By Kazuki Watanabe
今回のプロツアー予選は『アモンケット』のリミテッドで開催される。まずはシールドでシングルエリミネーションが行われ、残った8名が決勝ドラフトに進出できる形式だ。
『アモンケット』が発売されてしばらくの時間が経ち、この環境のリミテッドも少しずつ解明されてきた。それでも、まだまだ知られていないことも多いはずである。
この環境のリミテッドで勝利するために必要な思考と感覚とは?
今回は、PTQに参加しているBIGs所属プレイヤー、加藤 健介に『アモンケット』のシールドについて伺ってみた。
■ BIGs所属、加藤 健介にインタビュー!
――「早速お伺いしていきたいのですが、加藤さんはこの環境のシールドの練習はされているのですか?」
加藤「Magic Onlineで、少しずつ練習をしていますね。RPTQのフォーマットでもあるので、力を入れていきたいと思っています」
――「では、その練習の中で得た『アモンケット』のシールドで勝つための思考や感覚について教えていただけますか?」
加藤「どのセットでも共通していることかもしれませんが、レアがやっぱり強いですね。その結果、プールごとの強弱、格差がはっきりしているような感覚があります」
――「なるほど……弱いプールを引くと勝てない、ということになってしまうわけですね」
加藤「そうなりやすいですね。ただ、やりくりするための方法がないわけではありません。”弱いプールを強く使う方法”は、必ずあると考えています」
――「おお、それはぜひお聞きしたいです。少し教えていただくことはできますか?」
加藤「もちろん良いですよ!」
■ 『アモンケット』シールドで有効な、二つの方法
加藤「私の中で確立している方法を二つご紹介します。一つ目は、緑+多色プランです。《ナーガの生気論者》や、《楽園の贈り物》などを利用して、プールのカードをとにかく余すことなく使う、という方法ですね」――「なるほど。多色を生み出すベースをしっかりと確立して、様々な色を利用していくわけですね」
加藤「そういうことですね。強いカード、言わばプールの中の上澄みを掬って活かしていくような感覚ですね。そうすれば、戦えるデッキを構築できると思います。この考え方は、プラチナ・プロであるBIG MAGIC所属プロの瀧村 和幸さんから教わったのですが、かなり良い方法だと思いますね」
――「プラチナ・プロ直伝、というわけですね。では、もう一つについても教えていただけますか?」
加藤「二つ目は、赤白などでシンプルにビートダウンする、という方法です。なるべく前にデッキ全体を寄せて、相手のレアや、プランには付き合わない立ち回りを目指します」
――「非常にシンプルな方法ですね」
加藤「わかりやすい戦略だと思います。少しカードパワーが足りないようなものも、ビートダウンに使えるカードならば思い切って採用していくことになるでしょうね。特にサイドプランが重要で、相手のレアに付き合わないような構築ができることがベストです」
――「いわゆる普通のシールドのセオリーとは、少し違った戦い方も重要、ということでしょうか?」
加藤「セオリー通りに構築して強いに越したことはないのですが、なかなかそういったプールに出会えることが少ないんですよ。なので、引き出しを多くして、色々な状況に対応できるようにしたいと考えています」
■ 加藤にとって、プロツアーとは?
――「ありがとうございます。ではここからはPTQの先にある、プロツアーについてお伺いしたいと思います。加藤さんにとって、プロツアーとはどのような場所なのでしょうか?」
加藤「なんと言えば良いのか……高校球児にとっての甲子園、のようなものですかね。皆が目指している場所であり、自分にとっても大きな目標なんです」
――「夏の大きなイベントである甲子園、ですか。たしかに近いものがあるかもしれませんね」
加藤「夏、という意味では、今年のプロツアー『破滅の刻』は京都で夏に開催されますよね。私の場合、仕事の都合もあって、仮に権利があったとしてもすべてのプロツアーに行けるわけではないんです。ですが、夏ならば夏休みも使えますし、今回は京都なので、行きやすいんですよね。なので、これまでよりもエネルギーを振ってます」
――「そういった意味でも、今回の次のプロツアーは大きいわけですね」
加藤「大きいですね。BIGsのメンバーや、BIG MAGIC所属プロがプロツアーで戦っている姿を見る機会も多いので、その中に加わりたいな、と思っています」
――「加藤さんがBIGsに加入して、そのシャツを着ている姿もすっかり見慣れた気がしますね」
加藤「そうですね。声を掛けていただくことも増えてきました。ただ、私自身はみなさんと大きく違う部分があるわけではありませんし……少し変な言い方かもしれませんが、“プロプレイヤーよりも近い存在”なのかな、と思っています。なので、気軽に声を掛けて頂けるとうれしいですね」
――「例えば、私が『教えてください!』と声を掛けたら、色々教えて貰えます?」
加藤「いやー、むしろ私が教えて欲しいくらいなんですけどね(笑) ただ、教えられることは限られているとは思いますが、それでも聞いて頂けるのならば。なるべくお答えしたいと思いますし、アドバイスできるれば、と思っています」
笑顔で、謙遜しながら答える加藤。その笑顔を見ながら、筆者は1ラウンド前の対戦終了後のことを思い出した。
加藤にインタビューを申し込もうと、対戦が終了するのを待っていたときのことだ。見事に勝利を収めた加藤に声を掛けようとしたところ、対戦相手からシールド構築について相談を受け、相手のプールを並べながら、丁寧に「この方が良いのかもしれませんね」「これを入れて……いや、それならば確かにこっちの方が」とアドバイスを与えながら、会話を始めた。
グランプリのサイドイベントでは、インタビューを申し込む時間と、記事を執筆する時間が限られている。なるべく早く記事を掲載したい気持ちは山々なのだが、こういったときに邪魔をするというのも無粋であろう。筆者はひとまず、カバレージチームに「インタビューは次のラウンド終わってからにします」と伝え、そのままその様子を見ていることにした。
今まさに、プロプレイヤーよりも近い存在である加藤が、プレイヤーにアドバイスをしているのだから。
プロツアーを目指す加藤の健闘と、彼にアドバイスを受けたプレイヤーのこれからの飛躍に期待しよう。
Twitterでつぶやく
Facebookでシェアする