プロツアー『カラデシュ』の注目カード5選! ~新カード編~

渡辺 和樹



 プロツアー『カラデシュ』は、Hareruya Prosの八十岡 翔太さんの優勝で幕を閉じました。改めて、おめでとうございます!



 八十岡選手が使用していたデッキは「グリクシスコントロール」。『カラデシュ』が発売されてから、「白赤機体」や「赤緑ビートダウン」といった速いデッキの活躍が目立っていた中で、文字どおりゲームを”コントロール”しての戴冠……記録と記憶に残るプロツアーになりました。


密輸人の回転翼機奔流の機械巨人


 さて、プロツアー以前から流行していた《密輸人の回転翼機》、そして各種コントロールのフィニッシャーを務めた《奔流の機械巨人》の活躍は確かに目覚ましいものでした。

 それと同時に、トッププロたちの構築によって、新たに注目を集めたカードも存在します。

 そこで今回は、『カラデシュ』のカードを5枚ピックアップして、デッキリストと一緒にご紹介したいと思います!



■ 1. 《金属製の巨像》


金属製の巨像


 まずご紹介するのは、《金属製の巨像》です。

 10/10というエルドラージに匹敵するスペックを持つ構築物は、マナ・コストも11と超弩級!そのまま唱えるのは難しそうですが、プレイヤーがコントロールしているクリーチャーでないアーティファクトの点数で見たマナ・コストの合計分、自身のマナ・コストを軽減することができます。

 この条件を見たとき、「アーティファクトクリーチャーはダメなの!?使えるのかなぁ……」と思ったのですが、『カラデシュ』の発売でアーティファクトが多数登場し、想像以上に早く戦場に現れます


面晶体の記録庫予言のプリズム領事の旗艦、スカイソブリン


 《面晶体の記録庫》《予言のプリズム》といったマナ・アーティファクトとの相性は抜群です。さらに『カラデシュ』から登場した各種「機体」は、「搭乗」コストを支払うことでクリーチャーになるため、通常時はアーティファクトという点に注目です。こちらも相性が良いですね。

 プロツアーでは、Hareruya Prosのオリヴィエ・ポラック=ロットマンが独自の調整を加えたティムール・カラーのデッキを持ち込んでいます。



オリヴィエ・ポラック=ロットマン「ティムール《金属製の巨像》
プロツアー『カラデシュ』(60位)

4 《森》
4 《島》
4 《霊気拠点》
3 《植物の聖域》
1 《尖塔断の運河》
4 《ウギンの聖域》
2 《発明博覧会》
1 《ハンウィアーの要塞》

-土地 (23)-

4 《光り物集めの鶴》
1 《老いたる深海鬼》
4 《金属製の巨像》

-クリーチャー (9)-
2 《抜き取り検査》
4 《森の占術》
4 《予言のプリズム》
4 《織木師の組細工》
4 《耕作者の荷馬車》
3 《行き詰まりの罠》
4 《面晶体の記録庫》
3 《領事の旗艦、スカイソブリン》

-呪文 (28)-
4 《儀礼的拒否》
4 《光輝の炎》
2 《難題の予見者》
2 《慮外な押収》
2 《領事府の看視》
1 《金属紡績工の組細工》

-サイドボード (15)-
hareruya



 土地を伸ばしながら3ターン目《行き詰まりの罠》、4ターン目《面晶体の記録庫》と動けば、《金属製の巨像》のマナ・コストは4! 5ターン目に10/10が戦場に降り立てば、巨像が勝利に向かって手を伸ばしてくれるでしょう。11マナ分のアーティファクトを用意できれば、0マナで唱えることも!


森の占術


 また、注目していただきたいのが《森の占術》です。サーチしたいのは、やはり《ウギンの聖域》でしょう。


ウギンの聖域


 《金属製の巨像》をサーチして、プレイしたらもう1体《金属製の巨像》をサーチ……という動きが可能になります。

 様々なアーティファクトを活かして、あっという間に登場する10/10のインパクトは、やはり強力。これからも注目の1枚です!



