なかしゅー世界一周 グランプリ・クアラルンプール2016編

中村 修平



 こんにちは。中村 修平です。

 ついうっかりにあれやこれやが重なった結果、なぜかベトナム、ハノイでブン・チャーなるものを食べてます。



こんなの


 はじめはせっかくベトナムなんだしフォー的なものを食べようとして、どうせだったらちょっと変わり種にしようと注文したのですが、これが大当たり。

 ニンニクの効いたチリ系のすっぱ辛い熱々濃厚なスープに米の麺を浸けて食べる。「ベトナム風つけ麺」と表現するのが良いでしょうか。

 トッピングも中々に豪華で、焼いたつくね、ハンバーグ的なものに豚のブロック肉をカリカリにローストしたもの、薄切りした大根と人参は酢漬けになっていて良いアクセントになっている。もちろんフォーなんかでお馴染みの香草、もやしは入れ放題。

 お値段は空港価格で6米ドル。たぶん空港外で食べたら1~2米ドルくらいなんだろうなぁ、とりあえず日本でも食べられるところを探すか……

 じゃなかった。

 どうしてこうなったのか。

 それにはちょっと時間を遡る必要があります。






■ 1. 事の発端

 そもそもはHareruya Prosの共有ラインでのこの書き込みが原因でした。


津村: 「クラウドファンディングで支援をいただいたので、みんなでGPクアラルンプールに行きませんか?」


当時の私: 「さっすが晴れる屋さんやー。はっぴー☆」


津村: 「すいません、クラウドファンディングを実施した当時のメンバーになりますので、ナックさんは対象外となります……。」


当時の私: 「えっっっっっっっっっっ!?!?なにがハッピーだよ!!こちとらアンハッピーじゃい!!!どうせみんな幸せそうに僕をハブにしてハッピー記念撮影とかするんでしょ!!」




 もう怒った!「プライスアラート」かけて寝る!!!

 ここでちょっと説明。「プライスアラート」とは旅行予約サイトでやってるサービスの1つ。アカウントを作って航空券を検索したときに、「もしこの金額を下回る航空券が売り出されたら」 or 「もしこの金額を上回りそうになったら」、自動的に詳細メールを送ってきてくれるというサービスです。

 しかしまだ、理性が残ってました。私以外ハッピーツアーが総額5万円らしいので、達成が困難な金額をあらかじめ打っておいて、「○○円だったら行ったのになあ~」という予防線を張ることにしたのです。

 あっちが5万ならこっちは宿代含めて3万じゃあ!てことは航空券に使える金額は精々2万だな、ということで2万円のプライスアラートでいきましょう。

 ちなみにこのときの最安値は3万円。もちろん行く気がなかったということですね。本人もアラートをかけたことなどすっかり忘れて時が流れること2週間ばかり、ちょうどプロツアー『カラデシュ』のためホノルルへと出発する頃、事件は起きました。

 「2万円でお探しの航空券がありました」

 あれ?たしかに出てきてますね。ベトナム航空で行くクアラルンプール往復。帰りは月曜夜にマレーシアからベトナム深夜着、早朝発なので1泊しなくてはいけないものの、確かにこれは見紛うことなき2万円。

 ……これ、自分ルールを設定して逆に嵌まるパターンじゃん!




 そして成田空港前、より厳密に言うと体調優れないのに遊びじゃくったホノルルからの満身創痍的な状態での帰国直後、最後の抵抗線と設定していた「家に戻って気がつけば飛行機乗り過ごしちゃった☆」は、ちょっとした案件により成田で1泊することになったためにあえなくご破算。

 逃げ道が全面的に塞がれてしまい、こうしてハノイにいるわけです。


 ……本当に本当にどうしてこうなった……orz

 注: だいたいいつものパターン。



 ま、気を取り直してプラス思考でいきましょう。ちょうど私以外のHareruya Prosもクラウドファンディングの成果として行ってるわけですし。

 そうだ、私は私で今後の計画の参考として、アジア遠征に行くとすればどれくらいお金がかかるのか、感覚としては概ねマイナスになるとは思いますが、実際にどれくらいになるのかを実録してみることにしましょう。


◆ ここまでの出費

飛行機代金 -21050円
ハノイのブン・チャー 6米ドル=-636円





■ 2. 前日まで

 私が現地の空港についてまずやること、それは現地通貨への換金です。

 流通量が多い米ドルやユーロならともかく、そうではない場合は日本で換金するとレートの悪さでかなりの損。換金再換金の往復で3割くらいは当たり前に取られしまいます。

 私がよくやるのは現地空港でクレジットカードからの最低限くらいをキャッシング、これだとまあまあ納得できるくらいのレートで当座のお金を確保できます。それか仕事柄、米ドルをある程度持ち歩いているので、それをそのまま現地の両替所へ持っていくというもの。ビバ基軸通貨、どこでもそれなりな扱い。

