Translated by Tsubasa Tomita and Jun’ya Takahashi
こんにちは!
来る【グランプリ・ワルシャワ2016】か【グランプリ・サンティアゴ2016】のために強いスタンダードのデッキをお探しですか?そのデッキのサイドボーディングや、あるいはそれらのデッキを倒す方法だったりしますか?この記事では、そういったいくつかの疑問にお答えしましょう。
先週末、私はマジックオンラインチャンピオンシップシリーズのプレイオフを勝ち、来年の春に開催されるマジックオンラインチャンピオンシップの出場権を獲得しました。そのときに使ったのは「黒緑昂揚」です。私はこれが現在のスタンダードで最も優れたデッキだと思っています。
今回は、私たちが【プロツアー『カラデシュ』】とマジックオンラインチャンピオンシップシリーズで使った「黒緑昂揚」についての解説を用意しました。まずはプロツアーで使ったデッキリストとカード選択について説明します。
Lukas Blohon「黒緑昂揚」
プロツアー『カラデシュ』
8
6
1
4
4
-土地 (23)-
4
2
1
1
3
3
1
1
-クリーチャー (16)- |
4
4
4
2
1
2
1
3
-呪文 (21)- |
3
2
2
2
1
1
1
1
1
1
-サイドボード (15)- |
私たちは多くのプレイヤーたちがを使ったアグロを選ぶと予想していました。そこで私たちは、他のデッキとも互角に戦える範囲で、このデッキをできるだけを使ったアグロに強く構築しようとしました。
■ 個々のカードの選択理由
は「昂揚」の達成に素晴らしく貢献しつつ、攻撃的なデッキのほとんどのクリーチャーをブロックできる大きなサイズも持ち合わせています。やなど、攻撃的なデッキが採用している一般的な火力呪文で除去することは難しく、墓地を肥やしつつへのブロッカーにもなります。
攻撃的なデッキとのゲームでは、5ターン目ののために確実に「昂揚」を達成したいのですが、とではほぼ間に合いません。しかし、ならば、時間を無駄にせずに「昂揚」を達成できるのです。4/5の壁はでもなければ突破できず、当時はそれらがメインボードに採られている枚数も多くありませんでした。
また、には、デッキをまとめる接着剤のような役割もあります。このデッキはたまに機能不全を起こすのです。複数枚のやや除去呪文ばかりが集まって「昂揚」が達成できないような状況です。そのため、デッキには1枚で「昂揚」を達成できるようなカード(やなど)がいくらか必要になります。それがないととと除去呪文の入ったドラフトデッキに成り下がってしまいます。
2枚の、、
を入れつつ「昂揚」に依存するデッキを構築するときには少しばかりの工夫が必要になります。私たちはを6~7マナでプレイし、確実に「昂揚」を達成するためには、最低でも3枚ずつのエンチャントとアーティファクトが必要だという結論に至りました。
2枚目の、、5枚目のソーサリーであるらはパッとせず、できればより良い(マシな)カードを使いたいものですが、強力な「昂揚」のカードを使うためにはある程度の我慢は必要です。私たちは3枚目のアーティファクト枠で悩みました。との2枚は素晴らしく、残りの1枚が問題だったのです。など、たくさんのカードが候補にあがりました。あとは追加のも試しました。でも、最終的にはどれも2枚目のには敵わなかったのでした。
について少しばかり触れましょう。これは一見すると悪くないように思えるカードです。ただ、遅いデッキとの対戦において、2/2と2点のライフのために3マナとカード1枚(滅多に死なないので)を支払った瞬間に、これがいらないカードだと気が付くでしょう。
はこの中(上の3枚)では一番いいカードです。それは「マルドゥ機体」に対して強く、優秀なカードたちに切迫する性能を持っているからです。は、機体に触れないことから現在だと弱いカードです。追加のソーサリー枠が必要でもなければの方が良さそうです。も機体に対して良いカードではありませんが(たまにを討ちとれるけれど)、これならば上手くいけばと1:1交換できたり、「昂揚」によって1:2交換ができます。
2枚のと4枚の
