「フロンティアというフォーマットは、まだまだ未知で、謎が多い」
使い慣れてしまったフレーズのように思われるが、今回のフロンティア神決定戦を始めとして、国内外で大会が数多く開かれるようになり、少しずつゲームは解明され、そして、また新たな謎を生みつつある。
海外でも盛り上がりを見せるフロンティアを楽しむために、どのようなデッキを使用すれば良いのだろうか? ここで、プロプレイヤーに話を伺ってみよう。
Big Magic所属、松本 友樹。
やっとデッキ出来た
— Yuki Matsumoto (@torauoo) 2017年1月8日
いつもの倍くらい時間かかった・・・><
当日の明け方3時にデッキを完成させた松本に、今回使用しているデッキの選択理由を伺おうとインタビューを申し込んだ。「夜中のツイート、見ましたよ」と伝えると、
松本「ギリギリでしたね。完成させて、そのまま寝てしまいました。デッキ名はシンプルに、『スゥルタイ昂揚』ですかね」
と、いつもの笑顔を見せながら答えてくれた。
松本がこのデッキを使用した理由。そこには、プロプレイヤーが見抜いた「フロンティアの最前線」があった。
■ フロンティアの環境を考えた
――「それでは早速なのですが、今回、このデッキを使用すると決めた理由をお聞かせ願えますか?」
松本「『スゥルタイ昂揚』、ということで、色的にはスタンダードで活躍している『黒緑昂揚』に青を加えた形です。ですが、単純に色を足したわけではありません。フロンティアの環境を考えたときに、この形が思い浮かびました」
――「環境を考えた、ですか」
松本「というのも、フロンティアの環境でも《密輸人の回転翼機》がとにかく強いんです。スタンダードよりもカードプールが広いのに、対応できる除去がほとんどない状態ですから。その中で、一番信頼できるのは《闇の掌握》だと考えて、4枚採用できるデッキを考えました。そうなると、当然黒が濃いものになりますよね」
――「《闇の掌握》は黒のダブルシンボルですから、かなり濃くなりそうですね」
松本「そうなんです。そこで『黒が濃くて、強いアーキタイプはなんだろう?』と考えたときに、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》を使える『昂揚』という答えにたどり着きました。そして、フロンティアということで《時を越えた探索》を使用することも視野に入ります」
■ なぜ、《時を越えた探索》なのか?
――「なるほど。やはり、《時を越えた探索》は使用したくなりますよね」
松本「なりますね。ですが、単純に『使えるから、強いから使う』というわけじゃないですよ? 自分が使用したいのももちろんありますが、相手に《奔流の機械巨人》で《時を越えた探索》をフラッシュバックされると、ほとんど勝てません。圧倒的にアドバンテージの差が生まれてしまいますからね。その差を埋めるためには、自分も青を使って《時を越えた探索》を使うか、『昂揚』を活かして《約束された終末、エムラクール》を使うしか選択肢がないんですよ」
――「もし《約束された終末、エムラクール》を使う場合は、スタンダードの『黒緑昂揚』に近い形になりそうですね」
松本「そうですね。私もそう考えてデッキを組んでみたのですが、《約束された終末、エムラクール》を現実的なターンで唱えるためには、カードタイプを散らすしかありません。ですが、実用的な組み合わせが思い浮かばなかったので、今回は青を足して《時を越えた探索》を使ってみよう、という結論になりました」
――「単純に『使えるから』ではなくて、『相手に使われた際の差が大きく出てしまうから』という理由なのですね」
松本「そのとおりです。当初、フロンティアは”《時を越えた探索》を使えるフォーマット”という印象が強かったのですが、今は《密輸人の回転翼機》が中心という印象ですね。とにかく、安全に除去できる呪文がフロンティアでも少ないんです。3ターン目に動き出す《密輸人の回転翼機》を止めるために呪文を唱えても《呪文捕らえ》がシャットアウトしてきますし、《ジェスカイの魔除け》や《アタルカの命令》などで除去を避けられてしまう可能性もあります。『アタルカレッド』のような速いデッキに対しては、《時を越えた探索》を唱えている暇がないこともありますからね」
■ スタンダードの10倍くらい強い
――「なるほど。現在のフロンティアでは《時を越えた探索》よりも《密輸人の回転翼機》を意識する必要があるわけですね」
松本「そうですね。今回のリストも《密輸人の回転翼機》を意識しています。対処手段が限られているので厳しいのですが、なんとか序盤を耐えて、《墓後家蜘蛛、イシュカナ》に繋げるプランです。《墓後家蜘蛛、イシュカナ》さえ出せれば盤面を止められるので、そこから《時を越えた探索》でアドバンテージを取っていくようなイメージです」
――「その辺りは、スタンダードに通じる部分も多そうですね」
松本「そうですね。ただ、フロンティアだからこそ輝くカードももちろんありますよ。たとえば《奔流の機械巨人》は、スタンダードの10倍くらい強い1枚です。フラッシュバックできる対象が段違いですから」
――「《時を越えた探索》もありますし、《残忍な切断》も強そうですね」
松本「強いですね。『探査』の都合上、《残忍な切断》は2枚に収めていますが、このカードが環境で一番強い除去だと思っています。元のマナ・コストは重いので、『探査』で使用するまでに準備は必要ですけどね。《時を越えた探索》を使わない、つまり青を使わないならば、4枚採用したいくらいです」
■ 『昂揚』と『探査』
――「『昂揚』と『探査』は、一見相反するようなイメージがありますが、その辺りはいかがですか? かなりバランスを取りづらそうな気がするのですが……」
松本「《約束された終末、エムラクール》を使うのであれば、難しかったでしょうね。ですが、このデッキならば4種類あるだけで良いんです。なので、まったく難しくないですよ。それに《墓後家蜘蛛、イシュカナ》と《ウルヴェンワルド横断》だけなので、『昂揚』達成が必要なターンは限られていますからね」
――「なるほど! 先ほど仰っていたとおり、『昂揚』を達成して《墓後家蜘蛛、イシュカナ》で盤面を固めてしまえば、後はほとんど気にしなくて良いんですね」
松本「そうですね。その後は《時を越えた探索》のためにも『探査』が優先です。それから、その頃にはマナが豊富になっているはずなので、自由度はかなり高いですよ」
■ 松本式、フロンティアの楽しみかた
松本「やはりおすすめは、スタンダードで活躍したデッキを改良することです。このデッキも『テーロス』のスゥルタイ・コントロールを参考にしています」
――「なるほど。過去に活躍したデッキを、フロンティア版にアップデートするようなイメージでしょうか」
松本「そうですね。活躍したということは、解説も多いはずです。初心者の方は、それを参考にすると良いと思います。今は使わない、使えないカードがあったとしても『どうしてこのカードが採用されていたのか』が分かれば、自分の手で違うカードに変更することもできますよね。『これは序盤で頼りになる』『これはフィニッシャー』という点が理解できれば、独自の調整を施したデッキで、結果を残せると思いますよ」
――「先ほど仰っていたとおり、”《時を越えた探索》のフォーマット”というイメージも変わってきて、さらにメタゲームが動いて行きそうですね」
松本「そうですね。『霊気紛争』が発売されると、もっと環境が動くと思いますよ。注目しているカードも多数あるので、早く試してみたいですね」
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