皆さんこんにちは。
今回から、USA Modern Expressを月に一度連載させていただくことになったアメリカ在住の広木です。USA Standard ExpressとUSA Legacy Expressを読んでくださっている皆さんの中にはご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。
USA Standard ExpressとUSA Legacy Expressと同様に、アメリカで開催されるSCG Tourやグランプリの結果を中心に、皆さんにモダンの最新の情報を提供していきたいと思います。本題に入る前にモダンというフォーマットについて少し説明していきたいと思います。
モダンは新枠になってリリースされた基本セット(『8版』以降)とエキスパンション(『ミラディン』ブロック以降)が使用可能なローテーションのないフォーマットです。現在アメリカでは最もポピュラーな構築フォーマットの一つで、ローカルのショップでも平日モダンで20~30人以上の参加者が集うこともあり、SCGのような大規模なイベントとなると1000人を超えることもあるので、事前にレジストしておかないと参加ができなくなるほどです。
モダンが人気な理由の一つは、スタンダードと異なりローテーションがないため好きなデッキを使い続けられる点です。そのため自分の使うデッキや相手の使うデッキに関する知識が求められ、モダンのSCGやグランプリ規模の大会の上位では、特定の戦略に秀でたエキスパートが数名見られます。(例:Grixis Control使いのCorey Burkhart)
Corey Burkhart
※画像はChannel Fireballより引用させていただきました。
3ターンキルやレガシーでも通用するほどのパワーを持つカードを禁止にすることで、環境のバランス調整が施されているので、レガシーよりもデッキの種類が多く存在します。現在、過去のスタンダードのデッキの強化版やオリジナルのアーキタイプなどがAffinityやJund、Burnといった定番のデッキに混じって活躍しています。そのためモダンはデッキビルダーにとって最も楽しめるフォーマットで、そういった所も人気の理由の一つのようです。
さて、前置きが長くなりましたが今回の連載ではSCG Classics Worcesterの入賞デッキを見ていきたいと思います。
土地コンボが大活躍
2017年4月9日
※画像はStarCityGames.comより引用させていただきました。 |
1位 Scapeshift
2位 Grixis Death's Shadow
3位 UB Faeries
4位 UR Gifts Storm
5位 Scapeshift
6位 Mono Black Aggro
7位 RG Tron
8位 RG Tron
トップ8のデッキリストは【こちら】
レガシーオープンの併催イベントながら参加者350名と大盛況でした。AffinityやDeath's Shadowなど現環境の定番のデッキは上位では少数で、TronやScapeshiftといった土地コンボがプレイオフの半数を占める活躍を見せました。現環境を支配するDeath's Shadow系のデッキは最近MOを中心に結果を残しているGrixisバージョンが決勝まで残り、最もポピュラーであるJundバージョンは勝ち残りませんでした。
多種多様なデッキが活躍するモダンらしく、《遵法長、バラル》の登場により強化されたモダンバージョンのストームコンボデッキであるGift Storm、オリジナルのMono Black Aggroや過去のスタンダードのトップメタだったUB Faeriesなども勝ち残っています。
SCG Classics Worcesterデッキ紹介「Scapeshift」「Grixis Death's Shadow」「U/B Faeries」「Mono-Black Zombies」
『Scapeshift』
