スタンダードとモダンにおける進化 ~死の影ジャンドの使い方~

Oliver Polak-Rottmann

Translated by Takumi Yamasaki

やあ!私の記事へようこそ。 【前回の記事】からそこまで時間がたっていないので、もし私の記事を読んだという方は、私がグランプリ・バンクーバー2017に参加したことに気付いているだろう。 前回は、このグランプリ前ということもあって情報が出回らないためにデッキリストを公開しなかったんだ。 私は今回使用したデッキにとても好感触を抱いているよ。

モダン環境における進化:《死の影》ジャンド

私が今回使用したデッキは「《死の影》ジャンド」だ。基本的にほぼ同じデッキリストのものが、この大会で優勝を納め、更にはTop4に2名ものプレイヤーが入賞している。 いまだ十分に開拓されていないこのモダンフォーマットにおいて素晴らしい結果を残したのだ。そして特筆すべきは、このデッキを使用したプレイヤーがごくわずかということである。

私自身11-4というあまり満足できる結果ではないが、賞金とプロポイント2点を獲得することが出来た。なかでもこのプロポイントを得るために、最終ラウンドで対戦したAlexander Hayneとの試合は、この結果に見合う素晴らしいものだった。

私はアメリカ勢が使用したデッキリストの内容は全く知らなかったのだが、結局のところ私のリストとほとんど同じもののように見えた。 それでは、私が使ったデッキをみてみよう。


Oliver Polak-Rottmann《死の影》ジャンド」
グランプリ・バンクーバー2017

1 《森》
1 《沼》
2 《血の墓所》
1 《神無き祭殿》
1 《草むした墓》
1 《踏み鳴らされる地》
4 《血染めのぬかるみ》
4 《新緑の地下墓地》
2 《吹きさらしの荒野》
1 《樹木茂る山麓》

-土地 (18)-

4 《死の影》
4 《タルモゴイフ》
4 《通りの悪霊》

-クリーチャー (12)-
4 《ウルヴェンワルド横断》
4 《タール火》
4 《思考囲い》
3 《コジレックの審問》
3 《ティムールの激闘》
3 《突然の衰微》
1 《集団的蛮行》
2 《コラガンの命令》
1 《四肢切断》
4 《ミシュラのガラクタ》
1 《最後の望み、リリアナ》

-呪文 (30)-
4 《致命的な一押し》
2 《大爆発の魔道士》
2 《外科的摘出》
2 《集団的蛮行》
2 《未練ある魂》
1 《戦争の報い、禍汰奇》
1 《改革派の結集者》
1 《幽霊街》

-サイドボード (15)-
hareruya


まずこのデッキがどのように進化したのかを少し話したい。もとは「《死の影》アグロ」または「スーサイドZOO」とも呼ばれていたデッキだ。 《野生のナカティル》《僧院の速槍》などの軽量クリーチャーや《ギタクシア派の調査》《変異原性の成長》《強大化》といったパンプスペルやフリースペルなどを採用していた。

野生のナカティル僧院の速槍変異原性の成長

今では当たり前のように採用されている《タルモゴイフ》は前の型では遅く、「探査」スペルである《強大化》+《ティムールの激闘》とのコンボでライフを削りきるこのデッキがメインとするゲームプランにおいて、相性が良いものではなかったのである。

禁止改訂前ではこのデッキは多くの勝利を納め、モダンにおいてベストデッキの一つであると考えられていた。 かつてのシーズン末には、プロツアー・サンディエゴ2010優勝者のSimon Gortzenといったドイツ人プレイヤーたちが、このデッキを少し遅めに安定させようと調整していたのだ。 惜しくもSimonは他のPT権利をあと少しのところで獲得できたのだが、タイブレークで負けてしまったのである。 だが、彼のデッキリストは私たちが今日目にしているデッキと非常に良く似ているものだった。

