※WARNING!
この記事には「デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ2015」のネタバレが多数含まれています。まだプレイしていないor途中なので知りたくない、という方は戻ることをおすすめします。
こんにちは、若月です。タルキールどうですか?
サルカンとソリン! 黒と白の競演! やー、この二人は出会うんでしょうかね。何せRTRブロックではジェイスとギデオンの顔合わせを期待していたのですがそれは結局叶わなかったようなのでなあ……うーむ……
失礼しました。今回はまだタルキールの話ではないんです。
(2014年7月25日、JR高田馬場駅にて。撮影:私)
デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ2015(以下、DotP2015)の顔として、私達マジックプレイヤーのみならず多くの人々をも各所で威圧していたガラク。駅で見かけた広告は噂にたがわぬ大きさで、思わず写真を撮ってしまいました。今回はDotP2015にて彼がどのような軌跡を辿り、どんな結末を迎えたのかをお話します。
1. これまでのガラク
イニストラードブロックまでのガラクについては、第4回と第10回にて説明しましたので軽く。
フルネームなのではないかという説があります。
ガラクは典型的な「狩人」です。小物には頓着せず、訪れたあらゆる次元で最も巨大なクリーチャーを狩ります。緑の魔術の優れた使い手でもあり、また動物を狩るだけでなくそれらの精神について神秘的な理解を持ち、深く繋がっています。獣使いとして、獣を召喚して狩りの相棒とする。それがLRW・M12・M14のガラク全てでトークンやクリーチャー・カードを場に出す能力に表現されています。happymtg的にはやはりあのデッキでしょう、
<世界棘のワーム/Worldspine Wurm>を相手のゴールにシュゥゥゥーッ!!
……ですがそれも、屍術師リリアナ・ヴェスが遥か古代の危険なアーティファクト、《鎖のヴェール》で彼に呪いをかけてしまうまでのことでした。二人の遭遇は全くの偶然だったと思われますが、ガラクが召喚した獣をリリアナが殺したことから因縁が生まれます。二人の対立関係はデュエルデッキにもなりました。
そして黒マナに侵され、野生の声が次第に聞こえなくなる中、ガラクはリリアナを追ってイニストラード次元へと向かいました。呪いを解かせるか、さもなくば殺すために。
追跡の果てにガラクはリリアナと対峙しますが、呪いに苦しみ弱体化した彼は返り討ちに遭ってしまいます。そしてヴェールの呪いによって半ば狂気に侵されながら、死を待つものと思われました。
……そのときふしぎな事が起こった!
《獄庫》から解放されたアヴァシンが、狼男の呪いを変化させる魔法を世界へと放ちました。それはガラクの呪いをも一時的に弱めたのでした。この次元には呪いを解く方法があるのかもしれない。そう感じたガラクは一時リリアナを追うのではなく、昇る朝日の方角へ、その魔法がやって来た地を目指すのでした。そしてその途中、《熟練の戦術家、オドリック》と彼の部下に狼男と間違えられて捕獲され、アヴァシン教会の本拠地スレイベンへと連行されることになります。
……という物語でした、基本セット2013の時点では。
ですが、基本セット2015の物語が公開され始めますと、ガラクはまだ呪いを受けたままどころか遥かに悪化していることがわかりました。そして呪いの堕落と悪臭を振り撒きながら、「プレインズウォーカーを狩る怪物」と化してしまったのだと。
2. 基本セット2015のガラク
そんな、基本セット2015にてフィーチャーされたガラク。《精神を刻む者、ジェイス》以来の、4つの能力を持つプレインズウォーカーです(特殊なケースとはいえ《情け知らずのガラク》は5つでしたが)。カード名の「頂点捕食者/ Apex Predator」は実在の動物学的用語で、「食物連鎖の頂点に位置する存在」の意味です。
そして色。《情け知らずのガラク》は表面は一応緑単色で、「忠誠度が低くなったら(=弱まったら?)」呪いの影響が出て来て裏返り、黒緑になっていました。ですが今回は最初から黒緑。思いっきり黒マナの呪いに蝕まれている状態で登場しています。