5 《山》 2 《森》 1 《沼》 3 《燃えがらの林間地》 3 《踏み鳴らされる地》 1 《血の墓所》 4 《樹木茂る山麓》 3 《霧深い雨林》 1 《草むした墓》 4 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》 -土地 (27)- 4 《桜族の長老》 2 《クルフィックスの狩猟者》 4 《原始のタイタン》 -クリーチャー (10)- |
2 《召喚士の契約》 4 《致命的な一押し》 2 《突然の衰微》 2 《探検》 4 《明日への探索》 2 《遥か見》 4 《風景の変容》 3 《虹色の前兆》 -呪文 (23)- |
3 《強情なベイロス》 3 《集団的蛮行》 3 《神々の憤怒》 3 《大祖始の遺産》 1 《再利用の賢者》 1 《自然の要求》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード (15)- |
Scapeshiftはデッキ名通り《風景の変容》をキャストし、必要な枚数の《山》と《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を揃えて勝利を目指す土地を使ったコンボデッキです。《風景の変容》によるコンボ以外にも土地を伸ばしていき、《原始のタイタン》をキャストするマナランプ的な要素もあります。
フェアデッキと相性がよくBurnやDeath's Shadowのように速いデッキを苦手としますが、今大会優勝を果たしたCory GormanのリストはJundカラーで除去やハンデスなどが搭載されており、コンボコントロールとしても振舞えるのでこれらのマッチアップも他のリストと比べると相性が少し改善されているようです。
☆注目ポイント
《突然の衰微》と《致命的な一押し》は《稲妻》と比べると、現環境では《タルモゴイフ》や《死の影》といった高タフネスのクロックも処理できる分、除去としての信頼性が高く、純粋なコントロールが少ないので無駄になることも少なくなりそうです。
《クルフィックスの狩猟者》によるライフゲインはBurnなどライフを攻めてくる速いデッキとのマッチアップで時間を稼ぎブロッカーとしても優秀です。《探検》やサイドの《反逆の先導者、チャンドラ》ともシナジーがありミッドレンジとしても振舞うことを可能にします。
《集団的蛮行》はこのタイプのデッキが苦手とするBurnとの相性を改善させると同時に、コントロールデッキに対しても相手のカウンターや妨害スペルを落とし《風景の変容》を通りやすくします。
このデッキの弱点として、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を誘発させるために必要な枚数の《山》を並べる必要があり、《幽霊街》や《地盤の際》、《広がりゆく海》といった土地破壊によって著しくスローダウンさせられてしまうことですが、《反逆の先導者、チャンドラ》や《強情なベイロス》といった追加の勝ち手段を投入することによって対策していきます。
『Grixis Death's Shadow』
1 《島》 1 《沼》 2 《蒸気孔》 2 《湿った墓》 1 《血の墓所》 4 《血染めのぬかるみ》 4 《汚染された三角州》 4 《沸騰する小湖》 -土地 (19)- 4 《死の影》 4 《瞬唱の魔道士》 4 《通りの悪霊》 3 《黄金牙、タシグル》 1 《グルマグのアンコウ》 -クリーチャー (16)- |
4 《思考掃き》 4 《コジレックの審問》 4 《血清の幻視》 4 《思考囲い》 3 《致命的な一押し》 2 《頑固な否認》 1 《稲妻》 1 《終止》 2 《コラガンの命令》 -呪文 (25)- |
3 《大爆発の魔道士》 3 《集団的蛮行》 2 《虚無の呪文爆弾》 2 《コジレックの帰還》 2 《最後の望み、リリアナ》 1 《外科的摘出》 1 《対抗突風》 1 《終止》 -サイドボード (15)- |
現在のモダンの環境を支配する《死の影》デッキのGrixisバージョンで、《タルモゴイフ》と《ウルヴェンワルド横断》の代わりに《瞬唱の魔道士》によるカードアドバンテージと青のドロースペルが採用され、クロックとして「探査」クリーチャーの《黄金牙、タシグル》と《グルマグのアンコウ》が採用されています。
