By Kazuki Watanabe
グランプリの会場で、マジック仲間に会う。
これもまた、グランプリの魅力の一つだ。
国内のグランプリに足を運べば、遠く離れた地に住む友人と会うことができる。それは「久しぶり!」という言葉で始まり、「またグランプリで!」の一言で終わる、マジックがもたらす“友情の時間”だ。……無論、その間に対戦相手として対面することもあるのだが、これもまた、友情の確かめ方の一つであろう。グランプリは、マジックをプレイする以外の楽しみ方を、我々に提供してくれる。
さて、そういった中で、「この人、前のグランプリでも見かけたな」といった人が、誰しも1人や2人は居るのではないだろうか? プレイヤーであったり、ショップブースや会場のスタッフであったり、そして、我々プレイヤーを見守ってくれるジャッジであったり……。
今回お話を伺ったのは、そんな人物だ。写真を見れば、グランプリ会場に足を運んだことのある多くの日本人プレイヤーは「あ、この人知ってる!」という感想を抱いてくれることだろう。
ハンス・ワン(台湾)。
流暢な日本語でプレイヤーとコミュニケーションを取りながら、会場を颯爽と駆け回る姿を見たことがある人は、きっと多いだろう。
国内外のグランプリ、そしてプレミア・イベントでジャッジとして活躍するハンスさん。本日もお忙しい業務の合間を縫って、インタビューに答えていただいた!
■ ハンス・ワンさんにインタビュー!
--「ハンスさんとは毎回グランプリでお会いしている気がしますね。一年間でどれくらいジャッジとしてイベントに参加されているのですか?」
ハンス「プロツアー、そしてワールドマジックカップを含めると、18回くらいですね」
--「じゅ、18回!? 月1.5回は大きなイベントでジャッジをされているんですね」
ハンス「そうなりますね。今は特に忙しく、6月はほとんど家に帰りません」
--「世界を飛び回ってジャッジを務めているわけですね」
ハンス「そうですね。今月は北京(中国)、モントリオール(カナダ)。そして神戸(日本)。次はマニラ(フィリピン)に行きますし、その後は、ラスベガスとクリーヴランド(共にアメリカ)に行きますね」
--「本当に大忙しですね……この2ヶ月で、5ヶ国ですか」
ハンス「忙しいですね。ただ、やはり自分にとってグランプリは好きな場所ですし、日本のグランプリは特に大好きなんですよ」
--「なるほど。日本のグランプリにも、ジャッジとしてかなりの回数いらっしゃっていますよね」
ハンス「そうですね。これまで参加したグランプリはすべてメモに残してあるんです。ちょっと待って下さいね……えーと、これをみると神戸が15回目の日本のグランプリです」
ハンスさんのスマートフォン。びっしりと過去のイベントが記されている
--「す、すごい……一番最初は、いつなのですか?」
ハンス「2011年の広島が最初ですね。もともと日本の文化は好きでしたし、楽しみにしていました。ただ、そのときは日本語が分からなくて、ジャッジとしてとても悔しい思いをしました。裁定も含めて、プレイヤーと上手く会話できませんでしたからね。なので、そこから日本語を勉強するようになりました。それからは、積極的に日本のグランプリにも足を運ぶようになりました」
母親よりも顔を合わせる存在?
--「ちなみに、ジャッジになったきっかけを教えていただけますか?」
ハンス「2002年のことです。もともとマジックに出会ったのは『ビジョンズ』の頃で、友人たちと楽しんで、トッププレイヤーを目指していたこともあるんですよ。ただ、プレイヤーとしてではなく、違った形でマジックに関わることはできないかな? と考えてジャッジになりたいと思ったんです」
--「なるほど。そうなると、ジャッジになって15年が経つわけですね」
ハンス「そうですね。振り返ってみるとあっという間ですが、楽しい思い出ばかりです。ジャッジとして世界のグランプリに携わるようになったことで、プレイヤーやジャッジ、色々な人と出会うことができました」
--「その人たちとは、世界のグランプリ会場で『久しぶり!』と言って再会するんですね」
ハンス「そうですね。例えば、今回ヘッドジャッジを務めるリカルド・テストーリさんとは、北京、モントリオール、神戸とここ最近は毎週末顔を合わせています。自分の母親よりも顔を合わせていますね(笑)」
--「肉親よりも顔を合わせている、となるとすごいですね」
ハンス「北京でも、モントリオールでも、『じゃあ、また四日後!』と言って別れましたから。」
プレイヤーとは違った視点を持つことができる
--「改めて、ハンスさんの考える、ジャッジの魅力とは何でしょうか?」
ハンス「まず、マジックというゲームに対して、ジャッジはプレイヤーとは違った視点を持つことができます。一つの状況に対して、『こういった場合はどうするべきだと思う?』『これは、こういう裁定で合ってるよね?』という議論をジャッジの仲間たちと交わすことは、とても面白いんです」
--「それは、たしかにジャッジでないと味わえない経験ですね」
ハンス「そうですね。これがジャッジの魅力であり、マジックの魅力でもあると思います。そして、これまで述べたとおり、世界のイベントでジャッジを務めることで、友人、仲間に出会えます。新しい友人も増えますし、長年の友人とも再会できますからね」
--「それが、やはりハンスさんにとっては大きな魅力なのですね」
ハンス「はい。最近は私の顔を覚えてくれた人が多いようで、グランプリ会場で日本のプレイヤーから声を掛けてくれることも増えてきました。これがとても嬉しいんですよ。私にとってはもう慣れてきた日本ですが、やはり海外です。その海外で『やあ!』『こんにちは!』『久しぶり!』と挨拶をされる、というのは本当に素晴らしいことだと思いますね」
--「なるほど。では、明日は本戦に参加するプレイヤーも含めて大勢の人がいらっしゃいますが、『ぜひ声をかけてください!』と書いておきましょうか?」
ハンス「ぜひ、お願いします! 長時間移動の疲れが吹き飛ぶくらい、嬉しいんですよ!」
席を立ち、握手を交わして、こちらから取材協力のお礼を述べると、ハンスさんは「こちらこそ、ありがとうございます」と答えてくれた後に、我々がグランプリ会場で見慣れたいつもの笑顔で、こう続けた。
ハンス「それでは、業務に戻ります!」
颯爽と立ち去る仲間のジャッジと二、三の言葉を交わす。そして、そのままプレイヤーで埋め尽くされたフロアへと。
このインタビューを読み、明日、神戸国際展示場に足を運ぶ方がいたら、ぜひ、ハンスさんに一言声を掛けてみて欲しい。
それが、彼を次のグランプリ会場へ、次の仲間との出会いへと向かわせる、大きな支えとなるのだから。
Twitterでつぶやく
Facebookでシェアする