やぁ皆さん。新たな記事をお届けすることができて、とても嬉しいよ。
今回は『カラデシュ』のリミテッドについて話したいと思う。皆はこの新世界『カラデシュ』から登場した新しいカードを体験して、楽しんでいるだろうか?この新環境に対する私の第一印象はとても素晴らしいというものだった。
『カラデシュ』発売から一週間で、私は9回ほど『カラデシュ』環境でドラフトをしたが、この環境のドラフトはとても良い!今日お話しするのは環境の全体図と、そしてどのようなカードを早めにピックした方がいいか、などについてだ。
再び、アーティファクトブロックがやってきた。だが今回は昔の『ミラディン』や『ミラディンの傷跡』ドラフトとは少し感覚が違うようだ。これら昔のフォーマットでは《粉砕》は第一ピックだったが、今回の『カラデシュ』ではこれを1パック目にピックすることになったら満足はできないだろう。そういう意図もあったのか、今回このセットに《粉砕》は収録されていない。
誤解しないで欲しいのだが、今回も多くのアーティファクトがこの新セットにあって、多くの盤面はアーティファクトで溢れることだろう。だがドラフトでは少なくとも1人、2人はアーティファクトを全く使わないデッキを使う、ということもあるはずだ。私の考えでは、1枚ぐらいアーティファクト除去をメインに積んでも良いかと思ってはいるが、それよりもっと良いカードを優先してピックした方が良いとも思っている。もちろん、アーティファクトを意識しない訳にはいかないから、サイドボードにはしっかりアーティファクトを多く使ったデッキへの対応をしたいものだが。
マルチカラー今回のセットでは15枚しかマルチカラーカードが存在しない。そしてほとんどのカードは、デッキに入れるために色をタッチしても良いと思うくらい、今回のマルチカラーは強い。2人のプレインズウォーカー、3枚のレア、そしてアンコモンに各2色の組み合わせが1枚ずつ存在する。《危険な状況》はこの中では一番弱く、このため、このカードを使用するために他の色をタッチすることはないだろう。《経験豊富な操縦者》と《通電の喧嘩屋》、《禁制品の黒幕》も2マナ域としては優れているが、同様にタッチして使用するほどの価値はないだろう。しかし、他のマルチカラーのカードは本当に強い。
今回は、強力になった《熟考漂い》である《雲先案内人》、よりサイズの大きい《グレイブディガー》である《機械修復職人》、そして《終止》をさらに強化した《無許可の分解》など、とても強いカードが多く存在するから気を付けてほしい。もし2、または3パック目で強いマルチカラーを引いたなら、その色をタッチしてそのカードを使えるチャンスはあると思うべきだろう。なぜならば、このフォーマットに内在しているテンポを考慮すると、すべてのプレイヤーが多色をタッチするデッキに興味を持っていない可能性があるからだ。
テンポ最初に私が新カードのプレビューを入念に読んだとき、今回の環境は速い戦略に傾くようなイメージがあったのだが、どうやら私の予想のとおりに環境が固まってきたように見える。昔の『ゼンディカー』ほどの速さではないと思うが、これまでマジックが体験したことのない新たな速さでゲームは進むと思われる。『イニストラードを覆う影』から『戦乱のゼンディカー』ほどだろうか。2マナで優秀なクリーチャーがとても多く、それを各色が持っており、とても攻撃的だ……青を除いて。今回の青は遅い側にいるが、とても良い2マナの《理論霊気学者》がいる。
ゲーム序盤、「機体」を出すのに1ターン、「搭乗」させるクリーチャーを出すのに1ターンと、2ターンほどブロックを放棄することにはなるが、「機体」はテンポの高速化を担っている。速いテンポは大きなブロッカーであろうと、コンバットトリックで突破することを可能にしてくれる。
「機体」「機体」はとても興味深く、新しいギミックだ。この新しいアイディアをウィザーズ社が思いついたことに対して、賞賛の言葉を述べたいくらい素敵だ。すべての「機体」が最高とは言えないが、実際にプレイした感触だと、《改革派の貨物車》が今回のコモン枠では一番良いかもしれない。4ターン目に5/4トランプルで攻撃できることをコモンのカードに期待してはならないと思っていたのだが、どうやらそれが実現してしまったようだ。このカードはあらゆるデッキで興味深いカードになるだろう。
