モダンが好きだ。
スタンダードでもなく、レガシーでもなく。モダンだけに打ち込み、モダンだけを愛すプレイヤーは多い。
モダンはよく”何が勝ってもおかしくない環境”と言われるが、それはある意味では環境にこれまで存在していなかったローグデッキだとしてもそうなのである。
ゆえに、何でもアリ。ゆえの、群雄割拠。
やりたいことがやれる。そんな部分にモダンプレイヤーは夢中になるのであり、惹きつけられる魅力そのものなのだろう。
そんなモダンの神に挑戦する戦いも、残すところあと3回戦となった。
仁田のデッキは、トロン。
「ウルザトロン」と呼ばれる3つの土地それぞれを揃えることによって、たった3つの土地から7マナの無色マナを生み出し、高マナ域のカードの高いカードパワーで圧倒するデッキである。
対する細川のデッキは、ドレッジ。
「発掘」という、マジック史上5本の指に入るであろうほどに強すぎると言われたキーワード能力。それを軸にして構築された、墓地をまさに手札のように操るデッキだ。
準々決勝は、己の強い動きをぶつけ合う戦いとなった。
Game 1
両者ともマリガンせず7枚でキープ。先手はスイスラウンド4位の仁田からのスタートとなる。
1ターン目に《ウルザの魔力炉》を置き《彩色の宝球》をプレイ、返す細川も《傲慢な新生子》をプレイし、お互いにいい滑り出しと言えよう。
しかし仁田は続くターンに《ウルザの塔》を置き、《彩色の宝球》から緑マナにフィルターして《森の占術》をプレイ。《ウルザの鉱山》をサーチし、次のターンにはいわゆる「ウルザトロン」が成立することが確定する。
細川も自分のベストムーブを目指し、仁田の第二メイン終了時に《傲慢な新生子》の能力を使ってドローを「発掘」に置換、さらに自分のターンのドローフェイズのドローも「発掘」に置換してターンを終えるのだが、仁田の勢いは止まらない。ウルザトロンを完成させ《ワームとぐろエンジン》と《探検の地図》をプレイする。
ライフを圧倒的な速度で狙っていくようなデッキにとって、6/6というサイズでしかも絆魂を持ち、死亡してもなお2体のトークンを残すこのカードはかなり辛い。盤面が攻めきれていない細川にとってはなおさらだ。
細川も「発掘」で掘り進め、《ナルコメーバ》《恐血鬼》《秘蔵の縫合体》をそれぞれ2体ずつ展開して場を整えるも、如何せん《ワームとぐろエンジン》が厳しいところである。
仁田 諒 |
しかも返す仁田が《古きものの活性》で手札に加えたのは《精霊龍、ウギン》。土地以外のパーマネント全体を追放除去できる能力を持つこのプレインズウォーカーは、横並びに展開しきった細川にとって再起不能になり得るカードだった。
それでも細川はクリーチャー全てでアタックし、《ワームとぐろエンジン》が《秘蔵の縫合体》をブロックしたのを見届けると、このターンの「発掘」で落ちた《燃焼》で《ワームとぐろエンジン》と自身の《恐血鬼》にダメージを割り振り、《ワームとぐろエンジン》を2体の3/3トークンへと分裂させつつ、《秘蔵の縫合体》と《恐血鬼》1体ずつを墓地に落としておくことによって、返しに《精霊龍、ウギン》で追放されることをケアしてターンを終える。
仁田は悩みながらも《精霊龍、ウギン》をプレイして《ウギンの聖域》で《絶え間ない飢餓、ウラモグ》をサーチしつつ、残った《秘蔵の縫合体》に3点与えてターンエンド。
ここで《精霊龍、ウギン》を対処しなければ細川の勝ちはない。
残った《ナルコメーバ》2体と《燃焼》で《精霊龍、ウギン》の忠誠度を2まで減らし、もしマイナス能力で盤面をリセットすれば《精霊龍、ウギン》を失ってしまうような状況を作りつつ、《恐血鬼》を「上陸」で出してターンを終える。
しかし仁田は《彩色の宝球》をプレイし即起動、宣言は「赤」。
その手から《紅蓮地獄》が放たれると、《精霊龍、ウギン》の「+2」能力で残った《秘蔵の縫合体》も除去された挙句に追加の《ワームとぐろエンジン》をも出されてしまい、ここで細川が投了した。
仁田 1-0 細川
Game 2
互いにサイドボードを入れ替え終わりシャッフルをしながら細川は「今日初めてメインボードを落とした」と漏らした。
それも頷けるくらいに、ドレッジというデッキの持つポテンシャルとは凄まじいものである。
そして細川先手で始まったGame2は、そのポテンシャルをわかりやすく示す結果となった。
細川はマリガン、仁田はダブルマリガンでゲームが幕を開けると、細川は《信仰無き物あさり》から《燃焼》と《恐血鬼》を捨て、返す仁田はダブルマリガンが苦しいのか《彩色の宝球》をプレイして終了。
ここからの流れが早かった。
仁田はマリガンが響きろくにアクションが取れないのに対し、細川は《信仰無き物あさり》のフラッシュバックや《安堵の再会》で瞬く間にデッキを掘り進める。
やがて《恐血鬼》2体、《秘蔵の縫合体》が3体の盤面ができあがり、仁田は《彩色の宝球》を起動するも解答を引けず、あっさりと投了することとなってしまった。
仁田 1-1 細川
Game 3
いよいよこのマッチのラストゲームとなった。先手は仁田だがマリガン、細川はキープを宣言。
そしてマリガン後のハンドを見て悩む仁田。
ハンドには土地が1枚、しかも《ウギンの聖域》しかない……が、サイドボードから増やした《大祖始の遺産》がある。
爆発的な勢いで墓地を肥やされてしまった先ほどのゲームが頭をよぎったのか、土地を一枚引ければ動けないこともないと感じたのか。ダブルマリガンをせずにキープした仁田は《大祖始の遺産》をプレイしてターンエンド。返す細川は《踏み鳴らされる地》をショックインして終了する。
返す仁田は、土地を引けない。
やむなく《彩色の宝球》をプレイしてターンを返すが、しかし細川は仁田のエンドフェイズに《自然の要求》を《大祖始の遺産》にプレイし、目の上のたんこぶとも言うべき墓地対策カードを処理すると、自分のターンに入って《信仰無き物あさり》で《恐血鬼》2枚を捨て、そのまま「上陸」で両方場に出しつつ《傲慢な新生子》をプレイしてターンを返す。
細川 侑也 |
苦しい仁田は《彩色の宝球》を起動して《古きものの活性》を打ち土地を回収して出すも、そのままターンを返すことしかできない。
一方の細川は迅速に攻め切ることを目指し、仁田の第二メイン中に《傲慢な新生子》を起動して「発掘」。さらに続く自分のターンのドローも「発掘」すると、そのターンの終了時には《恐血鬼》が2体、《秘蔵の縫合体》が1体、そして《ナルコメーバ》が2体とあっという間に9点クロックを形成する。
仁田は2枚目の《大祖始の遺産》をプレイするが、盤面の土地は《ウギンの聖域》と《燃え柳の木立ち》のみで止まっており、ターンを返すしかない。
ここでドローを置換した細川の墓地に落ちたのは、《災いの悪魔》。
《大祖始の遺産》を起動するしかなくなってしまった仁田は、続く手がないと判断してここで投了。
見事、細川が準決勝へ駒を進めた。
仁田 1-2 細川
この記事内で掲載されたカード
Twitterでつぶやく
Facebookでシェアする