谷川「緊張する、手震えるw」
宮薗「ニコニコ生放送で手が震えてるところ見られないだけまだよかったw」
席に着くなり、どちらからともなく心情を吐露し始める。217人のシングルエリミネーションを越えて、2人が辿り着いたシングルエリミネーション。涙を呑んで敗退した209名ものプレイヤーの上に立っていることを思えば、決して小さな舞台とは言えないだろう。
宮薗 猛(神奈川)。
知る人ぞ知る「マーフォーク」マスターの彼は【グランプリ・京都2015】のトップ8進出をかけたバブルマッチでHareruya Pros所属プロ・高橋 優太に敗れ、それからもひたすらマーフォークの腕を磨いてきた。
【第6期レガシー神挑戦者決定戦】でもベスト8に進出した経験を持つ彼は、再び辿り着いたこの舞台で“美しすぎる”マーフォークを手に勝利を誓う。
相対するは谷川 博紀(神奈川)。
フィーチャーマッチテーブルに座った経験もほとんどないという谷川にとって、今日は最も大きな舞台でのチャレンジとなる。
そんな彼が今日手に取ったデッキは「ダークマーベリック」。《石鍛冶の神秘家》と《聖遺の騎士》を主力としたデッキで、《死儀礼のシャーマン》による中~長期戦の強さが魅力の一つである。
《暗黒の深部》+《演劇の舞台》による即死コンボも内蔵しており、緑白タッチ黒というシンプルなカラーリングとは思えない多角的な攻めが魅力のデッキだ。
相性は五分~やや谷川有利に見えるが、相手がマーフォークマスター・宮薗とあってはどのような下馬評も鵜呑みにはできない。はたしてこのマッチアップを制すのはどちらになるのか?
宮薗 猛(左)/谷川 博紀(右) |
Game 1
先攻の宮薗は《魂の洞窟》をセットし、まずは自己紹介とばかりにマーフォークを指定。だが、1マナのアクションを持たずそのままターンを終了する。
試合前には「そわそわしちゃってこれで本当に(キープして)大丈夫なのか分からなくなってきたw」と漏らす谷川だったが、宮薗の《魂の洞窟》をしっかりと《不毛の大地》で割りつつ、《緑の太陽の頂点》で《死儀礼のシャーマン》を戦場に送り込む。
宮薗は谷川の《不毛の大地》が効いており、第3ターンに痛恨のディスカード。ここに付け込むように谷川は《不毛の大地》で宮薗の《変わり谷》を割り、《死儀礼のシャーマン》のバックアップを受けながら《聖遺の騎士》が戦場に送り込まれる。
パーマネントが0枚の宮薗はそのままドローとディスカードに数ターンを費やすことになってしまい、その間に《聖遺の騎士》が《演劇の舞台》をサーチ。《マリット・レイジ》が目を覚ます。
さすがに0マナでこれを処理する手段はない。宮薗は「あ、もう省略でいいです」と速やかにサイドボードに手を伸ばした。
宮薗 0-1 谷川
両者開始前の和んだ空気はいつしかピリピリとした緊張感に取って代わり、2人は黙々とサイドボーディングを進めていく。
宮薗は険しい表情だ。ただ負けるのではなく、一切何もさせてもらえずに(本当にただの1つも呪文をプレイできず)ゲームに負けている。それが準々決勝の舞台とあっては相当精神的に堪えるだろう。
逆に谷川は1ゲームを先取したことで余裕が出てきたのか、さきほどまで震えていた手つきはしっかりとしており、淡々とサイドボードを済ませて淀みなくシャッフルする。
勢いそのままに谷川が勝利を収めるのか、あるいは宮薗が挽回するか。マッチの行方は第2ゲームに引き継がれる。
Game 2
宮薗は《島》から《霊気の薬瓶》へと繋ぐ好調な滑り出し。これに対して谷川も《死儀礼のシャーマン》で臨む。
宮薗は《虚空の杯》を「X=1」でプレイし盤面に蓋をしにかかるが、谷川はこれに構わず《突然の衰微》で《霊気の薬瓶》を破壊。さらに《死儀礼のシャーマン》でクロックを刻んでゆく。
宮薗 猛 |
谷川が宮薗は着実に盤面を整える。谷川が《霊気の薬瓶》や《虚空の杯》とじゃれている間に《潮流の先駆け》で《死儀礼のシャーマン》をバウンスし、《銀エラの達人》を展開する。
谷川は《クァーサルの群れ魔道士》で《虚空の杯》を割った後、ようやく手札に溜まっていた《死儀礼のシャーマン》×2と《森を護る者》をプレイする。
