リミテッドの技術を磨こう -混合フォーマット大会を制する秘訣-

Oliver Polak-Rottmann

Translated by Jun’ya Takahashi

読者の皆さん、私の最新記事にようこそ!

まずは本題に入る前に、私が 【グランプリ千葉2016】 に遠征したときの話をしよう。

晴れる屋トーナメントセンターとGP千葉2016はすごかった!

私は 【ワールド・マジック・カップ2016 】 が終わった足で日本に向かった。 はじめて訪れた2009年の【プロツアー京都2009】以来の日本である。 まずは晴れる屋トーナメントセンターまで行ってみたんだが、ここはめちゃくちゃ最高な場所だった。 どんな場所か見当もつかなかったんだが、最終的に私がそうであったように、訪れた人は皆圧倒されていたからすごく楽しみだったんだ。

水曜日の真っ昼間に向かったんだが、そこでは50人のスタンダードのトーナメントと、ほぼ同じ人数のモダンのトーナメントが開催されていた。 さらに、 160人(!) のレガシーのトーナメントまでも併催されていたんだ! こんな光景はヨーロッパじゃあ当分のあいだ見られないだろうな。 どうやらそれは 【The Last Sun 2016】 っていう日本の一大イベントに向けた予選だったかららしいが、それにしてもこの人数はヤバすぎる。 しかも、これは水曜日のことなんだ! (訳注:Oliverさんは平日の水曜日だと思っていそうですが、この水曜日は11月23日「勤労感謝の日」で祝日でした)

それから私もレガシーの練習をしつつ、その場の雰囲気を味わうことにした。 プレイヤーもスタッフも皆すごく親切だったよ。 トーナメントはトップ8入賞まであと一歩だったな。 もし東京に行く機会があれば、晴れる屋トーナメントセンターにいくことをオススメするよ。 足を運ぶ価値は十分にあるはずだ。


晴れる屋トーナメントセンターと私

次の話題は、グランプリ千葉2016本戦の話だ。 私は前日に風邪をひいて散々な結果になってしまったが、グランプリそのものはそうではなかった。 これまでに世界中の様々な場所のグランプリに参加してきて、それぞれで新しい試みが行われていたが、 グランプリ千葉2016は私が参加した中でとびっきり素晴らしいものだった。

300人のグランプリよりもスムースに進行するし(私はこの人数のグランプリにも参加したことがあるんだ)、誰しもがとても楽しそうに過ごしていたんだ。 (齋藤)友晴が考えるこのイベントのコンセプトは独特なもので、そこにはすべてのイベントオーガナイザーが学べることがあるはずだ。 これはきっとよりよい未来につながる道標になるだろう。 詳しく知りたい人は 【友晴へのインタビュー(英語)】 をぜひ読んでみてほしい。

「混合トーナメント」に必要な技術とは?

それでは今回の記事の本題に移ろう。 それは 「混合トーナメント」を戦うために必要な技術 についてだ。 一見すると、すごく重要な話題ってわけではないと思うかもしれないが、私が色々と考え込んでみたところ、これには議論する価値がありそうだと感じられた。

プロプレイヤーの目線から話すと、私たちは最低でも1年に4回は「混合トーナメント」を戦っている。 プロツアーがスタンダードとドラフトの混合フォーマットになり、確かにゲームには大きな変化が生まれ、1つの試合への取り組み方もフォーマットに応じて変わった。

限りある資源

私自身の話をすると、多くの時間を費やしてコツを掴むまでは、常々リミテッドで苦戦してきた。 競技イベントのドラフトでそこそこ戦える自信がつくまでに およそ15年 もの時間がかかったのだ。 私は自分のことを “構築戦のプレイヤー” だと思っているが、リミテッドを理解することは構築よりもずっと難しいものの、その経験が構築戦の試合でも活きることはたくさんあった。

リミテッドの試合で直面した複雑な状況を思い浮かべてほしい。 なんとかしてその状況から抜け出さなければないが、それは構築戦で起こる複雑な局面よりもずっと難しいのだ。 もちろん、構築戦では自分のデッキに何が入っていて、自分にできる最善策が何かは知っていて当然なんだがね。 とりあえずリミテッドよりもずっと予想しやすいってことだ。

先週末にウィーンでは、とある招待制トーナメントが開催された。 それはプレイヤーチャンピオンシップという、 5つの異なるフォーマット (ドラフト、シールド、スタンダード、モダン、レガシー)によって競われるものだった。 たった16人しか参加できないイベントだったから、私はそれに参加することはできなかったけれど、ビデオカバレージがあったので、それを全部家から観戦したんだ。 今回の記事を書こうと思い立ったのも、そこで見かけた幾つかの面白い出来事がきっかけだった。

冷静なチャンピオン ラクァタスのチャンピオン

画面に映る16人の招待者は、様々なフォーマットの強豪と、 Valentin Mackl Immanuel Gerschenson といった数人のプロツアーの常連たちだった。 私には、そこに他よりも頭一つ抜けて上手な5人のプレイヤーがいるように思えた。 そして面白いことに、 最終的にその5人のうちの4人がイベントのトップ4を独占したのだった。

