あなたの隣のプレインズウォーカー ~第28回 あなたの隣のコマンダー~

若月 繭子

若月 繭子



コマンダーーーッッッ!!!


 こんにちは若月です。ちょちょちょちょちょっと、先日MOレガシーにて「白単兵士」が4-0したというのが話題になったんですが、その中に私が絶賛無限回収12年目の《司令官イーシャ》の名前が!!! (さっき数えたら767枚ありました)

司令官イーシャ

コマンダーですよ


 やー、オデッセイブロック当時でもブロック構築に少し顔を出していたくらいだったのですが、確かにデルバーどころか《グリセルブランド》さえも優しく受け止めてライフゲインさせないプロテクション(クリーチャー)だわ。デッキリストの《長弓兵》もですが、よく見つけてきたなあ……。

 私、この《司令官イーシャ》にはとても思い入れがありまして。ジャッジメントの頃にマジックに復帰したのですがカード資産がなく、白ウィニーなら簡単に始められるなと買ったテーマデッキ「殺到」に入っていたのが出会いでした。プロテクション(クリーチャー)の頼もしさと優しい雰囲気の綺麗なアート。どんなキャラなのかな、と知りたくなりまして当時ホビージャパンさんから発売されていた「ゲームぎゃざ」を読み、「争いを好まない生真面目なお姉さん」だと知って驚き、更にジャッジメントの小説を買い、そこから深く背景世界を追うようになって今に至ります。

 以上、ただの雑談でした。イーシャについて語りたかっただけとも言う。



 第24回では基本セット2015「多元宇宙名所旧跡巡り」をしましたが、統率者2014にもマジックの長い長い歴史が込められています。古参ホイホイかつ最新の物語もフォローの統率者2014。今回はそのプレインズウォーカー達の顔ぶれに迫ります!



1. 懐かしい「旧世代」達

 統率者2014について、「旧世代プレインズウォーカーが現代のシステムでカード化」というのは誰もが驚いたかと思います。え、テフェリーは時のらせんブロックにてプレインズウォーカーでなくなったはずだけどどういうことなの。おなじみDoug Beyerが説明してくれていました。要約しますと、


「次の統率者セットで登場するテフェリーは『灯』を捧げる前の姿だ。現在のテフェリーに灯は無いが、プレイヤーは時間軸を気にせずに昔のプレインズウォーカーとの出会いを楽しんでくれると信じている」


 りょーかーい、気にしなーい!



■時間の大魔道士、テフェリー

時間の大魔道士、テフェリー



 統率者2014の発表とともに公開されたプレインズウォーカー・テフェリー。彼の初出はミラージュ、1996年。なんと18年前です!!


地に平穏テフェリーの呪い蜃気楼


《地に平穏》フレイバーテキスト
遠い昔、一人の宮廷魔道士が諸家をギルドに束ね、彼らが個別の利害を超えてザルファーに尽くす仕組みを作り上げた。この5つのギルドの結束は、内乱の最中にも崩れることはなかった。まさしく、テフェリーの知恵の証といえよう。
――― アファーリー「語り」



 ミラージュブロック時点でテフェリー本人のアートは登場していませんでしたが、幾つものカードやフレイバーテキストで「時間や空間を操る謎めいたプレインズウォーカー」という気配を漂わせていました。彼はジャムーラ大陸(ミラージュ・ビジョンズの舞台)の国家ザルファーの宮廷魔道士であり、ジャムーラの守護者的な存在でもあったのですが、時間の流れに関する彼の実験が多くの混乱をもたらしました。様々なものが蜃気楼(Mirage)のように現れては消える、ミラージュブロックのメカニズム「フェイジング」にそれが表現されています。


虹のイフリート微風の守り手テフェリーの島

「美しいものは、そのはかなさ故にいっそう美しい」。
話好きだというテフェリーは《虹のイフリート》のフレイバーテキストで
詩的センスも披露しています。


 その後「ウェザーライト・サーガ」が始まり、その「回想パート」にあたるウルザブロックにて少年時代のテフェリーが登場。当時9歳の彼は才能には恵まれているものの素行に問題のある生徒でした。ここでアートにもテフェリー本人が、まだプレインズウォーカーではないですが初めて描かれました。