 ですが今回はちょっと事情を抱えていまして、第3の道を取ることに。かなり前に行って余らせたフィリピンペソが来年の新札切り替えで紙束になってしまうので、ここで違う通貨に替えておきたいのです。

 ググってみるとおおよそ1万円分らしいので、物価が安いであろうマレーシアなら充分でしょ。マレーシアの通貨、1リンギットはおおよそ25円。400とはいかないまでも350リンギットくらいになればじゅうぶ……

両替所「280リンギットになります」

 やれやれ、グランプリに来ているフィリピン人ジャッジでも探すとするか。気を取り直して300リンギットほどをキャッシング成功。


 アジアグランプリ旅に必須な【mtg-jpのグランプリ案内】によれば電車を乗り継いででも会場に向かえるみたいなのですが、所要時間がとんでもなくかかるのと今回は人を待たせているのでタクシーを使うことにして、50分ほどかけて会場のサンウェイラグーンリゾートモールまで。

 実はここ、初めてマジックで海外遠征した【APAC選手権】の会場でもあったので、ちょっと感慨深かったり。




 スフィンクスに迎えられて中に入ると、常夏の国なのにアイススケートリンクがあるという謎仕様も健在。2~3年周期くらいで見ると微笑ましいものです。

 増設を繰り返していてちょっと複雑すぎる建物を縫うようにしてコンベンションスペースに到着。会場で待っている行弘 (賢) たちと合流し、景気づけとばかりに日本人グループでモール内の焼肉店に繰り出して今日1日が終了。

 ……と、言いたいところだったのですが、なにぶんやる気のかけらもなかったものですから今回は宿も人任せ。大阪の「はまち」こと藤本 岳大が取っていた宿に欠員が出たというのを聞いていたのでそこに潜り込みを果たせはしたのですが、ダンジョンと化したサンウェイラグーンをさまようこと20分、その中のビル上階フロアらしいと突き止めるのにもう10分、そこは同じ施設を使いながら3つの業者が共同で運営しているらしくて、予約者じゃない私ではお手上げだというのがわかるまでに20分

 その過程でフロントの人が日本語留学しに大阪に行っていたことがあったらしく、大阪ローカルの話題で少し盛り上がって30分、いい加減話すこともなくなってロビーのソファーで意識を失ったのがもう30分ほど。

 ようやくの宿主合流により最悪のケースは回避され、業者関連でもう一悶着ありましたが、紆余曲折の果てになんとか寝床にありつけたのでした。


◆ ここまでの出費

飛行機 -21050円
ブンチャー -636円
タクシー代 82リンギット=-2050円
焼肉代 90リンギット=-2250円
ホテル代金 -6000円





■ 3. グランプリ初日

 ちょっと早くに目が覚めてしまったので、まだトーナメントの登録が完了していないはまちたちに連れ添って、モール外のインド料理チェーンで朝ごはん。



6リンギット(150円)




追加でチャイが2リンギット(50円)


 日本でいう牛丼チェーンの朝定食みたいなものでしょうね。それにしてもモール内外の価格差、外がだいたい日本の1/3くらいでモール内がその2倍くらいといったところでしょうか、さすがに昨日の焼肉は高かった。

 前日深夜着だったために会場に行かなければならない同宿人達と違ってスリープイン・スペシャルなので、優雅に昼頃まで二度寝してから会場へ。


 さてここからは楽しい楽しいマジックの時間なのですが、ぶっちゃけると先週のプロツアー・ホノルル以来、体調不良&遊びほうけのコンボにより1ミリたりともマジックしてませんでした。




 というわけでなにやら自信アリなツイートしていた行弘に連絡をとってデッキをまるごとシェアしてもらい、あまつさえここまでくればむしろそっちの方が面白いでしょうと全く一人回しもしない完全鉄砲で実戦に挑む舐めっぷり



中村 修平「スゥルタイ『昂揚』」
グランプリ・クアラルンプール2016

4 《沼》
3 《森》
1 《島》
4 《窪み渓谷》
4 《進化する未開地》
4 《花盛りの湿地》
3 《植物の聖域》
1 《詰まった河口》
2 《風切る泥沼》

-土地 (26)-

1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》
2 《奔流の機械巨人》

-クリーチャー (3)-
3 《ウルヴェンワルド横断》
4 《闇の掌握》
2 《否認》
2 《精神背信》
3 《苦い真理》
3 《本質の摘出》
2 《殺害》
1 《破滅の道》
1 《天才の片鱗》
4 《死の重み》
3 《最後の望み、リリアナ》
3 《生命の力、ニッサ》

