時刻は20:30分を過ぎたところ。フロンティア神決定戦もスイスラウンドが終了し、準々決勝が始まる。
トップ8に残り、この席に座るのは松浦 拓海(アタルカレッド)と堀 佳祐(《パンハモニコン》エルフ)。
スイスラウンドを勝ち抜いた両名。緊張した面持ちで言葉を交わし、試合の開始を待つ。
記念すべき初代フロンティア神の座へと近づく第一歩。長い戦いが始まる。
Game 1
堀は《導路の召使い》、《巨森の予見者、ニッサ》とスタート。対する松浦も《密輸人の回転翼機》、《軍族童の突発》と動き出し、互いに盤面を構築していく。
《導路の召使い》、そして《群れのシャーマン》と堀が動いたことでライフが大きく動く。《巨森の予見者、ニッサ》の攻撃は、2体のトークンが受け止めてターン終了。
松浦はゴブリン・トークンを《密輸人の回転翼機》に搭乗させて攻撃を繰り返す。さらに《軍族童の突発》を唱えたことで、盤面に並ぶトークンは4体に。
堀が追加した《群れのシャーマン》によるダメージ、さらに《群れのシャーマン》と《導路の召使い》の攻撃を松浦は静かに通すと、次のターンにはトークン3体と《密輸人の回転翼機》によって攻撃。相手のブロックを意に介することなく、《アタルカの命令》、そして《強大化》を合わせて、1ゲーム目を速やかに終わらせた。
松浦 1-0 堀
松浦の使う「アタルカレッド」は、今大会の最大勢力だ。【メタゲームブレイクダウン】によれば、24名が使用し、10%以上の使用率となったようだ。
ゴブリン・トークン1体の力は小さいが、並べることで《アタルカの命令》は一撃必殺となり、《かき立てる炎》を唱える助けともなる。さらに、『カラデシュ』で登場した《密輸人の回転翼機》が上空からの攻めを可能とし、トークンのみでは打開できなかった場面も難なく攻略することができる。
「かつて活躍したデッキが新戦力を得て、再び活躍する」。フロンティアの特徴とも言えよう。とは言え、それだけでは終わらないのがこのフォーマットの魅力だ。デッキビルダーたちの手によって、「かつて見たこともない新たなデッキ」も活躍している。
堀が使う「《パンハモニコン》エルフ」は、その代表例だろう。フロンティアに存在するエルフたちの力を結集させ、強力なETB能力を中心にアドバンテージを稼ぐ姿は、かつてのスタンダードでは見ることができなかった光景だ。
1ゲーム目は、かつてのトップメタが力を見せつける展開だった。その力を、エルフたちは凌ぎ切ることができるのか?
Game 2
再び先手の堀は《エルフの神秘家》、《巨森の予見者、ニッサ》、そして《エルフの幻想家》と順調に展開。
松浦も《ドラゴンの餌》、《軍族童の突発》と繋げて、5体のトークンを並べる。相手の攻撃をトークンで受けつつ、《ドラゴンの餌》でさらにトークンを並べて、戦線を維持。
松浦 拓海 |
しかし《群れのシャーマン》によるダメージが、膠着した戦線を通り抜けて松浦に突き刺さる。さらに唱えられた《苦痛の公使》によってトークンが一掃されるかと思われたが、《アタルカの命令》で凌ぎ切る。
松浦は《ケラル砦の修道院長》で戦力を増強。堀の唱えた《光り葉の将帥、ドゥイネン》を《かき立てる炎》で除去し、さらに《軍族童の突発》を唱えて、トークンは8体に。
堀は《光り葉の将帥、ドゥイネン》《導路の召使い》を、対する松浦は《鐘突きのズルゴ》を唱えて、地上の戦況は膠着。互いにドローするのみでターンを終える。
松浦が《密輸人の回転翼機》で上空から攻めることを選択すると、堀はさらに地上の戦力を増強することを選ぶ。
エンドフェイズに唱えられたのは、《召喚の調べ》。《森林の怒声吠え》が《群れのシャーマン》を引き連れ、一挙に5点のダメージを叩き込む。さらに《難題の予見者》を唱えて、松浦の手札は《山》と《樹木茂る山麓》のみになった。