「僕はテフェリー」 銀のゴーレムの道をさえぎるように一人の少年が現れた。まるで、勇敢にもその極めて重いゴーレムに踏まれても構わないとでもいうように。「魔術の神童さ」 彼はその自己紹介とともに指を鳴らし、大気中に青い火花を散らせた。

(小説『Time Streams』 チャプター1より)


問題児




「テフェリーは才気のある若き魔術師だ–私の最も将来有望な生徒だ–だが彼はトラブルを起こすのが好きで仕方ない。物事を彼自身にとって倍は困難にし、他の者にとって三倍も困難にする」

(小説『Time Streams』 チャプター2より)


 そうバリン先生が述べていたように、少年時代のテフェリーはとんでもない悪戯っ子だったようです。小説でもフレイバーテキストでも、その微笑ましい迷惑さ加減がよくわかります。とはいえ明るく陽気な彼は決して憎めない子であり、小説『Time Streams』では創造されたばかりのカーンと積極的に友人となり、アカデミーを案内していました。


《問題児》フレイバーテキスト
テフェリーは問題のある生徒だ。いつも授業に遅れてくる。建設的なことに時間を使おうとしない。
――― バリンの生徒記録



《厳格な試験監督》フレイバーテキスト
厳しい先生の方が好きだな、その方がいたずらのしがいがあるもんね。
――― 第3階層生テフェリー



 と、迷惑な生徒ではあったのですが、アカデミーを卒業した後も師であるバリンとは友好な関係であり続けました。そして続くインベイジョンにてファイレクシアの侵略が始まると、彼はザルファーとシヴの一部をフェイズ・アウトさせて戦争から守り、彼自身も戦争から早々と離脱しました。プレインズウォーカーがドミナリアを守る戦いを止めること、そしてザルファーとシヴが再び世界に戻ってきた時に起こるであろう大災害に言及してウルザは憤慨しますが、それがテフェリーなりの、故郷の守り方でした。


テフェリーの反応



 「テフェリーの反応」というカード名。何への反応? それはファイレクシアのドミナリア侵略に対する、そしてウルザが率いる戦争に対する彼の「反応」だったのでしょう。
 それから一世紀以上が経ち、時のらせんにて彼はドミナリアへと帰ってきます。ですが世界は度重なる大破壊から「(時の)裂け目」と呼ばれる世界構造のひび割れに覆われ、そこからマナが流出して荒廃していました。テフェリーは速やかにそれを「塞ぐ」方法を探す旅に出ます(第5回第6回参照)。そして自らの「プレインズウォーカーの灯」を生贄に捧げて「裂け目」の一つを塞ぎ、ただの人間・ウィザードとなりました。それが時のらせんにて伝説のクリーチャーとしてカード化されたテフェリーです。


ザルファーの魔道士、テフェリー



伝説テフェリーとプレインズウォーカー・テフェリーは、割と能力の方向性が似ています。


《時間の大魔道士、テフェリー》
(4)(青)(青)
プレインズウォーカー – テフェリー(Teferi)
+1 : あなたのライブラリーの一番上から2枚のカードを見る。そのうち1枚をあなたの手札に加え、もう1枚をあなたのライブラリーの一番下に置く。
-1 : パーマネントを最大4つまで対象とし、それらをアンタップする。
-10 : あなたは「あなたはあなたがコントロールするプレインズウォーカーの忠誠度能力を、どのプレイヤーのターンでも、あなたがインスタントを唱えられる時に起動してもよい。」を持つ紋章を得る。
時間の大魔道士、テフェリーは統率者として使用できる。
忠誠度:「5」