《死の影》デッキの中でもコントロール要素が最も強い型で、Abzan、Jund、そしてGrixisとミッドレンジやコントロールでよく使われる色の組み合わせに採用されている《死の影》は新たな《欠片の双子》と比喩されています。《祖先の幻視》を使ったスローなGrixisよりもプロアクティブで速いクロックを展開する《死の影》デッキはコンボや高速アグロなどが多いモダンの環境にマッチしています。
☆注目ポイント
《瞬唱の魔道士》の提供するアドバンテージにより、マナフラッドすることが少なくなりロングゲームにも強くなりました。Jundバージョンと比べるとクロックが薄く感じることがありますが、多くの場合《瞬唱の魔道士》+ハンデス、除去スペルによるアドバンテージでゲームをコントロールしていき、「探査」クリーチャーや《死の影》を引き当てるまでの時間を稼ぎます。
《黄金牙、タシグル》と《グルマグのアンコウ》は墓地を肥やす必要がありますが、《突然の衰微》と《致命的な一押し》で処理されないなど、他のデッキが《死の影》デッキに強いカードとして使ってくるカードの効果が薄くなるというのがGrixisを使う上でのアドバンテージとなります。
ハンデスに加えて《頑固な否認》もあるのでクロックを守りやすくなっておりBurnとのマッチアップにおいてうっかり焼き殺され難くなります。《コジレックの帰還》はAffinityの《刻まれた勇者》を対策できる数少ない除去でインスタントスピードなので使いやすいスイーパーです。
《最後の望み、リリアナ》はこのタイプのデッキが苦手とする《未練ある魂》のスピリットトークンなど、小型のクリーチャーを処理し墓地を肥やす「-2」能力も《瞬唱の魔道士》や《コラガンの命令》と相性がよく、消耗戦において最高の一枚です。
追加の除去の《終止》は《現実を砕くもの》など、《致命的な一押し》で触れないクリーチャー対策であまり枚数は取れませんが、《致命的な一押し》だけでは足りないマッチアップも存在するので、メイン、サイドと合わせて2枚は取っておきたい所です。《大爆発の魔道士》は土地コンボ対策で、Jund型よりも遅いこのデッキはTronやScapeshiftに少し弱くなっているので重要です。
《虚無の呪文爆弾》は墓地対策で、Jund型とのマッチアップで相手の「昂揚」を妨害したり、《タルモゴイフ》の弱体化させます。追加のハンデスとして採用されている《集団的蛮行》はサイド後のBurnとの相性をひっくり返すほどのインパクトがあります。Jund型と比べると、《古えの遺恨》がない分Affinityや《虚空の杯》といったアーテイファクトに弱くなっているので、追加の《コラガンの命令》をサイドに採用することも考慮に値します。
Jund型の《死の影》に強く、《瞬唱の魔道士》を使った青いフェアデッキが好きなプレイヤーにもお勧めのデッキです。
『Mono-Black Zombies』
14 《沼》 4 《血染めのぬかるみ》 3 《変わり谷》 2 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地 (23)- 4 《恐血鬼》 4 《墓所這い》 3 《墓所破り》 4 《才気ある霊基体》 4 《無情な死者》 3 《ゲラルフの伝書使》 1 《ゲトの裏切り者、カリタス》 1 《アスフォデルの灰色商人》 -クリーチャー (24)- |
4 《致命的な一押し》 4 《思考囲い》 2 《集団的蛮行》 2 《四肢切断》 1 《ヴェールのリリアナ》 -呪文 (13)- |
4 《幽霊街》 2 《ファイレクシアの抹消者》 2 《外科的摘出》 2 《集団的蛮行》 2 《滅び》 2 《鞭打ち悶え》 1 《漸増爆弾》 -サイドボード (15)- |
カードプールが広大なモダンは《死の影》など、定番のデッキ以外にもオリジナルのデッキも活躍するチャンスがあり、デッキビルダーにとって楽しめるフォーマットです。今大会では黒単色のゾンビアグロがトップ8にまで勝ち残りました。除去に耐性のある黒いクリーチャーを、環境の優秀な除去と妨害要素でバックアップされた戦略です。
