By Takumi Yamasaki
佐野 大基(神奈川)
グランプリ・千葉2015で14位、BIGMAGIC OPEN vol.3では2位と輝かしい戦績を持つレガシーを主戦場としているプレイヤーの一人だ。 そんな彼が第8期ヴィンテージ神決定戦ではレガシー神・川北 史朗を打ち破りヴィンテージ界に降り立つ。
待ち受けるは古豪のヴィンテージマスター森田 侑。 大一番の試合を前に彼は何を思うのか。
佐野 大基
マジックとの馴れ初め
--「まず初めに佐野さんはいつごろからマジックをプレイされているんですか?」
佐野「最初に始めたのは小学校高学年のときです。『メルカディアン・マスクス』や『ネメシス』の頃ですね。友達がやっていたからカードをもらってなんとなく始めたのがきっかけです。調べていくうちに強いデッキがあるなとか組んでみたいなと思いカードショップに行ったんですが、当時の自分では手が出せない値段でして、他のTCGも流行っていたのでそっちに移って中学1年生くらいの時に一旦止めましたね。」
--「一度止められたんですね。復帰されたのはいつですか?」
佐野「復帰したのは『イニストラード』の頃ですね。その時はMicroProse版マジック:ザ・ギャザリングというPCゲームがありまして、それで遊んでました。遊んでいるうちに紙でもやりたいなーと思い、また集め始めましたね。」
--「その時一緒にマジックをする友達やコミュニティはあったんですか?」
佐野「とにかくまずは一人でやり始めて、大会に出るたびに仲良くしてくれる人が増えていきましたね。横浜近くのコミュニティに参加してみたらみんな良くしてくれて、最初はスタンダードもやってたんですが、そのコミュニティはレガシー中心でどうせなら古いカード使いたいなーと思って始めました。」
--「最初に始めたときのカードってそのまま所持されていたんですか?」
佐野「持ってなかったですね。ただあの時とは違って社会人になりお金もあったので(笑)。小学生の時は『《補充》デッキ』が好きで憧れていましたね。」
--「どういうデッキでしょう?」
佐野「マスクス・ブロック期当時のトップメタの一角で《オパール色の輝き》で《パララクスの潮流》などの強いエンチャントをクリーチャー化し《補充》で釣り上げて殴って勝つデッキです。そのデッキに昔憧れていたので、それを組んでレガシーの大会に持って行ったんですけど、通用するはずがなくて(笑)。当時のスタンダードのまま持って行ったんですけど、まあ勝てないですよね。旧スタンダードとレガシーじゃ勝てるわけもなく、そこのコミュニティの大会でまず全敗しました。ただ楽しいなっていうのがあって、そこからちゃんとデュアルランドとかを集めてレガシーにのめり込んでいきました。」
--「好きなデッキとかカードはありますか?」
佐野「いっぱいあって難しいですね。色で言えば青赤が一番好きですね。過去にレガシーで実績を残したのも『URデルバー』でこのデッキに入ってるカードは全部好きですし、強いて一番好きなカードを挙げるとEDHで統率者にしている《苦痛の芸術家、ニン》ですね。このカードが一番好きです。」
--「EDHもプレイされてるんですね。」
佐野「そうですね、カジュアルに遊んでいます。中身はカジュアルではないんですけど。」
--「といいますと?」
佐野「実はFull Foilにしてるんです。《苦痛の芸術家、ニン》は拡張アートもしていて愛を込めて組んでいます。」
--「時間をかけて組んだわけですね。」
佐野「最初、近所のカードショップのストレージで運命の出会いを果たしました。こんなに強いのになんでこんな安いんだろうって驚きましたね。そこで買ってからデッキを組んだんですけどまあ強くて。EDHはこれを生涯使おうと決めてFull Foil化を始め、数か月かけて完成させましたね。ただ問題があって、あまりに強すぎるんです(笑)。なので身内のカジュアルでは使っていないですね。」
--「他のフォーマットは普段プレイされているんですか?」
佐野「レガシーとヴィンテージを中心にやっていて、最近スタンダードもデッキを組みまして、『霊気紛争』ゲームデーや第8期スタンダード神挑戦者決定戦に参加したんですけどそこからやってないですね。『機体』を組んでゲームデーではTOP8に入って、この調子で挑戦者決定戦もイケると思ってたんですけどボコボコにされました(笑)。メタがすでに変わっててダメでしたね。スタンダードのメタゲームの速さにはついていけないです。」
--「モダンはどうですか?」
佐野「モダンは一番苦手なフォーマットですね。」
--「ヴィンテージとどう違うんですか?」
