By Takumi Yamasaki
森田 侑(東京)
前回J-Speedこと原根 健太を安定した冷静なプレイで倒し、2度目の防衛を果たした森田。 ヴィンテージの大会には数回しか参加したことがないという佐野に対しても手を抜くことはない。
今回で3度目となるインタビュー。ヴィンテージの全てを愛し、愛された男にヴィンテージのあれこれについて話を伺った。
森田 侑
君も魔界を覗いてみないか?
--「私はヴィンテージをやったことがないんですが、一体どのように参入すればいいのでしょうか?」
森田「そうですね、まず《噴出》や《精神的つまづき》、《太陽の指輪》などの安いパーツから取り掛かってもらえると良いと思います。モダンの『白単ヘイトベアー』にエルドラージを入れるだけでもお勧めですね。前回のヴィンテージの動画記事にエルドラージをフィーチャーしたものがあるので、そちらを参考にして頂くといける気がすると思います。」
--「安いパーツから揃えたり既存のデッキをアップデートさせるんですね。ご友人の方にヴィンテージをお勧めされたりもするのですか?」
森田「いきなりヴィンテージこいよとは言えないです(笑)。デュアルランドが揃っているレガシープレイヤーなら引き込みやすいですね。最初はモダンのデッキとかで参加してみてもいいんですよ。」
--「違うフォーマットのデッキを持っていて、メタゲームが違うから意外と勝っちゃうなんてことあるんでしょうか?」
森田「いやーそれが普通にあるんですよ(笑)。モダンで言うと『グリクシスデルバー』みたいなそこそこカードが強いデッキは戦えたりします。ただ《Ancestral Recall》の有無は響いてきますけどね。一応《宝船の巡航》は使えるのでそこでカバーできます。」
--「他のフォーマットの大会には注目されていますか?」
森田「スタンダードは流石に注目していないですね。モダン以下はよく見ています。ヴィンテージの『白単エルドラージ』もモダン的な発想から生まれたデッキですからね。」
--「『白黒エルドラージ・タックス』とかありますよね。」
森田「そうですね。モダンのそのデッキと似ているかもしれません。やっぱりヴィンテージ特有のデッキだと《ドルイドの誓い》とか《Mishra's Workshop》に注目しがちですが、やっぱりレガシーやモダンのようなデッキもあるので。」
--「実は戦えるんですね。」
森田「そうです。『グリクシスデルバー』に入ってるクリーチャーなんてモダンとほとんど一緒ですからね。《秘密を掘り下げる者》や《若き紅蓮術士》みたいな感じで。例えばこのデッキに《精神的つまづき》や《噴出》などの安くて強いパーツを入れるだけでもいいと思いますね。」
--「確かにそう考えると参入できそうな気がしてきました。」
森田「ちょっと魔界を覗くぐらいの気持ちでやってもらえれば幸いです(笑)。」
魔界環境のあれこれ
--「今回の禁止改訂ではどのフォーマットも変更なしでしたが、なにか予想されていましたか?」
森田「《ギタクシア派の調査》がもう危ないですねー。あれは逮捕されてもいいとメンバー内でも話しています。0マナで前方確認できるのが本当に駄目ですね。」
--「最初から読み合いがなくなりますしね。他には何かありますか?」
森田「《逆説的な結果》もそろそろ危ない片鱗を見せていますね。最初はポッと出で危なそうな雰囲気はするけどどうだろうな~と思っていました。実際にレシピが洗練されてくると動きがどんどん危なげになっていますね。」
--「レガシー神・川北さんも第8期ヴィンテージ神挑戦者決定戦の決勝戦で1ターンキルを決めていましたね。あんなにあっさり決まるものなのですか?」
森田「いえ、『《逆説的な結果》ストーム』はそこまで1ターンキル率は高くはないんですが、乗り手の強さが出たのかもしれませんね。」
--「森田さんが見ても《ギタクシア派の調査》と《逆説的な結果》は危ないんですね。」
森田「実は《逆説的な結果》もそうなんですが《僧院の導師》自身の方がより危ない気がしますね。というのも『メンター』というデッキは長いことTier1に君臨していて、テコ入れするならここではないかなと思っています。このデッキは軽量ドローがあるだけで成立してしまうんですよね。《ギタクシア派の調査》や《噴出》を禁止にしたところであまり効果がないんです。なので禁止にするなら《僧院の導師》だと思います。それと下手に《噴出》を禁止にしてしまうと『ドゥームズデイ』などのマイナーコンボが死んでしまうので。『メンター』があまり弱体化しないのに他のマイナーなデッキが死んでしまうのは良くないですよね。」
--「4月初めにヨーロッパで行われるEternal Weekend Vintage Championshipを注視していくとのことでしたね。」
森田「そうですね、その時の結果次第ですね。今後の大会で『メンター』がTop8に6人とかになるとあるかもしれません。ヴィンテージでは『茶単』がホントに強いのであんまりないとは思いますが。」