 似ているといいますか、PWテフェリーの奥義は伝説テフェリーの能力をそのままプレインズウォーカーの忠誠度能力に適用したものなのですが。歴代「青」のキャラクターでも、時間と空間を巧みに操る能力でテフェリーの右に出る者はいません。プレインズウォーカーでなくなってからも、その深い知識をもって彼はドミナリアを救う旅の仲間達を支え続けました。また統率者2014のプレインズウォーカー達の中でもテフェリーの初期忠誠度は「5」と高めです。これには彼の、気さくで親しみやすい性格が表現されているのではないでしょうか。

 
 テフェリーはこのように、長い時間をかけて三度もカード化されました。陽気で知的で社交的な「青のいいところ取り」な性格と、旧世代ながらウルザほど悪評もなく物語での扱いも良好。物語的にも、カード的にもとても恵まれた稀代のプレインズウォーカーです。

 2014年現在、テフェリーの物語は未来予知の物語のエピローグにて、一人の人間として自分の足で「歩いて/walk」旅立った所で終わっています。その後は寿命を迎えたのか、それともかつての師のように何らかの方法で寿命を伸ばし、今もドミナリアで生きているのか。それはわかりません。

 物語だけでなく、マジックそのものの歴史の中でも長い時間に渡って、忘れた頃に再登場してはその名を刻んできたテフェリー。その「神出鬼没さ」も、まさに彼の個性なのでしょう。



■ラノワールの憤激、フレイアリーズ

 上で「登場から18年」と書きましたが、フレイアリーズはそれより更に1年早いアイスエイジ(1995年)にて初登場でした。19年目にして初めて本人がカード化とか前代未聞でしょ!! とはいえ「緑単のプレインズウォーカー」は実は選択肢が少ないので、順当な人選なのかもしれません。


ラノワールの憤激、フレイアリーズ



フレイアリーズについて、南の土地のエルフから、特にフィンドホーンから我々の所に届く記述は、アルゴスの瓦礫の影で育まれたものだ。これらの記述は彼女を女神と明言し、彼女を讃える他には何もない。彼らが言うには彼女の許し無しに花が咲くことも、木々の葉が落ちることもないのだと。
わずかに存在する、このプレインズウォーカーについての人間による記録は補足的なものにも満たない。特に、次に述べる氷河時代の光の中では。

(小説『The Eternal Ice』 チャプター6より)


 これはアイスエイジの小説から、フレイアリーズについて後世の学者が記したものです。
 カード名に「憤激」とあるように実は結構気難しい性格をしており、彼女に接する際には多くの者が細心の注意を払います。「プレインズウォーカーの正気の度合いは判断が難しい」とは《対立》のフレイバーテキストですが、ウルザ程とは言わなくともフレイアリーズも「旧世代プレインズウォーカーの尺度」で物事をとらえる傾向にあるように感じます。ドミナリアに長く続いた氷河時代を終わらせたのは彼女ですが、それによりまた多くの災害が起こったとは第5回で述べた通りです。



《ラノワールの憤激、フレイアリーズ》
(3)(緑)(緑)
プレインズウォーカー – フレイアリーズ(Freyalise)
+2 : 「(T):あなたのマナ・プールに(緑)を加える。」を持つ緑の1/1のエルフ(Elf)・ドルイド(Druid)・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。
-2 : アーティファクト1つかエンチャント1つを対象とし、それを破壊する。
-6 : あなたがコントロールする緑のクリーチャー1体につきカードを1枚引く。
ラノワールの憤激、フレイアリーズは統率者として使用できる。
忠誠度 : 「3」



 エルフを呼び出す能力からもわかるように、フレイアリーズはドミナリアにてエルフの守護女神として古くから知られてきました。カード名には「ラノワール」と入っていますが、フィンドホーンや後にドミナリアの一部となるスカイシュラウドでも彼女は崇められました。《ラノワールのエルフ》達が眼帯を装備しているのはフレイアリーズに倣ってとのことらしいです。





