■ これまでのあらすじ
プロツアーやGPでの連敗が続き、現在プロポイント14点と非常に厳しい状況のタカハシ。
直近のグランプリ・北京2017に参加するも、あえなく初日落ち。
来季のプロツアーのために、プロレベル・ゴールド(35点)を目指したいところだが、そのためにはプロツアーでの勝利が必須だ。
苦手なリミテッドを克服するべく、MOで70回ドラフトを練習してプロツアーに臨むのであった。
5月12日-14日
プロツアー『アモンケット』に参加。
ドラフト指針
アモンケットドラフトは1-2マナからの展開が重視される。
今回トップ8のChristian Calcanoもドラフトのコツとして「4マナ以上のカードをプレイしない」と述べているほど、極端に速い高速アグロ環境だ。その理由として挙げられるのは「督励」「カルトーシュ」だろう。
「督励」は攻撃時には+2マナ相当のクリーチャーに変貌する。《突風歩き》、《頭巾の喧嘩屋》、《燃えさし角のミノタウルス》などは1枚でゲームの主導権を握ることができる。また、これらの「督励」クリーチャーを「カルトーシュ」で後押しすることでお手軽なフィニッシャーができあがる。
環境に軽い除去が少なく、「カルトーシュ」はつけた時点でカード1枚分の役割を果たすため、「オーラは除去で2:1交換される」という弱点が薄まっている。
今回のドラフト指針は白・赤・緑の3色をピックし、青と黒はレアからのみ参入。特にコモンの層が厚い白は早めに参入することを意識した。
初日
1stドラフト
- 1-1:《排斥》
- 1-2:《突風歩き》
- 1-3:《結束のカルトーシュ》
からスタートするも、その後白のカードがほとんど流れてこない。代わりに緑のクリーチャーが多く取れたため、緑基盤の多色も視野に。
- 2-1:《燃えさし角のミノタウルス》
- 2-2:《生類の侍臣》
- 3-1:《蓋世の誉れ》
- 3-2:《排斥》
2パック目以降でも白は全く流れて来ず。遅く取れた2枚の《進化する未開地》から緑メインでタッチ赤白の形に。マナベースは問題なく回るし、除去が優秀だから2-1は行けそう、と思いきや……
7 《森》 4 《山》 3 《平地》 2 《進化する未開地》 -土地 (16)- 1 《オアシュラの耕作者》 1 《戦場のゴミあさり》 1 《活力の模範》 1 《突風歩き》 2 《好戦的な巨口》 2 《気性の荒いクーズー》 2 《燃えさし角のミノタウルス》 1 《大蜘蛛》 1 《生類の侍臣》 1 《補給の隊商》 1 《打擲場のマンティコア》 1 《鱗ビヒモス》 1 《大いなるサンドワーム》 -クリーチャー (16)- |
2 《蜘蛛の掌握》 1 《蓋世の誉れ》 1 《結束のカルトーシュ》 1 《楽園の贈り物》 2 《排斥》 1 《ロナスの碑》 -呪文 (8)- |
ラウンド | 対戦相手 | 結果 |
---|---|---|
Round 1 | 赤緑(Reid Duke) | ×〇× |
Round 2 | 青赤 | ×〇× |
Round 3 | 青白 | 〇〇 |
1-2。
初戦の赤緑(Reid Duke)に《媒介者の修練者》《栄光をもたらすもの》と動かれ圧敗。青赤相手には、《打擲場のマンティコア》が通れば勝ちの場面で《本質の散乱》を持たれていて負け。
青白は長期戦にもつれ込んだうえで《生類の侍臣》が後続を供給し続けて勝ち。
スタンダード
使用デッキはティムール《霊気池の驚異》。
5 《森》 1 《島》 1 《山》 1 《獲物道》 1 《隠れた茂み》 4 《霊気拠点》 4 《植物の聖域》 4 《尖塔断の運河》 1 《伐採地の滝》 -土地 (22)- 4 《ならず者の精製屋》 4 《つむじ風の巨匠》 4 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 -クリーチャー (12)- |
4 《霊気との調和》 4 《蓄霊稲妻》 4 《検閲》 2 《造反者の解放》 4 《天才の片鱗》 4 《織木師の組細工》 4 《霊気池の驚異》 -呪文 (26)- |
4 《否認》 3 《不屈の追跡者》 3 《光輝の炎》 2 《払拭》 2 《霊気溶融》 1 《奔流の機械巨人》 -サイドボード (15)- |
サイドボード
メタゲーム予想
今回のメタゲーム予想は「機体」「霊気池」が2トップで、その他「青赤コントロール」などの霊気池に強い構成のデッキも多いだろう。
