行弘賢と学ぶドラフトセオリー vol.3 ~土地事故を少なくしよう~

行弘 賢



 最近は寒くなってきて、いよいよ冬の到来を感じさせるこの頃、皆さんいかがお過ごしですか?

 僕としては布団にくるまりながらMagic Onlineでドラフトするのがオススメな冬のすごし方です(笑)

 さてさて今回はどのセオリーを皆さんにお教えしようかと悩んでいましたが、今回は趣向を変えてピックの手順の話ではなく、『事故を少なくするために必要な要素』を解説していきたいと思います。



1.『事故を少なくするために必要な要素』

その1: 色マナに注意する


 マジックには5色のカードと、無色のアーティファクトが存在します。それらはマナコストを支払うことでプレイが可能ですが、逆に言えばそれらのマナコストを支払うことができなければプレイすることはできません。

 それ故ドラフトのピックに際しては、皆さんも意識せずとも何となく『特定の色のカードを中心にピックすることでプレイをできる限り可能にし、事故をできるだけ未然に防ぐ』というセオリーのもとでピックしていると思います。


 しかしながら色マナとは思った以上に厄介な代物で、絶えず注意していないと気が付けばあっという間に『事故』を引き起こしかねないものになってしまうのです。

 色マナが厄介になる要素として、主に以下の3つがあります。



Ⅰ.ダブルシンボル以上を要求するカードの枚数


 ダブルシンボルは、そもそもその色マナが出る土地を2つ揃えなければプレイできないため、思った以上にプレイが難しいカードになります。


軍族童の突発氷河の末裔大蛇の儀式


 特に2、3、4マナ域でダブルシンボル以上のカードになると、早いターンに特定の土地を揃えなければいけなくなるため、プレイ難度はさらに上がります。

 目安として、3ターン目にダブルシンボルを要求するカードがある場合はその土地が少なくとも10枚は欲しいです。それほどダブルシンボルは扱いが難しいカードになります。

 それゆえ、ただ強いという理由で7~8枚の土地で運用している2色目のダブルシンボルのカードを複数ピックするのは事故の要因となりえるので、十分注意するべきですね。

 またメインカラーだとしても、安易にダブルシンボルを複数ピックしないように気をつけることも大切です。3枚以上ピックした場合は、できるだけその色の土地を11枚入れるようにしたいですね。



Ⅱ.3色以上の複合マナを要求するマルチカラーのカードの枚数


 これもダブルシンボルの話と近い話となりますが、マルチカラーのカードは複合のマナを要求するので、プレイすることが難しいカードもあります。


カマキリの乗り手血の暴君、シディシ凶暴な拳刃


 例えば3マナで3色必要なカードであれば、それを3ターン目にプレイするには各色8枚以上の土地は欲しいところです。

 しかしながらそういったマナベースを構築するのは難しいので、基本的には7枚ずつあれば最低限運用可能ではあります。逆に6マナ以上の3色のマルチカードは3色目を3~5枚で運用できるので、軽い3色のカードに比べたらピックしやすいカードになります。

 マルチカラーのカードは強力なカードが多いので、ついついピックしたくなってしまいますが、自分の土地事情を良く考えてピックしたいところですね。特に軽い3色のカードを多くピックしてしまうのは事故の元になりますので、気をつけてピックしましょう。



Ⅲ.軽いマナ域で色マナを要求するサブカラーのカードの枚数


 例えばですが、メインカラーのカードが17枚、サブカラーであるカードが6枚あるとします。色マナ配分としては10or11 : 7or6 辺りが妥当なところですが、サブカラーのカードのうち5枚が2マナ以下のカードである場合、その土地バランスは果たして正解であるかというとNOと言わざるを言えません。





 2マナ域は2ターン目にプレイしなければその価値を大きく下げてしまいますので、できる限り2ターン目にプレイできるマナベースにするべきです。そのため、今回のケースでは《森》9 : 《山》8 の土地バランスで組むのがベターな選択肢と言えます。

 しかしながらそれはそれで土地バランスが9 : 8 に対してプレイするカードの比率は緑17 : 赤6 と非常にアンバランスなものとなっており、これはそもそも軽いマナ域がサブカラーで埋まりすぎたのが事故のもとになっています。

 こうならないように、自分のピックしているカードの色マナバランスを考えて、軽いマナ域のカードの取捨選択をした方がいいと思います。



 これらの3つの点は意識しておかなければ『事故』の原因になってしまいますので十分注意しましょう。事故が少ないことはそのまま勝率にも関わってきますので、事故が少ない『優れたデッキ』を構築するようにしたいですね。



