あなたの隣のプレインズウォーカー ~第21回 勇者エルズペスは休めない~

若月 繭子

若月 繭子



 こんにちは若月です。

 古今東西、救われない・報われない……「不幸属性」キャラというのがいまして、それはマジックの物語においても然り。




 「救われないキャラ」で真っ先に名前が上がるのは何といってもミリーでしょう。生みの親からは捨てられ、種族違いの幼馴染へと抱いた恋心は決して叶うことなどないとわかりながらそれでも彼とともに戦い、そして死んでいった彼女。更には死亡シーンのカード名がひどいとかアンソロジー・ギフトボックスにて再録された際にP/Tとレアリティを誤植されたとか死亡確定のアナウンスがあるまで一年待たされた(ウルザブロックが挟まったので)とか平行世界ですら救われないとか全方位救われません。




 《現実を彫る者イクシドール》は恋人を殺されたことを悲嘆し、彼女を模した天使の像を作りました。それが生命を得て動き出したものがアクローマです。彼女はその由来のためか主であるイクシドールに身も心も捧げているのですが、イクシドールの方はというと彼女を最後まで完全に「人形」「復讐の道具」としか思っていませんでした。

 とはいえこちらは、カード的な扱いは恵まれていますね。タイムシフト版である《憤怒の天使アクローマ》もかなり強いですし、デュエルデッキ「Divine VS Demonic」の顔にもなりました


 そしてプレインズウォーカーの中でもぶっちぎりで「報われない」のが、もうおわかりでしょう。





 エルズペス。その強さは誰もが認めるものですが、物語中では苦難続きの彼女。今回テーロスブロックにおいて遂に主役の座に立ちましたが、その「不幸属性」は相変わらずです。あなたの隣のプレインズウォーカー、しばらくぶりの「通常回」はそんなエルズペスのお話です。



1. カード能力的から見るエルズペス

 エルズペスはアラーラブロックで初めて登場したプレインズウォーカー達の中ではただ一人、三度もカード化されている、その点では恵まれたキャラクターです。


遍歴の騎士、エルズペスエルズペス・ティレル太陽の勇者、エルズペス


 公式に「歴代プレインズウォーカーで二番目に強い」と言われている初代(一番目は言わずもがな)から一貫して、全てのエルズペスが兵士トークンを出す能力を持っています。彼女と共に戦うべく、その召集に応えて多くの兵が集います。またその強さのみならず、凛々しく戦う女騎士というものに憧れる者はどの世界にも多いのでしょう。例えば《不屈の随員》はフレイバーテキストもそうですが、なんと自分の盾にエルズペスの浮き彫りを入れているという熱の入れようです。





《不屈の随員》 フレイバーテキスト
エルズペスの従者は昇進を求めない。 彼らにとって、勇者に仕えることの名誉を上回る騎士の栄光など存在しないのだ。


 兵士を呼び出す、そして味方を強化する。周囲に人々が集まるカリスマ、味方に力を与え、強敵を屠り、絶望的な状況に光と奇跡をもたらす。そんな能力で構成されているエルズペスは「この人について行きたい」と思わせる、「戦場の女神」的な存在と言えます……彼女本人はそのように見られることは不本意なのでしょうが。



美しく、勇ましく兵を率いるエルズペス。


 そんなエルズペスの能力絡みでひとつ、思わず笑ってしまうエピソードを紹介します。アラーラブロックの物語のクライマックス、《数多のラフィーク》《マルフェゴール》が戦うという場面がありました。ここでバントの大天使アーシャの剣を持った「最高の時」ラフィークにエルズペスが+1能力(2番目)で「翼と力」を与えるのですが、この状態のラフィークがどれほどの強さかを実際のカード能力で表してみましょう。







「もうやめて!マルフェゴールのライフは0よ!」


 そしてこの能力通りに、ラフィークの二閃! 哀れマルフェゴールは「X」の字に刻まれてしまいましたとさ。



2. エルズペスinアラーラ

 エルズペスが生まれた次元は、ファイレクシアに支配されていました。私達の知る新ファイレクシアとはまた別の経路で、プレインズウォーカーの誰かが持ち込んだ油から蘇ったのでしょう。エルズペスが13歳の時にファイレクシア人の手が彼女へと迫りました。ですが彼女はその恐怖からプレインズウォーカーとして覚醒し、次元を脱出しました。そしてその後数年の間、安全な場所を求めて旅をし、最終的に衝合前のアラーラ、バントへと辿り着きました。





