レガシーで正しいデッキ選択を行うには

Petr Sochurek

Translated by Jun’ya Takahashi

みんな、こんにちは! Petr です。 今回は レガシー について話そうと思います。

その理由はとってもシンプル! これからの数週間は 【GP千葉2016】 をはじめとして、世界中でレガシーの大きなトーナメントが開催されるからです。 日本は世界で一番楽しい国なので、僕もぜひ参加したかったのですが、今回は一緒に行く人がいなかったので、残念に思いつつも参加しないことにしました。 ひとりで旅行は寂しいですしね。

さて、僕はほとんどレガシーに触れることはないのですが、それでも平均的なプレイヤーと比べると触れている方でしょう。 また、今回は記事を制作するにあたって、レガシーに精通しているチェコの友人 Thomas Mar が協力してくれました。 彼からいくつかの素晴らしいTIPSを聞いてきましたよ!

レガシーの独特なメタゲーム

レガシーならではの特徴はいくつかありますが、その中でも一番知っておくべきことは、 ”メタゲームが他のフォーマットと同じようには動かない” ということです。 その理由は、 カードのアベイラビリティ にあります。

つまり、どういうことかというと、幾らかのプレイヤーたちは、何があっても1つのデッキに拘って使い続けるのです。(そのデッキが自分のであれ、人から借りたものであれ) このことから、どのデッキも少数派になるので、特定の戦略やデッキを狙い撃つためのデッキは選択できません。

それでもメタゲームは存在します。 ただ、それは他のフォーマットのものとは事情が違うのです。 簡単な例として「リアニメーター」についてお話しましょう。 強力な新カードである《集団的蛮行》によって強化されたリストが知れ渡りましたが、人々は相変わらず好きなデッキを使い続けました。 彼らは、強そうな「リアニメーター」を使うのではなく、「リアニメーター」対策を増やした好きなデッキを使う、という選択をしたのです。

何が言いたいのかというと、レガシーにおいてメタゲームの影響が表れるのは、 ほとんどがカード選択についてで、デッキ選択ではない ということです。 なかにはデッキの選択肢をいくつかもつ人たちもいます。彼らはその瞬間において最高の選択をしようと頑張っていますが、そんな彼らであっても選択肢の幅は狭いと言わざるを得ません(彼らは「BUG続唱」から「デルバー」に変えることはあっても、いきなり「エルフ」を使いはじめることはないのです)

意志の力渦まく知識

このような特殊なメタゲームの事情を知ると、あなたは、コンボのような強力なプロアクティブな戦略、あるいは《意志の力》の入った青いデッキ、このどちらかを選ぶべきだということがわかります。 もしかしたら誰かが「土地単」とか「Death&Tax」を薦めてくるかもしれませんが、僕はそれがいい選択だとは思いません。 それらは青いデッキを使う未熟なプレイヤーに付け込めるだけのデッキです。 青いデッキはとてつもなく複雑で、1つのミス、1つの勘違いが致命傷に繋がりますからね。(《渦まく知識》《思案》などの選択を思い浮かべてください)

僕がレガシーにおける最強のデッキは「青いなにか」だと考えていることはわかってもらえたと思います。 青いデッキの問題は、使いこなすのがとても難しいってことくらいです。 現在だと「BUG続唱」「白青奇跡」「4色」が最高の選択肢ではないでしょうか。

《意志の力》は必要悪 !?