2.『事故を少なくするために必要な要素』

その2: マナカーブに気をつける


 マナカーブに気をつけるとは、『軽いマナ域から重いマナ域まで、並べたときにしっかりとカーブを描くように枚数を調整すること』です。





 具体的には2マナ域が5~6枚で、そこから1枚ずつ少なくしていき、3マナ域4枚、4マナ域3枚、5マナ域2枚……といった感じで、しっかりと『毎ターン土地と同じマナ域のカードをプレイすることで有利に立つことを意識する』のがマナカーブの理屈となります。

 1パック目(左回り)はそこまで気をつけなくて良いですが、2パック目(右回り)以降は、ある程度デッキのバランスを考え、自分のデッキの足りないマナ域のカードを意識的にピックするとマナカーブが整ったデッキを作ることができます。

 ピック中にカードが見れないルールの場合は、パックの合間の確認時間でしっかり自分のカードのマナ域を記憶しておくと良いですね。



 ただしここで、クリーチャー以外の呪文はそこまでマナカーブを意識しなくても大丈夫です。


水渦飛鶴の技砂塵破


 というのも、クリーチャーは各マナ域に沿ったターンにプレイしなくては価値を減らしてしまいがちですが、除去やコンバットトリックは効果的なターンが訪れるまで基本的にはプレイしないものです。余りにも呪文が重過ぎるというのも考えものですが、強力な呪文はある程度マナ域を度外視してピックしても大丈夫です。



 マナカーブを意識することで、重いカードばかり引いてプレイすることができない、後半に軽いカードばかり引いて役に立たない!といった引きムラによる一種の事故もある程度緩和されます。

 マナカーブによる効果はいまいち実感しにくいですが、意識することで間違いなくスムーズな展開、いわゆる『ぶんまわり』になりやすくなります。それは勝ちに直結する『リミテッドにおける一番大事なセオリー』とも言えますので、しっかりと意識してピックしてみてください。



3.『事故を少なくするために必要な要素』

その3: 土地バランスに気をつける


 40枚のデッキに対して無難な土地の枚数は17枚。これは僕が教えなくても誰でもいつのまにか知ってるような知識です。

 しかしながら、果たして毎回17枚で組むのが正解なのでしょうか。





 1マナのカードが2枚、2マナのカードが9枚、3マナのカードが6枚、4マナのカードが4枚、5マナのカードが2枚。

 こういった軽いマナコストのカードが多く、重いマナコストのカードが少ない少しマナカーブが歪なデッキは、土地を16枚に減らし、2~3マナのカードを追加で採用するのも一つの手です。

 土地を6枚以上引いただけで土地の引きすぎ、いわゆる『マナフラッド』状態になってしまうようなデッキは、多めに土地を引いて『事故』らないために、最初から土地を減らすなどの工夫が必要です。ただし、ダブルシンボルやマルチカラーのカードが多いデッキでは土地を減らしたことで事故が起きる可能性もありますので、そこはバランスを考えてどうするか考える必要があります。

 ちなみに、『変異』持ちのカードはマナカーブの検討では3マナ域に置いた方が良いでしょう。





 逆に2マナのカードが5枚、3マナのカードが6枚、4マナのカードが5枚、5マナのカードが4枚、6マナのカードが2枚、7マナのカードが1枚。

 こういった重いカードが多い場合は、土地を引かないとそれをプレイできないため、2~4マナ域のカードを1枚以上抜き、土地を追加で採用して、18枚以上の土地でプレイすることをお勧めします。

 これは土地を減らす場合とは違い、単純にデッキで一番弱そうなカードを抜いて土地を入れるだけなので、比較的やりやすいテクニックですね。シールドデッキの構築なんかではよく使いますので、気が付いたら使ってみましょう。



4.行弘賢からの問題

 さて、それでは最後に実際に色マナ配分と土地枚数について考えてみましょう。

 問題のデッキに対してどの種類の土地を何枚入れるのか考えてみてください。

 ただし、土地の枚数は必ずしも17枚とは限りません。

 土地を増やしたい場合はデッキの何かを抜いても構いません。逆に土地を16枚にする場合は、問題のプールのいずれかのカードの枚数を増やしても構いません。



◆ 問題1.青赤


 まずは『タルキール覇王譚』環境のドラフトにおける青赤のデッキから見てみましょう。

 《島》《山》を何枚ずつ、合計何枚入れるべきでしょうか?