☆注目ポイント
《恐血鬼》は土地をプレイする度に復活するので、追放系の除去以外で処理するのが難しく、フェッチランドを利用することで瞬速クリーチャーのようにも扱うことが可能です。序盤からダメージを与えておけば、中盤以降速攻クリーチャーとして奇襲をかけることも可能になります。
《墓所這い》は他のゾンビクリーチャーをコントロールしていると、墓地からキャストすることが可能で、「不死」持ちの《ゲラルフの伝書使》と同様に追放系以外の除去に耐性があります。《無情な死者》もマナが必要になりますが、環境の除去の多くに耐性があり回避能力もあるので他のゾンビクリーチャーと異なり、守りにも使えるのが強みです。
《墓所破り》は1マナ1/1とサイズは平凡ですが、能力は墓地から復活する能力を持つゾンビクリーチャーを多数採用したこのデッキと相性がよく、《恐血鬼》や《墓所這い》を捨てることでアドバンテージを稼ぐことが出来ます。《才気ある霊基体》は部族シナジーはないもののBurnや《死の影》とのマッチアップで重宝するクリーチャーです。
数は少ないものの「信心」要素も採用されており、《アスフォデルの灰色商人》でフィニッシュを決めることも可能です。黒単色なのを活かし《恐血鬼》《ゲラルフの伝書使》など、色拘束の強いクリーチャーが多数採用されているので期待できます。単色ですが《思考囲い》や《致命的な一押し》、《集団的蛮行》、《ヴェールのリリアナ》といった黒の優秀なスペルが揃っており、打たれ強いクロックにも恵まれているこのデッキは多くのコンボデッキと相性がよく、ポテンシャルが高いデッキです。
『U/B Faeries』
3 《島》 1 《沼》 2 《湿った墓》 4 《汚染された三角州》 4 《変わり谷》 3 《忍び寄るタール坑》 3 《闇滑りの岸》 3 《人里離れた谷間》 1 《水没した地下墓地》 -土地 (24)- 4 《呪文づまりのスプライト》 2 《瞬唱の魔道士》 3 《ヴェンディリオン三人衆》 2 《霧縛りの徒党》 -クリーチャー (11)- |
4 《致命的な一押し》 4 《コジレックの審問》 2 《思考囲い》 2 《喉首狙い》 2 《マナ漏出》 1 《四肢切断》 3 《謎めいた命令》 4 《苦花》 3 《ヴェールのリリアナ》 -呪文 (25)- |
2 《祖先の幻視》 2 《外科的摘出》 2 《否認》 2 《集団的蛮行》 2 《滅び》 1 《仕組まれた爆薬》 1 《払拭》 1 《喉首狙い》 -サイドボード (13)- |
過去のスタンダードでTier1デッキとして活躍していた、フェアリー部族シナジーを活用したアグロコントロールデッキのFaeries。相手や手札の状況によってコントロールからアグロにシフトチェンジする戦略で、扱いが難しいデッキです。
《苦花》が解禁されてからアーキタイプの復権が期待されていましたが、モダンのスピードに付いていくことが難しく中々結果が出せませんでしたが、一マナの除去スペルの《致命的な一押し》の加入により状況が変わりつつあるようです。
☆注目ポイント
《苦花》は序盤のプレッシャーの少ないコントロールやコンボに対して、無類の強さを発揮します。《呪文づまりのスプライト》は軽いスペルが多い現環境ではほぼ確定カウンターで《死の影》《思考囲い》《致命的な一押し》など強力な一マナスペルを打ち消します。
《霧縛りの徒党》は相手の除去に注意する必要がありますが、相手をタップアウトさせつつ4/4飛行を展開することが可能で、守りから攻めに転じる際にキーとなります。ライフが少ない際は《苦花》を除外する手段にもなります。除去に弱いのと「覇権」先がないと手札で腐るのでメインにわずか2枚の採用です。