 過去にフレイアリーズが登場していたカードで有名なのは何といっても《破滅的な行為》でしょう。彼女はアイスエイジブロックからしばし時を経てインベイジョンにて再登場。ウルザによってプレインズウォーカー9人による対ファイレクシア部隊「ナイン・タイタンズ」の一人として召集されました。プレーンシフトアポカリプスの物語にてファイレクシアに突入した「ナイン・タイタンズ」の面々は、ファイレクシアの過酷な環境や裏切りによって何人もが命を落としながらも、生き残ったフレイアリーズ達がファイレクシアの奥深くに爆弾を設置しました。《破滅的な行為》はまさにその場面です。



レガシーのBUGやジャンドで今も使用されています。



 その爆弾の設置と起爆には成功したのですが、時は既に遅く、荒廃の王ヨーグモス自身がドミナリアへと顕現し、闇色の雲と化して世界を包み始めました。ですが最終的にヨーグモスは《レガシーの兵器》の白マナを浴びせられて滅び、ドミナリアは救われました。

 フレイアリーズは、ファイレクシアの侵略を生き延びた数少ないプレインズウォーカーです。小説『Apocalypse』のエピローグでは戦没者追悼式典に出席していました。その際の演説を少しだけ抜粋しましょう。


「これは、内緒の話です――彼らが担った重荷は、私達が担う重荷に比べれば何でもありません。彼らは私達に、新たな世界を手渡してくれました。今、私達はそれを背負って歩かねばなりません。生き続け、彼らの犠牲が無ではないことを確かにするのが、私達の義務です。彼らは望んで死の重荷を負いました。私達は喜んで、生という重荷を背負おうではありませんか……」

(小説『Apocalypse』 最終チャプターより)


 その後、フレイアリーズも時のらせんブロックにて再登場、テフェリーとも顔を合せました。ですがウルザの直接の関係者であり、インベイジョンブロックにて対ファイレクシア戦争から「逃げた」テフェリーを彼女はあまり快く思ってはいませんでした。

 ファイレクシアの侵略にて、ラース次元がドミナリアに「被覆」しました。ラースのエルフ達が住んでいるスカイシュラウドの森は寒冷なケルドの山岳地帯に出現し、森はその冷気に凍りつきそうになっていた所を、フレイアリーズの魔法に救われます。以来、彼女は生まれた世界こそ違えど、「養子達」を守ってきました。
 そしてフレイアリーズもまた、「裂け目」と世界の危機に気付いていました。


宝革スリヴァー


《宝革スリヴァー》フレイバーテキスト
地は痩せ細っています。 スカイシュラウドですら枯れ尽きています。 新たなマナの源を見つけなければいけません――この弱った世界でも成長するものの中に。
――フレイアリーズ



 敵対こそしないものの、テフェリーに対しては冷たい態度を取り続けたフレイアリーズでしたが、彼がその身を捧げて「裂け目」を閉じる様子を目の当たりにし、彼女もまた覚悟を決めます。


フレイアリーズはシヴでの彼を見ていた。彼が何を成したかを全て知っていた。そして、恥じ入った。彼が成功したということだけに対してではない。彼女にない、彼女が妬むこともない、時間というものに対しての彼の卓絶した知識と経験に。いや、違う。彼の素晴らしい状況把握に対してではなく、彼の勇気に。テフェリーは目的を達成するために死に往く覚悟をし、シヴの裂け目へと身を投じた。その大胆さと決心が、彼女自身の嘘を突きつけた。フレイアリーズ自身、スカイシュラウドの森を守る為ならばどんな事でも厭わないつもりだった。

(略)
だがテフェリーがその力の最後の一滴までも使い果たしたのを見て、自分は間違っていたと思い知った。スカイシュラウドの為に死のうなどとは、それどころか、森のために自身の力を失おうという意思すら持っていなかった。彼女の、自然の秩序への愛が、彼女の養子達に苦難と悲哀を強いることになった。そして破滅を招こうとしている。
(小説『Planar Chaos』 チャプター22より)


 小説でこの場面を初めて読んだ時は、あのプライドの高いフレイアリーズがここまで……と衝撃を受け、続く展開に圧倒されました。
 そして「裂け目」から現れた「平行世界の敵」が操るスリヴァー達の猛攻撃を受けながら、彼女もまたスカイシュラウドに生じていた「裂け目」へと身を投じ、それを塞ぎました。最後にはスカイシュラウドを守っていた魔力も全てその戦いに使い果たし、その森の形見として、ただ一本の樹だけを残して。