 天使が見守り、光に溢れる美しい世界バントはまさにエルズペスにとって楽園でした。ここを安住の地と感じた彼女は、プレインズウォーカーとしては稀なことに、これ以降他の次元へ行こうとはしませんでした。
ですが数年後のある日、エルズペスの平和な生活は壊されてしまいます。彼女が身を置く駐屯地の近くに、人のような身体をした猫が傷を負って倒れているのが発見されました。猫人――エルズペスは多元宇宙を旅していた時にその存在を知りましたが、実際に目にするのは初めてでした。


その猫人は彼女を見上げ、呻いた。彼は陽光の下、ひどい様相で、その四肢には深い傷を負っていた。彼女は彼の片目に走る傷に気がついた。彼女は無事な方の瞳を深く覗きこんだ、その深みへと落ちてゆくのではと思うほどに。彼は同じ魂を持っていた。ただの傷ついた異邦人ではなかった――生まれいでて落ちてきた星、そしてこことは別の世界にて苦難に遭った存在だった。彼は、プレインズウォーカーだった。
(小説『Alara Unbroken』 chapter 38より)

 これがエルズペスとアジャニの出会いです。エルズペスは仲間の力を借り、重傷のアジャニを親身になって世話しました。エルズペスは彼へと近しいものを感じ、バントへ留まって欲しいと願いましたが、アジャニには兄の仇を探すという目的がありました。世界が衝突に近づいている、恐るべき警告を残して彼は去って行きました。
やがて世界が《衝合》すると、エルズペスは(上で書いた通りに)ラフィークがマルフェゴールを討伐するのを助け、またバントを侵攻してきたグリクシスの怪物と戦い、騎士として華々しい活躍をしました。ですが彼女が愛した世界は無情なほどに変わってしまいました。


新たなアラーラの騎士ナヤの神の印章


《新たなアラーラの騎士》 フレイバーテキスト
「私はアラーラすべてを受け入れよう。バントと同様にグリクシスをもだ。 かつての故郷が私を裏切り者と呼ぶなら呼ぶがいい。 称賛のために行うのではない。これは正義のためなのだ。」

《ナヤの神の印章》 フレイバーテキスト
エルフが天使の賛歌を学ぶ一方で、騎士は巨神の咆哮を学んだ。


 これらのカードが示すように、衝合と世界の変化を受け入れて前向きに共存の道を歩み始める者達も確かに存在しました。ですがエルズペスにとって、バントはもはや自分が居場所として求めた清らかな場所ではなくなってしまったのでした。重苦しい失望を抱えて彼女はその世界から去りました。二度と戻ってくることはないだろうと思いながら。

 変わってしまったバントに再び清浄を取り戻すために戦うのではなく、目を背けて逃げたエルズペス。「世界を一人で変えてやるほどの力はない」ことが彼女にもわかっていたのでしょう。



3. エルズペスinミラディン

 それからエルズペスは多元宇宙を放浪し、ある時ドミナリアへと辿り着くと、アーボーグにある闘技場で剣闘士として戦う日々を過ごしていました。

ヨーグモスの墳墓、アーボーグ

アーボーグといえば。


 そんな彼女の前に、再びアジャニが現れます。アラーラで出会った時は復讐に燃える荒々しい若者だった彼はいつしか、大人の落ち着きと包容力を漂わせる存在になっていました。



カードでの登場順とは裏腹に、アジャニは「復讐」→「黄金」という時系列です。


 アジャニはエルズペスがバントに置いていった剣を手渡し、戻ってくるように説得しますが、彼女に戻る気はありませんでした。
その後、エルズペスは故郷の次元ミラディンがファイレクシアによる危機にさらされている《槌のコス》と出会い、更に《滞留者ヴェンセール》を加えてその世界へと向かいました。このあたりのエピソードはウェブコミック「Gathering Forces」にて語られています。