禁止改定を受けて、このデッキにおいて最も強いカードの一つである《ギタクシア派の調査》はこのフォーマットを去ることとなってしまった。 そのため、このフリースペルなしで《死の影》が環境に存続できるのかは誰にも分からなかったのである。 しかし、今回のグランプリでこのデッキはまだ生きていると確実に証明されたのだ…… ゲームプランを少し変えなければいけないことと、もはや2ターンキルが不可能になったことは受け入れてもらうしかないがね。

さて、デッキの詳細やサイドボードについて触れる前に話をしよう。 私は2人のオーストリア人であるMark MuhlbockとゴールドレベルプロのImmanuel Gerschensonに、このデッキが今のモダンにおいていかに素晴らしいかを説得され、一緒に調整をした。

死の影タルモゴイフウルヴェンワルド横断

このデッキには2つの戦略がある……1つは自身のライフを削ることで強くなる《死の影》をプレイし、押し切ってしまうこと、2つ目は《ウルヴェンワルド横断》でクリーチャーをサーチしたり、《タルモゴイフ》のサイズを上げ蹂躙できるように「昂揚」を達成することだ。 現在メインデッキではこれら以外にクリーチャーを使用していない。しかし《ゴーア族の暴行者》を1枚加えることで、サーチが可能な《ティムールの激闘》のような役割を果たすことが出来る。または《改革派の結集者》を採用することでロングゲームに対して強くすることも可能だ。

《通りの悪霊》を採用してはいるがクリーチャーにカウントすることはない。素でキャストすることは滅多にないだろう。 トーナメント中、時に《ウルヴェンワルド横断》からこのカードをサーチし、「サイクリング」することで《死の影》のサイズを上げることがよくあった。 覚えておくと良いだろう。

思考囲いコジレックの審問タール火

そして、これら2つの戦略に加え「ジャンド」のハンデスと除去パッケージを搭載している。 7枚もの1マナハンデス呪文はこのフォーマットにおいてどんなデッキよりも多く採用されており、前方確認とゲームプランを明確にする助けになる重要なものだ。

一つ補足だが、ハンデス以外のカードは1ターン目にプレイできないものが多い。《タール火》もその中の一つだ。私はこのカードがモダンにおいて良いカードなのかそうでないのか、まだよくわからないのだが、このデッキには必要そうだ。「昂揚」の手助けにも《タルモゴイフ》をパンプすることにも一役買っている。これは特に《ティムールの激闘》がハンドにあるときに関わってくることだ。

これらを駆使し、自身のライフを削り墓地も肥やしつつ対戦相手を倒すのである。一見、複雑でチャレンジングであるように思えるかもしれないが、特に最初の1、2ターン目はゲームに勝利するための非常に重要なターンと言えよう。

ミシュラのガラクタ通りの悪霊

ここでいくつかプレイ中のコツを教えよう。これらは君にとって一度も経験したことのない戦略だろう。まず最初に最も重要なカード、《ミシュラのガラクタ》についてだ! このカードを起動する場合、自分または対戦相手どちらかのライブラリートップを確認するか決めなければならない。

私は大抵、対戦相手のドローしたカードを知る方が大切だと思っていたが、このデッキにおいてそれは違う。このデッキには《通りの悪霊》とデッキをシャッフルするカードが数多く入っている。 そのため《ミシュラのガラクタ》は自身のドローを出来るだけ良いものとするために自分を対象にすべきだ。もし不要と感じたカードだったらフェッチを切ればいいし、必要であれば《通りの悪霊》やこのカードでそのままドローすればいい。

次に、対戦相手を対象とし起動する場合は相手のアップキープに起動しよう。 なぜなら、自分のターンでも相手のターンでも起動すれば同じカードを見ることになるのだが、相手のアップキープに起動するとドローするのは次の自分のアップキープのため、対戦相手のハンデスから、次に引くカードを守ることが出来るからだ。