 時のらせんブロックでは、多くの旧世代プレインズウォーカー達が過去と向き合い、世界を癒すためにそれぞれの想いを抱いてその身を捧げました。フレイアリーズのそれは悲壮感、決心、振っ切れた清々しさが情感に満ちて高らかに語られる、歴代の物語でも屈指の名シーンだと私は思っています。



2. 「新顔」もよろしくね


■黒き誓約、オブ・ニクシリス

 上に「緑単のプレインズウォーカーは少ない」と書きましたが、逆に黒単は豊富です。ちょっと考えただけでもレシュラックテヴェシュ・ザットシファ・グレント。古い名前も新しい名前も挙がる中、今回登場したのは基本セット2015やデュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ2015(以下、DotP2015)で再登場したオブ・ニクシリスの過去の姿でした。


黒き誓約、オブ・ニクシリス



 ゼンディカー版のフレイバーテキストにて「かつてプレインズウォーカーだった」らしい事が暗示されていましたが、人間のプレインズウォーカーでした。故郷の世界の名前こそ不明ですが、過去のエピソード「最初の世界、最後の難関」によれば、デーモンと契約して「世界を終わらせる」という願いを叶えられ、そして絶望したことがきっかけで灯が点火したようです。


《黒き誓約、オブ・ニクシリス》
(3)(黒)(黒)プレインズウォーカー – ニクシリス(Nixilis)
+2 : 各対戦相手はそれぞれ1点のライフを失う。あなたはこれにより失われたライフに等しい点数のライフを得る。
-2 : 黒の5/5のデーモン(Demon)・クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。あなたは2点のライフを失う。
-8 : あなたは「(1)(黒),クリーチャーを1体生け贄に捧げる : あなたはX点のライフを得て、カードをX枚引く。Xは、その生け贄に捧げられたクリーチャーのパワーに等しい。」を持つ紋章を得る。
黒き誓約、オブ・ニクシリスは統率者として使用できる。
忠誠度 : 「3」



 あれ、「プレインズウォーカー - ニクシリス」なんですね、「プレインズウォーカー - オブ」ではなくて。ニコル・ボーラスは「ファーストネームで呼ぶなんて失礼だから」との事で「プレインズウォーカー - ボーラス」なのですが、ニクシリスもそうなのかな?

 伝説クリーチャーのオブ・ニクシリスは両方とも、いかにもフェッチランドの存在を意識した能力になっていますが、プレインズウォーカー版の能力は土地とは全く関係ありません。人間だった頃、彼は戦争に明け暮れる将軍でした。黒の魔術に長け、また自分の世界の古の文明について調査し、デーモン召喚の術を解明していました。そんな設定がそのまま、ドレインにデーモン召喚に生贄からのドローという「素直に黒い」能力となっています。

 公式記事「忌むべき者の夢」によれば、そんな彼自身までもデーモンと化してしまったのは、詳しい経緯こそ不明ですが《鎖のヴェール》が原因と思われます。


(記事より抜粋)
ヴェールについて耳にした時、それは拒めぬ程に素晴らしすぎる褒賞に思えた。我は愚かであった。そのような武器は持ち主を破壊するだけだというのに。
(略)
我は考えた、この地で得られるであろう力をもって、我が呪いを浄化できるであろうと。この病を燃やしつくし、我が姿を取り戻すことができると。


 DotP2015のガラクも、呪いがこのまま進行したならデーモンと化してしまうだろう、と言われていました。PWニクシリスとデーモン・ニクシリスのアートを見比べますと、デーモン・ニクシリスの頭部の角の形状は、人間だった頃の彼が手に持っている兜のそれによく似ています。彼は兜をかぶった姿でデーモンへと変質してしまったのでしょうか。





 統率者2014のプレインズウォーカー・ニクシリスは過去の姿ですが、第26回で少し触れたように今は面晶体の束縛から「解き放たれ」、以前の力を少しですが取り戻しているようです。


解き放たれし者、オブ・ニクシリス


 これから先の未来の姿もいつか出るのでしょうか?