「青赤」


???


-土地(?)-

2 《僧院の速槍》
2 《戦名を望む者》
2 《ジェスカイの長老》
1 《跳躍の達人》
1 《湿地帯の水鹿》
1 《軍団の伏兵》
2 《ジェスカイの風物見》
2 《山頂をうろつくもの》
1 《氷河の末裔》

-クリーチャー(14)-
1 《引き剥がし》
2 《ラッパの一吹き》
2 《軍族童の突発》
1 《冬の炎》
1 《道極め》
1 《矢の嵐》
1 《鐘音の一撃》

-呪文(9)-
hareruya

















行弘の答え: 土地17枚、《山》9枚と《島》8枚


 2マナ以下のクリーチャーカードが9枚とかなり多く、最高マナ域が5マナの2枚と、土地を16枚で組みたくなるプールです。

 が、《軍族童の突発》などのダブルシンボルを要求するカードが多く、これらをプレイできないリスクを許容できないため、土地は17枚にせざるを得ません。こうならないために、本来は軽いカードを2枚ほど中~高マナ域のカードになるようにピックした方が良いでしょう。

 今回のデッキは《ジェスカイの長老》がルーター能力を持っているため、ある程度マナフラッドに対して対策ができているのも土地17枚にできる理由の一つです。こうした細かなマナフラッド対策はリミテッドにおいて地味に勝敗に関わってくるので、ピックの段階から意識しましょう。



◆ 問題2.アブザン


 続いて同じく『タルキール覇王譚』環境のドラフトから、アブザン(緑白黒)のデッキを見ていきましょう。

 3枚の特殊地形を除いて、《平地》《沼》《森》を何枚ずつ、合計何枚入れるべきでしょうか?



「アブザン」

1 《花咲く砂地》
1 《ジャングルのうろ穴》
1 《磨かれたやせ地》

???


-土地(?)-

2 《射手の胸壁》
1 《グルマグの速翼》
1 《荒野の後継者》
1 《アイノクの盟族》
1 《牙守りの隊長》
1 《先頭に立つもの、アナフェンザ》
2 《雪花石の麒麟》
1 《吠える鞍暴れ》
1 《軍備部隊》
1 《アブザンの先達》
2 《長毛ロクソドン》
1 《尊いラマスー》

-クリーチャー(15)-
1 《抵抗の妙技》
1 《族樹の発動》
1 《必殺の一射》
1 《アブザンの魔除け》
1 《苦々しい天啓》
1 《龍鱗の加護》
1 《残忍な切断》
1 《絞首》

-呪文(8)-
hareruya

















行弘の答え: 土地18枚(《グルマグの速翼》out)、《森》6枚《平地》5枚《沼》4枚


 先ほどの問題とは逆で、今回は4マナ域以上が12枚と非常に重く、更に最高マナ域は7マナのカードにあります。今回のデッキは重いマナ域まで辿りつかなければ勝つのが難しいデッキとなるため、土地は18が推奨されます。

 《グルマグの速翼》を抜いたのは、なるべく白緑ベースで構築することで土地バランスを調整したいので、2マナ域以下の黒いカードを減らしたいという点と、相手のライフを攻め立てるデッキではないので、そこまでこのデッキでは活躍できないであろうという2点の理由からです。

 2~3マナ域で一番多く使う緑マナを8枚、次に使う白マナを7枚、最後に3マナ以降でプレイする黒マナを6枚。ゲームの後半に必要になる色マナほど少なくすることができるので、今回はこのような土地配分にしました。

 実際には緑白黒各種1枚ずつ多いぐらいがちょうど良いところではありますが、多色環境ではこのようなギリギリのマナバランスを求められることもあります。そのようなときにできるだけ事故が起きにくいように、色マナのバランスはしっかり考えましょう。勿論そうならないためにピック時から意識することも大切です。



5.今回のまとめ

 「ピックを終え、デッキを構築する際はしっかりと色マナ配分を考えること」

 「マナカーブを意識して何もできないターンを少なくしよう。ただしクリーチャー以外の呪文に関しては神経質にならなくても良い」

 「土地の枚数は17を基本とし、そこからの増減はデッキによってしっかり変えること」


 
 これからは是非、これらを意識してデッキ構築をしてみてください。今までと違った事故の少ないデッキになると思います。

 今回の記事はここまで。次回もまた僕の「ドラフトセオリー」を余すことなく伝えようと思います。では、また来月もドラフトの記事でお会いしましょう。