このデッキを使う上で自分と対戦相手のライフを常に確認することはとても重要だ。たった1点のライフがこのデッキにおいて普段のマジックよりも非常に重要なものとなる。 もし《タルモゴイフ》をコントロールしているなら墓地のカードを必ず確認しよう。また、《死の影》がいる場合も対戦相手をいつ倒すことができるのか計算するのだ。 さらに《ティムールの激闘》は対戦相手のブロッカーを貫き1ターンでゲームを決めるスピードがある。「獰猛」は気にせずとも達成できているだろう。

上記のリストにあるカード以外にも噛み合うものがいくつかある。 今なら私は《ティムールの激闘》1枚を《ゴーア族の暴行者》にし、《タール火》を2枚目の《最後の望み、リリアナ》へと変更するだろう。その他候補として、とてもユニークな《有毒の蘇生》や私が好きな《四肢切断》の2枚目をサイドボードに採用したい。このカードは《致命的な一押し》《突然の衰微》で除去することが難しいエルドラージや《黄金牙、タシグル》に有効だ。 サイドボードは、《幽霊街》を抜いて《大爆発の魔道士》を加えることをお勧めするよ。

サイドボード ガイド

ここでは、簡潔に主要なマッチアップにおけるサイドボードプランについて教えよう。 相性が悪いものに関しては、これが正しいか分からないが恐らく有効なものだと考えている。

対 バーン

Out

思考囲い 思考囲い 思考囲い 思考囲い
最後の望み、リリアナ 四肢切断

In

致命的な一押し 致命的な一押し 致命的な一押し 致命的な一押し
集団的蛮行 集団的蛮行

このマッチアップは恐らく最悪なものだ。ただお互いのドローが噛み合うかで変わってくる。 バーンのメインデッキには《死の影》への解答がないため、彼らは切羽詰まるように出来るだけ早く君を倒そうとプレイしてくる。 《タルモゴイフ》は少し遅いがタフな存在だ。追加の《集団的蛮行》は勝率を上げてくれて、このマッチアップにおいてベストなカードであろう。 サイドボード後は《跳ね返す掌》に気を付けることだ。対戦相手に攻撃を仕掛ける前に《集団的蛮行》《コジレックの審問》で常に安全確認をしよう。

対 エルドラージトロン

Out

コジレックの審問 コジレックの審問 コジレックの審問 最後の望み、リリアナ
タール火 タール火 タール火 集団的蛮行

In

外科的摘出 大爆発の魔道士 大爆発の魔道士 大爆発の魔道士
外科的摘出 致命的な一押し 致命的な一押し 致命的な一押し

このマッチアップはトリッキーなものだが、私は問題ないと考えている。ただ一つ、マナを十分に注がれた《歩行バリスタ》に負けないよう気をつけることだ。 《外科的摘出》が有効なものなのか私には分からないが、サイドアウトしたカードよりはマシだろう。

対 黒緑X

Out

思考囲い 思考囲い 思考囲い 思考囲い
四肢切断 ティムールの激闘

In

致命的な一押し 致命的な一押し 致命的な一押し
未練ある魂 未練ある魂 改革派の結集者

このデッキ相手は基本的にミラーマッチだがクリーチャーのサイズはこちらのほうが大きい。 《闇の腹心》を除去することを念頭に置き、こちらのクリーチャーはハンデスでサポートしてあげよう。《最後の望み、リリアナ》《コラガンの命令》《改革派の結集者》などはこのマッチアップにおいて切り札級の活躍をする。

対 ドレッジ

Out

コラガンの命令 コラガンの命令
四肢切断 突然の衰微

In

外科的摘出 外科的摘出
未練ある魂 未練ある魂

このマッチアップでは、可能な限り攻撃的に振る舞うべきだと考えている。よってこの程度のサイドで十分だろう。

対 グリクシスコントロール

Out

突然の衰微 突然の衰微 突然の衰微 ティムールの激闘
コジレックの審問 コジレックの審問 コジレックの審問

In

外科的摘出 外科的摘出 未練ある魂 未練ある魂
集団的蛮行 集団的蛮行 改革派の結集者

「黒緑」とはとても異なるマッチアップだ。 手札破壊や除去など、こちらに干渉するカードがかなり多く、ジャンドが繰り出すクリーチャーより、除去が難しい《黄金牙、タシグル》などをプレイしてくる。