■屑鉄の学者、ダレッティ

屑鉄の学者、ダレッティ



 「誰ッティ」とか言うなよ! 絶対に言うなよ!


《屑鉄の学者、ダレッティ》
(3)(赤)
プレインズウォーカー – ダレッティ(Daretti)
+2 : カードを最大2枚まで捨て、その後その枚数に等しい枚数のカードを引く。
-2 : あなたの墓地にあるアーティファクト・カード1枚を対象とする。アーティファクトを1つ生け贄に捧げる。そうしたなら、対象としたカードを戦場に戻す。
-10 : あなたは「アーティファクトが1つ戦場からあなたの墓地に置かれるたび、次の終了ステップの開始時に、そのカードを戦場に戻す。」を持つ紋章を得る。
屑鉄の学者、ダレッティは統率者として使用できる。
忠誠度 : 「3」



 アーティファクト再利用能力に特化したダレッティ。ですが彼は珍しいキャラというわけではなく、マジックの物語には過去にも時々「絡繰装置の扱いに長けたゴブリン」が現れてきました。「再利用」が上手?というのも伝統的です。


ゴブリンの修繕屋スロバッド



 そう! ゴブリンのプレインズウォーカーといえばスロバッドがまず思いつきますが、マローによれば「彼がプレインズウォーカーだったのはごくわずかな間の事だったため、カード化してプレインズウォーカーの彼を呼び出すというのは相応しくないと考えた」んですって。確かにそれもそうですね。

 そんなダレッティの設定はプレビュー及び統率者2014の「赤箱」の説明書にて公開されていました。
 ダレッティの出身はフィオーラ(コンスピラシーの舞台)。彼は非凡な知性と才能と野望を持つゴブリンとして知られていました。彼の目標は高層パリアノ学院にて首席工匠(master artificer)の地位に就くこと。ですがある時、ダレッティの製作した装置が爆発し、彼は両脚を残して吹き飛んだかに思われました。実はその瞬間に彼の「プレインズウォーカーの灯」が点火し、プレインズウォークして爆発から逃れていたのでした。両脚を失いながらも彼は生き延び、今は歯車仕掛けの車椅子に座って、フィオーラやその向こうの様々な次元にて工匠の技を磨いている……のだそうです。ヴェンセール、テゼレットに続く工匠プレインズウォーカー。第12回第17回にも書いたように、マジックの物語では多くの工匠が重要な役割を果たしてきましたが、ここでまた一人加わりました。


 ところでプレインズウォーカーになれるのは「知的生物」だけだと言われています。今回、ダレッティの登場によって「ゴブリンでも『自前で』プレインズウォーカーの灯を持つことができる」と判明したのは大きなことなのではないでしょうか。

 そしてダレッティの「灯」を点火させたその爆発事故は、他者による陰謀であった可能性があります。実はダレッティは完全に初登場というわけでもなく、過去の公式記事二本に名前のみですが登場していました。


公式記事「歯車仕掛けのように」
「彼がダレッティを殺したのはほぼ確実です」

・公式記事「血には血を」
大建築家の暴君、ムッツィオ――ダレッティの生徒。


先見的設計家、ムッツィオアカデミーの精鋭



 ムッツィオの関係者でしたか! 確かにダレッティの衣装はパリアノ学院の制服(?)。本当にムッツィオがその爆発事故を仕組んだのかどうかは不明ですが、パリアノ中に放った機械を通じて自らの手を汚すことなく政敵を失脚させるムッツィオのこと、ありえないと言いきれないのも事実です。

 上に挙げた二つの記事を読んだ頃は「ああなんかダレッティとかいう名前のキャラもいるんだな」程度にしか考えていませんでした。それがまさかプレインズウォーカーだったなんて。フィオーラ回で「シドリの記事にやられた」と書きましたが、またもやコンスピラシーに上手くやられたなあ……。とはいえ、この「なんか名前だけ出てきた」キャラが実は重要だったと後で判明する、というのは時々あることで……その典型が次の彼女なわけです。



