ以外ならこのプランで行くべきでしょう。相手がを引いているかによって、は最高にも最悪にもなり得ます。後手の場合、のために除去を相手が残していればそのまま入れておいて、を引くな!と祈りましょう。
対「Oliver Tiuのタイタンシフト」
Out
In
とても良いデッキだと思いますが、このマッチングはこちらに分があります。とても似ているデッキですが、こちらは2マナのと言えるを持っています。相手のやには、が場にあればも刺さりますしね。
対「バーン」
Out
In
厳しいマッチングですが少しでも相手の動きがもたついたり、用のやがなければ、勝利する可能性は大幅に上がるでしょう。先手ならよりを入れるかもしれません。私はは後手の方が好ましいと思っています。理由として1ターン目に「X=1」で置けば、2ターン目に多数の1マナクリーチャーを阻止できるからです。
今日はここまでにしておきましょう。この記事が、あなたのWMCQでの勝利に役立つことを祈っています!質問はいつでも【Twitter】で受け付けていますよ。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
Lukas Blohon
Lukas Blohon
チェコ共和国を代表するマジック・プレイヤー。マジックの普及と実力向上に身を捧げる勤勉な努力家であり、Petr Sochurekに「真摯な努力家であり、最高のプレイヤー」と称される。
【プロツアー『闇の隆盛』】トップ8、【グランプリ・ブリュッセル2015】優勝、グランプリトップ8の経験は6度にも上る実力者。【プロツアー『異界月』】優勝という輝かしい成績と共に、Hareruya Prosに加入。
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