By Kazuki Watanabe
第9期モダン神挑戦者決定戦には、満員御礼の330名が集った。
モダン神への挑戦者となるために、そして、来週のグランプリ・神戸2017に向けて。会場を埋め尽くしたモダンプレイヤーは己の全力を出し切り、鎬を削っている
その中には、先週、輝かしい戦いを我々に見せてくれた、この者の姿もあった。
Team Cyagames所属、渡辺 雄也。
プロツアー『アモンケット』準優勝。その結果、見事プラチナ・レベルを確定させた渡辺。その戦績を祝福すると共に、彼に話を伺ってみた
■ Team Cygames所属、渡辺 雄也にインタビュー!
――「まずは準優勝おめでとうございます」
渡辺「ありがとうございます」
――「今回、事前準備の段階で何か変更したことはあるのですか?」
渡辺「前回のプロツアー『霊気紛争』からなのですが、フルカードリストが出たタイミングからほぼフルタイムで動き出すようにしているんです。特に、マッチをやるようにしたんですよ」
――「ただ構築に向けて動く、のではなく、マッチをやるようにしたわけですか?」
渡辺「そうなんです。メインボードだけでなくサイドボードも用意して、メインだけの感触や勝率のみを参照するのではなく、サイドボード後の感触も確かめることができます。サイド後にどのカードが活躍するかも早期に発見できます。どれだけ不格好でも良いので、とにかく75枚組んで来てマッチを行うようにしてました」
――「なるほど。その上で、プロプレイヤー同士の意見交換を行ったわけですね」
渡辺「そうですね。マッチ形式のリーグを行ってデータを取り、終わった後はでデッキを広げて意見交換、という形式です」
――「今回の好成績を見る限り、この形式はかなり良かったようですね」
渡辺「すごく感触が良いですね。この方式は成功していると思います。特に、サイドボードの選択については、かなり良かったと思います」
■ カードリストをより深く見るようになった
――「サイドボードの選択、ですか。今回のマッチ形式だからこそ、ということですか?」
渡辺「そうですね。リストを眺めるときに『サイドボード向きのカードがないか』という視点を持つようになりました。とにかく様々な試行錯誤をしましたね。サイドボードは、当然ですけどメインに入れないわけですから、これまでは試すのが後回しになってしまうことも多かったんです。今回のように最初からサイドボードを組んでおくと、色々なカードをすぐに試せるんですよね。サイドボードの状態で強いカードだったら、『じゃあ、これをメインにしてみよう』とすることもできますから」
――「そうやって、実際にサイドからメインボードに移動したカードはありましたか?」
渡辺「《造反者の解放》ですね。最初はサイドで試し始めて『環境が分かってきたらメインに入るかもね』と話していました。そして、機体と霊気池が多そうという話になったので、メインで良いかな、と。サイクリングで無駄にもならないですからね」
――「なるほど。そういった視点でリストを見ると、違った発見がありそうですね」
渡辺「そうですね。カードリストをより深く見るようになったと思います。その上でMUSASHIの面々と意見を交換して、デッキを調整していきました」
■ 渡辺が語る、MUSASHIの調整
※画像はMagic: the Gathering 英語公式ウェブサイトより引用させていただきました。
――「MUSASHIでの調整、そしてデッキの作成についてお聞きしたいのですが、やはりデッキ作成の中心となるのは、行弘 賢さんですか?」
渡辺「行弘は、オリジナリティを全面的に押し出したデッキを組んできますね。初日に持ってきたのが《選定された行進》と《闇の救済》のトークンデッキ。次に持ってきたのが《腹背+面従》と《氷の中の存在》を組み合わせたデッキで、とにかく独創的なんですよ」
――「な、なるほど……凄いデッキですね」
渡辺「その発想に至ることができる、というのは本当に凄いと思います。対して、既存のデッキをアップデートするのは、僕や、やまけん(山本 賢太郎)、そして(覚前) 輝也がメインです。それにヤソ(八十岡 翔太)が意見をくれる、という状態です。せばちゃん(市川 ユウキ)は仕事の都合であまり参加できないのですが、LINEで共有したリストをMagic Onlineで実際に試して、感想を送ってくれました」