4枚のと2枚のを使っていたチームもいましたが、私は2枚のと4枚のが現在のメタゲームにおいて最適な枚数だと思っています。ただ、を増やす気持ちもわかります。これは「昂揚」の達成に素晴らしく貢献するからです。しかし、その場合でもを減らすことはないでしょう。
と
からサーチする強力なカードたちです。ひとつ注目すべき点として、はこれまで以上に攻撃的なデッキに対して強くなりました。彼らはに向かって攻撃できない小さな地上クリーチャーばかりだからです。以前のスタンダード環境では、彼が活躍するためには数枚の除去呪文が必要不可欠でしたが、現在ではただ4ターン目にを出すだけでも、弱めの動きをしている相手には十分かもしれません。
■ 選択しなかったカードの不採用理由
緑の2マナ域の筆頭として馴染み深く、これのために緑を使うことさえあった1枚です。ただ、そんな栄光も今は昔。今でははほとんどの緑のデッキで使われなくなってしまいました。その理由は、多くの1マナ域(白と赤のと)に対して相性が悪く、に対しても無力だからです。また、ゲームの速度も早まったため、終盤で活躍する強化能力もほとんど関係なくなってしまいました。との相性はいいのですが。
強いカードではあります。ただ、コントロール系の「黒緑昂揚」には合わないカードです。もっと攻撃的な「黒緑昂揚」のマナカーブの頂点として活躍します。ただ、私は「黒緑昂揚」をほとんどのデッキよりも終盤が強いデッキだと考えています。つまり、押されると何もできないような攻撃的な「黒緑昂揚」をわざわざ使う理由がわからないのです。そこで私はという他の強力な緑の5マナ域を中心にデッキを構築しました。
4枚目の
と「昂揚」を達成するという観点において、プレインズウォーカーが増えることは素晴らしいことですが、たくさん引いてしまうのは最悪です。ただでさえこのデッキではそんな事故が起こるので、それを最小限に留めましょう。
次に、私がマジックオンラインチャンピオンシップシリーズを優勝したデッキリストになります。プロツアー『カラデシュ』のものと何が変わったのかを見ていきましょう。
Lukas Blohon「黒緑『昂揚』」
MOCS Playoff(優勝)
6
5
4
4
4
-土地 (23)-
4
3
1
1
3
1
1
-クリーチャー (14)- |
4
4
4
2
2
2
1
1
3
-呪文 (23)- |
2
2
2
2
2
1
1
1
1
1
-サイドボード (15)- |
■ 個々の変更理由
の不採用
さっきはのいいところを話しましたが、彼らにはいくつかの問題点もあるのです。
これの枚数を減らした大きな理由は、「青白フラッシュ」という新しい脅威が登場したことにあります。彼らはへの素晴らしい解答をいくつも持っているのです。、、。これらに加えてだってあります(4マナのソーサリースピードの呪文はこれとの相性が悪いのです)。
他の理由としては、「マルドゥ機体」(あるいはを使ったアグロ)が数を減らすだろうと予測していたからです。このことから「昂揚」達成機能付きの飛行の壁は必要なくなりました。
最後にが終盤で活躍するようなカードではないということです。彼はをちょっとばかり助けるかもしれない4/5飛行でしかありません。これは攻撃的なデッキが減り、より遅いゲーム展開が増える環境において、ミッドレンジが求めているカードではなくなったのです。これよりものように、時間さえあれば手が付けられなくなるカードを必要としています。
を3枚に増量
環境が少しばかり遅くなったことで、”キングオブバリュー”ことが帰ってきました。は上手く対処することが難しい強力なカードです。難しいどころではなく、ほぼ不可能だといえるでしょう。一番マシな対応というと、手掛かりトークンでドローする時間を与えないことなのですから。このデッキでは、そんな強力なカードを回収したりサーチする手段をいくつももっています。
をに入れ替えたことで生まれた問題は、「昂揚」を達成することが難しくなり、を早くプレイできなくなったことです。は土地を供給してくれるため、については大きな問題ではありませんが、「昂揚」を達成する速度については深刻なものです。もし1枚で「昂揚」を達成できるカード(都合のいい)を引かなかったときには、あなたは引いてきたカードだけで異なるカードタイプを墓地に落として「昂揚」しなければなりません。ただ、幸運にも「昂揚」を助けるカードはたくさんあり、それらはとも素晴らしい相性をもっているのです。