佐野「どちらかというとヴィンテージの方が近いんですけど、引いたカードを叩きつけるゲームだと思っているんです。そして僕は右手が弱くて(笑)。勝てないんです。レガシーだともっと駆け引きのあるゲームがあるんですが……。カードの噛み合い方もレガシーやヴィンテージに比べてあまりなくて、噛み合わず気付いたら負けてましたみたいな試合が多いですね。ヴィンテージだと一つ一つのカードが強くて、いつの間にか噛み合ってるということがよくあるので右手が弱くてもなんとかなったんですけどねぇ。」
ヴィンテージはマジックの原点
--「マジックについての目標はありますか?」
佐野「直近ではまず神になりたいですね。それから一生に一度、おじいちゃんになってからでもいいからプロツアーに行きたいですね(笑)。目標としてはそれくらいで、後はMTGをやってる時間を瞬間瞬間で楽しめればそれでいいです。楽しくなければこんなにお金と時間をかけてやってないですよね。」
--「私もまだマジックを始めて間もないんですが、いつかヴィンテージもやってみたいです。」
佐野「モダンからヴィンテージに参入する場合はプレイングが通用しますよ。」
--「それはなぜですか?」
佐野「それは叩きつけ合いだからです(笑)。そしてレガシーに参入する場合はスタンダードから行くと始めやすいですね。スタンダードの方がモダンより駆け引きが多くて、たたきつけ合いに意外とならないんですよ。あるカードを1ターン早くプレイするかどうかで大きくゲームが変わったりしますね。」
--「ヴィンテージの魅力ってなんですか?」
佐野「凄い頓珍漢なことを言ってると思われそうなんですが、マジックの原点って感じがするんですよね。アンティカ―ド以外使えないカードがないことや昔憧れたあのカードが使えちゃうってのが魅力ですね。ハマったときのデッキパワーがどのフォーマットよりも一番高いですし、制限がある分安定感はレガシーの方があると思うんですけど、『え?ここから勝てるの!?』みたいな大逆転が起こるのも面白いです。上手い人には分かると思うんですけど、僕にはデッキの有利不利やメタがどうなるとか明確にはよく分からないんですよ。ヴィンテージではどんなデッキでもチャンスがあると思っています。パワー9のおかげでもありますし、『MUD』で先手に《三なる宝球》を置いたら勝ったみたいなこともあるんです。」
--「モダンだと結構相性差が出ますよね。」
佐野「そうなんです。上手い人はヴィンテージでも相性を覆してきますからね。怖いです。このまえヴィンテージ杯で実はすでに神と対戦してるんですよ。その時は僕が『オース』、森田さんが『メンター』で僕の方が有利なんですが負けましたね(笑)。森田さんが出るって聞いて参加したんですが1ラウンド目で当たって斬られました。」
--「神の洗礼をすでに受けたんですね。」
佐野「はい、優しくサイドインアウトを教えてもらいました(笑)。塩を送られてる気がしますね。ただ僕はこれまでヴィンテージの大会で使ったデッキが毎回違うんですよ。だから神は読みにくいと思いますね。」
ヴィンテージではみんながフレンズ
--「森田さんへの印象をお聞かせください。」
佐野「ヴィンテージ神挑戦者になってから2回ほど対戦したこともあり、いろいろと教えてもらい仲良くなりましたね。もはや弟子みたいになりつつあります。森田さんがどう思っているか分かりませんが、そのうち師匠って呼ぼうかなと思っています(笑)。」
--「師弟対決になりそうですね。」
佐野「そうですね、最近弟子入りしたって書いといてください(笑)。森田さんもそうなんですけど、ヴィンテージのプレイヤーって優しい人が多いんですよ。ヴィンテージの日本一を決める大会とかが少ないので、一つのヴィンテージコミュニティを楽しんでる方が多くて、みんなでワイワイ遊んでるんです。新規ヴィンテージプレイヤーも大歓迎してくれますし、ヴィンテージというコミュニティを大事にしようっていう意識が大きいですね。」
--「なるほど。ヴィンテージならではの意識ですね。では最後に神決定戦への意気込みを聞かせてください。」
佐野「勝ちたいのは勝ちたいですね。今回の神決定戦の舞台には8人しか行けないじゃないですか。そこでマジック出来るのは8人だけなので、この8人に入れたことを全力で楽しみたいなと思っています。しかも、相手はかなり強いプレイヤーなのでそのハラハラドキドキ感も全力で味わいたいですね。」
--「練習などはすでに開始されていますか?」
佐野「一人回しをちょいちょいやる程度ですね。森田さんが使うデッキをすでに予想していて、それを仮想敵として練習しています。前回の神決定戦では神が全員防衛してますからね。それを打ち破って世代交代したいです!」
--「ありがとうございます!当日も頑張ってください!」
レガシーの経験と知識をもとにヴィンテージすら攻略する佐野。
果たして森田の3度目の防衛を打ち破ることができるのか見物である。
Twitterでつぶやく
Facebookでシェアする