《航空艇》の評価は、「まあまあ」といったところだろうか。飛行を持ち、クリーチャー1体で「機体」を操れる。素晴らしい1枚ではないが、使えるものだろう。《破砕踏歩機》は最弱だ。マナコストや搭乗コストが重いカードは弱い、と考えるべきだろう。
シナジーを意識しよう
ドラフトで、「シナジーがとても強くて良い」と従来言われていたデッキでは、レアの大半がダウングレードされている印象だ。「エネルギー」を軸にやるならば、ただ単に「エネルギー」でアドバンテージが取れればいいから、レアでなくても使われるだろう。これは似たような戦略についても言えることで、対戦してとても辛いカードが2枚だけあった。それは《生命の力、ニッサ》と《領事の旗艦、スカイソブリン》だ。この2枚は本当に強く、戦場に出てくると、もうどうしようもないくらいだ。もちろん何らかのインスタント除去で《領事の旗艦、スカイソブリン》を落とせたり、《生命の力、ニッサ》を飛行持ちの大軍で襲えたりできないわけではない。しかしながら、大半の場合はこの2枚に負けてしまうだろう。《新緑の機械巨人》《燻蒸》《マリオネットの達人》などはとても強いと思ったのだが、どれも倒せないほどではない、という印象だ。
もし特定のクリーチャー、コンバットトリック、そして除去がデッキに必要なら《逆毛ハイドラ》のようなカードはピックせずに、隣に回しても大丈夫だろう。
さて、次は各アーキタイプ別に色の組み合わせについて、そしてその際に鍵を握るコモンの話をしよう。まず、1つだけこの『カラデシュ』の世界を訪れている間は覚えていてほしいことがある。それは、色の組み合わせはそこまでシビアではない、ということだ。とにかくアーティファクトだらけで、どのようなアーキタイプを選んでも、「ちょっとした茶単」のような感じにまとまる。数枚の色の合わないカードを入れるために《予言のプリズム》を使って3色、4色デッキになる場合もあるはずだ。
緑黒このデッキに関しては、具体的にどのような構築が最善なのか全く見えてこないのだが、この2色ならとても広いゲームプランが可能で、3色または4色まで広げることもあった。勝ち筋としては相手より多くの細かいアドバンテージを取り、より多くの小さい爆弾を投下し、霊気装置・トークンをとにかくばらまいたりするものだろう。この組み合わせでは、あらゆるプランが可能でもある。それだけ今回この2色は奥深い。
トップコモン:《予言のプリズム》《短命》《ピーマの先導》
赤白
クラシックなボロス(赤白)の戦略である、小さいクリーチャーで素早く動き、速攻持ちと除去でゲーム終盤になってもチャンスがあるように立ち回ろう。さらに《鼓舞する突撃》でフィニッシュを決めることができる。以前との違いとして、この組み合わせを使うならば、喉から手が出るほど「機体」が欲しくなる。必須と言っても良いくらいだ。
トップコモン:《航空艇》《プロペラの先駆者》《亢進する地虫》
メモ:《垂涎グレムリン》《歯車工の組細工》を使ったコンボデッキにもなれる。
青白
飛行と地上のコントロール、何も特別なことはしていない……1つを除いてね。その1つとは、は《第九橋の巡回員》だ。このカードには「戦場を離れるとき」と書いてあるので、バウンスやブリンクなどと絡めることができる。それらを駆使して、素早いクロックと優れたディフェンスが可能となるだろう。対戦相手のクロックよりも遅くなる可能性が高いため、戦場を膠着させる方法を見つける必要がある点にだけ注意が必要だ。
トップコモン:《絶妙なタイミング》《風のドレイク》《理論霊気学者》《航空艇》
青緑
さて、ここからは「エネルギー」について話す時間だ!この2色は「エネルギー」を使い倒せる組み合わせだ。「エネルギー」をマナカーブに沿って貯めて行くことで、常に対戦相手よりも一歩先を進むことができて、「エネルギー」を使ったクリーチャーへと繋げることができる。しかしながら、「エネルギー」を全く使わずに、ドラフトでアーティファクトなどを「製造」するクリーチャーと一緒に使って、《歯車襲いの海蛇》をフルパワーで使うこともできる。
このアーキタイプはとても強い。使える呪文が少ないため、取るカードに優先順位をつける必要がある点は気をつけよう。
トップコモン:《亢進する亀》《亢進するサイ》《弱者狩り》
または《歯車襲いの海蛇》《ピーマの先導》《ナーナムのコブラ》
青黒
この2色が、今回のアーティファクトコントロールデッキだ。盤面をなるべく膠着させて、《歯車襲いの海蛇》、または《ドゥーンドの調査員》や飛行クリーチャーで盤面を突破することになる。このドラフトでは、アーティファクトと「製造」クリーチャーが多ければ多いほどこのデッキは良くなるだろう。デッキの性質上《予言のプリズム》によって、他の色をタッチすることも可能。