■ 2. 《電招の塔》


電招の塔


 『カラデシュ』から登場したエネルギーもプロツアーで活躍しています。「特定の条件でエネルギーを生みだすアーティファクト」は多数存在しますが、ここでご紹介するのは《電招の塔》です。こちらのデッキをご覧ください。


ピエール・ダジョン「青赤スペル」
プロツアー『カラデシュ』(5位)

6 《島》
6 《山》
3 《霊気拠点》
4 《尖塔断の運河》
4 《さまよう噴気孔》
1 《高地の湖》

-土地 (24)-

1 《奔流の機械巨人》

-クリーチャー (1)-
4 《稲妻の斧》
3 《流電砲撃》
4 《予期》
4 《蓄霊稲妻》
4 《棚卸し》
3 《苦しめる声》
4 《癇しゃく》
3 《虚空の粉砕》
2 《天才の片鱗》
4 《電招の塔》

-呪文 (35)-
4 《氷の中の存在》
4 《霜のニブリス》
2 《儀礼的拒否》
2 《否認》
1 《奔流の機械巨人》
1 《流電砲撃》
1 《天才の片鱗》

-サイドボード (15)-
hareruya




 Hareruya Prosのピエール・ダジョンは、《電招の塔》を4枚採用したデッキを持ち込み、5位入賞を果たしています

 《電招の塔》は、インスタント・呪文かソーサリー・呪文を唱えるたびにエネルギーを2個生み出し、5個支払うことで3点ダメージを飛ばすことができるアーティファクトです。


稲妻の斧流電砲撃予期棚卸し


 《稲妻の斧》《流電砲撃》《予期》《棚卸し》といった軽量スペルを唱えてアドバンテージを稼ぎながらエネルギーを貯蓄していきます。《蓄霊稲妻》《天才の片鱗》のように、元からエネルギーを生みだすカードは、より一層輝きを見せてくれます。

 《電招の塔》を2枚出せば、1枚の呪文でエネルギー4つ。一気にエネルギーを稼ぐことができますね。


熱病の幻視騒乱の歓楽者


 「青赤バーン」というアーキタイプは《熱病の幻視》《騒乱の歓楽者》を中心に据えて、前環境から存在していましが、Dagenが持ち込んだデッキは、色の組み合わせと「バーン」というコンセプトはそのままに、まったく違った戦い方を披露しています

 フレイバーテキストの言葉を借りるならば、ダジョンは《電招の塔》「将来性」をいち早く見抜いていた、ということでしょう。

 インスタントが豊富なため、《奔流の機械巨人》も採用されていますね。


稲妻


《流電砲撃》《蓄霊稲妻》が、対戦相手に撃てたなら……」と思っていたバーン使いの皆さん! 『カラデシュ』の生み出した新技術、エネルギーを利用して《稲妻》を唱えてみませんか?



■ 3. 《屑鉄場のたかり屋》


屑鉄場のたかり屋


 墓地を「死者の眠る場所」と考えれば、各種ゾンビが蘇ってくる光景は想像しやすいと思います。そして、『カラデシュ』によって墓地が「屑鉄場」と化している現在、そこから蘇ってくるのが《屑鉄場のたかり屋》です。

 墓地のクリーチャーを燃料に、何度も何度も戦場に戻ってくる能力は、やはり強力! 3/2というスペックも含めて、「ここが強い」ではなく、「とにかく強い」1枚です。

 その《屑鉄場のたかり屋》を活かしたデッキも、やはり活躍しています。


Ayers Brandon「黒赤マッドネス」
プロツアー『カラデシュ』(39位)

10 《沼》
5 《山》
4 《燻る湿地》
4 《凶兆の廃墟》

-土地 (23)-

4 《墓所破り》
2 《傲慢な新生子》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《秘蔵の縫合体》
4 《憑依された死体》
4 《ヴォルダーレンの下層民》

-クリーチャー (22)-
1 《稲妻の斧》
4 《安堵の再会》
4 《癇しゃく》
2 《無許可の分解》
4 《密輸人の回転翼機》

-呪文 (15)-
4 《精神背信》
3 《ゲトの裏切り者、カリタス》
3 《膨らんだ意識曲げ》
3 《集団的蛮行》
2 《稲妻の斧》

-サイドボード (15)-
hareruya




 前環境から活躍していた「黒赤マッドネス」は、『イニストラードを覆う影』『異界月』で登場したゾンビと吸血鬼を中心に構築されたデッキです。デッキ名にもなっている能力、「マッドネス」を持つカードは《癇しゃく》のみであり、こちらは「手札を捨てながら、墓地を活用するデッキ」といったところでしょうか。

 『カラデシュ』からの新戦力は、もちろん《屑鉄場のたかり屋》! 3/2という優秀なスペックを活かしつつ、墓地から戦場に戻る能力を複数回起動すれば、あっという間にライフを削ることができるでしょう。


秘蔵の縫合体憑依された死体


 《屑鉄場のたかり屋》が戦場に戻れば、《秘蔵の縫合体》の能力も誘発します。手札を捨てることで戦場に戻る能力を持つ《憑依された死体》との相性も良く、デッキがさらに強くなっている印象を受けますね

 「墓地から戻ってくる」という能力、「そしてブロックできない」というデメリットも含めて、アーティファクトでありながら“黒のクリーチャー”らしい1枚。これからも活躍が続きそうです!