プレインズウォーカー ― ガラク
+1:他のプレインズウォーカー1体を対象とし、それを破壊する。
+1:接死を持つ黒の3/3のビースト・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
-3:クリーチャー1体を対象とし、それを破壊する。あなたはそれのタフネスに等しい点数のライフを得る。
-8:対戦相手1人を対象とする。そのプレイヤーは「クリーチャーが1体あなたを攻撃するたび、それはターン終了時まで+5/+5の修整を受けるとともにトランプルを得る。」を持つ紋章を得る。
「他のプレインズウォーカー1体を対象とし、それを破壊する」。今回のガラクは呪いに蝕まれ、あらゆる生物の中で最高の獲物である「他のプレインズウォーカー」を狩るようになった、という設定なのですが、それにしても何てストレートな能力か。忠誠度の増加が1と僅かなのも、それは彼にとってごく簡単な事なのでしょう。それこそDotP2015のムービーで振り下ろされる斧のように簡単に。
大マイナスは「周囲にまでも呪いを振り撒く」。対戦相手に直接的なダメージを与えるというよりも嫌な不利益を与えるようになっています。
そしてこれまで、「ガラク」の名を冠するカードは本人以外は全て緑のクリーチャー呪文、ガラクが呼び出す獣でした。今回基本セット2015で登場した《ガラクの目覚め》は初のソーサリー呪文、しかも一種の全体除去です。いかに今回のガラクがそれまでの彼を裏切っているかがわかるかと思います。今までのガラクが呼び出した《ガラクの仲間》も《ガラクの大軍》も、この呪文で彼自ら一掃してしまえるという……。
ところでプレイヤーもプレインズウォーカーですので、今回のガラクの+1能力(上)、「他のプレインズウォーカー1体を対象とし、それを破壊する。」を対戦相手に使えば勝利できるんじゃね? とは一瞬話題になりました。まあそれこそ《イニストラードの君主、ソリン》や《戦慄掘り》の時にもありましたけど。対策に《神々の神盾》を置いておきましょう。
3. あなたはプレインズウォーカーだ
過去何度となく書いてきました(それこそすぐ上に書きましたが)、マジックのプレイヤーはプレインズウォーカーという設定です。何と今回DotP2015では、我々というプレインズウォーカーが物語を動かすことになりました。ガラクの呪いを解くのは「私達」でした。
DotP2015は、プレイヤーがイニストラードにてソリンから依頼を受ける所から始まります。DotP2015のストーリーモードにあたる「一人用キャンペーン」はイニストラード、このナレーションから始まります。
「複数のプレインズウォーカーが殺害された謎を解明するために、吸血鬼ソリン・マルコフはその出身次元イニストラードへと君を招いた。ガラクの仕業だろうか?」
「私達」はソリンに招かれたのか! そうして多くのプレインズウォーカーが、様々な理由からガラクを止めるために奔走します。DotP2015のトレイラーやオープニングムービーに登場している仮面のプレインズウォーカーもその一人。
彼にはきちんと設定がありまして。名前はヴロノス、イニストラードにて狼男や吸血鬼を狩る《精鋭の審問官》でしたが、ある絶望的な戦いの中で灯を点火させました。以前「プレインズウォーカーの運命は多くの場合、最初に渡った先の次元に左右される」と書きましたが、ヴロノスもその通りでした。彼が辿り着いたのはアラーラ次元のエスパー。そこではエーテル宣誓会の者達がプレインズウォーカーの性質を研究していました。ヴロノスは彼らへと協力する代わりに様々な知識を求め、彼らのようにエーテリウムを身体に埋め込み、またプレインズウォーカーとしての技能を磨きました。
そしてイニストラードへ帰った彼は、信奉し敬愛する守護天使アヴァシンから直々に、呪いと破壊を振り撒くガラクを連れて来るように命令されます。ですがヴロノスを待ち受けていた運命は、DotP2015オープニングムービーの通りでした。
ヴロノス 「あ…ありのまま 今 起こったことを話すぜ!
『オレは新プレインズウォーカーとして登場したと思ったらその記事内でガラクに殺されていた』
な、何を言っているのかわからねーと思うが オレも何をされたのかわからなかった…」
……まーた白青男子が死んだよ!