青いデッキについて知っておくべきことがあります。 それは《意志の力》は基本的にとても悪いカードですが、必要悪なカードとして使われている、ということです。

たとえばモダンにおいてリアクティブな戦略が活躍しない理由は、モダンのカードプールでは、すごく多角的な攻撃をすべて対処することができないからです。(たとえサイドボード後であっても無理なんです) でも、レガシーにはすべてに対応できる《意志の力》があります。

しかし、《意志の力》は 2:1 交換をするカードなので、もしその相手の1枚をこちらも1枚で対処できるならば、《意志の力》はそれと比較して損をする弱いカードになってしまうのです。 つまり、互角のマッチアップにおいては《意志の力》をサイドアウトし、ときにはコンボデッキ相手にもサイドアウトすべきだということです。 コンボデッキ相手にサイドアウトすることは直感に反するかもしれませんが、もし自分のデッキに無駄なカードがなければ、《意志の力》は抜くべき候補になります。 サイドボード後も《意志の力》をいいカードだと評価できるのは、「ストーム」や「《実物提示教育》」のように特定の重要な呪文が勝負の鍵になるマッチアップだけです。

相殺精神を刻む者、ジェイス

僕は「白青奇跡」の専門家ではないので、同型戦において《意志の力》をキープしたいかはよくわかりません。 なぜわからないかというと、「白青奇跡」の同型は消耗戦になるので損な交換はしたくないのですが(特に《紅蓮破》されたくないのです) 、一方では《相殺》《精神を刻む者、ジェイス》といった勝敗を分かつとても重要な呪文があるからです。

さて、もし明日にレガシーのトーナメントがあるならば、僕はこれに近いデッキで参加するでしょう。


Petr Sochurek

3 《Underground Sea》
2 《Tropical Island》
1 《Badlands》
1 《Volcanic Island》
4 《汚染された三角州》
4 《沸騰する小湖》
2 《新緑の地下墓地》
3 《不毛の大地》

-土地 (20)-

4 《死儀礼のシャーマン》
4 《悪意の大梟》
3 《タルモゴイフ》
2 《瞬唱の魔道士》

-クリーチャー (13)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
2 《コジレックの審問》
1 《稲妻》
1 《思考囲い》
3 《突然の衰微》
3 《目くらまし》
1 《トーラックへの賛歌》
2 《苦い真理》
1 《四肢切断》
1 《コラガンの命令》
4 《意志の力》

-呪文 (27)-
3 《悪魔の布告》
2 《二股の稲妻》
2 《虚無の呪文爆弾》
2 《紅蓮破》
1 《狼狽の嵐》
1 《侵襲手術》
1 《思考囲い》
1 《壌土からの生命》
1 《湿地での被災》
1 《精神を刻む者、ジェイス》

-サイドボード (15)-
hareruya


このデッキは、ほぼすべてのデッキに対して有利に戦おうとする、ミッドレンジらしいデッキです。 これと似ているデッキに比べると終盤で強くなるように作られていますが、攻撃的な要素もまだ入っているので、様々なデッキに対して序盤からプレッシャーをかけて簡単に勝つこともできます。

このデッキが「白青奇跡」よりも良いデッキかと言われると、「そうだ !」とは言い切れません。 では、なぜ「白青奇跡」ではなく「4色」を選んだのか。 その理由をお話したいと思います。 それは、誰かにデッキの難易度を訊かれたときに適切な答えを返すことが難しいように、 人それぞれ、難しさのレベルが違う からです。

あなたのレベルはどこですか ?

まずはじめに、 「どのデッキが一番簡単に使えるのか ?」という質問の意図を考え直してみましょう。 なぜこんなことを言うかというと、完璧に扱うことが難しい、もしくは不可能であっても、ゲームに勝つことは難しくないデッキがあるからです。 逆に、ミスをせずに扱うことは難しくなくても、それでゲームに勝つためには完璧なプレイが必要なデッキだってあります。

このようにデッキの難易度と、ゲームに勝利できるかは、また別のものなのです。 それでは、ここでそれぞれのレベルに応じて、「白青奇跡」を選ぶべきか、「デルバー」(あるいは「4色」)を選ぶべきかについて整理してみました。

◆ もしあなたが初心者ならば

もし僕が今までレガシーに触れたことのない初心者ならば、「白青奇跡」ではなく「デルバー」を使ったほうがいいでしょう。 たまに《死儀礼のシャーマン》《目くらまし》《タルモゴイフ》《不毛の大地》と引くだけで勝てるからです。