スタンダード環境における進化:「ティムール《電招の塔》

最後にスタンダードの話をしよう。 先週グランプリ・ユトレヒト2017が開催されたが、メタゲームもデッキも今までとは少し違うものだった。 「マルドゥ機体」が再び優勝したのだが、プロツアー『霊気紛争』の時とは全く異なったもので、メインデッキに採用された《歩行バリスタ》やサイドボード後には沢山のプレインズウォーカーや「誓い」を入れることによって「コントロール」に姿を変えるのである。

電招の塔奔流の機械巨人

では、私が再び使用した「コントロール」デッキについて話そう。このトーナメントの前に《電招の塔》《奔流の機械巨人》を使った何か違う色のデッキをプレイしたかったのだが、幸運にもマスター八十岡翔太が「ティムール《電招の塔》」を使用し、マジックオンラインでリーグ5-0を成し遂げていたのだ。彼がひとたびデッキを回せば世界中に知れ渡ることとなる。私は彼のデッキを調整し、今大会で12-3の20位で終えることが出来た。


Oliver Polak-Rottmann「ティムール《電招の塔》
グランプリ・ユトレヒト2017

5 《森》
1 《島》
1 《山》
4 《霊気拠点》
4 《植物の聖域》
4 《尖塔断の運河》
2 《伐採地の滝》

-土地 (21)-

3 《守られた霊気泥棒》
4 《ならず者の精製屋》
3 《奔流の機械巨人》

-クリーチャー (11)-
4 《霊気との調和》
1 《ショック》
4 《蓄霊稲妻》
3 《予期》
2 《焼夷流》
2 《否認》
1 《自然廃退》
2 《虚空の粉砕》
1 《不許可》
4 《天才の片鱗》
1 《粗暴な排除》
4 《電招の塔》

-呪文 (28)-
3 《つむじ風の巨匠》
2 《儀礼的拒否》
2 《払拭》
2 《否認》
2 《コジレックの帰還》
2 《慮外な押収》
1 《自然廃退》
1 《不許可》

-サイドボード (15)-
hareruya


基本的には「青赤コントロール」に少しの緑をタッチしたものだが、こうしたことで従来とは異なった変化を生んでいる。 《電招の塔》がある時の《霊気との調和》はまるで《稲妻》のような働きをする。さらにはデッキの中の土地を圧縮してくれるのだ。21枚というのは少なく感じたが簡単に直すことが出来る。

このデッキには1つ噛み合っていないカードがある。それは《ならず者の精製屋》だ。このカードにはとても失望し全てのマッチアップにおいてサイドアウトしていた。いま私はこの4枚の枠を《島》《予期》《慮外な押収》《つむじ風の巨匠》に変えている。それに加え、《粗暴な排除》を3枚目の《否認》《虚空の粉砕》《不許可》に変更した。

このデッキはプロの間で人気で、「マルドゥバリスタ」に対して有効かは私にはまだ分からないが、問題はないと感じている。 このリストはみんなが探し求めた「ティムール《電招の塔》」の最終形態になるかもしれない。 最低でもメタゲームに食い込み、Top3(「マルドゥ機体」、「黒緑」、「サヒーリコンボ」)からTop4になると考えている。

次のトーナメントはグランプリ・ニュージャージー2017だ。私は概ね何らかの《電招の塔》を使ったデッキを持ち込む予定だ。テストプレイする時間も少しは確保できるだろうしね。もしうまくいかなければ、上記のデッキをアップデートしたものを使っていることだろう。 それではまた次の記事で会おう。

Oliver

この記事内で掲載されたカード

Twitterでつぶやく

Facebookでシェアする

関連記事