ところでヴロノスがガラクに殺害されてしまったその記事「狩人は憐れむなかれ」によりますと、アヴァシンもイニストラードの外の世界について知っているんですね。ヴロノスの件で初めて知ったのか、それとも自身の創造主絡みで元々知っていたのでしょうか。
さて、そんな風に「私達」が動かすDotP2015の物語。各次元で様々な相手と対戦しつつ、ガラクの手がかりを追います。
◆1面…イニストラード
上にも書きましたが、「私達」がソリンに招かれてイニストラードを訪れる所から始まります。「ガラクの仕業だろうか?」と「私達」は推測しています。
実は彼女のイラストはDotP2015に先行登場していました。
イニストラードの最終面にてアヴァシンに勝利し、実力を認めてもらった「私達」はガラクが落としたらしきテーロス次元のコインを手がかりに、次の地へと向かいます。
◆2面…テーロス
ガラクの行き先を占ってくれるらしい神託者が《殺人王、ティマレット》に連れ去られたと知り、「私達」は追いかけます。途中の面ではキオーラも登場。青緑デッキなのですが、あの、その「熱帯の島」(日本語表記。本当)はちょっとずるくないですか?
ストーリーに一切関わっていなかったらしいティマレットさん、
晴れてテーロスステージのラスボスとして登場。
ティマレットを倒して救い出した神託者は「蒸気による瞑想に入る」とあったので、《嵐の神、ケラノス》に仕えているのでしょう。彼女は告げました。
「孤独な魔道士が果てなく続く建物の海を見渡しています」
そして手渡してくれた石板の紋様は、見覚えのある青いローブに白く描かれたものと同じあの……
◆3面…ラヴニカ
「私達」はガラクの手がかりを知るジェイスを探し、ラヴニカ中を奔走します。何せ彼は生けるギルドパクト。庁舎にいればいいのですが丁度この時はラヴニカの何処にいるかわからない状態だった模様で。
しこたま笑いました。主催者!
そしてこのラヴニカで物語が大きく動きます。ジェイスに勝利すると、ムービー付きで彼はガラクの情報をくれました。ジェイスは「私達」の心を覗き、何が起こっているのかを把握すると、呪いを解く方法までは判らないものの、ガラクを止める方法を教えてくれます。まずシャンダラーに向かい、ガラクが呪われる元々のきっかけとなった《鎖のヴェール》、それが安置されていた祭壇を破壊するようにと。
◆4面…シャンダラー
とはいえ「私達」は、その地下墓地の所在を知らないのでした。そしてシャンダラーといえば……やめて! スリヴァーデッキやめて! M14・M15スタンのスリヴァーデッキって結構やるのよ!!
頑張って辿り着いたシャンダラーステージのボスはクルケッシュ。彼は不吉なことを言います。
「世界薙ぎ、強大な力を持つ悪魔がシャンダラーを浄化し、オナッケは再興するであろう!」
世界薙ぎ。決して同名のアーティファクトではないであろう事はわかります。クルケッシュを倒し、鎖のヴェールの祭壇を破壊すると現れた水晶に次の行き先が見えました。
◆最終面…ゼンディカー
この世界での目的は、オブ・ニクシリスを倒してその額から面晶体を回収し、更にそれをガラクへと埋め込むこと。……簡単に言わないでくれませんか?
オブ・ニクシリスを倒し、その力を封じ込めていた面晶体を手に入れ、それを今度はガラクに使う。そしてラスボスのガラクは2連戦になります。超強力な黒緑デッキ。《強情なベイロス》に《魂売り》にと、スペックの違うクリーチャーに苦戦させられます。そして「バイユー」(日本語表記。本当)とかずるい。本当にずるい。ですがどうにか勝利すると、「私達」は面晶体をガラクの胸に埋め込みました。どうやらそれでガラクの呪いは抑えられたようです。我々という名もなきプレインズウォーカーがガラクを対処したというのが「正史」になるのでしょうか。驚きです。
そして、DotP2015の後日談である公式記事「怪物」では正気に戻ったガラクと、私達をガラクへと向かわせたジェイスが対面していました。
妙なくらいに献身的なジェイス。そしてガラクがたまに見せる屈託のない笑顔。君らそんなに親交深かったっけ? と驚くほどでした。
もしガラクが友を作るのにやぶさかでなかったなら、ジェイスはその良い一人となれていたかもしれない。
「最後の助言だ、ベレレン。最高の狩人だけが独りで狩りをする。お前か? お前には友が要るな」
(共に公式記事「怪物」より抜粋)
ともかくガラクの呪いは面晶体に抑えられ、この件に関してはしばらく大丈夫なのでしょう。第10回でも似たようなことを書いた気がしますけど。ですが続くムービーでは、別の物語が始まりそうな様子が示されていました。ガラクの呪いを抑える面晶体、それをその身から抜き取られたあの悪魔。
4. ゼンディカーへ?