◆ もしあなたが中級者ならば

もしレガシーを何回か触ったことがあって、《渦まく知識》を無駄に使わなかったりと、レガシーの定石を知っているならば「白青奇跡」を使ったほうが良いかもしれません。 「白青奇跡」は使い方をある程度知っていれば、多くの戦略に対して簡単に勝てるからです。 2ターン目の《相殺》《終末》のリセット、《僧院の導師》が対処されないこともあるでしょう。

ただ、「白青奇跡」を使う問題点としては、「《実物提示教育》」、「土地単」、同型といったマッチアップにおいて、勝つためには熟達したプレイが求められるということです。 いくつかのゲームやマッチアップでは《思案》の積み方を間違えても問題なかったりしますが、それ以外ではとても正確なプレイをしなければなりません。 しかし、僕を含めて、多くのプレイヤーにはそれができないのです。

◆ もしあなたが上級者ならば

もし自分のことをとても上手だと思うなら(ただし「白青奇跡」のトップレベルの使い手じゃないなら)、改めて「デルバー」を使ったほうがいいでしょう。 上に載せたデッキリストには《秘密を掘り下げる者》は入っていませんが、デッキの戦略自体は「デルバー」と一緒です。

「デルバー」をプレイするに当たって多くの人が犯す間違いは、理想的なゲームプランーー作戦名: 殲滅せよ!、に固執してしまうことです。 もし「デルバー」のようなデッキをうまく使いたければ、いつギアを変えてコントロールとして立ち回るか、いつゲームが長引くのか、状況に応じて上手くプレイするために行動に優先度を決めることなど、様々な技術を知る必要があります。 決して簡単なことではありませんが、一度これらの考え方さえ身につければ、次第に難しくなくなります。 すべてのマッチアップ、あらゆる状況に応じたプレイやサイドボードの仕方を知る必要もありますが、そういった情報を学ぶことは、考え方を身につけることに比べると時間はかからないでしょう。

◆ もしあなたがレガシーマスターならば

もしあなたが押しも押されぬレガシーマスターだとしたら、迷わずに「白青奇跡」を選びましょう。 凄まじくパワフルかつ、たくさんのドロー操作が入っているからです。 これはつまり、完璧なデッキ構築と完璧なプレイができるとしたら、ほとんどのマッチを勝てるはずです。 このデッキは、すべてに対する解答をもち、強力なカードが入っていて、そして、とても安定しています。 あなたはマスターでしょうか?

これは僕が知るなかで最高の「白青奇跡」の使い手である、 Tomas Vlcek のデッキリストです。


Tomas Vlcek

3 《Tundra》
3 《Volcanic Island》
3 《島》
2 《平地》
4 《溢れかえる岸辺》
3 《汚染された三角州》
1 《乾燥台地》
1 《霧深い雨林》

-土地 (20)-

3 《瞬唱の魔道士》
2 《僧院の導師》

-クリーチャー (5)-
4 《渦まく知識》
4 《思案》
4 《剣を鍬に》
2 《対抗呪文》
1 《議会の採決》
1 《天使への願い》
4 《意志の力》
4 《終末》
1 《仕組まれた爆薬》
4 《師範の占い独楽》
4 《相殺》
2 《精神を刻む者、ジェイス》

-呪文 (35)-
3 《狼狽の嵐》
3 《ヴェンディリオン三人衆》
2 《紅蓮破》
2 《摩耗+損耗》
1 《赤霊破》
1 《外科的摘出》
1 《封じ込める僧侶》
1 《紅蓮地獄》
1 《イゼットの静電術師》

-サイドボード (15)-
hareruya


以上です。 この記事がみんなのデッキ選択の助けになっていることを願います。

もしなにか訊きたいことがあれば、【facebook】【Twitter】で質問してください! みんなの疑問に答えたいので、遠慮せずに教えて下さいね!

それでは、ここまで読んでくれてありがとう! Petr Sochurekでした。

この記事内で掲載されたカード


Twitterでつぶやく

Facebookでシェアする

関連記事