を4枚に増量
土地を墓地に落とすのは、とても難しいことです。なぜなら序盤のでは手札に加えますし、他に落とす手段といえばしかないからです。4枚のを採用することは、タップインの土地を3枚も増やすため、明らかにデッキに負担をかけることになりますが、今はそれだけのことをする価値があると思います。
の採用
先ほども触れたように、このデッキリストでは「昂揚」を達成することが難しくなっています。そのため、何かしら追加の手段をもって「昂揚」を助ける必要があるのです。とが加わったことでデッキは遅くなり、より終盤で強い構成になりました。このことから2:1交換の損をしてでも、エンチャントと他の2枚を墓地に落として「昂揚」を助けることができるのです。
2枚のをメインボードに
5~6枚目のソーサリーカードとして、さらに「青白フラッシュ」に強いカードです。この2つの理由だけでも、私がこれをメインボードに入れるには十分でした。
を1枚までカット
「昂揚」の達成に問題を抱えているにも関わらず、さらに1枚のアーティファクトを減らすのは意味が分からないかもしれません。ただ、デッキにはあまりにも戦場に影響しないカードが多すぎるのです。だってそうです。彼はアドバンテージを稼ぎ出すことは得意ですが、4ターン目の3/2は特に何もしてくれません。しかも基本的には彼が戦闘で死んでほしくもないですしね。そこでを減らすことでやのような軽いカードを用意しました。
■ サイドボードの変更点
の不採用
これを抜いた理由はただただ微妙だと感じたからです。このデッキには軽いクリーチャーが多くありません。そのため、『現出』するためにはかを生贄に捧げなければいけません。でも、その行動はコントロールデッキを相手にしても効果的だとは言えないのです。
また、サイドボードカードをずっと手札で抱えることは、私が望むものではありません。そこで「青白フラッシュ」に効果的で、遅いデッキ相手にも活躍するの4枚目に入れ替えました。
の採用
このアイデアはガブリエル・ナシフの攻撃的な「黒緑昂揚」を参考にしました。攻撃的なデッキを相手にしたとき、これは攻撃されて死ぬことのないとして機能します。多くのクリーチャーを除去できますし、1体を除去したうえでもう1体と戦闘で交換できるのです。からサーチもできますし、などで再利用だってできます。
の採用
と似ています。ただ、1つだけ違ったところがあります。それは対処に困る「赤緑エネルギー」のに対する最高の解答になることです。これもと同じくクリーチャーカードなので、サーチも再利用だってできます。クリーチャーであることは、それだけでこのデッキでは素晴らしいことなのです。サーチできますし、何回も使いまわせます。これはまるでサイドボードの呪文をで使い倒す感覚を想起させるものです。
の採用
主にミラーマッチ用のカードです。どちらかが序盤ので圧倒しない限り、ミラーマッチは基本的に膠着し、以外の決定打はなくなります。2枚目を採用するリスクとしては、の標的にされたり、手札に引いてきてしまう可能性が格段に上がることです。は墓地に落ちていればかで回収できるので、手札に引いてくる必要性はそこまでありません。
あとはコントロールデッキに対しても2枚目は素晴らしいカードです。もし1枚目をやで追放されてしまっても、2枚目があれば安心です。
ただの遅いデッキやプレインズウォーカー対策への追加です。
■ サイドボーディングについて
本題に入る前に、1つだけサイドボードに変更があります。それはを追加して、を1枚減らします。これは現在の環境において「」や高マナコストのアーティファクトが減ったからです。のほうが「マルドゥ機体」や「青白フラッシュ」に対して強いのです。
vs. 青白フラッシュ