プロツアー1週間前からMO上で急速に「ゾンビ」も数を増やしており、本戦でもそこそこいると予想(しかし3番手になることは予想外)。
《検閲》&《造反者の解放》
固定パーツが多く細部を変更しにくい「霊気池」だが、『アモンケット』から加入したこの2種類はデッキに柔軟性を与えてくれた。
《検閲》は相手の4マナアクション《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》《霊気池の驚異》《天才の片鱗》に対して大きな牽制となり、特にメイン戦は刺さりやすい。
もともと《導路の召使い》だった部分に《検閲》が入った形だが、《導路の召使い》は3ターン目以降に引くと途端に価値が下がる初手依存カードで、あまり好きではない。反面《検閲》は相手に合わせてマナ域が可変になる素晴らしいカードだ。
《造反者の解放》は「機体」「霊気池」にメインから取れる対策カードだ。特に同系では場に出た《霊気池の驚異》が入っているのといないのとはまるで事情が変わる。
ラウンド | 対戦相手 | 結果 |
---|---|---|
Round 4 | 黒単ゾンビ | 〇〇 |
Round 5 | 黒単ゾンビ | 〇×〇 |
Round 6 | マルドゥ機体 | 〇×〇 |
Round 7 | 青白フラッシュ | ×〇× |
Round 8 | ティムール霊気池 | 〇×〇 |
4-1.
直前で会場の《無情な死者》が30ドル販売(!)とゾンビ増加情報があったため《光輝の炎》を3に変更したら、これが大活躍。《霊気池の驚異》でめくれたら意味がないカードであり、なおかつ初手に欲しいため多く採用したが正解だった。
なんとか5-3に持ち直して2日目へ。
■ 2日目
2ndドラフト
から再び白路線でピックしようとするも、やはり白・赤のコモンの流れが悪い。ビートダウンに人気があるのはどの卓も同じようだ。青白はやりたくないな、と思いながら《微光鱗のドレイク》を取っていたら7手目に《周到の神ケフネト》!
仕方ない、誰もやらないなら青やるよ。
青白の多色カードも遅く取れたし、まずまずのデッキ。と、思いきや……
8 《島》 7 《平地》 1 《進化する未開地》 -土地 (16)- 1 《扇持ち》 1 《選定の司祭》 1 《ター一門の散兵》 1 《ナクタムンの侍臣、テムメト》 1 《療治の侍臣》 2 《断固たる修練者》 1 《周到の神ケフネト》 2 《ナーガの神託者》 1 《エイヴンの修練者》 1 《風案内のエイヴン》 3 《微光鱗のドレイク》 1 《釣りドレイク》 -クリーチャー (16)- |
1 《否定の風》 2 《錯覚の覆い》 1 《排斥》 2 《主張》 1 《研ぎ澄まされたコペシュ》 1 《権威の殿堂》 -呪文 (8)- |
ラウンド | 対戦相手 | 結果 |
---|---|---|
Round 9 | 赤緑 | ×〇× |
Round 10 | 青緑 | ×× |
Round 11 | 赤黒 | ×× |
0-3……
赤緑には《不屈の神ロナス》を触れず負け。
青緑には《知識のカルトーシュ》4連打を捌けず負け。
赤黒には《無情な狙撃手》を対処できず負け。
ドラフトにもメタゲームがある。今回は白・赤のビートダウンに人気が集中しており、色が被るのを避けられない状況だった。ビートダウンが主流なら、それに合わせたコントロールを組むべきだった。
初手が白の強カード《排斥》だったこともあり安直に白に参入してしまったが、今回でいえば緑多色ピックをするのが正解だったように思える。
そのためにはドラフトでできる戦略を増やす必要がある。MOドラフトはリーグ形式なため自分のデッキが強ければ良いものであり、卓内での相対的な強さを求められる8人ドラフトとは勝手が異なる。
闇雲にMOドラフトを繰り返しても上達は見込めない。次回からは対人ドラフトに集中して練習すべし。
スタンダード
ラウンド | 対戦相手 | 結果 |
---|---|---|
Round 12 | バント霊気池 | 〇〇 |
Round 13 | マルドゥ機体 | 〇×〇 |
Round 14 | マルドゥ機体 | 〇×〇 |
Round 15 | 黒単ゾンビ | 〇×〇 |
Round 16 | ティムール霊気池 | 〇〇 |
5-0。