-呪文 (31)-
4 《残忍な剥ぎ取り》
2 《豪華の王、ゴンティ》
2 《ゲトの裏切り者、カリタス》
2 《否認》
1 《歯牙収集家》
1 《儀礼的拒否》
1 《精神背信》
1 《餌食》
1 《領事の旗艦、スカイソブリン》

-サイドボード (15)-
hareruya




奔流の機械巨人墓後家蜘蛛、イシュカナ生命の力、ニッサ


 黒緑メインに青を少しだけ足した中速コントロールデッキ。ま、行きの飛行機の中でリストを見た限り、【先週】使った黒緑「昂揚」と大して変わらない、というかそこから青がちょこっと入っただけのようなデッキなので問題はないでしょう。

 一応の脳内シミュレートの結果、処理されてしまったときに備えて《墓後家蜘蛛、イシュカナ》がもう1枚欲しいのと、先週と同じ枚数くらいにはプレインズウォーカーを処理するカードが欲しそうだったので、前日に製作者の行弘と相談した結果、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》2枚目は贅肉、サイドに《餌食》は確かに採った方が良いといった感じで変更はされています。


 で結果の方は3バイ明けから、


ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 4白青フラッシュ 勝ち
Round 5白青フラッシュ 負け
Round 6エスパーコントロール 負け
Round 7赤黒ゾンビ 勝ち
Round 8ティムールエネルギー 負け
Round 9(たぶん) 4色「機体」 勝ち


 対エスパーコントロールと対ティムールエネルギーにはどうやっても勝てなさそうなゲーム展開でしたが、5回戦目の白青はタイムアップ間際に2本目を取られて3本目へと突入してしまい、デッキの勝ち筋が細いので無理して勝ちにいった結果返り討ちにあう、というあまりよろしくない展開での負け。

 それと最終戦の1本目は後手を踏んでからの《模範的な造り手》《模範的な造り手》《模範的な造り手》《スレイベンの検査官》《密輸人の回転翼機》というやはりデッキの構成上どうやっても勝てない動きで圧敗。全体除去がない中速のこちらではどうやっても無理。

 その上次のゲーム、速攻相手に最もやりたくない7枚キープできずのマリガンスタート。「蛍の光」がフルオーケストラバージョンで盛大に鳴り響いてます。もしかすると下のお店からかもしれませんが、どちらかといえば幻聴だったのでしょう。

 ところがそのゲームを辛勝した結果、3本目は今度があちらが《霊気拠点》のガス欠により色マナ不足というマジックのあらあらが出てしまい、のらりくらりで2日目に滑り込み

 みんな疲れているし、そこそこは戻ったとはいえ私もまだホノルルからの体調不良は続いており、頻繁に咳をしている状態。手早く会場モール内で食べようということになり、閉店間際のフードコートに駆け込んで本日はお終い。

 ちなみに「せっかくだからモール内の廻る寿司を食べよう」という私の提案は《即時却下》されました。


◆ ここまでの出費

飛行機 -21050円
ブンチャー -636円
タクシー代 82リンギット=-2050円
焼肉代 90リンギット=-2250円
ホテル代金 -6000円
朝食 8リンギット=-200円
夕食&もろもろ 40リンギット=-1000円





■ 4. グランプリ2日目

 グランプリ2日目プレイヤーの朝は、午前9時開始というのもあってそれなりに早いです。もっとも私はそれよりもうちょっと早く起きなければなりません。なぜなら今日のホテルと明日のベトナムでのホテルを取らなければいけないから。

 はまちたちのフライトが日曜朝らしくてこのままでは家なき子、それに帰りのベトナムも夜に到着して早朝出発なので、当初は空港で本でも読んで潰そうかと思いましたが、この体調ではうっかりすれば人生そのものが蛍の光になりかねません。ということで予約予約、面倒なので部屋の延泊と、ベトナムの方は空港ホテルのようなものを合計で6000円。


 後顧の憂いをなくしたところでマジックの時間再開です。残念ながらトップ8の目は既にありませんが、全勝だとプロポイント3点に1000ドルくらいの賞金、5勝1敗だとプロポイント2点に賞金がいくばくかは出るはず。目標はそのあたりということで。


ラウンド 対戦デッキ 勝敗
Round 10マルドゥ「機体」 勝ち
Round 11白青フラッシュ 勝ち
Round 12黒緑「昂揚」 勝ち
Round 13白青フラッシュ 勝ち
Round 14白赤「機体」 負け
Round 15赤黒アグロ 勝ち