3. お待ちかねの「三人目」


■石術師、ナヒリ

石術師、ナヒリ



 前回記事にてウギンを扱いました。タルキール覇王譚の物語、その中でウギンを介して語られてきたゼンディカーやエルドラージの過去。その流れの中でナヒリも登場! 過去にソリン・ウギンと共にエルドラージをゼンディカー次元に封じたプレインズウォーカーの「三人目」。その正体がついに明かされました。

 初出はエルドラージ覚醒。長いこと「Lithomancer」という肩書しか判明しておらず、その訳すら定まっていなかったのですが、上にも述べましたオブ・ニクシリス記事にて唐突に名前が語られ、その後基本セット2015からタルキール覇王譚にかけて「ゼンディカーの気配」が妙に漂う中、ついにナヒリ本人もカードとして登場しました。まずアートを見て多くの人が思ったでしょう、《石鍛冶の神秘家》とよく似……っていうかかなり同一人物。ですが別人だそうです。





 プレビュー記事によりますと、ナヒリは六千年以上前の人物(=ナヒリも旧世代プレインズウォーカー)。そして「Eric Deschampsによるナヒリの素晴らしいアートは、明確に《石鍛冶の神秘家》をモデルにしている」(参照)のだとか。それだけ《石鍛冶の神秘家》の存在は大きかったということでしょうかね。



《石術師、ナヒリ》
(3)(白)(白)
プレインズウォーカー – ナヒリ(Nahiri)
+2 : 白の1/1のコー(Kor)・兵士(Soldier)クリーチャー・トークンを1体戦場に出す。あなたは、それにあなたがコントロールする装備品(Equipment)1つをつけてもよい。
-2 : あなたは、あなたの手札か墓地にある装備品カードを1枚戦場に出してもよい。
-10 : 無色の《石鍛冶製の剣/Stoneforged Blade》という名前の装備品アーティファクト・トークンを1つ戦場に出す。それは破壊不能と「装備しているクリーチャーは+5/+5の修整を受けるとともに二段攻撃を持つ。」と装備(0)を持つ。
石術師、ナヒリは統率者として使用できる。
忠誠度 : 「3」


 ナヒリの能力も、実に《石鍛冶の神秘家》を思い起こさせます。
 ゼンディカー次元のコーは、道具を製作し使用する手腕で知られています。武器というよりは装具、冒険用具の印象が強いですが、多くのコーが装備品との相性の良い能力を持っています。


武装の達人帆凧の弟子コーの装具役


また完全に個人的な話ですが私、《帆凧の弟子》の爽やかな雰囲気のアートが大好きです。



 ミラディンにて登場した時から、装備品と最も近しい色は白です。これは白が「文明の色」だからでしょうか。ナヒリの「白箱」ラインナップを見るとその中にはかつての極悪禁止カードが……まあ、統率者戦(とヴィンテージ)では使えますが……


頭蓋骨絞め


「兵士呼びます」「絞めます」


 ある意味「+2」で2ドロー……さすが旧世代は鬼畜だぜ……。《頭蓋骨絞め》は私もスタン当時に使っていましたが、「強い」以上に「ヤバい」と感じていたのを今でも覚えています。《急報》でトークンを出し、《オーリオックの鋼打ち》を置いておけばタダで絞め放題。これはひどい。

 さて物語の話に戻りますが、ナヒリはその剣を作り出すように、ゼンディカーの大地や岩から「面晶体」を作り出しました。そこにウギンが魔法文字を刻み、エルドラージ封印のネットワークを作り上げました(ソリンは、エルドラージ三神をゼンディカーへと誘導する役割を担いました)。
 ナヒリは恐るべきエルドラージを自分の故郷に封じることについて、次のように述懐していました。