 そしてプレインズウォーカー三人は世界を救うべく、ミラディンの創造主カーンを探す旅に出ました。第12回記事にも書きましたが、ミラディンにおけるエルズペスはファイレクシアのトラウマに襲われながらもそれを振り払い、ひたすら敵を屠って仲間達を前へと進めさせる、戦闘要員的な立ち位置でした。何せほら、コスは農家生まれで冶金職人、ヴェンセールはアーティファクト職人と、戦闘職なのはエルズペスだけでしたから……。歴代エルズペスの中でも最も無差別に全体破壊を放つミラディンの傷跡の彼女は、まさに「ひたすら戦い続ける」その姿勢を表していたのではないかと思います。

エルズペス・ティレル


 最終的に三人はミラディンの核、玉座の間に辿り着き、ヴェンセールがその命を捧げてカーンを浄化しました。ミラディンの傷跡ブロックの物語はそこで終わっています。彼らの戦いはまだ続く、ラストシーンではそう暗示されてはいましたが、生き残ったエルズペス達がその後どうするつもりだったのかは明確にされていませんでした。

 そして後日談が語られた公式記事「失われし告白」によりますと、カーンは「自分が多元宇宙に撒いてきたのであろう油の始末をしに」旅立ったらしく、コスとエルズペスの二人だけが新ファイレクシアに残って抵抗を続けていたようです。ですが第18回にも書きましたように、抵抗軍は全滅、白派閥が勝利。本当に何度読んでも最悪のバッドエンド、清純なるミラディンを取り戻す希望なんてありませんでした。





 バントに続いてミラディン。エルズペスは一度ならず二度までも、世界が汚染される様子を見せつけられることになりました。ミラディンの傷跡ブロックの物語はマジックの長い歴史の中でもぶっちぎりのバッドエンドでしたが、まさにそれに遭遇してしまったあたりがエルズペスの「不幸属性」か……。

 ところでコスは「この世界に封をして、鍵を捨ててくれ」と言い残し、エルズペスを逃がしました。更に公式記事「英雄の導師、アジャニ」にはこうあります。


他のプレインズウォーカー達が噂を広めていた。ミラディンは死んだ。ファイレクシアが復活した。この世界と全ての世界のために、そこへ足を踏み入れてはならない。


 「噂が広まっていた」ようですが、多元宇宙にプレインズウォーカー達はどれほど数が存在するのでしょうか。まあメタなことを言いますと私達は皆そのプレインズウォーカーなのですが、「噂が広まる」程には存在し、交流もあるようです。
上記の記事、エルズペスはこう書いていました。「もしヘリオッドの顔を拝むことができたなら、私はこう言うでしょう。平穏を下さい。平和を下さい。終には安らぎを下さい」と。彼女は「ファイレクシアに対抗する力を求めて」ではなく、「ファイレクシアに侵略されることはないという安らぎと安全を求めて」かつて訪れたことのあるテーロス世界を再び目指しました。

 ところで、エルズペスが登場するデュエルデッキである「Elspeth vs. Tezzeret」。アラーラブロックの二人のカードから成るデュエルデッキですが、実はこの二人はアラーラブロックでは会っておらず、ミラディンの傷跡ブロックにて初めて顔を会わせました。




「あいにく、私の一部はまだ人間なのだよ」
その人間は言って、金属の腕を顔の前に動かした。
「私はテゼレット。かつて汚物と澱みの中にて生きてきた。かつて宮殿にて生きてきた。宮殿の方がいいね」
「あなたはエーテル宣誓会の者。その閃く金属、あちこちで見てきました」
エルズペスが言うと、その者は微笑んだように見えた。
「なんと、バントの善き騎士様。私の目は節穴か。まるでちょっとした同窓会のようだ」
「あなたもそのエーテル宣誓会に?」
ヴェンセールが尋ねた。
「いや。あらゆる者が私へと手を振り上げたよ、私のために働いてくれる者以外はね」
「あなたはどうして、ファイレクシアの汚れに損なわれていないの。明らかに、この忌まわしきもの達の中にいるというのに。奴らはエーテリウムを所有しているの?」
エルズペスが尋ね、テゼレットの眼が彼女を見た。白の戦士は睨み返した。ヴェンセールは疑いなくわかった、エルズペスがその者をどう考えているか――敵だと。
テゼレットはエルズペスの心を読んだかのように答えた。
「私は敵ではないよ。ファイレクシア人でもない。手助けをするために来たんだ、実のところね」

(小説『Scards of Mirrodin: Quest for Karn』 chapter 8より)