■ 4. 《儀礼的拒否》


儀礼的拒否


 次は青の打ち消し呪文、《儀礼的拒否》です。

 八十岡選手の、そしてコントロールの勝利によって幕を閉じたプロツアー『カラデシュ』。《奔流の機械巨人》を筆頭に、青のカードが活躍する場面も多かったですね。

 青が得意とするのは、ドロー、バウンス、そして打ち消しです。


Matthew Nass「ティムール『霊気池』」
プロツアー『カラデシュ』(6位)

7 《森》
3 《島》
1 《山》
4 《霊気拠点》
4 《植物の聖域》
3 《尖塔断の運河》

-土地 (22)-

4 《光り物集めの鶴》
4 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》
4 《約束された終末、エムラクール》

-クリーチャー (12)-
4 《霊気との調和》
3 《有事対策》
3 《コジレックの帰還》
2 《発生の器》
2 《霊気溶融》
4 《ガラス吹き工の組細工》
4 《織木師の組細工》
4 《霊気池の驚異》

-呪文 (26)-
4 《儀礼的拒否》
4 《払拭》
4 《天才の片鱗》
1 《否認》
1 《コジレックの帰還》
1 《霊気溶融》

-サイドボード (15)-
hareruya




 こちらはプロツアーでも人気のあった、《霊気池の驚異》を主軸に据えたデッキです。公式の【プロツアー『カラデシュ』 初日スタンダード・メタゲーム・ブレイクダウン】によれば、使用者数82名、17.60%がこのデッキを選択し、一番人気だったようです。

 1マナという軽さでありながら、『カラデシュ』で登場したアーティファクト、そして「現出」クリーチャーを含むエルドラージを打ち消せる《儀礼的拒否》は、「白青フラッシュ」「ジェスカイコントロール」「グリクシス『現出』」、そして優勝した八十岡選手の「グリクシスコントロール」など、青マナが出るデッキのほとんどが採用しています。このデッキでも、サイドボードに4枚採用されていますね。


霊気池の驚異


 この《儀礼的拒否》は、この「《霊気池の驚異》デッキ」に対してもある程度有効な点に注目です。


絶え間ない飢餓、ウラモグ約束された終末、エムラクール


 このデッキリストのように《霊気池の驚異》で唱えたい候補は、やはり超強力なエルドラージでしょう。もちろん、唱えたときの能力は誘発してしまいますが、13/13、10/10という対処に困る大きさのクリーチャーが盤面に残るよりは”ある程度”良いでしょう。唱えられた《霊気池の驚異》を打ち消すこともできますからね。


否認払拭虚空の粉砕


 「コントロールを使ってみたい!」と思ったならば、《否認》《払拭》《虚空の粉砕》などの打ち消し呪文の取捨選択が重要です。八十岡選手の「グリクシスコントロール」にも、メインボードから採用されている《儀礼的拒否》、注目です!



■ 5. 《耕作者の荷馬車》


耕作者の荷馬車


 《密輸人の回転翼機》が環境を席巻する現在、今回注目するのは《耕作者の荷馬車》です。

 タップすることで好きな色1色のマナ1点を加えることができるマナ・アーティファクトであり、マナ・クリーチャーです


面晶体の這行器


 マナ・クリーチャー&アーティファクトは序盤の動き出しを滑らかにするという強さを持っていますが、土地が揃ってしまうと途端に強さが霞みます。「マナを潤沢に生み出せる状態で《面晶体の這行器》を引いてがっかり……」という経験がある人は多いのではないでしょうか?

