準々決勝: パシス ジャック ニコル(東京) vs 加藤 彰訓(東京)

晴れる屋

By Atsushi Ito

 3マナソーサリー。土地1つを対象とし、それを破壊する。

石の雨

 《石の雨》といえば、かつては《暗黒の儀式》《対抗呪文》と並んでマジックの基本的な呪文のうちの一つだった。

 だが、土地を壊され何もできないという体験はゲーム的に望ましくないと判断されたのか、次第に《石の雨》は再録されなくなり、土地破壊呪文は4マナが通例となっていった。

 そんな《石の雨》をモダンで唯一標準搭載しているアーキタイプが、加藤が駆る赤緑ランデスだ。

 3マナ使って土地1枚を破壊するというのは、モダン環境においては決して強力というわけではない。それでも「10年前からこのアーキタイプが好きだったから」とトップ8プロフィールで語るほどの土地破壊フリークである加藤、思いの強さで神への挑戦権獲得を目指す。

 対するパシスはグランプリ・静岡2017春で15位に入賞し、13勝2敗でプロツアー京都の参加権利を獲得したばかりで波に乗るプレイヤーだ。

 デッキはメタゲームブレイクダウンでも3番手に位置する青黒赤の《死の影》アグロ、グリクシスシャドウ

 《死の影》《黄金牙、タシグル》《グルマグのアンコウ》と1マナ揃いのフィニッシャーで極限まで動きの軽さを追求したデッキに、土地破壊呪文はどこまで刺さるのか。

Game 1

 ダブルマリガンの憂き目にあった加藤は「えーマジかw」と嘆くが、ゲームが開始すると順調に1ターン目から《楽園の拡散》を設置してマナブースト、色は「赤」を指定する。

 だが返すターンにパシスの《思考囲い》が刺さり、早くも《森》《石の雨》《ムウォンヴーリーの酸苔》 という3枚にまで減っていた加藤の手札から、さらに《石の雨》を抜き去る。

 2ターン目に予定していたアクションが奪われたことで、加藤は土地を置くことしかできない。一方パシスはセットランドこそないものの、2枚目の《思考囲い》で残った《ムウォンヴーリーの酸苔》をも落とし、1枚しか引いていない土地を破壊させないように立ち回ると、加藤がスペルを引き込めずにターンを返したところで、満を持して4/4の《死の影》を降臨させる。

加藤 彰訓

 これはトップデッキした《反逆の先導者、チャンドラ》で何とか落とした加藤だったが、パシスに2枚目の土地を引き込まれると、《稲妻》《反逆の先導者、チャンドラ》を落とされつつ、今度は7/7の《死の影》を出されてしまう。

加藤「順番がちょっと違うよー……」

 それでも、ここでようやく引き込んだ《血染めの月》でパシスの後続を断った加藤。だが、7/7の《死の影》が止まらない。

 ラストターン、駆けつけた《反逆の先導者、チャンドラ》の「+1」能力で《高原の狩りの達人》を追放するも、戦場に送り込むだけのマナは残されていないのだった。

パシス 1-0 加藤

 土地破壊が始まるのは、最速でも2ターン目だ。だが、ということは1マナのスペルは打ち放題となってしまう。

 それはつまり、《思考囲い》、そして《死の影》というモダン最高の1マナスペルと最強の1マナクリーチャーを、加藤の土地破壊は阻むことができないということを意味している。

 デッキコンセプトの制約が、加藤に重くのしかかる。

Game 2

 今度はパシスがマリガン。加藤が《森》から『第6版』の《極楽鳥》を出すと、ここだけ1999年のマジックが蘇ったようだ。

 だが、《沼》をフェッチしたパシスが《思考囲い》を打ち込むと、その幻視はすぐに晴れる。加藤の手札は《血染めの月》が2枚に《嵐の息吹のドラゴン》というもの。そう、これがモダン。パシスは仕方なく《嵐の息吹のドラゴン》を落とすしかない。

 そして先手2ターン目、月が赤く染まる。

血染めの月

 パシスは《集団的蛮行》《極楽鳥》を除去するが、返すターンに《沼》《石の雨》されると、もはや二度と《死の影》が戦場に出せないことが確定してしまう。

 加藤にクロックはないが、敗北は時間の問題と悟ったパシスは、3ゲーム目へ移ることを選択した。

パシス 1-1 加藤

 先手2ターン目《血染めの月》。この圧倒的な理不尽こそが土地破壊の強みだ。

 だが、今も昔も土地破壊は後手が弱点なのは変わらない。ましてパシスのデッキは1マナずつ動けるよう徹底した構築がなされている。

 それでも、人事を尽くすしかない。最終ゲームが、パシスの先手で始まる。

Game 3

 《通りの悪霊》をサイクリングから、フェッチ起動で《湿った墓》をアンタップインしつつ《思考掃き》と動いたパシスが、2ターン目に勝負に出る。

 自分を対象に《稲妻》。さらに《蒸気孔》アンタップインで3/3の《死の影》を送り出す。

 加藤に《稲妻》《四肢切断》があれば、貴重なクロックを失うことになる。だが、デッキの性質上入っているとしても枚数は多くはないという判断なのだろう。ならばリスクとリターンの天秤は合っている。

 はたして、返す加藤にアクションはない。

 一方、3点アタックでマナを構えたパシスは、加藤のファーストアクションである《血染めの月》をきっちり《頑固な否認》でキャッチ。さらに返す《思考囲い》《死の影》を成長させつつ、加藤の反撃を封殺しにかかる。

 公開された手札は、土地と《台所の嫌がらせ屋》《石の雨》《三なる宝球》、そして《熱烈の神ハゾレト》。パシスは土地を2枚しかコントロールしておらず、ゲームプランの分岐が難しい。おそらく、互いにこの一合が最後の選択になる。

パシス ジャック ニコル

 パシスは最終的に《死の影》の障害になりかねない《熱烈の神ハゾレト》を抜き去り、5点アタック。加藤の残りライフを11とする。

 返す加藤は《台所の嫌がらせ屋》《石の雨》《三なる宝球》の三択だが、パシスが土地を引き込まないことを願って《三なる宝球》をプレイする。

 パシスのドローは……3枚目の土地!

 3マナ払っての《思考囲い》で、《台所の嫌がらせ屋》を落としつつの10点アタックが炸裂する。もはやフェッチも起動できなくなった加藤は、ドローを見て右手を差し出すのだった。

 

パシス 2-1 加藤

この記事内で掲載されたカード

Twitterでつぶやく

Facebookでシェアする