プロツアーまで、あと一勝。
憧れだった舞台に指がかかって、あとは身体を引き上げるだけ……という登頂の際。
そこではほかの大会、フライデーナイトマジックやGPTなどではなかなか味わえない、張り詰めた緊張感がある。
トップ8の中では唯一の黒緑コンストリクター使いとなった三田と、トップ8に6人を輩出した最多勢力・4色コピーキャットを駆るエンドウ。
いま、2人の胸の内に去来するものが何なのか。それを窺い知ることはできない。
だがおそらくは互いに、「勝ちたい」という強い思い、逸り、決意。そして不安の裏返しとしての高揚がある。
勝負の神がもしいるのならば、それをこそ最も尊ぶであろう気概。
それを纏った2人が、やがて7枚を繰る。そして。
プロツアー地域予選、最後のゲームが始まる。
Game 1
先手ワンマリガンの三田の初動は《沼》2枚から《光袖会の収集者》。返す《導路の召使い》を《致命的な一押し》して一見好調な滑り出しだが、3枚目のセットランドがない。さらに続く《つむじ風のならず者》の返し、追加のドローまで含めてもセットランドがなく、《闇の掌握》を《つむじ風の巨匠》に打ってアタックするものの、スタックで飛行機械トークンが生成。なおも返すターンに《ならず者の精製屋》が登場すると、やむなく《歩行バリスタ》を「X=1」でプレイして飛行機械トークンを打ち落とし、《光袖会の収集者》だけで果敢に殴り続けるほかない。
《つむじ風の巨匠》と《ならず者の精製屋》。2種8枚の3マナ圏が「出し得」なのが4色コピーキャットの強みだ。事故気味で動きが芳しくない三田の無理攻めを見てとったエンドウは、《光袖会の収集者》を《蓄霊稲妻》で処理し、《ならず者の精製屋》で逆に攻撃しにいく。
ここで三田が3枚目の土地を引き込むが、残念ながら《沼》。やむなく《歩行バリスタ》を「X=1」でプレイし、コンボだけは決めさせない格好を作るが、返すターンにエンドウがプレイしたのは《実地研究者、タミヨウ》!
「+1」能力を起動されると、「出し得」の《ならず者の精製屋》がさらに「殴り得」の状態となり、エンドウの手札が膨れ上がっていく。
そこからエンドウが《ならず者の精製屋》《ならず者の精製屋》と立て続けに並べると、三田は「出し得」のクリーチャーたちに殴り切られてしまった。
三田 0-1 エンドウ
Game 2
《巻きつき蛇》に対して《蓄霊稲妻》で返したエンドウだったが、さらなる《巻きつき蛇》への回答がなく、《ならず者の精製屋》をプレイするにとどまる。そして《巻きつき蛇》が生き残ったということは、三田の次なるアクションは……やはり《ピーマの改革派、リシュカー》。4/5と4/4が瞬時に盤面に登場する上にマナも伸びる という、この暴力的なシナジーが黒緑コンストリクターの強みだ。
それでもエンドウは、返すターンにどうにか《蓄霊稲妻》で4/5の《巻きつき蛇》を処理するのだが、4/4となった《ピーマの改革派、リシュカー》が止まらない。《つむじ風の巨匠》で時間を稼ぐ姿勢を見せるも、《闇の掌握》で2体の飛行機械トークンだけを残してきっちり排除される。
三田 亮一 |
さらに三田は2枚目の《ピーマの改革派、リシュカー》をプレイ、「+1/+1カウンターを1個乗せる」という目的のためだけに使い捨てて《ピーマの改革派、リシュカー》を5/5にする。このプレイが好手で、返すターンのエンドウのプレイは《反逆の先導者、チャンドラ》。「+1」でターンを返すほかない。
続くターンは5/5の《ピーマの改革派、リシュカー》のアタックを飛行機械トークンのチャンプブロックで凌ぐものの、エンドウが《サヒーリ・ライ》をプレイしたエンド前に《殺害》で唯一のブロッカーである飛行機械トークンがいなくなると、《風切る泥沼》と合わせて打点は致死量。エンドウは、3本目に進むことを選択した。
三田 1-1 エンドウ
Game 3
後手の三田が《過酷な精査》でエンドウの手札を責める立ち上がり。《霊気拠点》《霊気拠点》《チャンドラの誓い》《蓄霊稲妻》《守護フェリダー》《つむじ風の巨匠》というラインナップから《守護フェリダー》を抜き去り、イージーウィンを許さない。続けて送り出した《巻きつき蛇》はエンド前の《蓄霊稲妻》で予定調和で処理されるものの、エンドウがトップデッキした《サヒーリ・ライ》は《破滅の道》で対処し、的確な応手を見せる。
ここで《霊気拠点》のエネルギーが尽きて《つむじ風の巨匠》が出せないエンドウは《尖塔断の運河》タップインでターンを返すことになり、攻守が入れ替わる。送り出したのは《光袖会の収集者》×2。対して《チャンドラの誓い》と《つむじ風の巨匠》の2アクションで対応するエンドウだが、残り手札が少ない。
一方三田も《巻きつき蛇》をプレイし、《つむじ風の巨匠》がなけなしのエネルギーでトークンを生成したところで《致命的な一押し》でターンが回ってくれば追加ドローできるだけのエネルギーを確保する……のだが、エンドウも《反逆の先導者、チャンドラ》で食い下がる。
エンドウ タカヒロ |
ここまで互いにアドバンテージをとるカードがなく、手札はどちらも1枚。《巻きつき蛇》と《つむじ風の巨匠》がにらみ合う場で、この《反逆の先導者、チャンドラ》が決定打になると思われた。
しかし。
この局面で三田がプレイしたのは《豪華の王、ゴンティ》!貴重なアドバンテージ源、かつ《反逆の先導者、チャンドラ》へのアタッカーを確保しつつ、このターンは裏向きのカードを見せずにターンを返す。
エンドウも《反逆の先導者、チャンドラ》の「+1」能力で《つむじ風の巨匠》をめくる……が、戦場には《霊気拠点》が3枚もあるのにエネルギーが尽きており、色マナが出ずにプレイできない。4色の代償か、マナベースがエンドウを苦しめる。やむなく2枚目の《反逆の先導者、チャンドラ》を出し直し、《豪華の王、ゴンティ》を「-3」能力で除去するのみ。
三田のターン。はたして《豪華の王、ゴンティ》で追放したカードは……
《実地研究者、タミヨウ》!1ゲーム目で三田を苦しめたプレインズウォーカーが、今度は三田を支援する心強い味方となる。さらに加えて2枚目の《豪華の王、ゴンティ》。
エンドウは3枚目の《反逆の先導者、チャンドラ》の「+1」と《チャンドラの誓い》の2点で《実地研究者、タミヨウ》を落とすが、ここで三田が引き込んでいた《致命的な一押し》によって、エンドウの唯一のブロッカーである《つむじ風の巨匠》を除去されてしまう。
ダメ押しに《豪華の王、ゴンティ》によって追放されていた《つむじ風の巨匠》まで追加されると、高まったクロックを前に、エンドウはもはやサヒーリコンボを決めるしかない。
三田としても手札を全て使い切り、エンドウの引き次第に委ねられた状況。
最後のドローをゆっくりと確認したエンドウは……
仕方ないといった表情で、「負けました」と告げたのだった。
三田 2-1 エンドウ
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