――「常々思っていたのですが、MUSASHIの面々の仲の良さというか、連帯感は凄いですね」
渡辺「うまく役割分担ができているんですよね。行弘が独創的にカードを組み合わせて、僕らは強いカードを使ってデッキを組む。結果、機体、霊気池、ゾンビというプロツアー『アモンケット』の上位デッキはすべて試していました」
■ イベントが終わったら、次のイベントに向けて練習
――「その結果、準優勝を果たして帰国されたわけですが、帰国後はゆっくり休めましたか?」
渡辺「アメリカから帰国し、2日くらい休んで、そこからはモダンですね。グランプリ・神戸2017に向けて、練習を始めました」
――「慌ただしいですね……」
渡辺「『イベントが終わったら、次のイベントに向けて練習』というのは基本なので、特に今回が慌ただしい、というわけではないんですよ。ただ、今シーズンで言えば、少し気が楽になりました。プラチナ・レベルも確定しましたし、グランプリを回る必要もなくなったので、焦りながら練習をするような感覚はなくなりましたね」
――「今シーズン、まだまだ遠征はされるのですか?」
渡辺「神戸が終わったらそこで一息ついて、次はシドニーですね」
――「おお、日本で少しゆっくりできるんですね」
渡辺「そうなんです。1ヶ月くらい余裕がありますね。プロポイントが足りなかったらグランプリを回っていたと思いますが……」
――「なるほど。少しお聞きしたいのですが、渡辺さんは世界を飛び回って活躍を続けていらっしゃいますよね。やはり旅行疲れってあるのですか?」
渡辺「もちろん、旅行疲れはありますよ。飛行機の中で寝ても疲れは取れないので、日本に帰ってきて泥のように眠ります。プラチナ・レベルが確定して、その疲れと少しだけ離れられるので、そういう意味でも良かったな、と。それに、プラチナ・レベルでいることは、僕にとって非常に重要なので」
■ プラチナでなければ
――「プラチナ・レベルでいる、ということは、プロプレイヤーのトップグループにいるわけですが、どのように重要なのですか?」
渡辺「僕の中でのプロの最低ラインは、プラチナ・レベルなんです。プロプレイヤーとして活動をするならば、最低でもプラチナでなければ、という意識でやっています。なので、ひとまず今期の最低目標は達成できましたな、と」
――「プラチナ・レベルで最低目標……そうなると、渡辺さんの大きな目標はやはり……?」
渡辺「プロツアー優勝です。というのも、僕が取っていないタイトルって、プロツアー優勝ぐらいしかないんですよ。なので、これまで以上にプロツアーに比重を置いていますね。少なくとも、1回のプロツアーにかけるエネルギーは増えました。殿堂入りしたときに取り残していたのが”プロツアー優勝”というタイトルだったので、それに向けて力を注いでいきたいですね」
――「なるほど。このまま行けば、チームシリーズのタイトルもMUSASHIで取りそうですね」
渡辺「そうですね。余程のことがない限りトップ2には残れると思いますので、そちらも頑張っていきます」
■ 屈することなく進んでいきたい
――「では最後に、渡辺さん個人、MUSASHI、そしてTeam Cygamesのファンに向けて、一言お願いします」
※画像はTeam Cygames 公式ウェブサイトより引用させていただきました。
渡辺「個人としては、プロツアー優勝。MUSASHIとしてはチームシリーズのタイトル、という目標に向けて頑張っていきたいですね。そして、Team Cygamesは今後も4人で力を合わせて活動を続けていきます。それぞれのメンバーがこれまで以上に活躍できるように、様々なことに挑戦しながら、屈することなく進んでいきたいと思います。応援よろしくお願いします」
渡辺は笑顔でそう言いながら席を立った。
さて、その笑顔を次に見るのはいつ、そして、どのトロフィーを掲げながらだろうか。それが近い将来であることを、筆者は疑うことなく信じている。
一人のファンとして。彼の戦績に「プロツアー優勝」の文字が刻まれることを願いながら、このインタビューを終えたい。
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