だが、宮薗の手札は完璧だった。この《森を護る者》に狙いすませた《はらわた撃ち》を撃ち込み、すかさず攻撃に移る。《銀エラの達人》と《潮流の先駆け》をレッドゾーンへ送り込み、第2メインに《梅澤の十手》。谷川の《聖遺の騎士》には《四肢切断》。
谷川のプレイを完璧にいなしながら、《梅澤の十手》を《銀エラの達人》に装備してアタック。谷川は《議会の採決》で《梅澤の十手》を処理し、《毒の濁流》で盤面を流すも、宮薗はすぐさま《真の名の宿敵》。
《銀エラの達人》をプレイしていた分だけドローで手札を補充し攻め手を途切れさせずに戦ってきた宮薗に、谷川が力尽きるのも時間の問題だった。
宮薗 1-1 谷川
ゲームカウントがイーブンに戻り、少しだけ緊張がゆるんだ2人の間で再び会話が生まれる。
谷川「意外と時間経ってないんですね」
宮薗「他のテーブルみんな終わってるw」
彼らとてプレイが遅いわけでもないし、1ゲーム目は実質的に3ターンキルだったし、宮薗が目安として回していたカウントダウンタイマーを見るとまだ開始から15分程度しか経っていない。しかし、レガシーというフォーマットの特性を物語っている。
2人の集中力は極限まで研ぎ澄まされ、時間が凝縮されていく。決着は第3ゲームに委ねられた。
Game 3
まずは先攻の谷川が《石鍛冶の神秘家》を呼び出し、《殴打頭蓋》をサーチしたところからゲームがスタートする。
これを通した宮薗が返すターンにプレイしたのは《幻影の像》。《石鍛冶の神秘家》のコピーとなって戦場に出てくるのを見て、谷川も思わず失笑気味に「友情コンボどうぞw」と《梅澤の十手》のサーチを許す。
返す谷川は《死儀礼のシャーマン》。対する宮薗はターン終了を宣言し、ディスカードの処理に入ろうとする。いかにも臭いブラフだが、ここで谷川は勇んでフェッチを切って《石鍛冶の神秘家》の能力を起動しようと指さす。
だが、これも宮薗の計算の内。谷川のフェッチランド起動にスタックで《歪める嘆き》をプレイし、《石鍛冶の神秘家》を処理する。
やられた! と少し顔をしかめる谷川だったが、返すターンにはすぐさま2枚目の《石鍛冶の神秘家》で《火と氷の剣》をサーチ。マーフォークにとってかなり厳しいカードの登場に、宮薗も思わず「やっぱり入ってたか……」と声を漏らす。
苦境に立たされたかに見えた宮薗だったが、2枚目の《歪める嘆き》で《石鍛冶の神秘家》を除去。このまま盤面を抑え込んだままクロックを展開したいところではあったが、ここで計算外の事態が発生する……
谷川 博紀 |
谷川が突き付けたのは3枚目の《石鍛冶の神秘家》! これが当然のように《梅澤の十手》をサーチし、”三種の神器”が手札に揃ってしまうとさすがに表情が曇り始める。手札にはもう除去はない。宮薗はここが勝負どころと見て、深く息を吸い込みながら《真の名の宿敵》を戦場に送り込む。
続くターンに《梅澤の十手》プレイ+装備で《真の名の宿敵》を攻撃に向かわせ、一気に畳みかけに行く。
が、ここで谷川の《クローサの掌握》が《梅澤の十手》を破壊。これが勝負の分水嶺だった。
返す谷川は一気に反撃の手筈を整える。《殴打頭蓋》の細菌トークンに《火と氷の剣》を持たせて攻撃に向かわせ、宮薗の《幻影の像》(《石鍛冶の神秘家》のコピー)を踏み潰す。
宮薗は《真の名の宿敵》のコピーとなる2枚目の《幻影の像》をプレイして防御を固め、《仕組まれた爆薬》で谷川の猛攻を食い止めにかかるが、構うものかとトークンを処理させて《聖遺の騎士》。
再び盤面は宮薗が押されていくが、3枚目の《真の名の宿敵》を戦場に並べ立て、《霊気の薬瓶》をプレイしてすれ違いのダメージレースを挑む。対する谷川は《聖遺の騎士》に《梅澤の十手》と《火と氷の剣》を装備し、驚異的なスピードでクロックを刻む。
もはや大勢は決したが、宮薗は《アトランティスの王》をプレイして《変わり谷》を起動。絶望的な戦力差の中にマギレを求めて、不可避の4/2《真の名の宿敵》×3と《変わり谷》による15点の猛打。
谷川はこの総攻撃を前にしても冷静に、役目の済んだ《石鍛冶の神秘家》を《変わり谷》のブロックに供しながら《梅澤の十手》で《アトランティスの王》を除去し、9点のダメージに抑える。
続くターンには《殴打頭蓋》を《聖遺の騎士》に装備して攻撃に向かわせ、宮薗のライフを一挙に摘み取った。
宮薗 1-2 谷川