 「敵ではない」とテゼレットが言ったように、この二人は最後まで戦うことはありませんでした。「戦ったといっても口喧嘩レベル」のヴェンセールvs.コスよりも更に戦っていません。実は「会っていたのかどうかすら曖昧」なソリンvs.ティボルトの次くらいによくわからない組み合わせのデュエルデッキです。



4. エルズペスinテーロス

 安全と安心を求めて訪れたはずのテーロス、ですがエルズペスはこの世界でも戦いに巻き込まれてしまうのでした。トレイラームービーにて、《太陽の神、ヘリオッド》が語っています。




「その者は 英雄になることを望んではいない しかし運命は否応無く その者を巻き込むことになるだろう」
「エルズペスこそが 我から奪わんとする簒奪者から このテーロスを救う英雄となるであろう」
「闇が到来しようとしている 今こそ彼女は 英雄として立たねばならぬ」


太陽の神、ヘリオッド

テーロスでも「主神」とされるヘリオッド。
世界に太陽の光をもたらしてくれる神々しい存在です。
ですが性格は割と気まぐれで自分勝手。まあ、モチーフがギリシャ神話だから仕方ない。


 以前にも何度か書いて来た通り、新世代プレインズウォーカー達は生きていくために食事や睡眠を必要とします。つまりそういったものを得るために働かなければいけません。そしてエルズペスの場合、その手段は「戦う」こと。新たな世界に赴いたならとりあえず用心棒や傭兵といった手段で生計を立て始めるも、なまじ実力があり魔法も使えるため次第に注目され始め、やがて英雄へ……という悪循環が成立しているようです。
 ところでテーロス発売直後あたりの頃は「ヘリオッドがエルズペスに半神半人の英雄を産ませるんじゃ、ゼウス(Not 浅原さん)的に考えて」と思っていましたが、どうやらヘリオッドはそのモデルの「色好み」部分は受け継いでいなかったようで良かったですね。

 都市国家メレティスにあるヘリオッドの神殿を目指していた彼女は、その途中で都市を襲おうとする伝説的ハイドラ、《世界を喰らう者、ポルクラノス》と遭遇します。

世界を喰らう者、ポルクラノス邪悪退治


 ハイドラは幾つもの首を持つ怪物、そしてその首は切り落とすごとに再生します。ですが首を放って身体を攻撃するなどという事は危険すぎてできません。そこでエルズペスがとった策は「首を完全に切り落とさず、皮一枚残しておく」ことでした。そうすれば首は無力化でき、そして再生することもありません。エルズペスは一つまた一つとポルクラノスの首を無力化すると、最後にポルクラノスの心臓を貫きました。

 太陽の勇者、人々がそう囁いた瞬間でした。





 ポルクラノスを倒した彼女は次に都市国家アクロスを包囲するミノタウルスの軍勢との戦いへと赴きます。多くの兵を失いながらも彼女は勝利しますが、その勝利の宴を自らの目的のために利用しようとする者がいました。《歓楽者ゼナゴス》

歓楽者ゼナゴス


 サテュロスの王でありプレインズウォーカーでもあるゼナゴスは神になるという野望を抱き、そのための儀式を幾つも行ってきました。「神とプレインズウォーカーではどちらが上なのか」とはよく言われますが、神の方が明らかに力は上なのでしょう。新世代プレインズウォーカーは「様々な次元世界を渡り歩く力を持つ」というだけで、基本スペックは一般的な知的種族と何ら変わらないのですから。
そして具体的にどのような過程を経たのかは不明ですが、勝利の宴はゼナゴスの最後の儀式となり、それは成功してゼナゴスは「歓楽の神」の座へと昇りました。

歓楽の神、ゼナゴス


 ゼナゴスが神の座へと昇り、神々は自分達の絶対性を乱されたとして怒り狂います。エルズペスはその責任を取らされ、荒野へと追放されてしまいました。

 ですが今回、そこでエルズペスはテーロス世界を後にはしませんでした。彼女へと手を差し伸べた種族がありました。テーロス世界のレオニン達です。神々を信仰しない彼らは一歩離れてその騒乱を見ており、エルズペスは全く悪くないのだと知っていました。更に幸運なことに、レオニン達の助力でエルズペスはこの世界を訪れていたアジャニと再会します。まるで惹かれ合うように。

