水江 陽太の「レガシー版 ジャンド《死の影》」

晴れる屋

By Kazuki Watanabe

 「レガシーは敷居が高い」

 「スタンダードとモダンはやっているけど、レガシーはちょっとね……」

 そんな風に思っている人も多いのではないだろうか?

 たしかに、各種デュアルランドや、レガシーで必須とされているカードを手に入れるのは大変だ。それらを手に入れた上でデッキを使いこなさねばならないし、対戦相手が使用してくるアーキタイプを知らなければ「あっ」という間に負けてしまうこともあるだろう。

 しかし、フォーマットは違えども同じマジックであることに変わりはない。モダンで使用してもレガシーで使用しても《稲妻》は3点だし、《コラガンの命令》のモードが増えることはない。手持ちの資産に、ちょっとした工夫とカードを買い足せば、数多のデッキが舞い踊るこの魅力的なフォーマットを楽しむことはできるはずである。

 今回、第9期レガシー神挑戦者決定戦に参加している水江 陽太(東京)にインタビューを申し込んだ。

 きっかけは、筆者がデッキリストに目を通しているときのこと。パラパラとめくっているときに目に飛び込んできたリストを見て、

 「あれ……? モダンのリストが紛れ込んでる?」

 と思ってしまったのだ。

 彼が使用するのは「ジャンド《死の影》。そう、モダンのトップメタの一角が、レガシー神挑戦者決定戦に挑んでいるのだ

死の影

 レガシーでも《死の影》は活躍できるのか。早速、話を伺ってみよう!

■ モダンで強いデッキは、レガシーでも……?

――「今回使用されているデッキは、モダンの『ジャンド《死の影》』のレガシー版という感じですね」

水江「そうですね。グランプリ・神戸2017で使用したのですが、やっぱりこのデッキは強いなと思いました。そして、『モダンで強いデッキは、レガシーでも通用するのかな?』と思ったことがきっかけです。

――「リストを拝見しましたが、細かなパーツがレガシーで使用できるカードに入れ替わっているわけですね」

水江「禁止された《ギタクシア派の調査》《狂暴化》《陰謀団式療法》《再活性》などですね」

――「《再活性》の採用理由を教えていただけますか?」

再活性

水江「かなり良い仕事をしてくれる1枚です。《思考囲い》で相手の手札を見て、《トレストの使者、レオヴォルド》のような強いクリーチャーがいたら、それを捨てさせて釣り上げることができますし、ダメージソースにもなってくれます。普通でしたらダメージが気になるかもしれませんが、このデッキならば《死の影》を育てることになるわけですからね」

――「なるほど。《死の影》を利用するデッキとの相性も良いわけですね」

通りの悪霊

水江「そうなんです。たとえば、《通りの悪霊》をサイクリングして、それを《再活性》で釣り上げれば1ターン目から一気にライフを減らすことができます。使い方次第では、一気にゲームを決める性能を持っていますよ

――「その他のカードでレガシー版のカードと言えば、《狂暴化》でしょうか」

狂暴化

水江《狂暴化》《ティムールの激闘》が1マナ軽くなっているようなものですね。感染でなくても、このカードは使えるんですよ」

――「たしかに、《狂暴化》と言えば感染、ですよね」

水江「感染と比較すると、レガシーにたくさん存在する”小さな火力”に感染は弱いんです。2点、3点で落ちてしまうクリーチャばかりですよね。ですが、このデッキには《稲妻》で落ちるクリーチャーは育っていない《タルモゴイフ》くらいなので、安定感が違いますね」

――「なるほど。そして、土地は14枚とかなり切り詰めていますね」

水江《ギタクシア派の調査》《通りの悪霊》がいますからね。ドローできるので、土地は切り詰めて、呪文の枠を空けています」

■ レガシーでもチャンスがある

――「実際に使用してみた印象はいかがですか?」

水江レガシーでもチャンスがある、と思いますね。やはりこのデッキは強いな、と。ただ、もっと調整を加えて詰められるな、とも思いました」

――「まだまだ改良の余地があるわけですね。具体的にはどのように改良するつもりですか?」

水江《狂暴化》は4枚欲しかったですね。とにかく強いカードなので。あと、《ウルヴェンワルド横断》はクリーチャーを持ってくるために使用して、昂揚を達成するまで唱えないというプランだったのですが、やはり基本土地が欲しいと思いました。《沼》が1枚あっても良いかもな、と思いますね」

――「ありがとうございます。改良をすれば、さらに強い『ジャンド《死の影》』が見られるわけですね」

わめき騒ぐマンドリル真の名の宿敵残忍な剥ぎ取り

水江「そうですね。採用されているカードも、レガシーでも強いカードばかりです。現在は《真の名の宿敵》がやはり強いと思っているのですが、だからこそ《わめき騒ぐマンドリル》や、昂揚達成後の《残忍な剥ぎ取り》のトランプルが役立つと思っています。《真の名の宿敵》はタフネスが小さいので、トランプルでダメージを与えていくイメージですね」

――「なるほど。このデッキは、『モダンのデッキを少し改良すれば、レガシーでも戦える』という一つの証拠かもしれませんね」

水江「そうかもしれません。レガシーは敷居が高いと思われがちですが、色々と自分でカードを眺めながら考えてみると、そんなことないと気付けるはずです。工夫次第では、初期投資を抑えることもできますからね。たとえば、このデッキの《タルモゴイフ》《僧院の速槍》でも良いと思います。除去を積極的に使っていけば、果敢を何度も誘発させられるので。このデッキに限らず、工夫することで、レガシーは十分楽しめると思います


 「工夫することで、レガシーは十分楽しめる」

 そう語る水江は、モダンのデッキに工夫を加えてレガシーでも十分戦えるデッキを仕上げている。その創意はまだまだ留まらず、改良のプランも教えてくれた。

 みなさんも、手元のデッキに手を加えてレガシーに挑戦してみてはいかがだろうか? 他のフォーマットとは違った勝負を、思う存分味わえるはずである。

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