 ようやくデッキにも慣れたが、あと1歩が足りなかった。というよりは、負けた白赤「機体」との3本目が完全にこちらのミスだったのが響きました。

 つい誘惑に負けて《否認》持っているのに後手3ターン目に《最後の望み、リリアナ》で盤面の《模範的な造り手》処理を優先させてしまい、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》の着地を許してしまったのです。


否認最後の望み、リリアナゼンディカーの同盟者、ギデオン


 一応、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》《ウルヴェンワルド横断》から《奔流の機械巨人》があるから、持たれているケースでもなんとかなるでしょうとはそのときは考えていたのですが、やっぱりどうにもなりませんでした。殴るカードが少なくて対処できるカードも少ないこのデッキでは《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》だけは本当に駄目。相手の展開が比較的緩やかだったのを考えても、ライフが10を割ってでも4ターン目の着地には備えるべきでした。


 ということで45位のプロポイント2点、賞金は250ドル。

 32位以内に入れば賞金が500ドルに上がったので旅費のペイができそうだったのですが、残念ながら3敗が2日目に残るシステムに加えて優勝賞金を1万ドルに寄せた反動で、このラインでの賞金はとても競争が激しくなっているので仕方がないです。勝って1000ドル負けて0ドル、みたいなことにならないだけまだマシですね。




 そのあとはまあ、打ち上げ的なものですね。1人で滞在するにはちょっと広すぎる部屋でとあるカードゲームをしながらKFCでチキンを買い込んできたり、解散後、妙に気前の良い多田さんの奢りでバーニングマッサージなるものを受けてみたり。





 要はお灸的効果なのかな、術後若干ヒリヒリしましたが効果についてはあまり実感できず。ま、タダだしそれは良いでしょう。




■ 5. 一夜明けて

 帰りの飛行機は夜、ということで夕方くらいまでは好きに動けはするのですが、あまり遠出をする気力もなくモールをふらっと散歩して、ついうっかりポケモンGO割なるものに釣られて1つ買ったらもう1つおまけがついてきて頭を抱えているところです。







 このグランプリを総括すれば、終わってみればまあまあといったところでしょうか。

 モチベーションに比してまがりなりとも賞金は確保できたので、記事的にもただマイナスでしたーというつまらない結果になることも避けられましたし、今シーズンをどうするかは決めてませんが、前年実績を踏まえて考えるとプロポイント2点なら6つあるキャップにあてても良いかなと言えます。いや、本当に2日目に行けて良かったですよ。


 ということで決算してみると……


◆ 最終収支

飛行機 -21050円
ブンチャー -636円
タクシー代 82リンギット=-2050円
焼肉代 90リンギット=-2250円
ホテル代金 -6000円
朝食 8リンギット=-200円
夕食&もろもろ 40リンギット=-1000円
ホテル代金追加 -6000円
日曜日のKFCほか諸々 80リンギット=-2000円

日曜日までで-41186円、ここに帰りの空港までの電車代やらが-2000円ほどで-44000円

グランプリの賞金が250米ドルですので1ドル106円換算で+26500円、差し引き-17500円……

おっと忘れてました。グランプリの参加費が260リンギット=-6500円なので、締めて24000円の赤字。



 航空券で大分安いのを取れたはずだったのですが、なんだかんだで総出費は5万円を超えてしまいましたね。

 往時のプラチナのグランプリ参加報酬がなくなった今、現在のグランプリシステムで賞金だけでプラスを出そうとすると16位以上入賞が必須になってしまうのですが、マジック的には上出来といえる3敗ラインでも、初日通過者が多くなってしまった影響で運要素、対戦相手の総勝ち点での優越に頼らなければならないというのは厳しいです。

 それに加えてここ数年でのグランプリ参加費の高騰。最少賞金と参加費との差が4倍にまで接近してしまっているとは、運営がウィザーズオブコーストから各店舗へと変わった以上、利益を出さないとやっていけないとはいえ、かつての私はお金という要素をほとんど度外視してやっていたので、10年前の「プロたちがお小遣い稼ぎに来る大会」から「大多数の参加者に向けて大規模トーナメント体験を楽しむ大会」へと変わってしまったのだな、というのを再確認しています。

 なんてことをトロピカルジュースを買いながら考えていたらうっかりお金を使いすぎてしまい、空港行きの特別急行に2リンギット足りず。赤字が25500円に拡大と……

 やれやれ、ロートルがマジックするのも楽じゃない。


 それではまた次回、世界のどこかで。


 中村 修平



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