--「ちなみに《磁石のゴーレム》が制限になる前ってTop8に『茶単』が多くいたんですか?」
森田「もう本当にそうですね。」
--「それを踏まえるとTOP8を占領すると禁止になっちゃう可能性があると。」
森田「ただ《磁石のゴーレム》が制限になる前には《宝船の巡航》や《時を越えた探索》がつかえる魔境のような時期があったんですよ。」
--「世紀末のあの時代ですか……。」
森田「基本的に『デルバー』が『茶単』に弱いのはご存知だと思いますが、その『茶単』と余裕で渡り合えた時代ですね。《宝船の巡航》が4枚使えたので。どっちが船に多く乗るかで決まってしまう(笑)。」
--「宝船が多く出航した方が勝ちと。」
森田「《宝船の巡航》が《宝船の巡航》を呼びますからね。《Ancestral Recall》と違って《精神的つまづき》に引っかからない上位互換みたいなものですからね。《Ancestral Recall》が5枚使えるという時代でした。」
--「最近のヴィンテージの大会ではTop8に偏りがあったりするんでしょうか?」
森田「やっぱり『メンター』と『茶単』と『ストーム』が3強だと思っています。 ただ『ストーム』は『茶単』に弱いのでTier1.5くらいかなと。」
--「《歩行バリスタ》が『茶単』で活躍しているそうですね。」
森田「《歩行バリスタ》が生半可な『クロック・パーミッション』を全て追いやってしまったんです。以前は《トリスケリオン》を除去に使っていましたが隙が大きいじゃないですか。ですが《歩行バリスタ》を《Mishra's Workshop》とMOXでX=2で出すと、除去しつつ本体が場に残ります。これはもうゲームではないですね。多少ゲームがグダっても雑にX=5とかでだすと相手が嫌がります(笑)。」
--「なるほど。スタンダードのカードも活躍しているんですね。」
森田「今まで『茶単』は《ダク・フェイデン》が天敵だったんですが1点飛ばせるのがかなり大きいですね。最近では『茶単』と『ストーム』が多いので『メンター』にもメインから《石のような静寂》が搭載されています。この前、晴れる屋の大会に出たんですが、そのときにも2枚入れていましたがメタを読み間違えました(笑)。『茶単』がいなかったので《精神的つまづき》にしていればよかったですね。」
前回程楽にはいかないと思っています。
--「では、今回対戦する佐野さんに対してどんな印象をお持ちですか?」
森田「はっきり言ってデッキが全く読めないのでかなりきついですね。ヴィンテージの大会で既に2回ほど対戦をしたことがあるんですが、2回ともデッキが違いました。『ストーム』と『オース』ををプレイされてたのでもう下手に読むのは止めようと決意しましたね(笑)。まあ、もともとレガシーでは『クロック・パーミッション』を使われてる方なんでその辺りを含めると無理に読むのはやめようって感じですね。ヴィンテージをしっかりと練習しているプレイヤーなので、前回程楽にはいかないと思っています。今回は経験の差が生きるということはあまりないでしょう。」
--「佐野さんはヴィンテージの大会にまだ数回しかでたことがないそうですね。」
森田「ニューカマーが来ることは喜ばしいことです。ここ1年くらいで始めた方多いんじゃないんですかね。大会でも見たことない方が増えてきました。」
--「なにがきっかけで始めるとかあるんでしょうか。」
森田「人によりけりだと思うんですが、そそのかされたりとか(笑)。」
--「好きなデッキはなにかありますか?」
森田「私の使ってきたデッキを見ればわかるんですが、ほとんど『クロック・パーミッション』なんですよね。9割がそれなんで読みやすいと思います。」
--「そこをあえてずらすのもまた神決定戦の醍醐味ですね。神決定戦に向けてこれからやろうみたいなことはありますか?」
「コミュニティ内では私のデッキを高くしようという不穏な話が出てます(笑)。『ウルザズ・サーガ』のカードをハングルにしようぜとか。」
--「神の余裕を見た気がします(笑)。では最後に意気込みをお聞かせください。」
森田「ヴィンテージのプレイヤーも増えてきたのでここで世代交代してもいんじゃないかと(笑)。新しいスターが生まれる方がいいかもしれませんが、私はそう簡単には負けませんよ。予想ですけど佐野さんは派手なデッキを使ってくると思っているので『メンター』同型にはならないでしょうね。私が使い慣れているデッキは使わないと予想しています。」
--「本日はありがとうございました。本戦での活躍を期待しています!」
今回の相手は読めないと語った森田。 しかしそんな中でも蓄積された圧倒的な知識と技量からどう挑戦者を迎え討つのか楽しみだ。
ヴィンテージ・マスター森田と彗星の如くレガシー界から訪れた佐野、二人の戦いから目が離せない。
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