 その弱点を《耕作者の荷馬車》見事に解消しています。序盤はマナを生み出して動きを安定させ、後半は5/5で攻撃に参加することができます。ご紹介するデッキリストはこちら。


Lee Shi Tian「マルドゥ機体」
プロツアー『カラデシュ』(7位)

3 《山》
3 《平地》
4 《霊気拠点》
4 《秘密の中庭》
4 《感動的な眺望所》
4 《尖塔断の運河》

-土地 (22)-

4 《発明者の見習い》
4 《スレイベンの検査官》
4 《模範的な造り手》
4 《屑鉄場のたかり屋》
4 《経験豊富な操縦者》
3 《模範操縦士、デパラ》

-クリーチャー (23)-
4 《蓄霊稲妻》
2 《無許可の分解》
4 《密輸人の回転翼機》
3 《耕作者の荷馬車》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》

-呪文 (15)-
4 《儀礼的拒否》
4 《流電砲撃》
2 《断片化》
2 《空鯨捕りの一撃》
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》

-サイドボード (15)-
hareruya




 Lee Shi Tian(7位)とYam Wing Chun(8-2)の【Team MTG Mint Card】のメンバーが持ち込んだデッキが、こちらの「マルドゥ機体」です。Hareruya Prosの齋藤 友晴さん(8-2)も、サイドボードにわずかな違いはありますが、同じコンセプトのデッキを使用しました。


模範的な造り手模範操縦士、デパラ無許可の分解


 豊富な1マナクリーチャー、各種「機体」と相性の良い《経験豊富な操縦者》《模範操縦士、デパラ》など、トップメタの一角である「白赤機体」のコンセプトはそのままに、黒をタッチすることで火力と除去を兼ね備えた優秀な呪文である《無許可の分解》を採用しています。


感動的な眺望所秘密の中庭霊気拠点


 採用されているカードは強力なのですが、3色になったことで「マナが安定しないのでは?」という疑問も湧いてきそうになりますが、《感動的な眺望所》(赤白)と《秘密の中庭》(白黒)という2種類のファストランドを採用することで、マルドゥ・カラー(赤白黒)を安定させ、《霊気拠点》、そして《耕作者の荷馬車》によって補強しています。



 このデッキで注目すべき点は、これまでに紹介した《屑鉄場のたかり屋》《儀礼的拒否》有効活用できるデッキであるということです。


屑鉄場のたかり屋


 1マナクリーチャーと並んで《屑鉄場のたかり屋》が前のめりに攻撃を繰り返し、多少の除去呪文を受けたとしても、戦場に戻る能力を起動する機会をうかがいつつ、戦線を維持できます。

 《耕作者の荷馬車》の「搭乗」コストは3。決して小さいとは言えませんが、《屑鉄場のたかり屋》の3/2というスペックがここでも役立ちます。《耕作者の荷馬車》を唱えて、墓地から戻ってきた《屑鉄場のたかり屋》が「搭乗」することで、即座に5/5が攻撃に参加します



儀礼的拒否


 また、デッキの分類は「マルドゥ(赤白黒)」ではありますが、《尖塔断の運河》《霊気拠点》、そして《耕作者の荷馬車》によって、青マナを出すことができます。そう、青マナが出るデッキのほとんどが採用している《儀礼的拒否》もサイドボードに積まれていますね。

 メインボードでは除去を唱えながらアグレッシブにビートダウンし、サイドボード後は打ち消し呪文を構えることができる、「4色機体」! 今後の大会でも、姿を見せてくれるかもしれません!





 『カラデシュ』発売から2週間。プロツアーで活躍し、強さを見せたカードは、今後のメタゲーム上で必ず姿を見せるはずです。コントロールに打ち勝つアグロデッキの鍵を、今回ご紹介したカードが中心となり、デッキが構築されていくかもしれません。

 環境初期は、ここで一区切りとなりますが、メタゲームは少しずつ動いていきます。プロプレイヤーのデッキリストを確認して、自分のデッキを調整し、大会に参加してみましょう!



 さて、今回は『カラデシュ』のみをご紹介しましたが、注目すべきは『カラデシュ』のカードだけではありません。『戦乱のゼンディカー』『ゲートウォッチの近い』『イニストラードを覆う影』『異界月』のカードも、もちろん活躍しています!。

 新カードの登場によって、弱くなったカードもあれば、相対的に強化されて評価が上がったカードもあるのが、メタゲームの、そしてマジックの面白さです



 それらのカードについては、高橋 純也(らっしゅ)さんが、解説をしてくれます。お楽しみに!




 また、八十岡 翔太さんの「グリクシスコントロール」については、Twitterで質問を受け付けています!

 「ヤソコン」について質問できる貴重な機会なので、「#教えてヤソ先生」のハッシュタグをつけてツイートをしてください。お待ちしております。


 それでは、また!



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