英雄たちの結束


 そう、エルズペスは今回は逃げませんでした。ゼナゴスが神の座に昇ったことにより他の神々が怒り狂い、世界が危機に陥っている。ならばゼナゴスを倒し、世界に平穏を取り戻そう。二人は世界の果てにあるという《神秘の神殿》へと向かい、そこで《彼方の神、クルフィックス》から「神をニクスから追い出す方法」を尋ね、まさに『ニクスへの旅』へと赴くのです……。



5. アジャニとの関係

 エルズペスと最も深く関わりのあるプレインズウォーカー、アジャニ。彼は恐らく、エルズペスが初めて出会った自分以外のプレインズウォーカーです。バントにて共に過ごした期間は長くはありませんでしたが、その後も二人は折りに触れて互いを思い出すような関係であり続けました。

 第14回記事にも書きましたが、アジャニは「他者の魂の奥深くにある真髄を見ることができる」力を持ちます。エルズペスは彼が自分の本質を見通すことに気が付いたのでしょう。変な言い方をすれば「彼は本当の私を見てくれる」。ミラディンの傷跡ブロックの結末は、「エルズペスがアジャニへと書いた手紙」という形式で明かされました。この手紙を出すつもりはない、とはありましたが、エルズペスにとってアジャニはここまで辛い目に遭ったことすらも明かせる存在だというのがわかります。
 テーロスの小説でも、エルズペスは時々アジャニを思い出していました。


彼はアーボーグの闘技場にて、下賤な悪漢のように戦っていた彼女を見てもなお、高貴な騎士であるかのように接してくれた。
(小説『Theros: Godsend, Part 1』 chapter4より)


 カード能力からも二人の距離の近さが窺い知れます。《太陽の勇者、エルズペス》でトークンを三体出し、《英雄の導師、アジャニ》でそれぞれに+1/+1カウンターを乗せる、誰が見てもわかるシナジー。《ジェイス・ベレレン》《リリアナ・ヴェス》《滞留者ヴェンセール》《解放された者、カーン》に続く「カードにも関係性が現れるプレインズウォーカー」三組目ってことになりそうです。
 更にちょっと気になるのはこれ。

英雄の導師、アジャニ


 共に忠誠度「+1、+1、-8、初期値4」。勿論、プレインズウォーカーの忠誠度の上下がとても念入りに調整されていることはわかっています。ですがこの一致はあまり偶然とは思えません。

 そして誰もが笑ったであろう今回のアジャニの豪快すぎる奥義。モダンで《フェリダーの君主》でも持ってくるのならともかく勝ちに直結しない奥義ですが、私はこの奥義は「エルズペスのための技」だと思っています。エルズペスは「大きく強く頼もしい存在に守られたい」願望があるので、雇い主(=プレイヤー)のライフがこれだけあれば彼女も安心するだろう、というアジャニの優しさなのではないかと。



6. 神送り


神送り


 ニクスへの旅で登場した伝説の装備品《神送り》。お気づきでしょうか、エルズペスは最初に登場した時からずっとこの武器を持っていたということに。





 神送りは元々パーフォロスの剣でした。そう遠くない昔(恐らく10年ほど前)、パーフォロスとヘリオッドが諍いを起こしました。そのモチーフであるギリシャ神話同様、テーロス世界の神々もよく喧嘩をします。戦いの中、パーフォロスの手から剣が定命の世界へと滑り落ちてしまいました。プレインズウォーカーとして覚醒してまだ間もない、この世界を訪れていた少女エルズペスの前へと。彼女はそれを手にし、ですが見上げた星空に聳える神々の姿を怖れ、すぐにテーロス世界を離れました。ちなみにこの時彼女の傍には、少年時代の《メレティスのダクソス》もいました。彼、実は小説では重要人物です。

メレティスのダクソス

実はあらゆる神の声を聞けるという凄い神託者さんです。


 上でも書きましたが、エルズペスはバントで過ごしていた間、その剣で戦い続けました。ですがバントを去る際に、長い間愛用してきたその剣を置いて行きました。そしてドミナリアの闘技場で戦っていた時にアジャニからそれを手渡されて再びその剣で戦うようになります。

