GPバルセロナ優勝までの道程と、4色サヒーリ・サイドボーディングガイド

Petr Sochurek

Translated by Yoshihiko Ikawa

GPバルセロナ優勝までの道程

みなさん、こんにちは!先週末、幸運なことにGPバルセロナで優勝しましたので、どのようにしてその結果に至ったかみなさんにお伝えしたいと思います。2週間前のGPユトレヒトで、僕の《ならず者の精製屋》が対戦相手の5/4クリーチャーにチャンプアタックをしたところからすべては始まりました。

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僕のことをよく知らないほとんどの方は、ぼくがこういったミスを頻繁にしていることも知らないでしょう。僕はこのマジックというゲームを深いレベルで理解していると思っていますが、しかし本当によくこういったミスをします。ほとんど知られないですが、本当にいつだってミスをするのです。普段は与えられた情報から最適なプレイを思いつきますが、ときどき手なりでプレイし、酷い結果をもたらします。

簡単な例を挙げてみましょう。80%以上勝てるであろう勝ち筋があったとすると、そのプレイが”超安全”であると思い込みそれだけで勝とうと考えます。すると自分のライフが3しかなく、相手に「X=3」の《歩行バリスタ》をプレイされるだけで負けるといった簡単なことすら時に忘れてしまうのです。

大会前に練習していればしているほど、本番でこういったミスをすることは少なくなります。僕はいつも大会前にGPで使うデッキをプレイせず、2日間ほどサイドインアウトを学ぶためにプレイする程度です。本当はもっと集中するために普段からマジックをプレイし、こういった愚かなミスを減らす必要があるのでしょう。僕はまったくもって「順番に強いカードを出していって、それが都合よく活躍することを願うようなプレイヤー」ではありません。たとえ読み違えれば酷いしっぺ返しを受けるとしても、いつだって全ての可能性を読み切るように考え抜くのが僕のプレイスタイルだからです。

とにかく、ユトレヒトのミスのあと僕は自分自身に腹を立てました。そのマッチに敗北したことに腹を立てたのではありません(2ゲーム目はサイドボーディングを間違えていたのが真のミスで、あのチャンプアタックがなくても最終的に敗北していたでしょう)、フルタイムのプロプレイヤーとしてはあるまじきミスをしたことに腹を立てたのです。

GPが終わり帰宅したあと、僕は「Petrというプレイヤーはまだまだいけるぞ」と証明するために練習を重ねました。彼女と過ごす時間もなくしすべて練習に充てた結果、彼女と喧嘩することになってしまいましたが。

僕は様々なデッキを試しましたが、すべてのデッキは平凡に見えましたし、MOの構築リーグで3-2するのも一苦労でした。そんな風に困っていたとき、GPバルセロナ開催週の火曜にオンドレイ・ストラスキーからメッセージが来ました。


Ondrej Strasky
※画像は【本人のTwitter】より引用させていただきました。


彼曰く、4色サヒーリが非常に良いデッキで、GPで使おうと考えているとのこと。僕は彼のことをよく知っていますが、プレイが特別上手いわけではないのにどうしていつも彼が良い成績を残すのか、ずっと不思議に思っていました。そしてその理由は明快でした。彼は常にベストデッキを選んでおり、そして僕のデッキ選択はいつも酷いものだったのです。 僕はオンドレイが時間をかけたその4色サヒーリをプレイすることを決意し、MOでカードを買いそろえました。するとあっという間に5-0することができたので、このデッキをGPで使うことを決めました。

僕たちに良いリストをくれたブラッド・ネルソンにも感謝しています。彼からもらったリストに僕が加えた変更は《不屈の追跡者》1枚を《実地研究者、タミヨウ》に差し替えただけでした。そしてこの変更は大会を通じてとてもよく働きましたので、満足しています。

さて、明日大会出でるなら、GPバルセロナから少し変更を施したこのリストで出るでしょう。(ベン・フリードマンの形の方が良いかもしれませんが、僕は試せていません。)


Petr Sochurek「4色サヒーリ」

5 《森》
1 《島》
1 《山》
1 《平地》
4 《霊気拠点》
4 《植物の聖域》
2 《尖塔断の運河》
2 《獲物道》
1 《感動的な眺望所》

-土地 (21)-

4 《導路の召使い》
4 《ならず者の精製屋》
3 《つむじ風の巨匠》
1 《不屈の追跡者》
4 《守護フェリダー》

-クリーチャー (16)-
4 《霊気との調和》
1 《ショック》
4 《蓄霊稲妻》
4 《ニッサの誓い》
2 《チャンドラの誓い》
4 《サヒーリ・ライ》
3 《反逆の先導者、チャンドラ》
1 《実地研究者、タミヨウ》