彼らは運が良かったから勝てたのだろうか? いや、そうは思わない。

彼らは他よりも強いデッキを持っていたから勝ったのだろうか? いや、それも違うだろう。

彼らが常日頃からあらゆるフォーマットに触っているからだろうか? いや、そんなことはない。 彼らは幅広いフォーマットに触れているわけではないからだ。

歯車襲いの海蛇 約束された終末、エムラクール 強大化 渦まく知識

彼らは どのゲームにも上手く取り組むことができて 、また、 リミテッドを熟達したレベルで習得していた から勝ったのだ。

私がこれをどうやって突き止めたのかというと、私はほとんどの試合を観戦して、その中でゲームへの取り組み方について、あらゆるプレイヤーがあらゆるフォーマットで多くの失敗を犯すのを見たからだ。

スタンダードではすべてのデッキが各々の戦略を押し付けあうため、余計なことをする “遊び” を作ってはいけない。 モダンは強力なゲームプランで最速を競うべきで、最初の数ターンで何もできないようなハンドはキープできない。 レガシーには多くの駆け引きがあるため、《渦まく知識》の使い方を筆頭に失敗する余地は残されている。 しかし、それと同時に自分を守ってくれる《目くらまし》《意志の力》のような救済がたくさんある。 これはそれぞれのフォーマットを端的に説明したもので、私がどうやって彼らのミスを一言にまとめたのか、ということでしかない。

すべてのフォーマットをプレイして、手にとったデッキを使いこなすことは、誰にだってできることではない。 それでも、このトーナメントでは多くの人ができていなかったが、デッキの動きやマリガンすべきハンドを理解しようとすべきなのだ。 一方で、”本物” のレガシープレイヤーがどれだけ上手に十八番を扱えるかを見られたことは喜ばしかった。 ある人は「白青奇跡」をミス一つせずにとんでもないスピードで回し、ある人は飼いならした「SCZ」を完璧に扱うだけでなく、この小さなイベントのためにアップデートしたデッキリストまで用意していたのだ。 スタンダードではガッチガチなグラインダーたちが各々の完璧を追求していたな。

そして、そこにはリミテッドが残っていた。 私はこのフォーマットが大好きで、これまでにたくさんプレイしてきた。 また、私はリミテッドを基本中の基本から理解していて、これまでに参加したすべてのリミテッドのトーナメントに向けて努力を重ねてきた。 このトーナメントを観戦して気がついたのは、 優秀なマジックプレイヤーを目指すにあたって、リミテッドを理解することがどれほど大事であるか ということだった。 カードの評価基準、ピックの優先順位、カード同士のシナジーの理解、どのようにゲームが進行するかという大局観など、ありとあらゆる細かいことまで合わせてだ。

16人の招待者のドラフトデッキのほとんどは、たとえ強いカードが入っていても、とても弱そうだった。 それは『カラデシュ』環境はシナジーに偏重しているにも関わらず、彼らのデッキにはシナジーの欠片も見当たらなかったからだ。 勝ち抜いた4名はこのリミテッド環境の特性を理解していたようで、リミテッドに関わる2種目で成功し、最終的にトップ4に入賞したのだった。

リミテッドの鍛錬を怠ってはならない

こうした現象はプロツアーでもよく見られる。 構築で9勝1敗の好成績を残したはずが、その名前はトップ8に見当たらなかったりするのだ。 もちろん弱いドラフトデッキを組んでしまうことだって、ダメダメなドローに見舞われることがあるのも承知している。 それでも、それだけの好成績を構築で残したならば、トップ8に入ってしかるべきなのだ。

私がこの話をしているのは、数年前までの私がまさにこれだったからだ。 そして、私はそのことを未だに悔やんでいる。 その頃はドラフトもまだ上手とはいえなかったが、今ではそれも改善された。 プロツアーにぶっ壊れたデッキを持ち込めることは滅多にないが、もし「カウブレード」を持ち込めたときには、それに見合うだけのリミテッドの実力も持っていたほうがいいのだ。 ワールド・マジック・カップについても同じことが言える。 すべてのプレイヤーは構築戦の予選を抜けてきているが、本戦で勝つためにはリミテッドも練習しなければならないのだ。

私は何も「リミテッドが下手だと、強いマジックプレイヤーにはなれない」と言っているわけではない。 ただ、「混合トーナメント」を戦うには必要な技術になる、というだけである。 もし君がレガシーやモダンにしか興味が無いならば、このアドバイスはあまり助けにならないかもしれないが、もし君がプロツアーを目指しているならば話は別だ。 君はもっとリミテッドをプレイして、その技術を磨けるだけ磨くべきである。 (あと、1年で最高に盛り上がるイベントである国別選手権がいつか戻ってくることを、私はまだ信じて待っている。)

さあ、今回の記事はここまでだ。 ここで話した内容が君たちのモチベーションアップに繋がったり、なにかしら見識が深まったならば幸いである。 それでは今年はこれで最後になるだろう。 良い年末年始を過ごしてくれ。 次の記事は来年になるな。 きっと『霊気紛争』についての雑感になると思う。

ここまで読んでくれてありがとう。 Oliver Polak-Rottman

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