基本セット2015にて突然再登場したオブ・ニクリシス。「既存の伝説クリーチャーが新たな姿で」というのはアヴァシンも同じでしたが、オブ・ニクシリスの方は明らかに背景的に何かあったのだろうと推測される程に、その姿も能力も異なっていました。
そんな彼はゼンディカー版のカードにて、「かつてプレインズウォーカーだった」ということが説明されていました。
《堕ちたる者、オブ・ニクシリス》フレイバーテキスト
灯を失った彼は、彼の魂を砕いたこの次元の堕落したマナへの復讐を計画している。
とても心躍る設定だったのですが、このフレイバーテキスト以上のものが語られることはありませんでした。小説にも公式記事にも特に出ていなくて……。ですが、今年になって詳しい話が明かされました。公式記事「忌むべき者の夢」はDotP2015の後日談の一つなのですが、オブ・ニクシリスがその過去を独白していました。
彼は《鎖のヴェール》の呪いによってデーモンになったように読みとれます。数多くの世界を征服し、やがてゼンディカーを訪れました。その地をもまた手に入れ、あわよくば呪いを解くために。ですがゼンディカーに着いて早々、「世界の庇護者ナヒリ」に倒され、力を封じられたとのことです。
そして長らくゼンディカー世界に眠っていたのですが、プレイヤーによって額の面晶体を摘出され、その束縛から(ムービー付きで)「解き放たれ」ました。ちなみに私のオブ・ニクシリス戦は、向こうが代替コストで《死の門の悪魔》を出してきた所を《飢えへの貢ぎ物》で対処してあとは適当に殴り勝ちましたごめんなさい。
以前にはなかった翼(と飛行能力)があります。よりデーモンらしい姿になりました。タルキール覇王譚でもゼンディカーへの伏線を積極的に張っている気配がありますが、オブ・ニクシリスもこの先再登場するのでしょうか。再び伝説のクリーチャーとしてなのか、それとも……。
もう一つ。上でさらりと書きましたが、オブ・ニクシリスをゼンディカー世界に封じたという「ナヒリ/Nahiri」。ゼンディカーの庇護者という設定、そして旧世代プレインズウォーカーだったであろうオブ・ニクシリスを難なく倒したことから、彼女(コー?の女性らしいです)が件の「エルドラージ封印に関わった三人目のプレインズウォーカー『石術師』」ではないかと一部で噂されていますが、先日掲載されました公式記事「ソリンの黙示」に再び名前が出てきました。
ナヒリの姿は見当たらず、そして彼女の沈黙は彼の心をかき乱した。だがウギンはその危険を察していただろう。何故彼はゼンディカーに来なかった? エルドラージの巨人たちは消すことのできない火、そしてウギンの不在は奇妙だった。
これは……。
ウギンとエルドラージの文脈の中で突然登場したナヒリ……やはり彼女が「石術師」なのでしょうか?そして名前が出てきたということは、今後の物語に関わってくるのでしょうか?
5. 公式に脳筋と呼ばれた男から
恒例のオチを。
第4回にて「公式に『脳筋』呼ばわり」と書きましたが、ガラクは基本セット2015の公式記事複数にてまたもかわいそうな事を書かれていました。
その男、ガラクは、とても人間とは思えなかった。筋肉の巨大な塊で、汗と古い血の悪臭を放っていた。その顔は傷だらけの錆びた兜と粗野にもつれた髪に隠されていた。彼がその巨大な斧を掲げると、堕落の悪臭が大気を汚した。
(公式記事「狩人は憐れむなかれ」より抜粋)
「貴方の臭いを消す方法を見つけて」
「貴方の臭い息が、私の最後の感覚になりそうで怖かった」
(公式記事「怪物」より抜粋)
ガラク 「以前は公式に脳筋呼ばわりされ、今度は公式に臭いと連呼された。やはりプレインズウォーカー殺す、慈悲はない」
(終)
※編注:記事内の画像は、以下のページより引用させて頂きました。
『狩人は憐れむなかれ』
http://mtg-jp.com/reading/translated/ur/0010828/
『忌むべき者の夢』
http://mtg-jp.com/reading/translated/ur/0010855/
『怪物』
http://mtg-jp.com/reading/translated/ur/0011008/