-呪文 (23)-
3 《歩行バリスタ》
2 《払拭》
2 《自然のままに》
2 《グレムリン解放》
2 《否認》
2 《領事の旗艦、スカイソブリン》
1 《不屈の追跡者》
1 《バラルの巧技》

-サイドボード (15)-
hareruya

GPで僕が使ったリストとの違いは、メインの《チャンドラの誓い》を1枚《ショック》に変えたのと、サイドの《グレムリン解放》を1枚《バラルの巧技》に変えた点です。 《ショック》はミラーマッチとマルドゥ機体に対しては《チャンドラの誓い》より優秀です。ただ、他のマッチアップでは《チャンドラの誓い》の方が優れていますし、ミラーマッチやマルドゥ機体に対しても《チャンドラの誓い》もそれなりに働きます。なぜなら、《反逆の先導者、チャンドラ》と組み合わせて《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》を倒すこともできるのですから。また、GPニュージャージーではベン・スタークがジャンドアグロでトップ8に残ったので、ベストデッキを好まない人たち(ほとんどの人たち)はこのデッキを試すでしょうし、そのジャンドデッキに対しては《チャンドラの誓い》(および《バラルの巧技》)が非常に効果的です。

サイドボーディング・ガイド

この記事を読みに来てくれている皆さんは、ミラーマッチやマルドゥ機体に対してどう戦えばいいのかが知りたいでしょう。そこで、GPで僕がどれだけツイていたかといったレポートを書く代わりに、サイドボーディングの解説をしたいと思います。

vs.マルドゥ機体

1ゲーム目に関しては特に説明する必要はないでしょう。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》で負けないよう盤面を抑え、そして大抵はコンボでゲームに勝利することを狙うだけです。しかし、サイドボーディング後はゲームが面白くなります。多くの方があまり意識していないかもしれませんが、「1ゲーム目のデッキ」ではなく、「2ゲーム目=サイドボーディング後のデッキ」を意識してこちらもサイドボードすることが非常に重要になります。例えば、超攻撃的なアグロデッキに対して《不屈の追跡者》をサイドインしているのを見ると、眉をひそめるかもしれません。ですが、大量のプレインズウォーカーと《苦い真理》が入っているマルドゥミッドレンジに対して《不屈の追跡者》をサイドインしても誰も驚かないでしょう。このようにサイドボードの選択肢が多いため、正しくサイドボードをするのはとても難しいですが、あなたが取ることができる合理的なアプローチがいくつかあります。

まず初めに、あまり優秀でないプレイヤーは、サイドボード後もアグレッシブであろうとして、《経験豊富な操縦者》《屑鉄場のたかり屋》を初手にキープしがちです。これは彼らの側からすると必ずしも悪いわけではありません。特に彼らが4Cサヒーリ側が遅いプランに対してのサイドボーディングをしていると思うならば。彼らが先攻ならばそれは正当化すらされますし、そしてこういったことはよくあることなのです。 僕がマルドゥ機体相手にアーティファクト破壊5枚すべてをサイドインしなかったとき、多くのプレイヤーが「サイドインしないなら、なぜアーティファクト破壊を5枚も用意したのか」と聞いてきました。いえ、正確に言うと初日の早いラウンドのときはすべてサイドインする必要がありました。「1ゲーム目のマルドゥ機体」を相手にするにはそれぐらいのアーティファクト破壊が必要でした。ですが、もし対戦相手が優秀なプレイヤーなら(あるいは対戦相手が自分自身をそうであると思っているなら)、サイドボード後に違うデッキに変えてくるでしょう。優秀なプレイヤーは、変形サイドボードプランに対応できていないプレイヤーを出し抜くことに慣れています。対戦相手が攻撃的なデッキに対する優秀なサイドカードを抱えているのを尻目に、ロングゲームに持ち込み勝利するのです。このサイドプラン変更による勝利は賢く感じますし、競技的なプレイヤーは対戦相手を出し抜くことや賢く感じることを好みます、なので、優秀なプレイヤーと対戦するときはそのような変形サイドボードに備えた方が良いでしょう。

vs. マルドゥ機体

Out

Oath of Chandra Oath of Chandra Oath of Chandra Servant of the Conduit
Chandra, Torch of Defiance Chandra, Torch of Defiance Chandra, Torch of Defiance Saheeli Rai