 一方、ヘリオッドは長いことその剣を探していました。見つからないのは当たり前です、テーロスの外へと持ち出されてしまったのですから。そして年月が過ぎ、エルズペスが新ファイレクシアからテーロスへと戻ってきました。彼女は神々の庇護と安心を求め、都市国家アクロスにあるヘリオッドの神殿を訪れて祈りを捧げました。

神々の思し召し

このアートではまだ「剣」状態です。


 遂に剣を発見したヘリオッドは驚き、祝福を与えて槍に変化させるとエルズペスに告げました。太陽の勇者となりたくば都市国家メレティスにある自分の神殿まで来るがよい、と。そしてその道中でエルズペスはポルクラノスに遭遇し、あとは上で書いた通りです。

 《神送り》はそのカードが示すように、神を倒し、追放してしまえる力を持ちます。とはいえその槍がいつ、どこで「神送り」の力と名を得たのかはまだわかりません。ゼナゴスを神の座から追い出す方法をクルフィックス神へと尋ねに《神秘の神殿》を訪れた時かもしれません。
 そしてカードでは「神送り」と訳されていますが、「Godsend」は英語の普通名詞です。手元の辞書によりますと一般的な意味は「天の賜物、思いがけない幸運」。つまりは神から贈られたものであり、神を送るもの。更に、カードが公開された当初から言われていましたが、この英語名も

「God ・ send」
「Gods ・ end」


のダブルミーニングなのでしょう。なんという……。

 もう一つ、とても気になることがあります。
設定上、《神送り》はエルズペスが持つ武器なのですが、肝心の彼女本人のカードは「プレインズウォーカー」のため、物理的に《神送り》を装備させることはできません。これだけフレイバーの再現にこだわるテーロスブロックで、あえて「肝心の持ち主が装備できない」カードが登場するというのは、裏に何かあるのではと考えずにはいられません。





 公式記事「プレインズウォーカーのための『ニクスへの旅』案内の最後にはこうあります。


クルフィックスはテーロス世界とその神々の起源の真実を知っている。そして神を一柱殺害する力のために払わねばいけない代償がどれほどかも理解している。


 考えすぎの可能性を百も承知で書きますが、これはもしかして「彼女はニクスへと入り、神を倒す代償としてプレインズウォーカーの灯を失う」という類の展開を示しているのでしょうか? いやむしろ灯を失ったけれどその後エルズペスはテーロス世界で穏やかに暮らしました、とかいう結末ならそれはそれで幸せなんじゃないかな、と思うんですよね……果たしてどうなるんでしょう? 今度こそエルズペスは「不幸」なエンディングから脱却できるの?





















































神討ち


ゼナゴス 「あ…ありのまま 今 起こったことを話すぜ!
『オレは神になれたと思ったら次のエキスパンションで完全除去されていた』
な、何を言っているのかわからねーと思うが オレも何を撃たれたのかわからなかった…」


 なんとニクスへの旅に、「ラストバトルの結末」が描かれているカードが登場したじゃないですか。最初のエキスパンションからしっかり登場していたゼナゴスは決して「出落ち」ではないのですが、《神討ち》のあまりのインパクトについ。すいませんでした。It is done.

 はい、このカードが示すように、神へと成り上がったゼナゴスは倒されました。
ですがまだわかっていない事は沢山あります。

・エルズペスは神を倒してどうなったの?
・アジャニもどうなったの?
・クルフィックスが言っていた「神を殺すための対価」とは何だったの?
・ゼナゴスは死んだの? それとも神ではなくなっただけで生きているの?
・キオーラは何をしていたの? アショクは?


凱旋の間

このアートはもしかして「全てが終わり、神話となったエルズペス」を
表現しているのでしょうか?


 これらの謎については、5月中旬発売のテーロスブロック小説『Godsend』パート2にて明かされると思われます。ちなみに、このタイトルも結構以前から公開されていました。またネタバレタイトルだったとは!! エルズペス以外のテーロスブロックの話もまとめて、すなわち次回に続く!!




※編注:記事内の画像は、以下のサイトより引用させて頂きました。
『Changing Gears』
http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/li/275

『The Planes of Planechase』
http://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/stf/54

『失われし告白』
http://mtg-jp.com/reading/translated/ur/023543/

『The Path of the Hero』
https://www.wizards.com/magic/magazine/article.aspx?x=mtg/daily/feature/257c