合計で「機体」「霊気池」「ゾンビ」に3回ずつと、メタゲーム通りの当たり方だった。だいたい2回以内の起動で《絶え間ない飢餓、ウラモグ》がめくれたという幸運もあったが、勝因は《造反者の解放》によるところが大きい。
「機体」「霊気池」共に、これがなければ負けていた試合が過半数だった。メインから積める腐りにくい対策カードは素晴らしく、スタンダードに私が求めていたものだ。
スタンダード9-1、ドラフト1-5で10-6。
最終成績66位。プロポイント6点獲得。
サイドボーディングガイド
「霊気池」はメインはいかにして早いターンの《絶え間ない飢餓、ウラモグ》を目指すかという真っすぐなコンボデッキだ。安定した回りを目指すためにデッキのパーツも4枚が多い。しかしサイド後は相手も《否認》《没収》で対策してくるため事情が異なる。
例えば《没収》を撃たれたあとにデッキに4枚《絶え間ない飢餓、ウラモグ》が残っていることは耐え難いし、打消し呪文を多く擁する相手に4マナソーサリータイミングの《霊気池の驚異》よりも細かくツーアクションが取れる《不屈の追跡者》《払拭》が優先される。
それでは各マッチアップごとのサイドインアウトを見ていこう。
VS マルドゥ機体
VS マルドゥ機体(先手)
In
Out
VS マルドゥ機体(後手)
In
Out
先手後手の差、また相手のサイドボーディング(マルドゥPWになるか否か)によってプランが異なる。最初は《ならず者の精製屋》をサイドアウトするプランを取っていたが間違いだった。相手がサイド後に追加してくる《先駆ける者、ナヒリ》、《反逆の先導者、チャンドラ》を考えるとクリーチャーは残した方が良い。
ゲームの鍵は《つむじ風の巨匠》で、相手がビートダウンでもPWモードでも役に立つ。エネルギーが多量にあるときは思い切って全部トークンに変えてしまっても良い。飛行機械トークンは相手のPWに対しての抑止力となるからだ。
ビートダウン相手なのに《織木師の組細工》をサイドアウトするのは違和感があるかも知れない。しかし、対「マルドゥ機体」相手は「2ターン目は除去のターン」「3ターン目はこちらのクリーチャー」「4ターン目は《否認》《天才の片鱗》構え」といったようにターンごとに役割分担がはっきりしており、《織木師の組細工》を出すのは5ターン目以降の余裕があるタイミングのみだ。
相手がマルドゥPWプランを取ることも考えると、こちらもクリーチャーと打ち消しを残したい。そうなると優先度から《織木師の組細工》は抜ける。
VS ゾンビ
VS ゾンビ
In
Out
ゾンビはマナ域が全体的に低く《検閲》が刺さりにくいため全てサイドアウト。相手は《没収》《失われた遺産》で対策してくるので、勝ち手段を散らすために《不屈の追跡者》《奔流の機械巨人》をサイドイン。
VS 《霊気池の驚異》
VS 《霊気池の驚異》
In
Out
《払拭》をサイドインするかどうかは相手の形による。《天才の片鱗》タイプだったらサイドインするが、そうでない場合は手札で腐りやすいので入れない。
VS 青赤コントロール
VS 青赤コントロール
In
Out
サイド後最もプランが変わる相手だ。打ち消し呪文との交換になりやすい《霊気池の驚異》をサイドアウトし、こちらは3マナクリーチャーを展開。
相手のドロー呪文を打ち消し呪文で妨害する「クロック・パーミッション」の形を目指すことになる。《竜使いののけ者》《氷の中の存在》などが予想されるため、《蓄霊稲妻》は抜きすぎないように注意。
VS 青白フラッシュ
VS 青白フラッシュ
In
Out
この記事を書いている時点(5/14)ではまだ下火だが、今後霊気池が増えるにあたって対抗馬として青白フラッシュが台頭する可能性がある。インスタントタイミングの行動が多いため惑わされやすく、霊気池にとっては不利なマッチアップだが、決して勝てない相手ではない。
霊気池vs青白フラッシュはお互いの技量が求められる楽しいマッチアップだ。ゲームの鍵は《不屈の追跡者》、《つむじ風の巨匠》を通せるタイミングで出すこと、相手の《呪文捕らえ》、《大天使アヴァシン》を常に考えること。
あと《検閲》はなるべくサイクリングせず、刺さるタイミングを自分から見つけ出していこう。《否認》は案外クリーチャー呪文が多いためサイドインしないほうが良いように思える。
ではまた。
高橋優太
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