ある日、晴れる屋トーナメントセンターに、一通の英語で綴られたメールが届いた。
海を越えて、フィリピンから送られてきたこのメールが、今回の話の出発点である。
世界中でプレイされている、マジック:ザ・ギャザリング。カードの能力は世界共通であり、多数の言語で印刷され、世界中の人と言葉の壁を越えて楽しむことができる。言わば、一種の”コミュニケーション・ツール”だ。
日本代表としてワールド・マジック・カップに挑む、Hareruya Prosの津村 健志(右) |
海外から問い合わせが来ることも少なくないのだが、“大会の協賛”、しかも”海外”というのは珍しい。晴れる屋にとっても初めてのことだ。早速、オーナーである齋藤 友晴にメールについて相談してみると、
「海外の大会に協賛? 場所は、フィリピン……よし、やってみようよ」 |
と、即断即決。迷うことなく、晴れる屋初の海外への協賛が決定した。あまりの速さに驚いていると、齋藤はその理由について話してくれた。
「フィリピンはマジックが盛んな場所で、WMCQ(ワールド・マジック・カップの代表を決める大会)参加者が世界最多なんだよね。その盛り上がり方は世界中が注目しているし、晴れる屋が協賛することでさらに盛り上げられるならば、やってみる価値があるはずだよ」 |
マジックをもっと盛り上げることが、晴れる屋の理念。齋藤は【過去のインタビュー】でそう語ってきたが、今回の行動もその理念に基づいている。
フィリピンには世界中から注目が集まっている。フェリックスさんに協賛の旨を伝えるとともに、「フィリピンのマジック事情」についても伺ってみることにした。
■ フィリピンのマジック事情
フェリックス「フィリピンにはたくさんの島があり、その中でも、首都マニラがあるルソン島が一番大きい島なのですが、ここにはマジックのショップが複数あります。地域ごとにコミュニティがあり、各ショップのオーナーが、マジックを盛り上げるために様々な努力をしているんです。私自身もその一人なのですが、『もっと地域の、そしてフィリピンのマジックを盛り上げたい!』という思いは、常に頭の中にありました」
そういった思いに基づいて立ち上げられたのが、The Pinoy Plainswalkers Seriesとのことだ。
フェリックス「予選と本戦がある大規模な大会を主催し、地域の大会を”予選”とすることで、マジックをもっと盛り上げることができると考えたんです」
■ 大会の成功、そしてこれから
今回晴れる屋に協賛の依頼を申し出たことも、「マジックを盛り上げたい」というフェリックスさんの強い願いに基いている。冒頭のメールにも記されているとおり、今回開催されるのはFinalsと称された”本戦”。プレイヤーの目標であると同時に、彼自身にとっても特別なものだ。
フェリックス「これまでやってきたことが実った記念大会です。この特別なFinalsを盛り上げるためには、これまでとは一線を画する“特別な要素”が必要だと思い、様々なことを考えました」
その上で、彼が選んだ特別な要素こそが”海外のショップである晴れる屋の協賛”であり、そのために送られたのが冒頭のメールなのだ。
今回は、そのメールがきっかけとなり、晴れる屋からはTシャツやパーカー、そして各種サプライが提供された。
地域のプレイヤーを育て、各地のショップに大会を提供し、フィリピンのマジックを盛り上げた彼は「世界のマジック」に視線を向けている。
フェリックス「私の夢は、この大会をStarCityGames Openのようなレベルの大会にすることです。それによってフィリピンの、そして、世界のマジックをさらに盛り上げられる、と考えています。SCGのように世界から注目を集める大会にするためには、もっと様々なことに挑戦する必要があります。今回、海を越えて協賛をしてもらうという非常に大きな一歩を踏み出しました。今後も様々なことを考えて、この大会を大きくして行きたいと思います」
■ とことんマジックを楽しめる世界を目指して
大会は大成功を収め、【カバレージ】も公開された。写真からも、その盛り上がりは伝わってくる。そして、それは齋藤の耳にも届いた。そのカバレージを目にしながら、齋藤は今後の晴れる屋について語った。
「これからは、国内外を問わず『世界中に、とことんマジックを楽しめる場所を作りたい』と思っているんだ。そのためにできることは、プレイヤーをサポートしたり、新店舗を作ったり色々とあるけれど、今回のように現地のショップを応援することも、楽しめる場所を作ることに繋がるよね」 |
齋藤は、フェリックスさんから送られてきたメールに再び目を通して続ける。
「フェリックスさんとはFacebookでも話をするようになったんだ。メールの文面からも伝わってきたんだけど、彼からは『楽しめる場所』を作れる熱意を感じるよ。好きなんだよね、こういう“熱さ”を持っている人。これまでもマジックを盛り上げる仲間たちと一緒に歩んで来たけど、海の向こうにまた一人仲間が増えたことが何よりも嬉しいことだね」 |
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— Hareruya English (@hareruyaEnglish) 2017年2月23日
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「国際eパケットを始めたことで、これまで以上にマジックを通じて日本と海外が繋がる機会は増えると思うんだ。だから日本だけじゃなくて、世界中を盛り上げるためにやれることをやっていきたいね。フェリックスさんのような熱意をもった人をサポートしたり、出店するのもいいかもしれない。世界中の仲間たちと協力して取り組んでいくつもりだよ」 |
「世界中に、とことんマジックを楽しめる場所を作りたい」
この言葉は、トッププロとして世界を旅しながら戦いを続ける齋藤だからこそ語れる言葉だろう。彼が旅して見てきた世界は広く大きい。しかし、フィリピンからのメールをきっかけに、一歩だが、確実に夢に近づいたようだ。
マジックには人と人を繋げる不思議な魅力がある。
その力は遠く離れたフィリピンと日本を繋いだ。この”新たな繋がりの輪”が今まで以上に大きな力を生み、いつか世界を覆うことだろう。
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