Written by Jun’ya Takahashi
いよいよ ”魔の12月” がやってきた。 こう呼んでいるのは世界中で僕だけかもしれないが、ことスタンダードというフォーマットに限っては、12月という時節はとても重要な変化が起こることで知られている。 かつて一世を風靡した「青白デルバー」が初めて登場したのは2011年の12月で、 ミッドレンジキラーとして活躍した「呪禁バント」が構築されたのも2012年の12月、そして昨年のスタンダード環境をめためたにした「4色ラリー」が頭角を現したのも12月なのだ。
なぜ12月なのか。
いくつかの理由は考えられるが、なかでも一番もっともらしいのは、9月からの新環境が落ち着きを見せる頃合いだから、というものだ。 9月に新セットが発売されてから2か月以上が経つと、プロツアー(あるいは世界選手権)で披露された強力なデッキリストもようやく完成してくる。 するとデッキリストの完成度では差がつかなくなり、既存のアイデアやコンセプトの外にある”何か”を探すプレイヤーが現れるようになるのだ。
この”何か”の一例としては「昂揚」が記憶に新しい。 「白青フラッシュ」「黒緑昂揚」「機体」の構図から「黒緑昂揚」が頭一つ抜け出した頃合いだっただろうか。 プロツアー『カラデシュ』でボロボロにされて消えたはずのが再びスポットライトを浴びることとなった。 その理由はただひとつ。 「黒緑昂揚」に明確な有利なデッキタイプだから、である。 一度は敗北したデッキタイプであっても、合理的な背景さえあれば、均衡した環境を切り拓くことができるのだ。
そして現在。 「昂揚」がリードする環境を打開するアイデアが今大会で上位入賞していた。
それが「バントミッドレンジ」である。 といった「白青フラッシュ」のコアに緑のカードが散らされた構成だが、そこに加えられている緑のカードが強烈だ。
と。 どちらも数か月前に「バントカンパニー」で活躍したカードで、クリーチャーの少ないデッキタイプに対して強く、中盤から終盤にかけて膨大なカードアドバンテージを稼ぐことで恐れられている。 どちらも4枚ずつ採用していることから、「昂揚」と「黒緑昂揚」を意識した構成に仕上がっていることが窺える。
プロツアー開催直前に一瞬だけ登場した「バントミッドレンジ」は、「機体」の流行によって高速化した環境では戦えずに姿を消したが、現在の中速デッキがひしめく環境においては活躍する余地は残されているはずだ。 たしかに3色ゆえの不安定さは悩みの種だが、中速のデッキタイプへの強さはそれを補って余りあるに違いない。
「白青フラッシュ」ではなく、「バントミッドレンジ」だからできること。 それをしっかりと備えたこのデッキには環境を塗り変える力が秘められている。