In

Negate Negate Skysovereign, Consul Flagship Skysovereign, Consul Flagship
Natural State Natural State Tireless Tracker Release the Gremlins

これが僕がGPバルセロナで行った対マルドゥ機体のサイドボーディングです。後手のときに《導路の召使い》を4枚全部残したくなるかもしれませんが、やめた方がいいでしょう。

vs. 4色サヒーリ

1ゲーム目はかなり運に左右されますし、少し退屈です。大抵は片方がコンボを決めるだけなので。ですがサイドボード後は違います。お互いがコンボに対して多くの解答を持つため、《領事の旗艦、スカイソブリン》《不屈の追跡者》、プレインズウォーカーのようなロングゲームに強いカードを巡る、非常に腕の出るゲームになります。コンボだけでなく、そういったロングゲームに強いカードに備える必要があるのです。 難しいのはタップアウトするかどうかの判断です。相手の手札に無限コンボが揃っていれば一瞬で負けてしまいますが、そうでなければ有利になる、そういった場面がよく訪れます。このゲームはどちらが有利なのか、相手の手札には何がありそうか、など考えることが多くて非常に難しいです。ですが、一般的にはコンボが揃ってないと割り切ってプレイすべきでしょう。もし仕掛けずに勝機を逃してしまうと、仮に相手がコンボを持っていなくても、コンボ以外のカードで負ける要因になりうるからです。もちろん相手がコンボを持っていて負けてしまうこともあるでしょうが、正しいプレイをし続けることが高い勝率につながります。

vs. 4色サヒーリ

Out

Oath of Chandra Oath of Chandra Servant of the Conduit
Tamiyo, Field Researcher Saheeli Rai Felidar Guardian

In

Walking Ballista Walking Ballista Walking Ballista
Skysovereign, Consul Flagship Skysovereign, Consul Flagship Tireless Tracker

これがミラーマッチでのサイドボーディングです。《守護フェリダー》だけ、まだ少し迷っていますが。

禁止改定について

Wizardsは今回の禁止改定で禁止カードを出さないことに決め、またいくつかの説明を僕たちに提示しました。今回の件で一番重要なのは、「いつでもスタンダードに禁止カードを出すわけではない」ということです。現在のトップレベルのデッキは非常に高価で、たくさんのプレイヤーたちがこの件と格闘しています。2ヶ月貯金して組んだデッキが直後に禁止になったらどう思いますか?一方、プレイヤーたちは競技的でありたいと思ったとき、何をすべきでしょうか? もしWizardsが何かを禁止にすると、人々の信用を失い、人々はカードを買わなくなってしまうでしょう。そうなるとWizardsは非常に困るのです。僕が考える禁止改定の正しいアプローチは、《屑鉄場のたかり屋》《ニッサの誓い》のような「戦略を支えている高価でないカード」を禁止にすることです。そして強力なデッキたちがその禁止カードなしでも依然として良いデッキであり続ければよいのです。

また、僕はこのスタンダード環境が悪いとは思っていません。まぁ確かに、デッキを選択する上であまり多くの選択肢はないでしょう。ですがそれは本当に問題なのでしょうか?僕はそうは思いません。なぜなら、フォーマットにおいてデッキの選択肢が無限にあることは、モダンのようにランダムなマッチアップやサイドボード選択の有無だけで決まりがちだからです。ゲーム内容が面白く、技術介入度が高いことが重要だと僕は考えていて、そして今のスタンダードはまさにそれに相応しい環境です!これまで毎回異なる、刺激的なゲームをいくつもプレイしましたし、ゲーム毎に盤面に合わせてゲームプランを組み立てる必要もありました。

多分この環境をみんなが嫌っている理由は、他のデッキを使ってトップメタのデッキに勝ちたいと思っても、相性だけで簡単に勝てるような戦略をプレイする余地や楽しみがないからでしょう。 僕が皆さんにできる唯一のアドバイスは、マルドゥ機体か4色サヒーリを手に取り、それを練習し始めることです。この2つのデッキはとても強い上に楽しく、かつフレキシブルなサイドボードプランなど細かいテクニックがたくさんあるので、きっとあなたをより高みに連れて行ってくれるでしょう!

いつも読んでくれてありがとう。
Petr Sochurek

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