「奴らはいずれこの世界へとやって来る、もし止められなければ。奴らはやって来る、そしてその時、自分の世界を守ることはできないだろう。そしてもし、自分の世界を守るために何処か別の世界に奴らを封じ込めたなら、果たしてそんな自分自身を許すことができるだろうか? 愛する故郷の世界の大気は、永遠に罪深い苦みを抱えることになるだろう」

公式記事「石術師」より抜粋)


 エルドラージは、旧世代プレインズウォーカーがこれほど悲壮な決意をしなければならない程の存在だということなのでしょう。
 また前回記事「『ウギンの目』は地名」と書きましたが、これを命名したのもナヒリ(とソリン)です。それは、「ゼンディカーを選んだことを忘れさせないため」でした。エルドラージを封印する世界を選ぶにあたってナヒリはソリンとウギンに説得され、ゼンディカー以外の選択肢はありえないという状況でした。「ウギンの目」という名はまたナヒリの、せめてもの抵抗だったのかもしれません。


ウギンの目



 もう一つ。プレビュー記事によりますと、ナヒリはエルドラージ封印以前からソリンとは交友があり、先輩プレインズウォーカーとして彼を信頼していたようです。第22回でも書いたように「色が合う同士は結構仲良し」な傾向があるのですが、白単のナヒリと気の合うソリンはやっぱり黒単じゃなくて白混じりが本来の姿なんじゃね疑惑がまたも高まります。闇の心とは。

 しかし時間軸無視の特殊セットである統率者2014で登場したということは、今ナヒリはどうしているのでしょうか。ソリンも公式記事にて「ナヒリの姿は見当たらず」「彼女の沈黙は~」と言っていました。「大修復」による灯の変質から寿命を迎えたのでしょうか? とはいえここでナヒリが出てきたというのもまた、ゼンディカーへ回帰する伏線のように思えるんですよね……※個人の感想です



4. 終わりに

 実は今回のこの紹介順は、「プレビューでの公開順」でした。締めを飾ったのがナヒリだったのは、やはりタルキール・ウギンに関係してのことだったのでしょうか? メインストーリーから外れた特殊セットまで動員して語られた過去……その広がりにはただ圧倒されるばかりです。

 もうまもなく「運命再編」がやって来ます。PAX Australiaでの発表いわく、「サルカンのタイムトラベル話も公式記事で公開される」と! タイムトラベルという題材は色々「危ない」ことになりかねないとは容易に想像がつきます。どういった展開になるのか楽しみで仕方ありません。というわけで、そろそろそのサルカンの話も始めたいですね……ん? 何やら《兜砕きのズルゴ》さんからお話があるようです。


兜砕きのズルゴ



ズルゴ 「あ…ありのまま 今 起こったことを話すぜ!

『俺は公式記事で主役回を貰えたと思ったらカンの座を下ろされていた』

な、何を言っているのかわからねーと思うが 俺も何を書かれたのかわからなかった……
頭がどうにかなりそうだった……

《蔑み》で抜かれたとか《完全なる終わり》で除去られたとか そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」




 なんということでしょう。タルキール覇王譚ブロックでは小説が発売されない代わりに(はい、発売されないのだそうです)、公式記事でリアルタイムにしっかりメインストーリーが語られているのですが、こんなことになろうとは。でも地位を捨てて復讐の道を行く、って解釈すれば格好良くね?よくね?(ポジティブシンキング)
 運命再編を前にタルキールの物語は激動していますよ。


 さて、ほぼ月イチのこの連載、2014年の更新は今回で終わりになるかと思います。来年はどんなストーリーが繰り広げられ、どんなふうに伝えていけるのでしょうか。私も楽しみです。それでは、良いお年を!
(終)



※編注:記事内の画像は、以下のページより引用させて頂きました。
『忌むべき者の夢』
http://mtg-jp.com/reading/translated/ur/0010855/
『最初の世界、最後の難関』
http://mtg-jp.com/reading/translated/ur/0011471/
『スタンダードの禁止に関する声明』
http://mtg-jp.com/reading/translated/001716/
『石術士』
http://mtg-jp.com/reading/translated/ur/0011452/