おそらく「黒緑昂揚」が少し有利なマッチアップでしょう。ただ、彼らは2種類の「黒緑昂揚」に強いカードを持っています。その1枚はです。「青白フラッシュ」はこれを攻撃的なデッキ以上に上手く使ってきます。なぜならカウンター呪文やで守ってくるからです。また、彼らは強力なカードがデッキにたくさん入っているため、ルーティング能力がより強く働くのです。
もう1枚はです。このカードはただただ強力で、4ターン目にプレイされれば多くのゲームをそのまま負けてしまいます。これに対抗するには、メインから2枚採用しているが最高の選択肢になります。もに対していいカードではありますが、多少なりの手助けは必要です。
この2種類を除いては、こちらのカードは相手に相性のいいカードばかりです。はに強く、はに強いのです。また、や除去呪文や手掛かりなど、インスタントスピードの行動が多く、を構えられても困りません。
あと、何よりも重要なのはでしょう。ひとたび登場すれば相手のほとんどのカードを完封し、対戦相手はかしか頼みの綱がなくなります。将来的には「青白フラッシュ」は「黒緑昂揚」に強い形を構築するでしょう。しかし、現在は「黒緑昂揚」に軍配が上がると思います。
In
Out
とへの解答だけが必要です。を入れるのも悪くないでしょう。相手がをたくさん入れているようであれば、1枚と入れ替えましょう。
vs. マルドゥ「機体」
の代わりにタップインランドとが入ったことでいくらか悪くはなっていますが、「黒緑昂揚」が有利なマッチアップです。適当なハンドのキープを避けて、「昂揚」したをできる限り早く出しましょう。特に話すべきことはないマッチアップです。
In
Out
もし多くの機体を見たならを入れましょう。は専用のカードです。相手にが入っていなければサイドインする必要はありません。
vs. 赤黒アグロ
In
Out
基本的には「マルドゥ機体」と一緒です。ただ、を入れて、は入れる必要がないので2枚のをメインボードに残しておきましょう。
vs. 黒緑「昂揚」
私はミラーマッチで使うが大嫌いです。特に後手番ではよくありません。2ターン目に出れば素晴らしいのですが、それでも簡単に止められてしまいますし、終盤になると悪いカードでしかありません。他のプレイヤーがをミラーマッチでも残していることは知っているので、これはもしかしたら私が間違っているかもしれません。それでも、代わりにを持っている方がいいと思っています。
2枚のと複数ののおかげで終盤を有利に戦えます。そのため、終盤戦まで繋げることだけを考えていきましょう。もしこの構成が一般的になるならば、もっと違う戦略や、より多くのミラーマッチ対策のカードが必要になるでしょう。かをでサーチすること、で操られたときのためにやを使っておきましょう。もし地上が膠着すればしか状況を打開するカードはありません。そのため、相手にを引かれたときのことを想定して、最小限の被害に抑えられるように備えておきましょう。
In
Out
はよくはないカードですが、私はサイドアウトはしません。後手のときにに対して強いカードです。先手の際はと入れ替えてもいいでしょう。2枚目のを入れるときにはを1枚抜きましょう。
さて、以上です!私はこの「黒緑昂揚」がスタンダードで最高のデッキの1つだと考えています。「」や、「黒緑昂揚」を特別に対策したデッキが流行するまでは安泰でしょう。
「黒緑昂揚」を使うにしても倒すにしても、この記事を通じて皆さんに何かしら学ぶことがあったならば幸いです。いつものように、もし記事内で私が答えていなかった質問があれば【Twitter@LukasBlohon】までお知らせください。それでは将来のトーナメントでの幸運を祈ります!
Lukas Blohon
Lukas Blohon
チェコ共和国を代表するマジック・プレイヤー。マジックの普及と実力向上に身を捧げる勤勉な努力家であり、Petr Sochurekに「真摯な努力家であり、最高のプレイヤー」と称される。
【プロツアー『闇の隆盛』】トップ8、【グランプリ・ブリュッセル2015】優勝、グランプリトップ8の経験は6度にも上る実力者。【プロツアー『異界月』】優勝という輝かしい成績と共に、Hareruya Prosに加入。
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