トップコモン:《ドゥーンドの調査員》《歯車襲いの海蛇》《予言のプリズム》
赤青
このフォーマットでもう1つの「エネルギー」を活かせるタイプだ。できる限り多くの「エネルギー」をかき集めて、相手からテンポを奪い取ることが可能だ。飛行クリーチャーはもちろん、速攻持ちもこの色の組み合わせでは大歓迎だ。このアーキタイプは《気ままな芸術家》が持つ能力を最大限に生かすことができ、相手のゲームプランを狂わせることができる。
トップコモン:《気ままな芸術家》《理論霊気学者》《亢進する地虫》
赤緑
このアーキタイプは構築フォーマットのように機能するデッキだろう。あまりアーティファクトには気を留めず、相手より大きいクリーチャーで構成して、少々の除去、速攻持ち、そしてコンバットトリックを混ぜれば良い。このデッキでは少量の「エネルギー」を使用することが可能だが、そこにゲームプランを依存することはない。クリーチャーが発電した「エネルギー」は、そのクリーチャー自身のために使うようなものだ。可能性としては《垂涎グレムリン》が入って、アーティファクトをもう少しだけ使うような型になるだろう。
トップコモン:《亢進するサイ》《亢進する地虫》《弱者狩り》《溶接の火花》
白黒
白黒は『カラデシュ』ドラフトの中でも最も好きなアーキタイプかもしれない。様々なゲームプランを選べるのが特徴で、アグレッシブに攻めること、コントロールしながら「製造」で盤面を埋めること、もしくは、その中間のような形にもすることができる。豊富な2マナ帯をどのように選択するかがとても重要だ。アーティファクトありでもなしでも、綺麗にまとまるだろう。様々なタイプから、自分に合ったものを選べば良い。この組み合わせでの最善の選択肢は今の段階ではまだ判断できていないので、トップコモンの発表は避けておきたい。
緑白第一印象では、「単純に緑の生物で押し倒して、白の飛行でサポートさせよう」と思っていた。これは緑白というアーキタイプを説明する上である程度は事実なのだが、プレイする中で多くの「エネルギー」が生み出される点にも注目したい。鍵を握るのは《渦跡の鷹》だ。このカードは、先ほどの「緑の生物」と「白の飛行」、どちらの役割も果たすことができる。「エネルギー」を生みだし、そして使用するこのカードは、飛行を持ちながら、自分の巨大な緑のクリーチャーも飛ばすこともできる。このアーキタイプはとてもアグレッシブで、パワーあふれるレアとアンコモンに満ち溢れている。
トップコモン:《渦跡の鷹》《弱者狩り》《クジャールの種子彫刻家》
赤黒
最後になってしまったが、赤黒は決して弱いわけではなく、いつものような役割を果たしていると言える。小さいクリーチャーを何体か並べて、そして豊富な除去を使ってゲームに勝つことが目的だ。この色同士のシナジーは現実的には少ないため、ゲームを進める「速さ」を作り出す必要がある。その点で、「機体」は非常に優れている。ドラフトの際は、アーティファクトを含む様々な価値あるカードとともに、優先して「機体」をピックしたい。デッキとしては2マナクリーチャー、除去、そして数枚の「機体」で良いデッキができるだろう。
この記事では除去をまったくと言っていいほど載せていないと思うが、様々なアーキタイプについて細かいカードまで詳細に話したかったからだ。そして、もう1つ書かなかったカードが《改革派の貨物車》だ。これはどんなデッキでも問題なく採用できる優れたカードであり、あっという間にゲームを轢き潰すくらい、とても強いカードだからだ。
「次に『カラデシュ』のドラフトをする際に、どの部分に狙いを定めてピックすべきか」という全体図が、皆さんに伝わったことを望むよ。そして、幸運を!
Oliver Polak-Rottman
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Oliver Polak-Rottmann
オーストリア出身。【グランプリ・ユトレヒト2014】では「青単信心」で優勝を果たし、4度のグランプリトップ8入賞を誇るヨーロッパの強豪。
スタンダードに関する造詣が深く、毎シーズンのメタゲームを読み解き、世界を旅して活躍を続ける。
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