堀の盤面には、《エルフの神秘家》、《群れのシャーマン》2体、《森林の怒声吠え》、《光り葉の将帥、ドゥイネン》、《難題の予見者》。
対する松浦の盤面にはゴブリン・トークンが8体と《鐘突きのズルゴ》。そして、搭乗を待つ《密輸人の回転翼機》。
盤面は膠着しているが、このターンの攻撃は堀が権利を持つ。ライフ差も《光り葉の将帥、ドゥイネン》が一度攻撃を仕掛ければ、あっという間にひっくり返せる状態だ。しかし、安易な攻撃は命取りとなることも事実。何度も確認しながら、じっくりと盤面を指差し、打点を計算する。悩んだ末、《エルフの神秘家》と《難題の予見者》以外の5体で攻撃を仕掛けることを選んだ。
攻撃クリーチャーの指定が終わり、次に悩むのは受けて立つ松浦だ。ひとまず《密輸人の回転翼機》を起動し、トークンにブロックを指示。
互いの盤面を大きく動かす総力戦。結果、松浦の盤面に残ったのは、トークン2体と《鐘突きのズルゴ》のみ。更なる戦力が欲しいところだが、戦場に《僧院の速槍》を加えるに留まった。
ゴブリンとエルフ。ファンタジー作品でお馴染みの種族が、盤面に並び続ける。作品によっては人間と共存したり、排他的であったりする彼らだが、マジックの対戦においては、両者はプレインズウォーカーに力を貸す”頼れる仲間”である。
また、「彼ら1人(匹?)ずつの力は小さい」ということも、多くの作品で共通することだ。ここで対戦する両者も彼らを”並べること”でアドバンテージを稼いでいくわけだが、それと同時に「彼らを超越する強大な存在」が物語を大きく動かすことも、共通すること、であろう。
堀は盤面に並んだクリーチャーを眺めて一呼吸。そして、すべてのクリーチャーを生け贄に捧げて《ウェストヴェイルの修道院》を起動し、《不敬の皇子、オーメンダール/Ormendahl, Profane Prince》を君臨させる。
《難題の予見者》が墓地に落ちたため、松浦は1ドローが可能となった。望みを賭けたドローは……《山》。
松浦 1-1 堀
Game 3
3ゲーム目の出だしは、実に慌ただしい。松浦が《僧院の速槍》、《密輸人の回転翼機》と動き出せば、堀は《エルフの神秘家》から《再利用の賢者》と繋げて《密輸人の回転翼機》を除去。松浦も《稲妻の一撃》で《エルフの神秘家》を除去しながらアタックを繰り返す。
堀が《巨森の予見者、ニッサ》で土地を伸ばすことを確定させると、松浦は《軍族童の突発》。しかしこのトークンは、《苦痛の公使》によって一掃される。
ターンを受けた松浦。ゆっくりと手札に視線を落として思考を巡らせる。
《ケラル砦の修道院長》を唱えて、公開されたライブラリートップは《密輸人の回転翼機》。貴重な航空戦力を盤面に加えて、ターンエンド。
ここからゲームは大きく終盤戦へ。《森林の怒声吠え》が《再利用の賢者》を引き連れ、さらに《ドゥイネンの精鋭》が唱えられたことで、堀の盤面が強固になる。
堀 佳祐 |
《再利用の賢者》《苦痛の公使》《エルフの神秘家》《導路の召使い》《森林の怒声吠え》《ドゥイネンの精鋭》、そしてエルフトークン。7体のクリーチャーが並ぶ、盤石の構えだ。
《密輸人の回転翼機》でライフを削って抵抗を続けながら、松浦は《ケラル砦の修道院長》を追加。公開された《焙り焼き》で《森林の怒声吠え》を除去して戦力を削る。
ターンを受けた松浦。並べた土地から《ウェストヴェイルの修道院》を手に取り、戦場の中央へ。このまま裏返すことは決定済みのようだ。あとは、場に残すクリーチャーを決定するのみ。何度も並び替えて、最良の生け贄を選び出す。
再び降臨する《不敬の皇子、オーメンダール/Ormendahl, Profane Prince》。ライフを大きく削り、ゲームに終止符を打つ。
松浦 1-2 堀
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