《致命的な一押し》は確かに効率的な除去ですがこのデッキが、苦手とするBant Eldraziの《現実を砕くもの》やGrixisなどが使う《黄金牙、タシグル》などに対処するために《喉首狙い》も採用されています。このタイプのデッキでよく見かける《祖先の幻視》はメイン不採用で、一マナのハンデスが6枚、1-2マナでキャスト可能な除去が7枚と序盤を渡り合うことを重視しています。コントロールやコンボ、ミッドレンジなど遅めのデッキに対してサイドから投入されます。
《ヴェールのリリアナ》は《苦花》との組み合わせが強力で、毎ターンブロッカーを生み出すのでこのデッキ相手に戦闘で除去するのは難しく、《死の影》や緑黒系など多くのデッキとのマッチアップで活躍します。《瞬唱の魔道士》はフェアリーではありませんが、軽いスペルが多いこのデッキではアドバンテージを取りやすく、特に《瞬唱の魔道士》+《致命的な一押し》や《瞬唱の魔道士》+ハンデスはクリーチャーデッキやコンボデッキとのマッチアップに強く、コンボ以外で青黒を使うなら採用しない理由はありません。
《集団的蛮行》はこのデッキが苦手としていたBurnやAd Nauseamなど、スペルを多用するコンボとのマッチアップで使える追加のハンデスで、特にBurnに対しては相手のクロックを除去しつつ相手のバーンスペルを落とし、ライフゲインと非常にインパクトのあるスペルとして活躍が期待出来ます。
Affinityや《死の影》、TronなどコンボデッキやGrixis Controlに強く、《未練ある魂》を使うAbzan系や《魂の洞窟》によってカウンターされない脅威を展開してくるBant Eldrazi、展開が速くバーンスペルでライフを攻めてくるBurnなどを苦手とします。
プレイヤーインタビュー Nicholas Byrd
Nicholas Byrd
※画像はStarCityGames.comより引用させていただきました。
1 《平地》 1 《島》 1 《沼》 1 《神聖なる泉》 1 《蒸気孔》 1 《湿った墓》 2 《汚染された三角州》 1 《溢れかえる岸辺》 4 《欺瞞の神殿》 3 《啓蒙の神殿》 3 《宝石鉱山》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地 (20)- 4 《猿人の指導霊》 -クリーチャー (4)- |
4 《睡蓮の花》 3 《否定の契約》 1 《殺戮の契約》 4 《天使の嗜み》 4 《血清の幻視》 4 《手練》 3 《深遠の覗き見》 1 《捨て身の儀式》 1 《稲妻の嵐》 1 《神秘の指導》 4 《むかつき》 3 《五元のプリズム》 3 《ファイレクシアの非生》 -呪文 (36)- |
4 《神聖の力線》 2 《暗黒》 2 《致命的な一押し》 1 《研究室の偏執狂》 1 《否定の契約》 1 《解呪》 1 《残響する真実》 1 《ハーキルの召還術》 1 《機を見た援軍》 1 《滅び》 -サイドボード (15)- |
Nicholas Byrdは今年2月に開催されたSCG Open Indianapolisでモダンのコンボデッキである《むかつき》を使用し見事優勝を果たしたプレイヤーで今回の連載のためにお話を聞くことが出来ました。
--「《むかつき》とはどんなデッキなんだい?」
Nicholas「《むかつき》はスペルが中心のコンボデッキだ。《むかつき》と《天使の嗜み》か《ファイレクシアの非生》によるコンボで、デッキ内のカードを全て引くためにマナ加速とドロースペルで纏められている。デッキ内のカードをドローした後は《猿人の指導霊》で赤マナを出して《稲妻の嵐》をキャストし、必要な分の土地を捨ててゲームに勝つ。相手の妨害もマナを支払わずにカウンターをすることができるし、このターンに決着を付けるから契約のコストも心配する必要もなくてインスタントタイミングでコンボを発動することもできるんだ。」
--「なぜ《むかつき》コンボを選択したの?」
Nicholas「このデッキを選んだのは元々コンボデッキが好きで、現在のモダンの環境は《致命的な一押し》の登場や禁止改定によってInfectのようにこのデッキにとって相性の悪いマッチが減ってこのデッキにとって勝ちやすいメタになってきていたのもあるね。」
--「このデッキの強みはなにかな?」
Nicholas「このデッキの強い所は動きに一貫性があって妨害に対しても耐性がある所だ。マナ加速に《睡蓮の花》《五元のプリズム》《猿人の指導霊》、ドロースペルに《血清の幻視》《手練》、《深遠の覗き見》と揃っていて多くの場合4ターン目にコンボが決まる。コンボパーツである《天使の嗜み》は速いアグロデッキに対しては《濃霧》のように使えるし《ファイレクシアの非生》もかなり時間を稼いでくれるんだ。
--「このデッキの弱点はどこだろう?」
Nicholas「このデッキの弱点は他のモダンのコンボと同様に尖った構成で、キャントリップやマナ加速が豊富でもキーカードの《むかつき》なしでは勝てないから、感染のように速いデッキは苦手だね。」
--「サイドボードについて教えてくれるかい?」
Nicholas「サイドボードは速いアグロデッキやハンデス、その他の問題となる相手のサイドボードカードを対策するカードでまとめられている。4枚の《神聖の力線》は緑黒系のハンデス対策で、緑黒系はハンデスでコンボを妨害してくるから対策しないと厳しいマッチアップになるけど、《神聖の力線》が出れば負けることが少なくなる。」
Nicholas「《致命的な一押し》は相手のクロック対策で《死の影》やコンボデッキにとって厄介なヘイトベアー(《スレイベンの守護者、サリア》《レオニンの裁き人》《クァーサルの群れ魔道士》など)、Burn、そして相性の最悪のInfectに対しても少しチャンスができる。《解呪》と《残響する真実》は《神聖の力線》《石のような静寂》《血染めの月》《真髄の針》《大歓楽の幻霊》《弁論の幻霊》など、主に相手がサイドインしてくる置物対策で、スイーパーの《滅び》はAbzan Company、Affinity、Merfolk、Bant Eldraziとのマッチアップでコンボを決めるまでの時間を稼ぐ。」
Nicholas「あとこれはよく質問されるんだけど《天空のもや》ではなく《暗黒》なのは実は大会当日に《天空のもや》を持ってきているバイヤーがいなかったからなんだ。信じられるかい?(笑)」
--「神河ブロックのコモンであまり使われていないカードだから大会当日に見つけるのは確かに難しいね。《暗黒》や《天空のもや》のような《濃霧》系のスペルは相性の悪いInfectとのマッチアップでも重宝しそうだね。今回は忙しい中質問に答えてくれてありがとう。改めて優勝おめでとう。」
《むかつき》コンボは自分の戦略にフォーカスしたデッキが多いモダンらしいデッキで、デッキの性質上多くのフェアデッキのクリーチャー除去スペルを無駄カードに変え、インスタントスピードでもコンボが決めることが可能です。なので、コントロールやTron、Scapeshiftなど遅いデッキに強いデッキです。
サイドボードはモダンらしくデッキの弱点をカバーするためのカードが多数採られており、ハンデスをシャットアウトする《神聖の力線》などデッキの相性を覆すほどのインパクトのあるカードも見られます。コンボパーツである《ファイレクシアの非生》はBurnなど、速攻でライフを攻めてくるデッキに対してコンボ発動まで時間を稼ぎ、コンボ発動時には《否定の契約》もすべて手札にあるので妨害にも強く、コンボ好きな方は是非トライしてみることをお勧めします。
総括
SCG Classics Modern Worcesterの結果からモダンは様々なデッキ、戦略にチャンスがある多様性に満ちたフォーマットであることが分かります。ローテーションのないフォーマットですが、レガシーと異なりモダンの重要なカードはModern Mastersなどで再録されるので手に入りやすく、一度デッキを組んでしまえば禁止改定によって環境が変化することがない限り、好きなデッキを使い続けることができるのが、モダンというフォーマットの魅力です。
今回の連載で皆さんにモダンの楽しさが伝わったのなら幸いです。 以上USA Modern Express vol.1でした。それでは次回の連載でまた会いましょう。楽しいモダンライフを!
この記事内で掲載されたカード
Twitterでつぶやく
Facebookでシェアする